人狼の決意 - ～新人狼OnlineWiki～ | 新人狼wiki

人狼の決意

静かな山間の村に、二人の狼が暮らしていた。彼らは人狼の血を引く者で、夜な夜な姿を変える「変化能力」を持っていた。
狼の姿から人間の姿へ、あるいはその逆へと自由に変わる力だ。村人たちにはその正体を隠し、普段は穏やかな青年として暮らしていた。名をリュウとカイという。

二人は時折、変化能力を使って村人たちに軽い悪戯を仕掛けた。夜の森で怪しい影となって現れたり、畑の野菜を少しだけ持ち去ったり。だが、村人たちは彼らの悪戯を笑いものとして受け止め、リュウとカイもまた村人たちと笑い合い、共に暮らしていた。
村は平和で、夜の焚き火を囲む笑顔が絶えなかった。

ある春、村の畑が荒らされる事件が続いた。トウモロコシが根こそぎ倒され、ジャガイモが掘り起こされる。
村人たちの不安が高まる中、村の占い師である老婆ミラが立ち上がった。彼女は杖を振りかざし、厳かな声で宣言した。
「この村に災いをもたらしているのは、紛れもなく人狼だ！ 奴らを追放すれば、村に平和が戻る！」ミラの言葉は村人たちを動かした。誰もが狼の存在を恐れ、疑心暗鬼に陥った。

リュウとカイは弁明の機会すら与えられず、村の広場で追放を言い渡された。村人たちの冷たい視線の中、二人は荷物をまとめ、村を後にした。背後で聞こえるのは、かつての友たちの囁きと、ミラの勝ち誇った声だった。

追放されたリュウとカイは、村の外れの森で野宿を始めた。焚き火を囲み、僅かな食料を分け合いながら、二人で生き延びる術を模索した。だが、心は重かった。
自分たちが愛した村から追放された理由が、畑の荒らしと結びつけられたことに納得がいかなかった。
ある夜、森に一人の若者がふらりと現れた。村人の少年、ソウタだった。彼は目に涙を浮かべ、震える声で語り始めた。

「リュウ、カイ、聞いてくれ…。畑を荒らしていたのは、占い師のミラだったんだ。偶然、彼女が夜中に畑を荒らすところを見てしまった。自分の権威を高めるために、わざと村に混乱を起こして、狼のせいにしたんだ…！」
ソウタは続けた。彼がその事実を村人たちに伝えようとしたところ、ミラに「狂人」と呼ばれ、村から追放されたのだという。ソウタの声は悔しさで震えていた。「誰も俺の話を信じてくれなかった…。ミラの言葉が全てなんだ。あの村は、もう彼女のものだよ…」
リュウとカイは顔を見合わせた。胸の内に静かな怒りが燃え上がった。

リュウは拳を握りしめ、立ち上がった。「あの村は俺たちの家だ。ミラに奪わせはしない。」カイも頷き、鋭い目で焚き火を見つめた。「俺たちの変化能力を使えば、きっと村を取り戻せる。ソウタ、お前も力を貸してくれ。」ソウタは驚いた。「俺に…？ でも、俺には何の力もない…」
リュウは微笑み、ソウタの肩に手を置いた。「力は与えられるものじゃない。自分で掴むものだ。俺たちの変化能力を、お前に教える。」

その日から、三人は森の奥で修行を始めた。リュウとカイは、変化能力の極意をソウタに伝授した。最初は不器用だったソウタだが、日に日に上達し、やがて簡単な姿の変化を成功させるまでになった。狼の姿で走るソウタの目は、かつての怯えを失い、希望と決意に輝いていた。

ある朝、朝焼けが森を赤く染める中、三人は村を見下ろす丘に立った。リュウは風に髪をなびかせ、言った。「ミラの嘘を暴き、村に真実を取り戻す。俺たちの力で、必ず。」
カイが笑みを浮かべ、続けた。「あの村は、俺たちの家だ。誰も奪うことはできない。」
ソウタもまた、胸を張った。「俺も戦うよ。村のみんなに、本当のことを知ってほしい！」
三人は互いに頷き合い、朝日を浴びながら村へと続く道を歩み始めた。変化能力を携えた二人の狼と、一人の「狂人」。彼らの瞳には、希望と決意が燃えていた。

村を取り戻す戦いは、これから始まる――。