「なんで――」
お前の声をずっと聞けると思ってた。
お前の顔をずっと見れると思ってた。
あの時、なぜ俺をお前は庇った?
なんで、お前が車に轢かれる姿を見なければならない?
あの時、なぜお前は俺を見て笑ったんだ?
あんなのがお前の最後笑顔だなんて、俺は許さない。
だから、早く目を覚ませよ。
それでさ、いつものように俺に笑いかけてくれよ。
だから、早く目を開けろよ。
それでさ、いつものように俺に語りかけてくれよ。
お願いだから、目を覚ませって――
お前が意識不明になってから、俺の世界のカレンダーは静かにめくられる。
まだ、お前が目を開けることはなかった。
「おい、お前のためにダチが花なんか持ってきたぜ。綺麗じゃねぇか?」
そう語りかけても、やはりお前からの返事はない。
「なぁ、由魅・・・・・・早く起きろよ。みんな心配してるからよ・・・・・・俺を残して死ぬなんて、ゆるさねぇぞ?」
やはり返事はない。
「・・・・・・俺を庇って死ぬなんて、俺のプライドがゆるさねぇ。・・・・・・それにお前は俺と結婚するまで、死んではいけないって法律にあるんだよ」
返事は――
「・・・・・・そ・・・・・・」
・・・・・・え?
「・・・・・・ゆみ?」
今、由魅の声が聞こえた――
「・・・・・・そんな法律ないよ・・・・・・勝手に作るな、バカ」
そこには、いつものように、苦笑する、お前がいた。
俺はすぐさま、彼女に抱きついた。
「ちょっ、海斗、いきなり抱きついてくんなよ、バカッ!」
顔を真っ赤にしてそう言い返す彼女が愛しくて仕方が無い。
「なら、なんで俺を庇ったんだよっ!お前の方がバカだバカッ!・・・俺はな、お前が死んだら・・・・・・」
「だ、だって・・・・・・海斗が死ぬのが嫌だったんだもん・・・・・・」
顔を少し赤く染めて、彼女は小さな声でそう言った。
全く、お前って奴は・・・・・・
「俺もお前が死ぬのが嫌なんだよ。お前のことが、す、好きだから、さ・・・・・・」
自分の顔が赤くなっていくことがわかる。
「・・・・・・心配かけてごめん、海斗」
「謝る必要はないね・・・・・・生きていたから」
「ただいま、海斗」
「おかえり、由魅。これから一生よろしくね」
二人が微笑みながらそう言った後、二人の影が重なる――
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