A journey to the stars... ◆Vj6e1anjAc
ざざぁん、と響く波の音が、胸の奥へとしみ込んでいく。
波打ち際に蠢いているのは、黒く巨大な魔女の影だ。
呉キリカから生じた魔女。
数多のマネキンを組み合わせたような、歪で不気味な黒い魔女。
「そう」
その傍らに寄り添うように、美国織莉子はそこにいた。
キャシャーンにクソ煽りをぶちかまし、ダカダカと逃走した織莉子は、今は魔女の傍らにいた。
「もう、戻れないのね」
暁美ほむらとの戦いの中で、ジェムの濁りが限界を迎え、彼女は魔女を生じて逝った。
そのままキャラクターデータとして、サーバーに蓄積されていたキリカだったが、
どうやら魔女の姿のまま、元に戻れずにいたようだ。
そもそも彼女の魔女化自体、アンバーのバグによって生じたものなので、当然と言えば当然である。
「もう、貴方に触れることも……声を聞くことも、叶わないのね」
番外編が出ると浮かれていたところへ、これだ。
織莉子が受け入れるには、いささか残酷すぎる結末だった。
データの塊に過ぎないとはいえ、ようやく再会できたはずだった。
一度は諦めた願いが、実現したものと思っていた。
しかし、これはキリカではない。
同じ願いを引き継いでいても、キリカそのものの姿ではない。
その事実が、容赦なく、織莉子の胸を締め付ける。
「……いや、喋れるけど?」
「あらまぁ」
と思ったところへ、これだ。
思いっきり悲劇のムードだった織莉子も、思わずズッコケかけてしまった。
突然、この禍々しい姿のデカブツが、生前のキリカそのままの声で、織莉子に話しかけてきたのである。
「そんなに悲しい顔をしないでよ、織莉子。せっかく再会できたんだからさ」
「キリカ……? 貴方、本当にキリカなの?」
「みたいだよ。元の身体には戻れないけど……どうやら魔女の身体に、私の人格データが宿されてるみたいなんだ」
思わず感涙する流れのはずなのだが、どうにもそんな気にはなれない。
拍子抜けもいいところな展開に、織莉子は目をぱちくりさせることしかできなかった。
「そ、そう……でも、その姿のままだと、色々大変よね」
「そうだね。こんな巨大で物騒な身体じゃ、織莉子とろくに触れ合えないもの」
しゃきん、と鎌を展開しながら、キリカが身体をくねらせて言った。
織莉子を抱きしめるための腕はこれだし、身体は織莉子の何倍も大きい。
半端に触れ合おうとすれば、織莉子の身体はズタズタになった挙げ句、踏み潰されミンチになってしまうだろう。
「それなら、そうね。新しい身体を探しに行きましょうか」
「いいのかい? 私なんかの都合に付き合わせて」
「いいのよ。貴方と私は2人で1つ……貴方が幸せでいられることも、私の幸せの1つだから」
戸惑うキリカの声に対し、織莉子はにっこりと微笑む。
そうだ。それでいいのだ。
この子が笑ってくれるのであれば、私はまた立ち上がることができる。
この子と笑い合える日のためなら、無限の電脳の海の中でも、歩き続けることができる。
「だから、行きましょう。私達の幸せのために」
「……そうだね」
手と手を固く繋ぐように。
魔女の身体に、優しく触れて。
織莉子とキリカは、寄り添いながら、未来を探し求めて旅立った。
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.:::;::::;:::: .<.ひとは誰でも しあわせ捜す.>
_::::_ < 旅人のようなもの >
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(:::) ir--、 /\ ヽ、,‐'" i / ∠. 希望の星に めぐり逢うまで .>
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2人の少女の合唱をバックに、2人を載せた機関車は、光の彼方へ飛び去っていった。
【美国織莉子&呉キリカ 新たな身体を手に入れるための旅路へ】
最終更新:2013年01月28日 15:38