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この世の果てで少女は唄う ◆25KJkkH23Y




きっとそれは蛇足で、語られないでもいい物語で、でも、それでも。


語ったっていいじゃない、クソゲーだもの。



▽


少女がいました。
滅び行く世界の中で、いいえ、光に還りゆく世界の中で、一人の少女がいました。

「全部、終わっちゃったね、クイッキー」
「クイッキキキ……」
「全部、全部、終わったよ」

少女の名はメルディ。
かつてこの世界で生き、自我を奪われ、何も知らない内に死んだはずの少女でした。
でも彼女はここにいます。
今この時を、生きています。
何故かとは問うまでもありません。
真の極光術は誰かを、大切な人を護るための力です。
戦いを終わらせる力はなんて、そのおまけに過ぎません。
だから、もし、リッドが“原作再現”だったのなら。
どこまでも、“原作再現”されていたのなら。
 -紡がれし光の波動- インフィニティ・リヴァイヴァーも、原作通り、“仲間のHPを全回復し、戦闘不能も回復していないとおかしいのです”。
これは、ただそれだけのお話。
少女が極光の光に包まれ目を覚ました時、誰もが、QMZとGO1の戦いに魅了されていました。
ほむらも万能に近い力を持っていたが故に、メルディを死んだと認識しており、意識より外していました。
術者であるリッドは気付いても良かったのですが、そもそも彼はメルディが一度死んでいたことも知りません。
きっと彼は、メルディが生きているとか死んでいるとか、そんなこと、気にもしないで、考えもしないで、ただ護るために、生きるために、最後の戦いに赴いたのでしょう。

『ファラやメルディ達と一緒に、何でもない平凡な人生を"生"き続けたい』

その願いを叶えるために。

「ワイール、リッドらしいな」

少女はそのことを知っていました。
少女は全てを知っていました。
この戦いで起きたことを全て。人知れず行われていた戦いも全て。
ほむらと、ドラムカンの二人以外から忘れられたはずのアンバーのことさえも。
全部、全部、全部、知っていました。

それは、死亡判定を覆したからかもしれません。
或いは、KAKINという行為によりリアルタイムで外の情報を何度もインストールされたからかもしれません。
もしかしたら、領域アンバーへのアクセスにて、まっさきにアクセスされたのが「テイルズ・オブ・エターニア」だからかもしれません。
同じエターニアの領域を使用していたリッドが全てを知り、全ての束縛から逃れ自由になった、その影響もあったのかもしれません。

全部が全部可能性のお話で、でも、事実として少女は、目を覚ました時、全てを知っていたのです。
全てを知って、それでも少女は。
真の極光に対する闇の極光、全てを滅ぼす力の資格を持つ少女は。
誰よりも憎しみを知る少女は。
リッドと同じで、いいえ、リッド以上に。
誰も、憎むことはしませんでした。
元凶であるノアさえも憎みませんでした。

「ありがとな」

少女のうちにあったのは感謝でした。
今、少女は幸せでした。
確かに辛いこともあったけど、でも、少女は、大好きな人に囲まれて、護りたい世界ができて、今、とても、幸せでした。
だからもし、彼女を“作った”という存在がいるのなら。
今、ここで、こうして幸せを感じる自分を描いた存在がいるのなら。
そこにいて欲しいと、このゲームへの登場を願った人たちがいるのなら。
まず何よりも、この言葉を、伝えたいのです。

「みんな、みんな、ありがとな。今は、メルディは、幸せだからありがと言うよ。
 たくさんの、おとうさんとおかあさんに、いっぱい、いっぱい、ありがと言うよ」

その上でもう1つ、もう1つだけと、少女は言葉を続けます。

「きっと、この子も、喜んでる。メルディと一緒で、いっぱいいっぱい、ありがとって、言いたがってる」

少女の言うこの子、それは彼女の膝で気持ちよさそうに丸まっているクイッキー……ではありません。
クイッキーも少女と想いは同じくしているでしょうが、今少女が代わりに語っているのは、もっと別の存在からの感謝の言葉なのです。

「名前、ちゃんと付けてもらう前に、否定された命だけど。でも、メルディ、分かる。この子に、ネレイド、いない」

メルディの言うこの子、それは壊れゆく世界そのものでした。
人類抹殺に適したプログラムを生み出すための舞台として用意され、今、役目を果たすこともなく滅びゆこうとしている“バトル・ロワイアル(仮)”でした。

でも、本当に、そうでしょうか。
バトル・ロワイアル(仮)は、ノアの目的のために生み出されたただそれだけのための機械だったのでしょうか。
ただそれだけのための機械に、ここまで過剰な原作再現や、無茶苦茶な課金システム、崩壊しまくりなゲームバランスといった“無駄”が生まれるでしょうか。

答えは“否”です。
断じて否です。
そんな無駄を許すなど、ちっともスーパーコンピュータらしくありません。
だったら、そう、この機械には。
人類を滅ぼす、それ以外の“何か”が込められていたのです。
“何か”とは“何か”。
言うまでもありません。
この機械は“ゲーム”なのです。
“人間を楽しませる”、そのために作られた機械なのです。
そして同時に、この機械は“二次創作”です。
そこにはスタッフの、そして遊ぶプレイヤーたちの、原作への“愛”が込められているのです。

「おかしな話だと思うか?」

ええ、それはおかしな話なのでしょう。
人間たちを釣るために、そして、人類抹殺のプログラムを作るに辺り無から設定するよりも既存の物語の人物を流用したほうがいい。
そのような機械的判断で作られたはずのゲームに、何故、愛が込められているのか。
作品だけでなく、“アークシステム”の二次創作なんていうお遊びまでなされていたのか。
そう疑問に思う人もいるかも知れません。

けど、少女には分かるのです。

「おかしくないよ。だってこの子は、人間を憎んだノアだけの子どもじゃないよ」

いいえ、メルディ以上に、あなたたちなら、分かるのではないでしょうか。
だって、このゲーム機の元になったのは、

「みんなが大好きで、みんなを大好きな、そんなゲームの子どもでもあるよ!」

あなたたちが愛して、あなたたちを愛した“AC北斗の拳”なのだから。

「これも一つのフリンジな。人間を大好きな機械と、人間が大嫌いな機械のフリンジ」

少女は笑顔を浮かべました。
フリンジ――それは異なる属性の晶霊同士を干渉させ、新たな晶霊術を発生させる技術のことです。
なるほど、言い得て妙かもしれません。
人間を大好きな機械と、人間が大嫌いな機械。
その2つをフリンジして生まれた新しい機械が、理不尽なまでにクソゲーで、でも、人々を熱く熱狂させたバトル・ロワイアル(仮)だったのです。

「だからね、みんな。1つだけ、1つだけお願いがあるよ」

ゲームの基盤に使われている鉱石、そこに宿っている生まれたばかりの“電脳の晶霊”をクレーメルケイジに宿して掲げ、少女は語りかけます。

「この子のこと、嫌いにならないで欲しいよ」

全てのデータが消え逝く中で、自身もまたマスターデータへと還りながらも、

「この子は永遠になれなかった。生まれてすぐに、みんなと、お別れになっちゃう」

この記憶だけは残るようにと、これまであったことを拙いながらも文章にして、“電脳の晶霊”の力を借りて、外の世界へと送り出します。

「でも、別れは終わりじゃないよ。とこしえに想うことこそ共にあることだよ」

きっとどこかの掲示板に、

「テイルズ・オブ・モーメント(刹那と思い出のバトルロワイアル)」

誰かの想い出に届くと信じて。

「今メルディがつけた、仮なんかじゃない、この子の名前。時々でいいから思い出してあげて」

あなたたちが望んだようなゲームではなかったかもしれないけれど、少しでも楽しいと感じてくれたのなら。

「ん、じゃあそろそろ、メルディも、行くよ。いっぱいいっぱい頑張ってくれたリッドを、迎えてあげなきゃだから」

どうか、たまにでもいいから、このゲームの――私のことを思い出してください。

「バイバ、みんな!」

それでは皆さん、さようなら、どうかお元気で。
私はクソゲーだったかもしれませんが、それでも。
生まれてきて楽しかったです。
愛されているキャラクターたちと一緒にいれて幸せでした。
私に一喜一憂してくれるみなさんのことが、本当に、大好きでした――プツン


【バトル・ロワイアル(仮) クラッシュ】
【メルディ 生還】
【テイルズ・オブ・モーメント あなたたちの心の中に】


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最終更新:2013年08月26日 04:50