止まる足、進む訳 ◆mtws1YvfHQ


 黒神めだか
 今現在、少し悩んだものの、黒神真黒が居たと思しき場所には向かわずクラッシュクラシックへと向かっている道中。
 理由はまさか同じ場所に居続ける事はないだろうと言う物でしかない。
 実際、クラッシュクラシックも途中で本命は箱庭学園の軍艦塔。
 その最中に放送は始まった。



 黒神めだかは放送を聞く時でも足を止めるどころか名簿を出すつもりもなかった。
 今どこかの誰かが名簿を取り出して見ているとすればそれは絶好の機会だ。
 絶好の機会。
 名簿に誰が居ようが居まいが如何でも良い。
 自分と言う人間を完成させる機会。
 その人物の注意が周りから逸れて居る機会を逃す手はない。
 文字通り異能を、奪い取る手もあるし、見る目もある。
 近くからでも遠くからでも良い。
 見付けようと目を凝らす。
 歩き続ける。

『阿久根高貴』

 足が止まった。
 無意識の内に足が止まっていた。
 生徒会書記。
 阿久根高貴。
 死んだ。
 足が動かない。
 別段それ以外に何があると言う事もなく、放送は終了した。
 合計で十一人死んだだけだ。
 その中の一人が阿久根高貴だっただけだ。
 それだけだ。

「――案外、過剰評価が過ぎたかも知れんな」

 黒神めだかは呟く。
 そして、足を進める。
 何事もなかった様に。
 誰も死んでない様に。
 無表情に歩を進める。
 頭を巡るのは今後の禁止エリアの場所。
 地図は既に頭の中に入れてある。
 そこの何処が何時どうなるかも分かった。
 そう言う意味で今の放送は価値ある物だ。
 阿久根高貴が死んだ事を放送された所で。

「所詮『特別』ではその程度――あの男や女のような『異常』には劣るか」

 参加者ではなかったらしい一人を含めて死んだ十二人の内の二人を除けば、自分を完成させるに足る足掛かりにもならない存在だったのだろう。
 だから死んだのだ。
 それに過ぎない。
 役立たずが消えたに過ぎないのだから問題などない。
 歩きながら名簿を取り出す。
 足が止まった。
 無意識に足が止まっていた。
 あっても何も可笑しくない名だった筈なのに。

「――――人吉、善吉――――」

 人吉善吉
 彼もまた、自分を完成させる役に立つのか。
 喜界島会計は居ない。
 何故居ないかは分からないが、居ないのなら別に良い。
 如何でも良い。
 『特別』ではあるが、居なくても完成させる足掛かりが欠けるとは思えない。
 あって良いかも知れないが、必要ではない。

「そう」

 足を進める。
 止まっていては遠ざかる。
 完成には遠ざかる。
 『完全』には遠ざかる。
 止まっている場合ではない。
 『特別』を見付けよう。
 『異常』を見付け出そう。
 まずは真黒を。
 次いで全てを。
 完成させよう。
 自分という人間を完成させる。
 そのためなら、

「私を完成させるのに、手段を選ぶつもりはない」

 何も選ぶつもりはない。
 兄を殺す事も、厭わない。
 地面に何かが落ちた気がした。
 足を止めて下を見ても何もない。
 首を傾げる。
 水滴が下に落ちた。
 上を見上げる。
 水滴一つ落ちて来ない。

「気のせいか……?」

 歩き始める。
 気付かない。
 地面に落ち続ける水滴の正体を。
 気付かない。
 目から流れ落ちる水滴が何かを。
 気付かない。
 頬から流れ下る水滴の事すらも。
 気付かない。
 滴る水滴が己から出ている事も。
 気付かない。
 今は、まだ。
 気付かない。



【1日目/朝/C-3】
【黒神めだか@めだかボックス】
[状態]足の裏に刺し傷(ほぼ完治)、めだかちゃん(改)、『不死身性』(弱体化)
[装備]なし
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6)、心渡り@物語シリーズ
[思考]。
基本:自分という人間を完成させる。
 1:真黒を見つけたら、『異常』を『完成』し、殺す。
 2:クラッシュクラシックに向かう。
 3:色々な異能の持ち主と戦い、その能力を自分のものとする。
 4:ついでに殺す。
 5:左右田右衛門左衛門には警戒しておく。
 6:多分無理だろうが、時間があれば箱庭学園の軍艦塔に行く。
[備考]
※『不死身性』は結構弱体化しました。(少なくとも先ほど、左右田右衛門左衛門から受けた攻撃には耐えられない程度には)
※疑問には思っているが、まだ『不死身性』が弱体化したとは本気では思っていません。
※都城王土の『人心支配』は使えるようです。
宗像形の暗器は不明です。


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+から堕ちた者と-に認められなかった者 黒神めだか 僐物語-ヒトモノガタリ-

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最終更新:2012年10月02日 13:09