「ゆっくりしていってね!!!あさだよ!!!」
布団の上でボスボス跳ね回るれいむが朝が来たことを知らせてくれる
「ゆっくりおきてね!!おなかすいたよ!!」
毎朝起こしてくれるのは良いがもう少し丁寧と言うか、別なやり方はないのだろうか
「はいはい、跳び跳ねるのはもう少し優しくして欲しいって何度も言ってるだろ?」
「ゆっくりはんせいしたよ!!ごはんにしようね!!」
せっかくの休みなのに仕事と同じ時間に起こされちゃたまらない
「きょうは『おはなみ』でしょ!?おるすばんはまかせてね!!」
朝食をれいむと共に済ませ花見会場に向かう
いきなりだが、俺はこの季節が一番好きだ
桜が町や、山を彩りみんなで楽しく飲めや歌えやのお祭り騒ぎ
そんなお祭り騒ぎが大好きだった
かくして今そのお祭り騒ぎの真っ只中に居る
休日を利用して職場の仲間と飲み会だ
毎日がこんなに楽しかったらどんなに良いことだろう
「おかえりなさい!!ごはんにする?おふとんにする?それとも、わ・た・し?」
「お布団で」
「おにーさんつれないねぇ・・・はずかしがらなくても」
そこまで聞いて部屋のドアを閉じる
今日は飲みすぎて頭が痛い
明日から仕事かぁ・・・
「ゆっくりしていってね!!!あさだよ!!!」
布団の上でボスボス跳ね回るれいむが今日も朝が来たことを知らせてくれる
「ゆっくりおきてね!!おなかすいたよ!!」
毎朝起こしてくれるのは良いがもう少し丁寧と言うか、別なやり方はないのだろうか
「はいはい、跳び跳ねるのはもう少し優しくして欲しいって何度も言ってるだろ?」
「ゆっくりはんせいしたよ!!だからごはんにしようね!!」
なんの変わりもない朝が来ていたはずだった
「きょうは『おはなみ』でしょ!?おるすばんはまかせてね!!」
花見?それなら昨日に済ませた筈だけだったが
「ゆっくりたのしんできてね!!」
れいむが言う通り花見にいってみると見知った顔がまたお祭り騒ぎをしていた
家に帰るとまたれいむのわけの分からない冗談
そして朝
何一つ変わらない朝
花見に行かなくても、どこか遠くの場所で寝ても、嫌がるれいむを箱に閉じ込めて物置の一番奥から出られないようにしても
変わらない朝がやって来る
しかし何回目かの花見の日、一つだけ変化が現れた
公園の外れの方の丘の木の下に誰か居たのだ
今まで意識したことはなかったがはじめて気がついた
もしまた明日あそこにいたら話しかけよう
そう思って今日もまた床につく
何一つ変わらない朝をさっさと済ませ今日はあの木の下へ
やっぱり居た
青い服を来た小さな女の子だった
この子もこのわけの分からない夢の住人なんだろうか
「こんな所でどうしたんだ?はぐれたのかな?」
「だいじょうぶだよ、人間じゃないから」
なんだこいつは?会話になってないぞ・・・
「わたしはゆっくりだから。名前はゆゆこ、ゆっこちゃんでいいよ」
どうやらこの女の子はゆっくりで名前は『ゆゆこ』と言うらしい
少し興味がわいた
もしかしたらここから出るきっかけになるかもしれない
そこで、もう少し話を聞いてみようと思った
「それでゆゆ・・・」
「むー・・・」
何でジト目なのさ、呼ばなきゃダメか?
「ゴホン・・・ゆっこちゃんはここで何を?」
「さがしもの」
「なら手伝ってあげようか?」
「でもみつからないとおもうよ」
「なんでだ?」
「なにさがしてるのかわかんないから・・・」
どういう事だろう
自分で探しているものが分からないなんて
「じゃあ、普段はどんなところを探しているんだ?」
「ここいがいには、いかないよ」
この桜の木の所から動かないで探しているというのか?
「それならここにあるんじゃないか?」
「そうだと思うんだけど、思いいだせないからずっとここにいるの」
『ずっとここにいる』ってことはここから動かないって訳か
「寂しくはないのか?」
「この桜はじぶんが咲くことをわすれちゃったんだよ。
何回かは咲きそうになったんだけど、満開にはならなかった
だから私といっしょ。だいじなことをどこかにおいてきちゃったもの同士
さみしくはないよ」
そうは言っているが言葉は弱々かった
やはり独りというというのは辛いのだろう
「なんにも覚えてないのか?」
「・・・うん」
「でもこの桜がさけばなにかおもいだせそうなきがして『咲きますように』ってがんかけしてるの」
「奇遇だな。俺もなんだこいつが咲いてくれないと毎日が悲惨なことになる気がするからな」
そう、やっと変わらない世界で変化を見つけたのだ
この桜が咲けばすごく大きな変化だ
そうすれば帰れるかもしれない。そう考えるようになった
その日からは少しずつ変化が始まった
毎日ゆゆこと話すだけだが、それでも毎日違う話題で盛り上がるというのは新鮮なことだったただ一つ分からないことがあった
『なんでこんなことになっているのか』
俺の方はほとんど思い出していた
たしか、友人と花見に行こうとしていて
玄関で呼んでいるので荷物を抱えて、階段を降りようとして・・・
そうだ、れいむに躓いて階段から落ちたんだ
となると現実の俺は気を失っているということになる
ではゆゆこは?
本人は何も覚えてないみたいだし、それに探し物ってのも気になる
*ゆゆこサイド*
やっと変わらない世界に変化が起きた
でも一つだけ思い出せない
『なぜこの木が気になるのだろう』という事
よく思い出せないがここを覚えているような気もする
「何か思い出せないか?探し物のヒントでも良いんだ」
何も、というわけではない
たぶん私が思い出せない探し物は『記憶』
ここをどこで見たかと言う『記憶』だろう
たぶんここは私の夢の中
すべてを思い出せばこの夢は終わるような気がする
では私の目の前にいる人も夢なのだろうか
唯一この変わらない世界のなかで変わり続ける人
たぶん彼は夢じゃないんだろう
でもなんでこの夢は醒めないのだろう
すべて思い出すまでは醒めないのだろうか?
*お兄さんサイド*
それから何日かは話をして過ごした
お互いに打ち解ける事もできたし楽しい時間だった
ゆゆこも少しずつ思い出したようでポツリポツリと話始めた
ここが自分の夢じゃないかという事、なぜこの木が気になっているのかが思いだせないという事
「ねぇおにーさん?」
「どうした?」
「このきのさくらがさいたのはいつ?」
「俺は小さい頃からここの公園を知ってるけど咲いてるのなんか見たことないぞ?」
「そうなんだ・・・」
「なんだ?ゆっこちゃんは見たことがあるのか?」
「うん、誰かと一緒に見たことがある気がする」
お兄さんとおじさんの境目ぐらいの歳だが一度も見たことがない
一体いつの話をしているんだろう
*ゆゆこサイド*
この桜が咲いているのはいつ見たんだろうか
確か誰かと一緒に・・・
たしか・・・
『今年も桜が綺麗だね。ゆっこちゃんは桜好きかな?』
『うん!ゆっこもさくらだいすき!』
そうか、思い出したあの時だ
という事はまた夢を見ていることになるのか
年はあまりとりたくないものだと思う
しかしもう一度向こうに帰れるだろうか
たぶんこの夢はもうすぐ醒める
今日の夜思いきって話してみよう
でもこの夢が醒めたらお兄さんとは会えないんだよね
寂しいけど勇気をだそう
どんな形であってもこの夢は終わりにしなきゃ
*お兄さんサイド*
「おにーさん、おきてる?」
「うん? 起きてるよ」
「あのね、全部おもいだしたよ」
「そうか」
「それで・・・この」
「夢、なんだろ?」
「うん・・・だから夢からさめたら・・・もうあえないね」
「寂しいけど、醒めない夢は無いからな・・・」
ゆゆこが手を握りなにかを握らせてきた
「また会えるよね?」
「また会えると良いな・・・」
「うんおやすみ・・・おにーさん」
「ああ、おやすみ」
夢の話はここで終わり
醒めた夢に続きはないはずだった
『おばあちゃん?』『おお、ゆっこちゃん。おはよう』
『わたしまた寝てたの?』
『そうだよ。この老いぼれを置いて先に逝っちまったかとおもったよ』
『おばあちゃん?あの桜はことしは咲いた?』
『あの丘の桜かい?どうだろうねぇ。ここ50年は咲いてなかったからねぇ』
『ひさしぶりにいってみない?』
終わらない夢なんかこの世には存在しない
「お前がドジ踏むから場所ないじゃんかよ!」
「しょーがねーだろ!気失ってたんだから!」
「れいむのせいだよ。ごめんね」
「いやお前は悪くないよ。ほらあそこ空いてるじゃん」
「あんな場所に桜なんかあったか?でも場所としては悪くないな」
しかし続きを見たい夢と言うのは存在する
『やっとついたね、おばあちゃん』
『年寄りには辛いねぇ。ゆっこちゃんの元気を分けてほしいよ』
『咲いてる!咲いてるよ!!おばあちゃん!!!』
『ああ、見えるよゆっこちゃん。久しぶりだねぇこいつが咲くのは』
『ねぇ、おばあちゃん。桜のとこに誰かいるよ?』
『多分お花見しているんだろうよ? 邪魔にならんくらいに近くに行こうかね』
その見たかった夢が現実になったとしたら?
「しかしこんなとこに桜なんかあったんだな?」
「さくらさんきれいだね~♪」
「お前知らなかったのか?俺は知ってたぞ」
「ゆゆっ?だれかきたよ!ゆっくりしていってね!!!」
「こらまてれいむ!!すいません、家の馬鹿が・・・!?」
『どうかしましたか?』
「いえ、ゆっくりゆゆこなこなんて珍しいなと思いまして」
「れいむのほうがかわいいよ!うわきなんてゆるさないよ!!」
『あらあら、大丈夫よ。家のゆっこちゃんはおばあさんだからねぇ』
「いえ、すごく可愛いですよ」
「ゆあっ!!おにーさんなんてきらいだよ!!むこうのおにーさんのいえのこになるよ!!」
『あら、こんなおばあちゃんに可愛いだなんて。おだててもなにも出ないわよ』
『おにーさん、ありがとう。握手・・・』
「ありがとう。ゆっこちゃん」
『あらゆっこちゃん、よかったわねぇ。それじゃお花見楽しんでね』
「はいありがとうございます」
ゆゆこが握手と同時に紙を握らせてきた
夢のなかでは見ることはできなかったが内容は同じ短い詩
最近はあまり使われなくなった形式の詩だった
墨染の 桜舞う日に 我咲きて 空に昇るは 反魂蝶
詩の意味はよく分からなかった
たぶん本人にしか分からない思いが込められているんだろう
さっきの人はゆゆこの事を『おばあちゃん』と言っていた
たぶんもうそんなに長くないのだろう
ただもし、願いが叶うなら
桜の下でもう一度・・・
おわり
以下チラ裏
最終的に何が書きたかったのか・・・
ゆっくりゆゆこを出したかっただけとも言えます
チラ裏ここまで
- D・Cみたいな切なさを感じた。
懐かしい気持ちになる。 -- 名無しさん (2009-04-05 18:01:08)
最終更新:2009年04月05日 18:01