最後に残った道しるべ ◆CAP.3FrrY.
キリカから受けたダメージを瞬間的に回復すると、アンリミテッド化した暁美ほむらは雪原を離れるように歩き出す。
もうすでに彼女にはこのゲーム――いやこのゲームを取り巻くすべての運命に決着をつける道程が見えていた。
さくさくと雪を踏んで歩く暁美ほむらの瞳にはもはや迷いも躊躇もありはしなかった。
雪原を北に抜けてゴミ処理場の周辺に来ると暁美ほむらは地面がむき出しになっている場所を探し出し、そこで石を拾い始めた。
彼女が拾っているのはこのロワ会場で地面が露出してる場所ならどこでも現地調達できる『投げやすい石』だ。
メタルマックス3よりの出展で、拾えば投げることができ、当てれば微量ながらダメージにもなる。
とはいえただで拾えるだけあって効果は弱い。弱Pで相殺されるし、ダッシュ中の相手にはのけぞりが発生しない。
それをどうしてか、彼女はただたんたんと地面を調べては拾い続ける。
「ふぅ……」
99個の投げやすい石をようやく集めると暁美ほむらはうっすらと額に浮かんだ汗を袖でぬぐった。
彼女はこの99個の石ころを武器にしようと考えているのだろうか? その答えは否だ。この石ころには全く別の使い道がある。
「えいっ」
暁美ほむらは99個の内からひとつを目の前の壁に向かって投げつける。この時点で彼女の手元の石ころは98個になった。
そして彼女はすぐさま地面にしゃがむと更にひとつの石ころを見つけて拾う。これで再び彼女の手元の石ころは99個になった。
ちょうどそこに壁に跳ね返った石ころが戻ってくる。暁美ほむらはそれをキャッチした。
この瞬間、投げやすい石の数が『投げやすい石x99』から『投げやすい石x00』に変化した。オーバーフローが起きたのだ。
暁美ほむらは00個になった投げやすい石を一度、道具欄に戻す。
この時の表示はまだ『投げやすい石x00』のままだが、再び装備として取り出すとそれは『Dy3Yt_0x00』というアイテムに変わっていた。
メモリに想定していない値が入っていたため、ロードする際に参照するアドレスがズレてしまったのだ。
そして通常ゲーム内で入手できるアイテムのうち一番IDの若い『投げやすい石』から更にIDがひとつ若返った『Dy3Yt_0x00』は
通常のゲームプレイでは絶対入手することのない特殊なアイテムである。
「さてと……」
『Dy3Yt_0x00』を手にすると暁美ほむらはそれを投げ、続けて時間停止した。
これで彼女の目の前に空中で静止した『Dy3Yt_0x00』があることになる。そのグラフィックは前衛的なオブジェといった感じだ。
「ねぇ、そこのあなた」
暁美ほむらは『Dy3Yt_0x00』に向かって話しかける。その内容はどうでもよかった。ただ話しかけるという行動だけが必要なのだ。
「 ん♪dじい」
返答する『Dy3Yt_0x00』の言葉の意味はわからない。だが手順だけはわかっていたので暁美ほむらは「はい」とだけ答える。
すると彼女の周囲にいくつかの英数字と数値の上下するゲージが表示された。
一見ではこれがなにか知らない人には理解できないだろう。これらの英数字の羅列と変動するゲージはデバック表示である。
彼女はこれを呼び出すために投げやすい石を99個(正確には100個)集めていたのだ。
「 」
暁美ほむらが口をぱくぱくと開くと彼女の身体の上にワイヤーフレームの立方体がいくつか浮かぶ。
当たり判定だ。もう一度口をぱくぱくと開くと、彼女は接触判定だけを残して自分自身のやられ判定や投げられ判定を残らずオフにした。
これで実質的に彼女は誰からもやられなくなったわけだが、念のためにと体力ゲージと必殺技ゲージも最大値で固定しておく。
「……………………」
時の止まった世界で暁美ほむらは考える。どうすればこの世界を壊せるのか。
このゲームを今すぐシャットアウトすればいいだろうか?
違う。可能ではあるが、そんなことをしても再起動されればおしまいだ。なにもかもが元通りになるだけで事態の解決にはならない。
このゲームのデータそのものを現実世界から抹消しないといけない。しかしゲームの中から果たしてそんなことが可能なのか。
普通に考えれば不可能だろう。
例えば負荷を最大に増してこのゲームの基盤を熱でショートさせた破壊するとしよう。しかしそれでもゲームのデータは別に残っている。
このゲームを作ったスタッフがまたROMを焼いて新しく筐体にセットすればまた元通りになってしまう。
世界を終わらせるには、このゲームの中からどうにかして本社にあるであろうマスターデータを破壊しなくてはいけない。
普通なら不可能だ。だがひとつだけ方法があった。
この『バトル・ロワイアル(仮)』はそもそもとして4桁のプレイヤーの同時接続を最終目的としてビルドアップされている。
では果たして1000人以上ものプレイヤーが一同に介してプレイすることは可能か? 無論、不可能だ。それはネットワークで実現する。
つまり、このゲームは最終的にワールドワイドウェブで全世界と接続する仕様となっているのだ。
とはいえ、現在のこのゲームはあくまでローカルだ。ひとつの場所に集められた筐体同士だけがケーブルでつながってるにすぎない。
では、ウェブを通じてマスターデータにアクセスするというもくろみは無意味なものだろうか? 実はそうではない。
現在ローカルで起動しているこのゲームだが、1度だけウェブを通じて本社サーバにアクセスするタイミングが存在している。
それはこのゲームの決着した瞬間だ。本社サーバはライブモニタに表示される全国集計データを収集/配信する中枢でもある。
なので今回のロケテストでもこの機能をテストするためにラインがつながれこの機能は生きているのだ。
つまり、このゲームで優勝するか、あるいは対主催エンドを起こすことでその瞬間、暁美ほむらに世界崩壊のチャンスが生まれる。
ゲームの結果は即座に本社サーバに送信され取り込まれる。
そこにマスターデータに感染するデータを流し込めば、最終的にそこからオンラインでつながる社内バックアップも含めて破壊できるはずだ。
暁美ほむらはデバックからメモリを参照して現状を確認する。どうやらいつの間にかにゲームはもう大詰めのようだ。
優勝エンドにせよ対主催エンドにせよ、その時は近いだろう。ほむらはそのどちらであっても対応できるよう、メモリをいじる。
優勝エンドの条件は言うまでもないが、対主催エンドの条件は隠し設定だけに少し条件は難しい。
その条件は『首輪の解除』『ボスキャラの撃破』『仲間が3人以上』『主催者キャラの撃破あるいは船を使っての脱出』だ。
首輪の解除は問題ない。暁美ほむらはステータスをいじり、『首輪:01』を『首輪:00』にする。これで首輪は綺麗に消えた。
ボスキャラとは原作でいう桐山ポジのキャラクターのことだ。
このゲームの場合、参加者の中にいるCPU専用かつマーダー固定のいくつかのキャラを指す。
現在その中で残っているのはゾウナのみ。これは最後に処理する。
仲間が3人以上という点に関してはすでに暁美ほむらはクリアしている。アンバーと男アーティストが仲間だった。一度仲間になればいい。
そして通常は18時間経過しないと出現しない船もフラグを直接いじって出現させる。『船出現:00』から『船出現:01』へ。
さて最後においていたゾウナの処理を暁美ほむらは始める。幸いゾウナは条件型のボスである。直接会う必要はない。
まずはメモリをいじって『時の鍵』を手元に出す。本来はゾウナがランダムで落とすものだがそんなことかまいはしない。
「………………ふぅ」
ここでようやく時間停止を解除すると、暁美ほむらは近くにあるゴミ箱に向けて何度も体当たりした。
ガッガッガッガッガッガッガッガッ……と音を立てて小刻みに体当たりをしていると少しずつほむらの身体がゴミ箱にめり込んで行く。
と、ふいに彼女の姿がゴミ箱の向こうへとすり抜けて消えてしまった。
次の瞬間、暁美ほむらの姿は会場の南東の端に位置する神殿の中にあった。彼女はそこにある鍵穴に躊躇なく時の鍵を挿す。
これで会場のどこかにいるゾウナが死んだことだろう。一応メモリ上で確認すると、彼女は神殿を歩いて出た。
「さて、これからだわ」
後は船のあるD-1まで移動して船に乗るだけだ。
しかし時間停止を解除し、ワープもしてしまったので、もう手元に『Dy3Yt_0x00』はない。
そしてデバックモードは一度ゲーム内で出して消してしまうとその操作の内容に関わらずゲームを始めから再開するまで使用できない。
つまり、もうデバックモードは使用できない。
「けれど、問題はないわ」
問題はない。デバックモードで起こした結果はそのままだ。
暁美ほむらは現在『やられ判定オフ』『体力/必殺技ゲージ固定』状態である。なにがあってももう敗退する要素はない。
「この世界を破壊する」
そして彼女は歩き出した。全ての運命に終焉をもたらすために。
【J-9 神殿/一日目 深夜】
【暁美ほむら@魔法少女おりこマギカ】
[状態]:<分身>を手にした<全開>なる<少女>は
. <歪み>を生み出す真なる<緑>と<知識>を宿し
. <現世>と<偽世>を統べる<救世主>となる@新安価ロワイアル
. 『やられ判定オフ』『体力/必殺技ゲージ固定』
[装備]:表記する必要など無い
[道具]:同上
[思考・状況]:ゲーム「バトル・ロワイアル」の破壊。現在はD-1の港へと向かっている。
※織莉子撃破直後、まどかの死を認識する前からの参戦です
※ヴァンパイアセイヴァーネタにアクセスし、様々な共通点をこじつけることで、
「鹿目まどか風アンリミテッド暁美ほむら」になりました。
外見は暁美ほむらですが、頭髪が桃色に変わっていることとまどかのリボンを所持しています。
MARVELvsCAPCOMとは違い、意識はほむらが勝っているようです。
※その影響を受けメタ知識の獲得及び「これがゲームである」ということなどを把握しました。
また「ほむら」が関連すれば、ある程度の事はできるようです。
※領域「アンバー」へのアクセスを使えば、どんなことでも出来るかもしれません。
現状判明している能力は以下の通りです。
・時間干渉:生前のアンバー同様、万能に近い時間干渉を可能とする。リスクはない
・一撃必殺技回避:究極奥義として発動。一撃必殺技を受けても、体力を1ドット残せる
・一撃必殺技:魔法の弓矢を使った攻撃。技の詳細は後続の書き手さんにお任せします
・自己再生:戦闘終了後、瞬時に体力ゲージを回復する
最終更新:2013年01月24日 04:27