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愛の唄歌うよ ◆P2O1FPP.Gg



ゲーム業界が長年培ってきた技術を結集させ、精巧に作りこまれたバトルフィールド。
風が吹く。熱もある。耳朶を打つ音も、鼻孔をくすぐる匂いも、現実のそれとまったく差異はない。
作られたのは環境だけではない。その中で動く人物たちもまた、この『ゲーム』の仕掛け人によって生み出された人造物。
オリジナルと寸分違わない肉体。そして精神。しかしそれは、あくまで複製に過ぎないのだ。
彼らは自分が作りものであると知らない。それは、見ようによっては哀れで滑稽であるかもしれない。
だが――だが。
今たしかに彼らは、この空間で、生きている。


二人の戦士が向かい合う。
対峙したまま、二人は動かない。相手を値踏みするように、視線を交錯させる。
二人が止まっていたのは、時間にすれば数分でしかない。
しかしもしここに二人を見守る者がいたならば、その者にとって数分は数時間とも感じられただろう。
それだけの緊張感。一触即発の空気が、二人の間には漂っていた。

最初の動きは、唇の動き。まずは会話が発生する。
「私は呉キリカ。キミは、コレについて何か知ってる?」
先に口を開いたのはキリカと名乗った少女。
全身にまとう衣装は黒。どこかふわりとした印象の服装は、しかし彼女の持つ雰囲気にはそぐわない。
彼女の手に握られている鋭利な爪のほうが、より彼女を象徴していた。
触れたもの全てを傷つけてしまう危うさが、彼女の全身からにじみ出ていた。

「ギャリック=ライダー。オレも何が起きているのか知らないナ」
やれやれと言わんばかりに肩をすくめる男。
「ダガ、殺しあえと言われてハイソウデスカと頷けるほど素直な性格でもナイ」
と、ここで男は改めてキリカをその眼光で睨みつけ――そして、臨戦態勢の構えを取った。

「言ってることとやってることが違うんじゃないかな――なーんて、そんなことは言わないよ。
 漏れちゃってたか。うん、そうだよね。さすがに分かっちゃうよねぇ」
「フッ、アレだけの殺気を撒き散らしておいてシラを切るようなヤツではなかったカ。
 ――悪いガ、お前はココで止める。殺シはしなイ。ダガ、動けないくらいには痛めつけさせてもらうゾ」
「出来ると思ってるの?」
「アア、やるサ」

次の瞬間。両者ともに、動き出す。
爪。爪。爪。キリカの爪がギャリックの四肢を裂こうと直線の軌跡を描く。
人の身体を捨てることで得た力。変わることを願った少女の、新しい力。
暗闇の中、煌々と閃く爪撃。
対するギャリックが放つのは、自らの脚で描く真空の牙。
二人きりの家族を、愛する妹を守るために命の危機に何度も晒されながら得た力だ。
爪と牙は宙でぶつかり合い、相殺し、消滅する。

「ハハッ、上手いことやるもんだねぇ。だったらこれは――どうかな!?」

キリカは高らかに笑いながら、爪の数をさらに倍へと増やし――そしてギャリックの胸元へと飛び込む。
その機動は風の様に速い。しかし、速さと引き替えになったのは複雑な軌道だ。
キリカは一直線にギャリックへと向かう。愚直、といっていい動きを歴戦の戦士であるギャリックは見逃さない。
(ギリギリまで引きつけテ――叩き落とス!)
動きさえ見切ることが出来れば迎撃は容易い。
この初速と距離ならば、十分に間に合うはずだ――その思考は、衝撃によって途切れた。
(ナ――!?)
混乱醒めやらぬまま噴き出す血飛沫。既にそれは致命的な傷。

「あーあ、結局キミもそこらの魔法少女と変わらないか。
 大口を叩くなら、私のレコードくらい更新して欲しかったね」

ギャリックが十全を尽くせていれば、こんなにも呆気無く決着が着くことはなかっただろう。
キリカの速度は、ギャリックを置き去りにした。
これがキリカの持つ力――自分以外の全ての速度を低下させる能力だ。
行動すら始まらない。思考さえも終わらせないうちに。
全てが終わってしまっていた。

          て   / ,,-",-''i|   ̄|i''-、  ヾ   {
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                        ↑
                    このへんにかみ

「……派手な花火だ。織莉子も見てるかなぁ」

非常事態に対しても至って呑気に、世界で唯一心を通じ合わせた相手のことを思いながらキリカはその場を離れようとした。
「待、テ……」
しかし、引き止める声があった。もはや引き止める力は残っていない。か細い声をわずかに出すだけ。
「お前ハ……」
「ああ、全員殺すよ。織莉子以外の全てを。織莉子以外の世界全てを、敵に回してもね」
「世界を敵に回すカ……フッ、お前も、昔のオレと同じなんだナ」
「……一緒にされるのは心外だな。キミが、私と織莉子の何を知ってるって言うんだい?」
「知らないサ。ダガ、オレにも世界を敵に回してでも守りたい存在があっタ」
ごふり、と血を吐きながらギャリックは続ける。
「ダガナ、あるときその考えは変わっタ。一人の大馬鹿ヤロウのせいでナ」
「……」
「世界には、愛すべき存在が大勢いル。守らなければいけないヤツらがいル。それに気付かされたんダ」
「……ッ」
「お前も、気付けるはずダ……」

「くだらない」

「くだらない……くだらない、くだらない、くだらないよッ!」

「変われる? ああ、私は変わったんだよ。一人では何も出来ない世界。
 それが嫌で嫌でしょうがなかった。だから……私は変わることを願ったんだッ!」

「変わった私が望んだのが……私と織莉子の世界だッ! お前に、お前に何が分かるッ!」

「世界は私たちに優しくなんかないかもしれない。でも私は、織莉子に優しくすることができる」

「何があろうと、私が私であろうとする限り、私は織莉子を守り続ける」

「それを、なんというか知ってるかい?」

「世界はそれを、愛と呼ぶんだよ」

キリカの叫びに、もうギャリックは何も返さない。


【ギャリック=ライダー@GO DA GUN 死亡】


「ああ……ムシャクシャするなぁ……」

たとえここがゲームの世界であっても。
呉キリカというキャラクター(個性)は、現実のそれとなんら変わりはなかった。
彼女は愛を口にして、愛を実行する。
彼女がここで、生きている限り。


【E-7/一日目 深夜】

【呉キリカ@魔法少女おりこマギカ】
[状態]:体力ゲージ満タン
[装備]:
[道具]:支給品不明
[思考・状況]織莉子以外全員殺すよ


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最終更新:2013年01月21日 06:04