クワドの減少・クワドジャンパーの窮状

クワドの減少は、ソルトレイク五輪後~トリノ五輪の間に、じわじわと広がっていきました。

最近では、ロスで行われた世界選手権。
SPで1位につけていたブライアン・ジュベール、そして、4位のトマシュ・ヴェルネル。
この2人は、いわゆるクワドジャンパーです。
しかし、迎えたFPで、予想外の出来事が起きました。

SP1位のブライアン・ジュベールは、クワドを入れない構成の、
イヴェン・ライサチェクと、パトリック・チャンに逆転を許したのです。
また、SP4位のトマシュ・ヴェルネルも、クワド構成であったにも関わらず、順位を上げることができませんでした。
これは、クワドの歴史でも触れましたが、
クワドの基礎点が低すぎることから起こった逆転劇でした。

新採点により、クワドのような難度の高いジャンプは、ハイリスク・ローリターン扱いになってしまいました。

旧採点時には明確に違いがあった高難度ジャンプと低難度ジャンプに差が無くなったため、
低難度を数多く集めGOE(出来映えによる加点)を狙うことに選手たちが移行を始めました。

「どんなに綺麗に咲いてもカスミソウは普通のバラほど綺麗じゃない」

と言ったらわかりやすいでしょうか?
バラはクワド、カスミソウは低難度ジャンプのことです。


新採点の問題として、クワド以外の基礎点は上げていますが、クワドの基礎点は上がっていないのです。
よって、クワドは相変わらず基礎点が高いジャンプであることに変わりありませんが、
GOEによっては逆転されてしまう可能性の高い、選手にとっては負担の大きいジャンプとなってしまったのです。



1998長野五輪~2010バンクーバーまでの動画を用意致しました。


クワド全盛から、衰退までをご覧下さい。

また、旧採点から新採点へ変わったことにより、こなさなければいけないことが増え、体力が削られることにより、
選手たちの動きにダイナミックさが失われていく様子が手に取るようにわかるかと思います。


長野オリンピック(1998)

(演技構成)4T 3A-3T 3S 3A 3Lz 3F 3A-3T

 銀 FP エルヴィス・ストイコ(カナダ)
 (演技構成)4T 3T 3Lo 3A-3T 3A 3F 3S

 銅 FP フィリップ・キャンデロロ(フランス)
 (演技構成)3A-3T 3F 3T 3Lz 3Lo 3A 3S

●銅のキャンデロロはクワドを跳んでいないが、クワドを跳ばず観客を魅了するスケーティングという意味では、
 バンクーバーのジョニー・ウィアーと共通している。

世界選手権(2001)




●いわゆるヤグプル時代と呼ばれる時代に入った。
この二人がライバル関係にあり、切磋琢磨していたことにより、男子フィギュアのレベルが格段に上がったことは間違いない。

ソルトレイクシティオリンピック(2002)





●ゲーブルはクワドの王、アブトはロシアの3番手と言われた。
 今大会においてゲーブルは、3度のクワドを入れた構成であったが、ヤグディンとプルシェンコには届いていない。
 つまり、クワド全盛時代であっても、技術だけでは金メダルを得ることはできなかったのである。

●なお、1つのプログラムで4回転を3度成功させたのは、現在でもゲーブルを含めて世界で4人だけである。
 他の成功者は本田武史、張民、ブライアン・ジュベールのみ。
(『Cutting Edge』p.19、国際スケート連盟による2003年四大陸選手権レポート)。(Wikipediaより引用)

四大陸選手権(2003)


●メディアは小塚崇彦が日本人初クワドと報道しているが、それは間違いである。
 この時点で既に本田はクワドジャンパーとしての地位を確立させていた。

トリノオリンピック(2006)




世界選手権(2008)




●クワドが公式大会において認められるようになって初めてのクワドレスチャンピオン。
 銀メダルのブライアン・ジュベールが、クワドレスチャンピオンであるバトルに噛みつく一幕もあったほど、当時としては異例であった。
 旧採点システムであればジュベールが優勝していた可能性は否めない。
 ただし、この大会においては、バトル以外の選手が転倒など不調だったことも一因としてあり、
 一概にバンクーバーと比べることのできる大会ではないことを付け加えておく。

しかし、この大会を機に、クワドが少しずつ衰退しはじめ、クワドジャンパーが上位に食いこめないという、クワド軽視の風潮が広がり始めたことは事実である。 


エリック・ボンパール杯(2009)




世界選手権(2009)




バンクーバーオリンピック(2010)

 金 FP エヴァン・ライサチェク(アメリカ)


 銅 FP 高橋 大輔(日本)

ここまでご覧になった方は、どのようなご感想をお持ちになりましたか?
けして、旧採点を賛美する意図はありませんが、新採点に変更後、
スケーターたちの活き活きとしたスケーティングを見ることができなくなっているのは一目瞭然と思います。

窮屈で退屈、スポーツとしての誇りを失ったフィギュアスケートと、
選手たち自身が活き活きと、アスリートとしての道を追求していくことのできるフィギュアスケート、
あなただったら、どちらを見たいと思いますか?
最終更新:2010年04月17日 03:15
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