クワドレス世界王者の誕生は、バンクーバーで起こったことではありません。
その2年前、2008年の世界選手権において、クワドレスチャンピオン、ジェフリー・バトルが誕生しています。
ただし、この時は、今回のバンクーバーと違い、他の選手の不調もあり、あまり議論にはなりませんでした。
クワドにこだわりを持つ、ブライアン・ジュベールが、バトルに噛みつく一幕もありましたが、さして大きな問題もなく、この競技会は幕を閉じています。
そして、2010年、エヴァン・ライサチェクが、バンクーバーオリンピックにて金メダルを取りました。
五輪にて、クワドに挑戦しない金メダリストが誕生したのは、約20年ぶりのことです。
では、銀メダリストは大きな失敗を犯し、その位置なのでしょうか。
残念なことに、銀メダリストは、クワドをSP、FP共に成功させ、大きな失敗もなく、しかし銀メダルという順位におさまってしまったのです。
また、他のクワドジャンパー達の順位もふるいません。
クワドを二度跳び、着氷に成功したステファン・ランビエルも、4位という結果に終わっています。
このように、クワドの評価が、ジャッジにとって非常に低いものとなり果てているのです。
それに声を上げ続けているのが、ブライアン・ジュベール、ステファン・ランビエル、エフゲニー・プルシェンコ、引退した選手では、エルヴィス・ストイコなどです。
クワドの歴史でも触れたように、クワドジャンパー達は、命を削ってクワドに挑戦し続けています。
しかし、今回の金メダリスト、エヴァン・ライサチェクの跳んだジャンプの最高難度は、3A-2Tでした。
これは、女子の最高難度ジャンプと同じです。
3Aも割と難しいジャンプです。
というのは、アクセルジャンプというジャンプの種類自体が、一番難しいとされるジャンプであるからです。
特に3A-2Tは女子では非常に難度が高いものです。
バンクーバーでは浅田真央がこれを跳んでいますが、女子で跳べるのは彼女ただ一人です。
しかしながら、男子ではほとんどの選手が跳べているものである、男子としては難度の低いジャンプになります。
つまり、ライサチェクは、女子で難しいジャンプまでしか跳んでおらず、
男子としては難度の高いジャンプを一切跳んでいないのに、金メダルを得たということになります。
だからといって、決してライサチェクが、芸術や技術力の無い選手ではありません。
しかし、ジャッジが与えた点数は、果たして正しかったのか?
このようなジャッジになる採点方法は正しいのか?
また、クワドは決して、女子のトリプルアクセルのように、跳べる選手が極端に少ないジャンプではありません。
長野、ソルトレイクなどは、上位選手が必ず跳んでいたジャンプです。
どの選手も、ほぼクリーンに着氷していました。
ところが、現在、クワドに挑戦すらしない選手が増えているのです。
このままでは、クワドに挑戦せずとも、メダルを取れるという選手が続出する恐れがあります。
その時代が到来してしまうことを防ぐために、クワドの価値をもう一度考え直す必要があるのです。