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伊達でクールな男の世界 ◆Vj6e1anjAc




                            / '" ‐- 、 `丶、
                        _,∠ '′       ヽ   '.
                     /    ,、         し'ト、}
                         ′  |`'ノヽ }、 ト、 }  从 ヘ
                     {   j!   jノヽ斗 jハノr ヽ 冫     すまないが、煙草をくれないか?
                    い l从■■■■■   ) j}(      火は持っているんだがね。
                         ノ{ {ヽ■■■■■   rく ,ゝ
                        い)ヘ  }         } ハ} }
                           ' └-   ,. ィ  /  v
                            ヘ‘ー= '′ ,.'  }  ` 、─────────┐ 、
                          ,. '′ 、ヽ、 _/.:. .′    `  .///////////////}||ll\
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◆

 エージェント・ノーベンバー11が、川辺で最初に会ったのは、随分と不機嫌そうな男だった。
「いや、すまないね。一応着替えは見つけていたんだが」
「だったら先に着ておけ」
 軽口を叩いてもこの通りだ。
 全身黒ずくめに銀髪の男――ディオと名乗った青年は、憮然とした表情でそう返した。
 まぁ確かに今回の件は、我ながら、若干無礼が過ぎるとも思ったが。
「ともあれ、ありがとう。これは有効に使わせてもらうよ」
 ツナギ姿の左手で、煙草の箱を持ち上げながら言った。
 ちなみに、今身にまとっているツナギは、そのへんの建物から拝借したものだ。
 日本の事情にはあまり詳しくないが、どうやら配管工か何かの事務所があったらしい。
「そんなものを美味いと思うのか、人間は」
 眉根をしかめながら、ディオが問う。
 彼から受け取った煙草の箱は、既に封が切られていた。
 どうやらそれが何なのか、前もって調べようとしていたらしい。
 このご時世で、かつその歳で、煙草を全く知らないというのも、奇妙な話だとは思ったが。
「とんでもない。こんなに不味いものも滅多にないよ。それに身体にもとても悪い」
 ノーベンバーは肩を竦めると、箱から一本の煙草を取り出す。
「たとえば、この一本に含まれている、ジメチルニトロソワミンという成分」
 人差し指と中指で、目線の高さへと持ち上げる。
 死ぬほど嫌いな煙草だが、習慣というのは皮肉なもので、手つきは腹立たしいほどに様になっていた。
「これは人体に作用し、癌の発症を引き起こすものだ。
 世のスモーカー達は、大抵がこの成分のおかげで、肺をやられて死に至っている。
 ……ああ、ニコチンもよくないな。身体に悪いと知りながらも、煙草をやめられないのはこれのせいだ。
 依存性の高い成分で、一度身体が染まってしまうと、これなしでは集中が保てなくなる。
 もっとも、ニコチンの害はそれだけではないし、他にも有害な物質は――」

「そんなものはどうでもいい」
 どうやら、少し喋りすぎたようだ。
 ぴしゃりと遮るディオの声に、ノーベンバーは苦笑した。
 伊達男とは罪な生き物だ。達者な口が自慢だが、ときどき、どうでもいい話ですらも、こんな風に話し過ぎてしまう。
 確かに、煙草を吸わない彼にとっては、自分に無縁な害の話になど、まるで興味を持てないに違いない。
「そこまで分かっているのなら、最初から手を出さなければいい話だろうが」
「ごもっとも。だが私には、どうしてもそうせざるを得ない理由があってね――」
 言いながら、ディオの方へと歩み寄る。
 ここまでの位置取りは完璧だ。
 先に川岸にいたのはディオだった。
 煙草を彼から受け取る時も、自分から彼の傍へ近づいて行った。
 彼は水辺のその場所から、今までほとんど動いていない。
 ならば、一瞬で決することができる。
 この一手を繰り出すまでに、随分と無駄話をしてしまったが、
「――これがないと戦えないんだ」
 そろそろ、不毛な談笑も終わりにしよう。
「!」
 対応させる隙など与えなかった。
 最小限の動作で対象へ迫った。
 速やかに両脚に力を込め、漆黒の青年に向けて殺到。
 派手に飛び膝蹴りを食らわせ、背後の川へと叩き落とす。
 ばしゃん、と大きな水音が鳴った。自らもその直後に着地した。
「貴様……!」
 早いな、と内心で賞賛する。
 渾身の力を込めたつもりだったが、彼は瞬時に身を起こしていた。
 仰向けに倒れたはずの身体は、今にも立ち上がりそうだ。
 だが、それでも問題とはなり得ない。
 既に勝敗は決しているのだ。
 わざわざ飛び膝蹴りなどという、野蛮な攻撃を選んだのもそのためだった。
 ディオと共に跳んだノーベンバーは、既に川に着地している。
 金髪の男と銀髪の男が、流水を介して繋がっている。
「チェックだ」
 ノーベンバーがこの川に、右手を突っ込んだ時点で、ディオの詰みは確定していた。
 ぽう、と灯るは青白い光。
 闇夜を照らす淡色の青は、ランセルノプト放射光。
 異能の青の中心に、死を告げる赤星がぎらりと煌めく。
 契約者ノーベンバーの瞳が赤熱する時、世界の温度は掌握される。

「ッ――!?」
 訪れるのは絶対零度。
 全ての熱を奪われた、冷酷な死の統べる世界だ。
 偽りの星に定められた、ノーベンバーの持つ契約能力――それはその手に触れた水を、瞬時に凍結させるもの。
 冷気は川の流水を伝い、瞬時にディオへと肉薄する。
 彼が立ち上がった頃には、既に処刑は完了していた。
 濡れた衣服と肌を伝い、氷は身体を侵蝕していた。
 あとは野となれ山となれ。
 川の流れの中心に、小さな氷山が出来上がるまでには、さほど時間はかからなかった。
「……さて、と」
 ひとまず、これで1人は死んだ。
 氷に閉じ込められたディオを見やると、中腰の姿勢から身を起こす。
 左手に摘んでいた煙草は、着地の時に跳ね返った水を、もろに浴びてしまったようだ。
 これでは湿って使い物になるまい。あとでどこかに捨てようと思い、腰のポケットへとしまう。
 熱を奪い尽くした赤星は、役目を終えて闇へと溶けた。
 戦闘を終えたノーベンバーからは、既に光が消えていた。
「まぁ、人間ならこれには耐えられまい」
 ディオの五体はあますことなく、氷の内側へと封じられた。
 体表面の水分も、残らず凍結していることだろう。間違いなく、即死のダメージだ。
 ならば後に待っているのは、きつい戦後の一服だ。
 契約者と銘打たれた彼らには、契約の対価が存在する。
 能力を行使した後には、決められた行動を取らなければならない。
 ノーベンバー11にとっては、「喫煙」がまさにそれだったのだ。
(難儀なものだな)
 煙草を嫌う身でありながら、何故こんな対価を背負ってしまったのかと、己の運のなさを呪う。
 とはいえ、そこはさすがに慣れたものだ。
 動作には嫌悪感を滲ませることなく、手早く煙草を口に咥える。
 あとは支給されていたライターを使い、火を灯そうとしたのだが――
「……!?」
 その時だ。
 突如、ノーベンバーの口元に、強烈な違和感が襲いかかったのは。

「しまった……!」
 違う。
 これは煙草ではない。
 舌先から口腔に広がったのは、本来煙草には有り得ない味だ。
 これは。
 この味は。
 口の中を余すことなく侵略する、この甘ったるい味は。
「この味は……ココ――」
 ガキィーン! K.O. ウィーンディオォ

◆

 何が起こったのかを説明せねばなるまい。

 本来ノーベンバー11は、この後で煙草に火を灯し、契約の対価を払うはずだった。
 それで戦闘は滞りなく終わり、彼は次なる獲物を求めて、移動を開始するはずだった。
 合理性を重視する契約者にとって、この殺し合いを早期に終わらせるには、それが最善の判断だからだ。

 しかし、それは成らなかった。
 何故なら彼が持っていたのは、煙草ではなかったからだ。
 それはココアシガレット。
 ココア味のラムネ菓子を、あたかも煙草のような形にした駄菓子である。
 何の嫌がらせのつもりか、ディオに支給されたそれは、本物同様の紙で巻かれていた。
 故にノーベンバーですら、それを口に咥えるまで、正体に気付かなかったのだ。

 かくしてノーベンバー11は、契約対価の支払いに失敗した。
 絶対遵守すべき契約を、反故にしてしまったのだ。
 原作「DARKER THAN BLACK」では、契約対価を払えなかった場合、どのような結果を迎えるかは明言されていない。
 ここで想像力を働かせたのが、アークシステムワークスのクリエイターである。
 彼らはAC北斗の拳においても、抜群の冴えを見せつけた猛者達だ。
 この問題を解決するため、持ち前の想像力をフル回転させ臨んだ。
 何せ人の限界を超えた、トンデモ超能力を行使するための対価である。
 それを払えなかった以上は、相応の代償を背負わねばなるまい。
 結果として、本ゲームにおいて、彼らが導き出した結論は――


【ノーベンバー11@DARKER THAN BLACK‐黒の契約者‐ 死亡】


◆

(何が起きたというんだ……)
 実のところ、ディオはというと、未だ死には至っていなかった。
 何せ彼は人間ではない。それらしく作られたロボットである。
 結果として、ゲージは半分近く持って行かれたが、彼は氷の壁の中で、未だに命を保っていた。
(こんな経験は初めてだ)
 人間相手に不意を突かれ、蹴り飛ばされたところまではいい。
 だが、一体誰に想像できただろう。
 その後川に落とされた自分が、突然氷漬けにされるなどとは。
(……まぁいい。今は、これが溶けるのを待つだけだ)
 辛うじて一命を取り留めたが、それでもディオの全身は、分厚い氷の中にある。
 体表面まで凍てついた今、彼は指の一本どころか、眼球すら動かせない状態だ。
 どういうわけか、あの男は、追撃を仕掛けてくる気配を見せない。
 それならそれで、この氷が解けるのを待ち、そこから反撃を仕掛けるとしよう。
 何せ氷の温度よりも、気温や川の水温の方が、断然高くて当たり前なのだ。
 完全に溶け切るところまではいかずとも、ある程度脆くなってくれれば、内側から破壊することもできる。
(待っていろ、ノーベンバー……そしてキャシャーン)
 そうなれば、この失態も取り戻せる。
 氷の向こうで待っているはずの、あの金髪全裸男を殺してやれる。
 そしてその次はキャシャーンだ。同じく殺し合いに集められた、あの憎き兄弟機の番だ。
 今度こそこの場で奴を殺し、因縁に決着をつけてやる。
 当のノーベンバー11自身が、既に自滅していたことも知らず、ディオは虚空を見上げて待った。
 この胸の激情を爆発させる、その機会を待ち続けながら、ひたすらに憎悪を渦巻かせていた。


【H-7 川/一日目 深夜】

【ディオ】
[状態]:体力ゲージ45%、全身氷漬け
[装備]:不明
[道具]:不明
[基本方針]:キャシャーンと決着をつける
1:氷を砕けるようになるまで待つ。そしたらノーベンバーを殺す
※第6話終了後から、第13話開始前までの間からの参戦です
※ノーベンバー11が死亡していることに気付いていません

※H-7の川の上に、ノーベンバー11の死体、彼の支給品、ライター、ココアシガレットが落ちています


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最終更新:2013年01月21日 06:18