アヒル、赤乗せ陸に往く ◆mtws1YvfHQ
「スタート場所がこんな場所になるとは……このあたしをもってしても読めなかった! それはそうとして」
既に何度目かになる愚痴を、知る者ぞ知る人類最強の赤色、
哀川潤が呟いたがそれも仕方がない事と言える。
なぜなら、今現在の哀川潤の居る場所は、清々しいまでに何も無い水の上なのだから。
一つ、断固としてやると決めた事があるからだ。
決めた事。単純にそれはバトルロワイヤルを潰すと言う事だった。
爆発する首輪を付けられた今の状況はどうとも足掻きようのない状況と思える。殺し合いに積極的に参加してるのも居るかも知れない。それを止めるにも一人じゃあ限度がある。
しかし哀川潤は諦めない。
バトルロワイヤルを潰せる可能性を持つ者を幾人も知っているからだ。
「あたしも含めて四人……」
一人はもちろん自分自身。
ちなみに根拠はない。が、確信はあった。
少なくともバトルロワイヤルに招き入れてきた不知火袴が、この哀川潤がそう言う行動を取るだろうと言う事を考えない筈がない。そしてその対策も考えていない筈もないだろう。
しかし哀川潤に諦めると言う言葉はない。ついでに引く、媚びる、省みるの三つもない。
自分以外の誰かがこれに参加させられるとしたら、絶対に参加させられるだろうと思っている相手を知っている。
そう言う意味での二人目、
「いーたんはどこにいるだろうなー」
戯言遣いが行きそうな所を、懐中電灯で地図を照らして見ながら考える。
場を掻き乱し、混乱させ、渾沌させ、疲弊させ、それでいて自分は透かし交わし流し翻弄しの戯言遣いほど、バトルロワイヤルを加速に加速させるのに持って来いなのはないだろう。
上手く使えれば殺し屋暗殺者殺人鬼始末番虐殺師掃除人死神操想術師武器商人病毒遣い飼育員死配人予言者他諸々に魑魅魍魎悪鬼羅刹が百鬼夜行と跋扈する裏の住人より使える一種の起爆剤。
なまじ知っていれば、これを使わない筈がない。いやそれこそ使わざる負えない。
誰だってそうする。あたしだってそうする。
仮に、本当に、問題なく、間違いなく、上手く使えれば、だが。
《なるようにならない最悪》
自分では何もしないのに周囲が勝手に狂いだす。無闇の為にのみ絶無の為にのみ存在する公式。
まともに使えないからこその最悪、まず扱い切れないからこその欠陥、なまじ上手く行かないからこその最弱。
《戯言遣い》、《欠陥製品》、《人類最弱》。
敵にしても厄介で、味方としても扱いに困る。死地へ、最終を誘い、最悪を惑わせ、最強を誘う。
「まあ、主催者の方も狂うだろうし関係無いか? いや、もう狂い始めてたりして?」
誰に言うでもなく、漕ぎ続ける。
逆に戯言遣いを使うとすれば誰を準備するか。
それが三人目。
玖渚友。
いーちゃんを扱うと考えれば上がる第一の人物。
電子工学・情報工学・機械工学に関して言えば最高峰、玖渚機関直系の令嬢と言う点と、次いで知られれば《あいつら》と呼ばれる電子テロリスト集団を確実に敵に回すと言う事を除けば大した障害はないと思える。
首輪がどういう原理でどう爆発するかは知らないが、機械である以上、電子に関連している以上、それこそ道具さえあれば易々と首輪ぐらい安全無害の代物に変えてしまうだろう。
しかし、死んでしまえばそこまでと言わずいーちゃんが大暴走しそうな悪寒を匂わす危険人物。
極端な話で言えば、生きていれば特効薬、死んでしまえば猛毒。
薬も過ぎれば毒に転ずるかも知れないが、毒が少なければ薬に転ずるかも知れないが、こればかりはそうと言えない。
最高の盾が壊れて出て来たのは最悪の矛でしたとなっては洒落では済まない。
越えるべきでない線を越えさせる天才。いーちゃんにとっての逆鱗に成り得る娘。
《死線の蒼》、《青色サヴァン》、《歩く逆鱗》。
居れば文字通り諸刃の剣と言った所か。
「さて、どう転ぶか転がるか……」
地図を見て行き先を決めようと思ったけどもその前に砂漠を越えなくちゃ話にならない。行き先は後で考えよう。
最後の一人は、
想影真心。
哀川潤を止められる候補を上げれば文句なし満場一致の一位一等賞の第一候補に上がる。
《人類最強》に近い《人類最終》、《死色の真紅》を超える《橙なる種》、《赤き征裁》に対する《代替なる朱》。
直接の戦闘力で言えば向こうが上で、全体の総合力(バストも含む)でこちらが上。状況次第ではどうとでも転がり得る。
あたしが居て使わない手があるだろうか、いやない。
もっとも互いに戦う理由がないからそれこそ時宮の操想術にまだ掛かってましたー、と言う様な漫画的展開でもない限りこれは杞憂だろう。
……杞憂だよな?
まあ、早い所合流して、主催者が何かする前に叩き潰せば万事解決のハッピーエンドと言う訳だ。
一先ずは陸まで行く事が最優先事項。
動けるのは、それから。
「しかし海のど真ん中とは、嫌がらせか、それともあたしの動きを少しでも邪魔するのが目的か? ――ったく」
舌打ちしながら哀川潤は漕ぎ急ぐ。
海波にも負けず、潮風にも負けず、アヒルボートで漕ぎ急ぐ。
【1日目/深夜/H-1】
【哀川潤@戯言シリーズ】
[状態]健康
[装備]アヒルボート@不明
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)
[思考]
基本:陸地に行く
1:とりあえずバトルロワイヤルをぶち壊す
2:いーたん、 玖渚友、想影真心らを探す
3:積極的な参加者は行動不能に、消極的な参加者は説得して仲間に。
[備考]
※基本1の三人は居るだろう程度で探しています。本当にかは放送待ち
※基本3の積極的はマーダー、消極的は対主催みたいな感じです
※想影真心との戦闘後、しばらくしてからの参戦です
最終更新:2012年10月02日 08:06