この世に生きる喜び -Realize the dream- ◆xR8DbSLW.w
○幻想/×××××○
ぼくという人間を語る場合が仮にもあった場合。
そのプロフィールに勿論のこと「主人公」なんて三文字や「主役」という二文字は当てはまらない。
それは我らが
哀川潤さんにお任せしとけばいい。
仮定として狐面の通り、この世界が一つの《物語》なのだとしたら、
ぼくは精々言ったところで「村人C」を頂けただけでも僥倖と言えるだろう。
――とはいったところでそんな「脇役」を演じるだけなら面倒だしふけるという手を取るかもしれないけどね。
全くもって戯言だ。
ともかく。
ぼくには「主人公」なんて荷が重すぎることなどできないし、肩も重い。
そもそも原点回帰として「主人公」ってのがなんなのかっていうのは実を言うとよく分かっていない。
かつて世界を救ったぼくとしても理解はできない。
イメージはできる。
具現化はできない。
とにかく善人であれば「主人公」というと違う気がするし。
とりあえずハーレム創っていたら「主人公」というとこれもまた違う。
とりわけ最強を張っていたら「主人公」。――でもない気がする。哀川さんは特例なのだ。
このように、というのもまた違う気もするが、
ぼく自身「主人公」っていうのを理解していない。
故にぼくが「主人公」ではない。っと断言はできない訳だけど、確証はある。
ぼくみたいな欠けている人間が、「主人公」であってはならない。
それもまるで殺人鬼の様な、死神の様な不吉の象徴を表した様なぼくが、名乗って良いものでは少なくともない。
「主人公」は哀川さんこそが相応しい。
だからぼくの出る幕はない。
そう思っているのだが――――。
「いやはや、僕の名前を呼ぶ声が聞こえたから急いで駆け付けてみたら中々面白い人材がいるもんだね」
「だったらこんなところで遊んでないで、さっさとその声の元に駆けつけたらどうなんだい? きっと君の新しい顔を待ってるよ」
「アンパンマンかよ――――それに」
少なくとも、ぼくは呼んだ覚えはない。
もし呼んでいたとしたならば、相変わらずぼくの記憶力は相当に優秀になる。
どうやらぼくの記憶力は優秀らしかった。
「………ふーん、理事長(しらぬいくん)も面白いことやってんなー。この世界の僕はまだ封印されてるのか」
封印とはなんだろうね。
いやいや、ぼくの夢。
こんな中二病出してどうすんだ、さっさと目を覚ませろよ。
なんて都合の悪い夢だ。まるでぼくみたい。
なんつーかよく分かんないけど、現状を纏めるとしよう。
姫ちゃんが消滅した後、余韻に浸りながら帰ろうと念じるぼくの元に一瞬閃光が走った。
その後、彼女が現れた。
唐突に、簡潔に。
前振りも前置きも無く、如何にも当然の様にぼくの眼前で寛いでいる。
今現在、彼女の姿は「哀川潤」。
曰く、「このほうが君も話しやすいだろう」との事らしい。だからぼくの前には先ほどの安心院(あじむ)さんの姿はない。
ちなみに《身気楼(ミラージュプナイル)》という彼女の特技を使ったとのことだ。
…………。
余計な気遣いはいらないから早くぼくを還してくれるとありがたいんだけど。
しかしまあ、彼女。
何ていうんだろうね。
その姿。――全然似合っていない。
そりゃ顔も身体も声も全て哀川さんなのだから違和感はない。
けれど似合ってもいない。
ま、戯言としておくとでもしよう。
…………で。
「貴女は何なんです」
最終的にはこれに尽きるだろう。
何であれ、ぼくは彼女を知らない。
どれだけぼくの記憶力がポンコツであろうと、―――ここまでの『異常』を覚えてないわけがない。
夢とはいえ、夢だからこそ知りもしないものは具現されないけれど。
彼女は間違いなく第三者だ。
それも、ぼくとは無縁の処ながらラスボスに匹敵すべき誰か。
狐面風に言うのであれば、因果から外されるべきキャラクター。
縁の≪合う≫はずの無い、非登場人物。
正直言って今この瞬間、ぼくと彼女が対峙しているという事態は、非常事態。
ぼくが語るべき存在では、なさそうである。
「いや、別に僕は何者になるつもりもないよ。ラスボスなんて真っ平ゴメンだ」
易々とぼくの意見と同義な言葉を吐いてゆく。自分は登場するべき者ではない、と。
だからこそ必然的にぼくは彼女に疑いの眼差しを向ける。
その視線を感じ取ったのか、彼女はおちゃらけた口調で返した。
「元々僕はこの世界の住人でもないしさ。いわば僕は並行世界(パラレルワールド)の住人さ」
…………並行世界。パラレルワールド。
同一の時間帯に置いて、軸の違う幾つもの世界。
もう一つの現実。
アナザーワールド(別の世界)ではない、パラレルワールド(並行世界)。
――――まるで、怪異の様な言い分であった。
そういえば吸血鬼もそんなことをできるなんて都市伝説もあるが、一体全体どうなんだろう。
ふと疑問に思ったが、ここで怪異の話をしても仕方が無いので安心院ちゃんに焦点を戻す。
……戻したところでどうこうという話ではないけど。
正直に言って、意味が分からない。
そんなの、人間業ではない。
尤も、ぼくに人間を語って良いのかどうかは微妙なところではあるが。
「僕は簡単に言うと『球磨川くんが改心しきった世界』からやってきてね。
能力も制限なくなったし《腑罪証明(アリバイブロック)》でここでやってきたわけだけど」
話がどんどん難しくなっていく。
誰だよ、球磨川って。玖渚じゃなくて?
KUMAGAWA 球磨川。
KUNAGISA 玖渚。
……自分で言っておいてなんだけど、予想以上に母音子音が被っていてびっくりした。
横道にそれたね。
そんなことは、(玖渚が本当に関係していたら別だけど)どうでもいい。
それよりもぼくとしては――。
「…………ま、結果的にぼくとしては早く戻りたいんだけど」
殺し合いの場に戻るってのも上々に複雑な気分だけど。
戻らない訳にもいかないだろう。
「いいじゃん。僕もそろそろ帰らなきゃいけないからね、それまでの辛抱だ」
彼女自身、それが迷惑だと分かっているのが厄介だ。
戯言も、きっと碌に聞いてもらえないだろう。
…………いったいぼくのターンは何時まで続くのだろう。
これがテレビであれば直ぐ様スタジオにカメラを戻すのに。
しかしそんなぼくのボヤキは当然ながら聞き入れるはずもなく、
彼女は困ったように語り始める。
「しかしバトルロワイアルか。――――見事に僕の邪魔する計画だよ。理事長(しらぬいくん)も困った人もんだと思わないかい?」
「…………ん?」
あれ? 何かがおかしい。
この人は、主催(あっち)側の人間じゃないのか?
時空を越えてこの計画を目論んでいたんじゃないのか?
ぼくはてっきりそう思っていたのだが。
見事に嵌り役であったし。
「僕は『主人公』を創りたいって言ってたのに。主人公体質を無に還して何がしたいんだろうねー」
「…………『主人公』」
哀川さんの声で言われると、思わず流してしまいそうになってしまうが、
気にするべき点はそこではない。
――――主人公体質が無に還される?
「尤も、この哀川潤ちゃんは性能が下がっちゃいるけど有していることには有しているけどさ」
「……………」
この場合、よかったとみるべきなのだろうか。
いや違うだろう。正直なところぼくはこの件、
「バトルロワイアル」に置いても放っておけば、参加されてようがされてまいが、
哀川さんがさっさと片付けてくれるなんて言う淡いというか甘い期待をもっていたのだ。
しかし、彼女の調子が万全でないというのであれば、そう簡単に事を進めるのは困難なのかもしれない。
……ならば、ぼくは。ぼく達はどうすればいいのだろうか。
「だけど、全部が全部失敗。という訳でもないらしいね。
主人公体質を自力で手に入れようと頑張ってる子が割といるのがまだ救いって感じさ」
「へぇ、そんな人もいるんだね」
ならば、ぼくは幸いなことに裏方作業に没頭でもしておくことができる。
別に見せ場が欲しいわけじゃあるまいし。
そんなぼくの思いとは裏腹に、安心院さんはぼくに告げる。
静かに、淡々と。小馬鹿にした調子で。
「いやいや何他人事ぶってんの、戯言遣いくん。――――それは君もだよ」
静かに、淡々と。
それは告げられた。
無論ぼくに向かって、ぼくに宛てられたメッセージ。
『君もだよ』。
つまりはぼくもまた、「主人公」として成長しつつある。ということなのだろう。
だけど、だ。
「心当たりが無いね」
言葉通りの意味で、心当たりなんて何一つなかった。
ぼくは、そりゃかつては「
正義の味方」にだってなってやった。
それでも先ほどの安心院さんの言葉の意味をそのまま捉えるならば、ぼくもまた、凡人以下に成り下がっているのだろう。
なら、ぼくが「主人公」になれるわけがない。
「中々君は決め付けが早いよ。もっと真剣に考えて御覧? 君は救いたいんだろう?」
「何をさ」
「――そりゃ、ここにいる参加者達をさ」
「…………」
ちなみにだがぼくは何も言ってない。
今まで適当に相槌を返していただけのはずなのに。
「いや、正確に言うとドラゴンボール宜しく悪人以外の皆、だったかな」
「…………的外れにも程があるよ、安心院(あじむ)ちゃん」
実際ぼくはそこまで大層なことを考えていない。
ただ、早くこんな茶番終わればいいと思っただけだ。
誰も死なずに、穏やかに、或いは厳かでもいいから片を付けてほしいだけである。
出来ることなら、この上なくハッピーエンドで……。
至極まっとう戯言かな。
「僕のことは親しみを込めて安心院(あんしんいん)さんと呼びなさい
あと僕のことをちゃん付けにするのもよろしくないね。一応僕は君なんかよりずっと年上だぜ?」
…………彼女は一体全体何者なんだろう。
狐面の男の様に、『《物語》を読んでいる』とでも言うのか。
傍観者じゃない癖に、よっぽど傍観者よりも傍観者らしく。
ラスボスじゃないと語る癖に、ラスボスであるような佇まい。
こいつはいったい何者なんだ。
「けど一つ言わせてもらうと、女を守りたいだけの男を僕は『主人公』と言う気はないけどね」
「なら言わなければいいだろ」
ぼくにそれを強要させてどうする。
「まぁ、実際そんな男はライトノベルでしかいねーんだろうけど」
「じゃあ案外ぼくはライトノベルの『主人公』なんじゃない?」
仮にそんな小説が出たとしても面白みも何もないだろうけど。
ただ読者を退屈させ、暗い気分にさせるだけしか効能はないんだろうけどさ。
「ふうん。じゃあ案外そうなのかもしれないね」
ふふふ、と不敵な笑みを見せながらポロリと言葉を残す。
何故納得したかぼくとしては教えてほしいところだが。
「君は十分『主人公』だから僕は傍観とさせていただくよ」
「……おいおい傍観者はぼくの仕事だ。――君は元の世界にでも帰ってろ」
「『おいおい』は僕の台詞だよ。君はちゃんと自分の仕事を全うしなきゃ」
ぼくの仕事。
――――玖渚がいたら救うこと。
どうする気もないけど、老人自体をどうする気もないけれど。
彼女だけは、救って見せなければいけない。
今のあいつは――ただの劣化人間なんだから。
ぼくの仕事。
――――真宵ちゃんを守ること。
自己満足ながら、ぼくはもう誰も亡くしたくない。
真宵ちゃんとは少し仲良くなりすぎた。
相まって姫ちゃんの代理品と言うのであれば、
今度こそぼくは、救ってあげなければいけないのだろう。
義務であって、責任でもある。
出会ったが故に、出合ったが故に。
どうやらぼくのロリコン説は徐々に真実味を帯びてきたようだ。
一応否定はしておくが、それもまた一興。
ぼくは自己満足の為に、自己中心でも、自己弁護だとしても。
ぼくは、彼女を失うのを恐れている。
ぼくはいつからここまで強くなった。
ぼくはいつからこんなに薄くなった。
知る訳が無い。
知らなくてもいいと思う。
ぼくは、ぼくだから。
死にたくないんだ。
亡くしたくないんだ。
思えば、ぼくは最初に姫ちゃんと彼女を比較していた。
比較するということは、どこかぼくは彼女と姫ちゃんを重ね合わせていたのだろう。
ぼくはもう二度とあんな絶望に浸りたくない。
別にいいじゃないか。
怖くても。
恐れても。
竦んでも。
だけれども、ぼくは――――。
「さて、『主人公』。お別れの時間だよ」
「………そりゃどうも」
長かった。
とても――――長かった。
けれどもぼくはまた戻るんだ。
あの薄汚い世界に。
きみとぼくの壊れて不気味で素朴で囲われたような世界に。
殺し合いの世界。
普通の世界。
財力の世界。
政治力の世界。
暴力の世界。
その全てが入り混じった様な無茶苦茶滅茶苦茶ハチャメチャで。
それこそまるで《神》のような存在が介入したかのような破綻した《物語》。
だが、進む。
時は、刻み、進まれる。
今こうしている間にも《物語》は進んでいる。
ならばぼくはそろそろ「傍観者」を止めなければいけない。
やってやろうじゃないか。
「主人公」でも。
「正義の味方」にだってなってやろう。
「あ、心配しなくてもいいよ。僕はこのバトルロワイアル自体には介入しない。
正確には『僕』が介入しないだけで、この世界の僕が介入するのは知らないけど」
「……本当でしょうね?」
「その点は安心していいぜ(安心院さんだけに)。僕は生れてこの方約束を破ったことが無い気がする」
安心院さんは言う。
そして、彼女は変装を解いた。
赤さが消え失せ、先ほどの姿に戻る。
………こちらの姿はよく似合っていた。
哀川さんの姿よりはよっぽどに。
彼女は、息を吸う。
どうやらお別れの時間がやってきたみたいだ。
ならば、告げる言葉は何でもいいだろう。
「それじゃ、精々お元気で」
暗転。
フェードアウト。
○煩想/ヒノカゲクウドウ・クマガワミソギ・ヤスリナナミ○
その巨体に似合わず、日之影は身震いをしてしまった。
抵抗しようにもない、手遅れな現実を突きつけられて、反射的に身震いをしてしまう。
「――――ッチ」
思わず、無意識ながら舌を打つ。
音は反響し、無として還る。
近くで横たわる戯言遣いに反応はない。
寝息の音だけが、小気味良く繰り返される。
されど今の日之影空洞にとってそんな戯言遣いの姿など見えていなかった。
「死人がこんなにいるとはな…………」
今現在、彼はかつてないほどに苛立っていた。
口調こそは冷静なそれでこそあるが、内心はやはり苛立ち以外にない。
理由に至っては極めて簡単。
「俺は何やってんだよ……ッ!」
叫び声を上げる。
雄叫び。
受け入れきれない現実をただただ受け入れるしかない、何もできなかった現在を生きるしかないという事実。
事実は時に残酷だ。惨酷だ。冷酷だ。
残酷な現実は、惨酷な現状を、冷酷なまでに映してしまう。
のんびりと動いている気はなかった。
寧ろ、意気は高まるばかりで救おうと云う気は変わることもない。
それでも、十人死んだ。
「…………阿久根。――――不合格とは言ったものの強さは随一だったのにな」
その中の一人。
阿久根高貴。
破壊臣。旧破壊臣。
生徒会。生徒会書記。
強さはめだかも謳い、善吉も認める程である。
不合格とはあくまで対過負荷に対するものであり、それ以外の戦いであれば怠りは見せないはずだ。
――にも関わらず。脱落した。
この六時間と言う、長いようで短い時間に置いて、早々と役目を終えた。
日之影の感情は高ぶる。
日之影の心情は滾る。
従って、彼の魂は燃えあがる。
「絶対許さん……ッ」
静かに言葉を吐き、
激昂のまま、近くにあった机を殴る。
物に当たることで、少しだけ気持ちに整理を付ける。
「…………」
余談だが、机は壊れてしまった。
たった一撃にして、ほぼ全壊されている。
それほどまでに、彼、日之影空洞は強かった。そして今も強い。
だが、今回に限りは、その強さを有するが故に感情を抑えられない。
日之影空洞は、箱庭学園の英雄である。
悪漢を蹴散らし。
悪人を払い除け。
悪党を叩き潰す。
武勇に優れ、箱庭学園の平和を文字通りの意味で守っていた。
その甲斐あってか、彼が生徒会長を務めていた頃、箱庭学園は平和が当たり前のように保たれていた。
そんな伝説をわけなく作った男。
だからこそ、「守れなかった」という事実は心に響かせるのには十分である。
死んだ人間がどんな奴かは知らないし、
殺した人間がどんな輩かは知らないが、
それでも守れなかったという事実は、確実に、着実に、日之影の心を蝕む。
ただ、ここで屈するほど彼のメンタルは弱いわけではない。
否。
彼のメンタル自体はさほど強いわけではない。
けれども、やらなければいけないことがあるなら話は別だ。
「――――俺は、まだやれる」
まだ彼は折れていない。
英雄は、屈しない。
悪党にも。
現実にも。
そして、再び彼は始動する。
残りの参加者を救うために。
だから一先ずは、彼にとって、誰とも知らない正体不明の戯言遣いの手当てが先決だ。
そう思っていたが、今この時をもって些か事情が変わってしまった。
「…………ん?」
ふと、外の景色が見える。
夜もすっかりと更けてきて、朝日が見え始める。
ここが殺し合いの場でさえなければ、清々しい気持ちになっていただろうが、生憎そうはいかない。
そんな都合に嘆息を吐き、何気なく視線を下に向ける。
この場合、向けてしまった。という表現の方が正しいのかもしれない。
視線の先には、
球磨川禊、鑢七実の両名の姿があったのだから。
@
そこからのストーリー展開は極めて簡単である。
日之影は球磨川を打倒するべく、動いていった。
もしもの時を考えて、名前も知らない戯言遣いを物陰に隠し、何故か上半身が裸だったので自身の制服を被せる。
ついでに、このディパックの地図やコンパス、飲食類を残し、それ以外を戯言遣いのそれに移した。
――――日之影は生身でも十分怪物なのだから。
そしてそれは、本人も承知している。
故に、荷物の重さの軽減も兼ねて、荷物を戯言遣いのディパックに移した。
見ず知らずの人間に対して、それは不用心と思われるかもしれないが。
「過負荷どもに取られるよりはマシだろう」
相手は過負荷。
どんな卑怯も。どんな欺瞞も。どんな非道も。
容赦なく行える。
それに、球磨川の欠点。
『大嘘憑き(オールフィクション)』の正体を彼は知らない。
どれだけパンチを加えようが平気で立ち上がり。
どれほどキックを与えようが普通に立ち直る。
治癒能力ではない。
単なる治癒能力なら服の修復に理由づかない。
よって、どんなことをされるか分からずにいる立場であるが為。
考えようが答えは出ないもの。
――――ならば、どんな施しを受けようが、今まで共に戦ってきた身体(つよさ)を正々堂々ぶち込んでやればいい。
支給品の移し換えは、単なる用心の一つ。
警戒に警戒を重ね、その上で用心しておくにこしたことはない。
「………さーて、と。じゃー俺のワンマンショー見せてやるぜマイナスども」
戯言遣いに一瞥をくれると、それきり振り返ることもなく、
堂々と、勇ましく、走り出す。
その姿は、誰にも気づかれない。
述べるに及ばず、戯言遣いにも。
言うまでもなく、球磨川禊にも。
分かり切ってるが、鑢七実にも。
だから、何時の間に近づいたのか。
鑢七実の背後を取り、その目一杯に振りかぶった拳は、容赦なく振りかざされた。
手応えは――――皆無でこそあったけど。
七実の身体は、まるで蝶々の如く、華麗にひらりと舞っていた。
下がること、三メートル強。
優雅に爪先から、静かに着地。
球磨川は特に驚くこともなく、ただただ何をするわけでもなく、七実を姿を目で追っていた。
日之影空洞は、手を前に出したまま愕然と固まっている。
今現在、風一つない、この場に置いて三人の姿は確かにあった。
……客観的にみると、二人の姿が、ある。
「……………」
「……………」
あまりにも、静かだった。
何事もなかったかのように。
――七実の身体は動かない。
――――風は既に止んでいる。
@
「……ッ!」
息を飲む。
日之影空洞は素直に驚きを禁じ得なかった。
なにせ、彼の姿は見えないはずなのに、その癖振りかざした拳に手応えを感じないなど、あり得ない。
哀川潤は、さして問題もなく見えていたが、それとこれとは話が別だ。
まず、感じ取れる雰囲気が全然違うと言うのに。
強大な存在だった哀川潤。
虚弱な様相な彼女とは、話が違うであろう。
そう考えた。
そう行き着いた。
しかし、日之影は知らない。
今攻撃した彼女は最悪なまでに――――強き存在であるということを。
一方で“風圧”を受けた七実は、特に何もしていない。
強いてしていたというのであれば――――忍法・足軽。
起源を辿れば元は真庭忍軍十二頭領が一人。虫組、「無重の蝶々」こと真庭蝶々の忍法である。
その忍法の概要は、発動者の体重と、背負っている物の重さを消し去ってしまうと云う忍法、もしくは歩法だ。
彼女の疲れがそれ相応に溜まらない理由の一つ。
自身の体重を支える必要が無いのだから、歩くこと自体はさして疲労には変わらない。
とはいったものの、忍法を発動させ続けていることや、言っても歩いている事実自体は変わらないが為に疲労が溜まらないこともないが。
無論、先に挙げた殺し名両名の件もあったのかもしれないけれど。
さて、話を戻して七実が姿の見えない日之影の殴打を空振らせた理由。
これもまた簡単で、体重を消していた七実にとって、日之影の殴打から発生する風圧は、あまりに強烈なものであったが故だ。
ただでさえ、本来の開発者である真庭蝶々は当時はまだ凍空一族の『怪力』を見取っていない弱すぎる鑢七実の手刀であれど、吹っ飛んだのだから。
日之影の怪力強打を避けれない理由はない。
強すぎる腕力で出された、殴打は重すぎた。体重が消えた、七実にとって。
今の七実は軽すぎるが為――――攻撃が通用しなかった。
少なからず、近距離最強と謳われようが、近距離攻撃が通用しないのであれば、雑魚キャラも同然と成り下がる。
(…………くそっ)
毒を吐こうが、意味を成さない。
つまり端的に言って、今のこの状況。
先手を加えたのが幾ら日之影であろうとも、絶対的に絶望的に日之影の不利と云うことは明らかだった。
蛇足でこそあるが、付け加えとして語っておこう。
日之影空洞が、何故球磨川禊ではなく、鑢七実に対して初撃を加えようとしたか。
またしても簡単だ。
それは球磨川に攻撃しても無意味だということは理解していたから。
先だって、生徒会戦挙開幕直前、日之影はめだかから聞いた過負荷という人種を排除しようと動いた。
そして日之影は当然の様に、球磨川の背後を取り顔面を黒板に打ちつけたり、自身の強さを余すことなく叩きつけたつもりだ。
しかしながら――――次の瞬間には、無傷だった。
まるで、日之影の攻撃など『なかったことにされた』かのような元通り。
日之影が与えたダメージは愚か、仲間の過負荷がやった骨折だって。
まるで無意味。
理屈は分からない。
知りたくもない。
ただ、意味が無いことを知っている以上、攻撃をすることに意味を見出せなかった。
ならば、どうするべきか。
――――球磨川の仲間に手を加えればいい。
七実を球磨川の味方と思った理由。
単純な話で、球磨川と碌に話の通じる奴は大概そいつは過負荷だろう。
そんな安直な考えのもとで、日之影は七実を襲った。
安直とはいったものの、よくよく考えてみれば、そう考えるのも無理のない話で。
日之影自身、球磨川との第一接点(ファーストコンタクト)は最悪なものであった。
それは、球磨川禊と言う人物も。
それは、球磨川禊を取り巻く仲間と言える人物も。
故に、短絡的だと思われようが、「そう云う人間」という印象しかない以上仕方のないのかもしれない。
事実。鑢七実は――――強すぎるが為に負(マイナス)という立場の人間である。
閑話休題。
一方で、七実、球磨川も戸惑いが多少なりとも無いわけではない。
なにせ唐突に七実にだけに強風が吹いたのだから。
「………どなたか、その辺りにいるのですか」
小さな、弱々しい、しかしおぞましき声は、日之影の耳に届く。
だが言葉を返すわけにもいかない。
返してしまったら最後。
殺されてしまうかもしれない。
不思議と、常に自信満々の日之影の物とは思えない直感が襲う。
この、七実の姿を前――後ろにしては。
『う~ん……。なんか知っているような………』
手を顎に添えて、真剣な表情で、考え出す球磨川。
その間五秒。
ふと思い至ったように名簿を取り出す。
『そういや、さっき名簿見て思い出したことがあったんだっけ』
「そうでしたか、ならばできるだけお早めに思い出してください」
悪びれもせず、その忘れられていた当人を前にして球磨川は言葉を発する。
言うまでもないが、球磨川からは日之影の姿は見えないし、日之影も忘れ去られていたことなんて何とも思っていないが。
思ってこそいないが、快く思うとも限らない。
「…………」
幸いにして、見方を変えれば馬鹿にした球磨川の言葉を機に、愕然とした思いから脱することができた。
同時に、この二人の関係をはっきりと見取ることもでき。
――――この二人は俺の敵。
ということも、十分に認知するに至った。
殺人鬼の如く、標的に関してさして拘りこそもってはいないが、一つだけ貫き通したことはある。
悪。
相手が悪である。
少なくとも、それだけは貫き通してきた。
そして、幸にも不幸にも、球磨川禊と鑢七実は、日之影空洞の正義の眼鏡に適ったということだ。
だから、ボルテージが燃えあがる。
元英雄としての強さを盛って。
元会長としての誇りを兼ねて。
咆哮とシンクロして、元英雄は――――悪を潰す。
『――――思い出したよ七実ちゃん! きっと近くに日之影空洞っていう―――』
「マァァァイナスゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウゥゥウウウウウウウウウゥウウ!!」
『―――なんか知らないけど英雄とか自称しちゃう中二病の空気のうっっすい子がいる感じだね!』
「………成程。元気のよろしいようですね。――――いえ、悪いのかしら」
球磨川の言葉を遮りながら、再び七実に向かって強打を放つ。
思いを力に変えて。
どこかで聞いたことのあるキャッチフレーズを現実のものにしながら、その殴打は繰り出された。
ただ、それとは裏腹にまたしても七実の身体が吹っ飛ぶ以外に、手応えはなかったけれど。
日之影としては、先ほどのは偶然の産物で、本当の力量は果てしなく弱い、
というものを微量ながらに期待はしていたのでまたしても七実に攻撃を加えた。
結果としては、現実の理不尽さを身に覚える他なかったけれど。
「………空洞さん、と仰いましたか」
空から、地面に着地したところで、背後を振り返り、七実は言う。
前に吹っ飛んだのだから、相手は後ろにいるだろうと云う考えであったが、さすがに視線は明後日の方向に向いている。
日之影は、そんな光景に口角をあげ、頬を歪ます。
この状態であれば、まだ勝機は零ではない!
じっくりと、ゆっくりと観察して、視察すればいい。
そうすれば、きっと勝利への鍵は――――見えてくる。
「まにわにさん方の如く気配を消している……というわけではないようですね。
どちらかというと、認知が出来ない……と言った感じでしょうか」
ゆったりと、言葉を紡ぐ。静かに、言葉を繋ぐ。
相も変わらず視線がこちらに向かないが、やはりそれでも威圧感が物凄い。
屈するには足らないが、躊躇うに及ぶ。
「まぁ、姿が見えないのならどうしようもないのでしょうけど、お分かりの通りわたしに空洞さんの攻撃は届きません。
あと分かっているでしょうが、禊さん。彼にも攻撃は無意味だとわたしは思いますよ……」
どうでもよさげに、七実は片手に持った石の《刀》を弄びながら言う。
軽々と振り乱れている刀は、日之影から見てただの子供の玩具にしか見えない。
―――少なくとも、持ち上げるにも難解な重い、もはや「重い」という言葉だけで表していいのかも不明な重量の塊だとは気付けない。
よもや、そんな塊を、あんな矮躯、貧相な体でもちあげているとは思えないだろう。
……今はまだ、忍法・足軽の歩法で持ち上げてこそいるが、持ち上げている理由を凍空一族の『怪力』にシフトさせたら最後。
それは、最悪級の凶器に変わる。
一方で球磨川。
自己紹介で、一向として喋らなくなったけれど、別に日之影の存在がどうこう、と云う話ではなく、
単に七実が一回、二回と舞っている姿を見て、面白そうだなー。と思っていただけで、それ以外の他意はない。
故に、自分が喋る雰囲気になれば喋るのに躊躇いはなかった。
『ひっどいなー。七実ちゃん。痛いものは痛いんだから変に刺激させないでほしいな』
「あら、それは申し訳ございません」
「…………」
テクテクと吹っ飛んでいった七実の方に近づきながらおちゃらけた風に七実に対し言う。
七実に関しては手を口元に添えて声を僅かばかりにあげてクスクスと言った感じで返す。
日之影は動かない。
どちらかというと、動けない。
正直言って、彼ら二人に対して気味悪がっていた。
球磨川は論外だとしても、あくまでも殺されようと、そこまでいかずとも攻撃されていた相手を前に、平気で笑っている。
そして、球磨川を――――なんらものともしていない。
不気味。
この一言で、片が付く。
しかしこの場合、そのシンプルさが、逆に不気味さを極めにかかる。
とはいえ、不気味さで退く訳にはいかなかった。
ここで、二人を打破しなければ、学習塾で寝ている戯言遣いに被害が及ぶ可能性が非常に大きい。
攻撃が効かないとはいえ、時間稼ぎにはなるであろうし、そもそも守るべき相手がいると云うのに退くなど彼のプライドが許さなかった。
なにせ彼は――――英雄なのだから。
そんな中、無粋な、野暮な、艶消しな。
――――否、もしかしたら救いの声が。
一つの声明が、一つの生命があがる。
「――――――――阿良々木さんっっ!」
迷子の少女。
八九寺真宵は今確かにここに――――いた。
○瞑想/ツナギ・エムカエムカエ○
江迎怒江は、動揺していた。
「ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ」
相も変わらず、狂ったレコーダーの如く、同じ台詞を吐き続ける。
吐き続けて止まらない。
口から漏れ出す、不規則な声も。
足から零れ出す、規則良き音も。
止まらない。
……。
どこに、向かっているのか分かりもせずに。
……。
まず、おさらいをしてみようと思う。
江迎は、貝木泥舟と云う、詐欺師に手荷物を全て、文字通り全てを預けた。
彼女は地図も、はたまたコンパスすらも持ち合わせていない。
故に、この会場の何もかもが本来は分からない。
尤も、いくらコンパスや地図をもっていたところで時間の遅い早いはあれどいずれは腐ってしまうけれども。
「ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ」
第一回放送までの彼女が的確に行動できていた訳。
それはある程度以上は地図の内容を覚えていたほかないだろう。
貝木泥舟の手力を借りて、地図をじっくり見て精一杯覚えたに違いない。
「あの男の所為だ。あの女の所為だ。あの男の所為だ。あの女の所為だ。あの男の所為だ。あの女の所為だ」
貝木泥舟と離れ離れになった理由。
それは球磨川禊が箱庭学園に現れたからだ。
既に尊敬の念は消え去っている。
両頬を切り裂かれたしまった理由。
それは西条玉藻が箱庭学園に現れたからだ。
既に恐怖の念に犯されてしまい。
この場合、後者が今の彼女を作る大きな要因となった。
「全てはあいつらの…………。――――痛い。イタイ……いたい、よ」
大きな声で叫ぼうとしたら、口の痛みが直接的に神経を襲う。
痛みや恐怖の所為で、脳が、正常に回らない。
さて、今の現状をおさらいをしたところで、今の話をしようと思う。
西条玉藻。
凶器に、はたは狂気に犯された彼女が齎したプレゼントは、傷だけに収まらなかった。
「…………」
江迎の足取りは、重い。
一歩一歩、ドラゴンボールの戦士の如く鉛でも身につけているかのように、足の動く速度は遅い。
重くて遅くて。
ただ、それもそのはずである。
「…………ここ……どこよ……」
………頭の端に螺子込んだ―――否、捩じ込んだ地図の形が、恐怖をもって抹消されてしまったのだから。
ポンッ、といった軽い感じで。
いつの間にか、気付いた時には記憶から消えていた。という言い方が適切である。
故に、彼女の目的地は定まっていない。
勿論辿りつきたいのは、西東診療所。もしくは診療所に無事にいけたのであれば僥倖であるが、簡単にいくとは思えない。
それに彼女は今、地図の中身を忘れた。というだけではないのだ。
恐怖が頭の中を占領している。
ただ死にたくない。幸せになりたい。
そして――――貝木に嫌われたくない。
必要と言ってくれた、彼を。
女神と言ってくれた、彼を。
愛すると言ってくれる彼を。
盲目的に愛し、偏執的に狂う。
彼女は涙を流す。
頬に届くと、傷に触れて、痛かった。
しかし彼女は涙を拭かない。
それどころではなかったから。
一心不乱に、走る。
走って、走って。既に満身創痍だ。
足が向かう先は東西南北、先ほどから様々ではっきりいって出血多量の彼女にとって、致命的であった。
舞台が整わない、彼女。
実力が伴わない、彼女。
彼女は今はまだ、《主人公》として内実が未到達。
故にこの《物語》に関与できない。
空気キャラとして、地味なキャラとして、一章分の描写を以て、これにてお仕舞い。
【一日目/朝/E‐3】
【江迎怒江@めだかボックス】
[状態]身体的疲労(大)、精神的疲労(中)、混乱状態、出血(中)、口元から頬に大傷(半分口裂け女状態)、ヤンデレ化
[装備]無し
[道具]無し
[思考]
基本:泥舟さんとの恋を邪魔する者は問答無用で殺す
1:顔の傷を治療する
2:球磨川さんを殺す
3:地図が欲しい
[備考]
※『荒廃する腐花 狂い咲きバージョン』使用できるようになりました。
※西東診療所か診療所のどちらかを目指しているつもりですが、てんで方向が定まっていません。
ですが、偶然辿りつける可能性は秘めています。
※これ以上にストレス他、負荷を与えると過負荷成長する可能性が大きいです。
@
そんな、フラフラな女の姿を追っている少女の姿があった。
額には大きな絆創膏。
下半身には何も身につけず、上半身には身体に合わない服に身を包む彼女は、江迎怒江の姿を追っていた。
八九寺真宵ではなく、江迎怒江の姿を。
「…………真宵ちゃん大丈夫かなぁ」
小言を吐く。
その小言は、江迎には聞こえない。
正確に言うと聞こえたところで如何しようもならないだろう。
幾ら、『荒廃した腐花』であろうとも混沌状態に陥っているのであれば、ツナギの敵ではない。
少なくとも今。
マイナス成長を迎えていない江迎には、
全身兵器も変わりないツナギと比べると手数にまずは劣る上に、思考能力に欠如があるのなら、勝ち目はほぼないと言える。
勝負はやってみないと分からない。
とは言ったものの、大抵はテンプレート通りに行くものだ。
ここはバトルロワイアル。
命がけの戦場。
奇跡を頼み綱にするなど、愚行も愚行。他ならない。
閑話休題。
ならば、何故。
それこそ自身の様な「魔法使い」、「魔法」使い。加え影谷蛇之のような悪しき者が現れたら、
八九寺真宵と云う、か弱き少女は、抵抗する間もなく殺されてしまうだろう。
それこそ、「実を言うと超能力者でした」とか、
週刊少年ジャンプの如く「よく分からない異能を身につけちゃったぜ!」的な展開が無い限り、殺されてしまうのは目に見えている。
ならば、何故。
考えるまでもないことである。
――――この女が、あんまりにも分かりやすく『過負荷』だったから。
としか言わざるを得ない。
今彼女は監視の念を込めて、ここでこうして八九寺真宵を置いて、江迎を背後から追っている。
出遭いは一方的であった。
ふと、八九寺の後を追うように走っていた彼女だが、その最中に唐突に、突拍子もなく目の前にいたのだから。
ただグチグチと言葉は口が碌に機能してないせいか、空気の漏れたような間の抜けた声で加え濁った様な声で、
走っていただけで、ツナギの姿を目で捕らえるとまでも行かなかった。
その姿を見て、ツナギは直感的に思った。
この女、危険ね……。
そう思ったからツナギは少し迷い、後を付ける様になった。
決意に至った理由は言うまでもなく、戯言遣い、八九寺真宵。
それに心配するまでもないのであろうが、タカくんこと―――
供犠創貴に、加え
水倉りすかという存在を守るためだ。
基本的に一人先立ち、戦線を張る仕事の都合上、勘違いされるかもしれないが、
彼女は仲間と言うものは大切にしている。
次いで言うと、人の命も、それ相応、もしくはそれ以上に大切にしている。
無差別に減らされる多人数よりは――――自分の命を賭けれるほどには。
結論として。
周囲に零れ出す、過負荷臭。
時折、手に何かが触れた時に発する腐敗臭。
付いてゆけば付いてゆくほど、危険視することを怠れない。
「……いーさん、ホントマジで頼むわよ……」
独り言は、誰にも聞かれない。
必死に走る江迎の背中をよそ眼に、彼女は四人の参加者に思いを馳せる。
そんな彼女もまた、巻き込まれる形で《物語》に関与できる可能性と閉ざしてしまう。
彼女が、次の《物語》に関与する時、どうなっているかなど誰にも分からない。
【一日目/朝/E‐3】
【ツナギ@りすかシリーズ】
[状態]健康、下半身裸
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)、お菓子多数
[思考]
基本:襲ってくる奴は食らう
1:まずは、あの女(江迎怒江)を追う。
2:危険人物であるが、勝機があれば食っておくのも手の一つかな。
3:いーさん……。真宵ちゃん……。
4:タカくんとりすかちゃんがいたらそっちとも合流する
5:なんか食欲が落ちてる気がする
[備考]
※九州ツアーの最中からの参加です
※魔法の制限に気づいています(どのくらいかは、これ以降の書き手さんにお任せします)
※処理能力の限度についてもこれ以降の書き手さんにお任せします
最終更新:2013年05月04日 22:52