サヨナラは言わないさ ◆Vj6e1anjAc
誰もがハッピーエンドには終われない。
「納得がいかないわ」
AIだって愚痴りたい。
◆
光の中に消えていく世界を、赤い女が見上げていた。
黒い男がその脇に立ち、白い男はそれを見ていた。
「まぁ、確かに俺も不服は不服だ。キャシャーンと決着をつけるどころか、顔すら見られずに負けたのだからな」
黒い男・ディオは言う。
長年追いかけ続けた宿敵と、決着をつけられなかったことが不服だと。
自らの生きる意味にすらもなっていた、宿命の兄弟との戦いを、終えることができなかったのが無念だと。
「そんなことじゃないのよ」
しかし、赤い女・レダは、首を横に振って否定する。
「そんなこと? それ以上に何があるというんだ」
「ディオ、貴方には聞こえなかったの? 『キャシャーンってこんなのだったっけ』という、外野の連中の心ない声が」
「……は? お前、そんな話を俺に振るのか?」
ディオは一気に呆れ果てたが、意味を理解していないわけではない。
度重なるデータの入れ替わりが、アンバー消滅に伴うバグに影響し、死亡したキャラのデータがプールされているスペースにも、ほむら達の記憶が書き込まれたからだ。
故に彼らは、ゲームのAIの枠を超え、こんなメタな会話をしていたのである。
「そんなじゃないでしょう! 見なさい、世を取り巻く惨状を!
タツノコ様制作でない私達は、タツノコVSカプコンにも参戦できず、タツノコ劇場の配信からもあぶれ!
原作知名度に乏しい私達にとって、恐らくはこのバトルロワイアル(仮)が、最後のアピールチャンスだったのよ!」
「いや、そんなことはどうでも――」
「ああ……嘆かわしいッ!」
ギリギリと奥歯を軋ませながら、レダは身をよじって悶え苦しむ。
思えば彼女らの原作は、何もかもが不幸だった。
放送枠の少なさから、三大都市圏以外のほぼ全ての人間には、そもそも見ることすら許されず。
よしんば視聴できたとしても、人を選び過ぎる作風は、多くの視聴者を遠ざけていた。
それがこのゲームがきっかけで、一気に打開できるのでは――そう思った矢先に、このザマだ。
……いやまぁ、実際、レダがメタ視点の知識を得たこと自体は、ほとんど一瞬前のことだったんだけども。
「せっかく掴んだ、原作を世に広めるチャンスが、こんなところで終わってしまうだなんて……!」
「だから! ……ええい、鬱陶しい。キャシャーン!」
「え?」
ここに来てディオは踵を返し、白い男・キャシャーンへと向かう。
完全に蚊帳の外だったキャシャーンだったが、突然の名指しの指名により、思わず目を丸くすることになった。
そんな話をしている暇があるなら、ディオもさっさと決着をつければいいのに、とも思うが。
「お前も何か言え! レダがうるさくて仕方がない」
「そんなことを言われても……」
「早くしろ!」
「その……原作が不遇だというのは、何も僕達だけではないんだ。織莉子達だって苦労をs」
「あ、私達は2月から番外編があるんでこれで^^」
「そんな!」
渾身のドヤ顔をかましながら、白い少女が逃げ去っていく。それはもう、ダカダカ、って具合に。
彼女らの物語は終わらない。
2月10日発売の、まんがタイムきららマギカでは、新たな戦いが待ち受けているのだ。
隔月発売ということを考えれば、通算半年にも渡る、長い戦いの幕開けである。
そんなことは知る由もなかったが、それでもどうしてもキャシャーンには、彼女を止めることはかなわなかった。
結局、全てが完結した彼らとは、住む世界が違ったのだ。
「………」
頼みの綱をなくしたキャシャーンは、しばしの間、言葉に迷う。
キーキーうるさいヒステリー女など、放っておけばいいのかもしれない。
それでも、彼女も、そして自分も、もうすぐ消えてしまうのだ。
消えゆく命の最後の記憶が、そんな嘆きと悲しみだというのは、少々残酷だと思えた。
「……心配はいらない」
レダ達の元へ歩み寄りながら、キャシャーンは言う。
「アニメは、1人で作っているものじゃない。
関わったたくさんのスタッフの誰かが、別のどこかで活躍してくれれば、誰かがそんな作品を見て、僕達を思い出すかもしれない」
「キャシャーン……」
「永遠なんてものはない……それでも、命は尽きて終わりじゃない。
僕達を思い返す何かは……僕達の存在を受け継いだ命は、必ず、どこかに芽吹いているはずだ」
それが自分達の生まれた、最初の意味。
命を繋いで育むことが、自分達に託された願いだと。
きっとそれは自分達には、永遠に叶えられないかもしれない。
それでも、だからこそ願いたい。
せめて自分達以外の何物かには、その力は宿されているのだと。
「キャシャーン Sins」という作品自体は、決して終わってはいないのだと。
「だから――」
だから、言おう。
僕達はこの言葉を言おう。
消えゆく自分達の存在を、誰かに思い出してもらうために。
どんな些細なきっかけでもいい。何かのはずみで、自分達の元へと、辿り着いてもらえるように。
世界を塗り潰す光の中、キャシャーンは天を仰ぎ、高らかに言った。
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【聖闘士星矢Ω 次回作には参戦するかもしれないし、しないかもしれない】
最終更新:2013年01月26日 07:43