ゆっくりお留守番

「ゆー」
「ゆー」
ここは魔法の森。アリスの家。
訪れるものもほとんど居ないこの家に、今二頭のゆっくりが留守番をしていた。
ゆっくりれいむとゆっくりまりさ。
もう長いことアリスに飼われているため、アリスに懐いているし、アリスの言うことなら何でも聞く、賢いゆっくりたちだ。
この二頭は暇だった。
飼い主のアリスは今、魔理沙の家におめかししてお出かけしていた。

『ゆっくりお留守番しててね、帰ったらおいしいご飯を作ってあげるから』

そういってアリスが出かけたのが朝八時。
そして今は夜の十時。
まあゆっくりには時間の概念がないので、朝から晩まで、ということになる。
お昼ご飯とおやつにとアリスが用意してくれたタイヤキも朝のうちに食べてしまったし、お腹がすいた。
家の中で遊ぶのも、アリスがダメだと言うから出来ないし、留守番しているからお外にもいけない。
ゆっくりたちは暇だった。寂しかった。

「ゆー。れいむー。」
「ゆ?なーに、まりさ?」
「おなかすいたね」
「そうだね」
「おなかすいたね」
「そうだね」
「たいくつだね」
「そうだね」
「…れいむ、ねむいの?」
「おなかすいたときはねるといいってれいむおねーさんがいってたもん」
「ねむれるの?」
「おなかがすいてねむれないよーーー」
「まりさもおなかがすいたよーーー」

二頭で身体を寄せ合っていやいやするゆっくりたち。
しかしその声に応えてくれるアリスはまだ帰ってこない…

「ゆー。れいむー」
「ゆ?なーに?」
いやいやするのにも飽きたまりさが器用に椅子、テーブルの順に飛び乗りながられいむに言う。
「たいくつだからしりとりしよー?」
「ゆ!しりとり!するする!」
「じゃあまずはまりさから…たいやき!ゆっくりかんがえてね!」
「ね……ね……ねこ!ゆっくりかんがえてね!」
「ね……ね……ねずみ!ゆっくりかんがえてね!」
「ね……ね……ねこ!ゆっくりかんがえてね!」
「ね……ね…ねずみ!ゆっくりかんがえてね!」
「ね?ねこ!ゆっくりかんがえてね!」

誰か聞いていたら頭が痛くなりそうな無限ループを繰り返すことしばし。
がちゃり、というドアの開く音とともに
「ただいまー」
という声が聞こえてきた。
「「ゆ!!」」
その声を聞くやいなや、ゆっくりたちはゆっくりに出せる最大の速さで廊下を走り出した。
アリスのお出迎えをすると、必ず撫で撫でしてくれる。
「ゆ!」「ゆ!」
ぴょんぴょんと廊下を飛ぶれいむとまりさ。
そのとき、まりさの心に魔が差したのか?よからぬ考えが浮かぶ。
「れいむよりさきにアリスおねーさんのところにいけば、れいむよりながくなでなでしてもらえる」
ゆっくりには種族によって、性格の差がある。
れいむは天真爛漫、まりさは…そう、少しずる賢いところがあるのだ。
その本能が刺激されたのかはわからない。
だが、まりさはれいむが飛んだ瞬間を狙い、体当たりを仕掛けた。
「ゆ゛?!」
空中で体当たりをされ、成す術もなく壁にべしょ、とぶつかるれいむ。
ずるずると崩れ落ちるれいむを尻目に、アリスへ飛び込むまりさ。
「ゆー!おねえさーん!」
「はいはい、ただいま。ごめんね、遅くなっちゃって。魔理沙がなかなか離してくれなくて…」
「ゆ?まりさがどうかしたの?」
「あなたじゃなくて、大きな魔理沙のほうよ…さ、ご飯にしましょう?」
「ゆー♪」
まりさを抱きかかえ、なでなでしながら廊下を進むアリス。
そのアリスの目に、当然映ったのはぐしぐし泣いているれいむ。
「う゛ああああああああ!」
「れいむ?どうしたの?さみしかったの?」
ひょい、とまりさを廊下においてしゃがみこむアリス。
泣き叫ぶれいむ。きまずそうなまりさ。
「うあああああ!ちがうの、まりさが、ま゛り゛ざがああああ!」
「まりさが?」
「まりさがれいむをぶったああああああ!れいむなにもじでな゛い゛のにいいいいいい!」
「…ほんとなの?まりさ?」
アリスはまりさをじっと見つめる。その視線に耐え切れず、目をそらすまりさ。
「…まりさはわるくないよ!ぐうぜんぶつかっただけだもん!まりさわるくないもん!」
「…そう。」
アリスはそうため息をつくように呟くと、れいむを抱き上げてなでなでする。
「れいむ、痛くない?」
「ちょっといたい…」
「あ、こぶになってる。痛いの痛いのとんでけー。お薬塗ってあげるから、それからご飯にしましょうね。」
そう言って、居間のほうへと歩き出す。
「ゆー」
まりさもその後を追いかける…だがしかし。
「ゆ!?」
「シャンハーイ」「ホラーイ」
上海と蓬莱が通せんぼをする。
「ゆー!まりさもおなかすいたのー!ごはんたべるのーーー!」
そう叫ぶまりさの目の前で、居間のドアが閉じられる。
「ゆーーー!?おねえさーーーん!?じゃましないでよー!まりさもおねえさんのとこにいくのー!
上海と蓬莱を力ずくでどけようとするまりさだが、当然敵うはずもなく。
体当たりしてはひっくり返る、を幾度となく繰り返すのみだ。
無駄な努力を続けるまりさの目の前で、れいむはアリスにだっこされながら薬を塗ってもらっている。
なでなでされている。ああ、アリスが笑っている。れいむにだけ笑っている。

まりさはしめだされているというのに!もうまりさにはわらいかけてくれないのだろうか?
まりさがわるいこだから?もうアリスのきれいですべすべしたてでなでなでしてもらえない?
そんなのいやだ、いやだいやだ!

「おねえざん、ごめ゛ん゛な゛ざい゛いいいいい!まりさもなでなでじでええええええ!」
まりさ心からの声でさけんだ。そして泣き出す。
「う゛あああああああああ!!」
「ほんとに悪かったと思ってる?」
まりさの目の前にアリスがいた。まりさの顔を覗き込んでいる。
「ま゛り゛ざがわ゛るがっだでずううううううごめんな゛ざいいいいいい!!
アリスはそれを聞いてちょっと笑い、
「まりさ、謝る相手は私じゃないわ。」
と、れいむをまりさの前に置いた。
「れ゛い゛む゛うううう!ごべんねえええええ!」
泣きながられいむに飛びつく。
れいむはうなずきながらまりさの涙をなめとる。
「なかないで、まりさ。もうあんなことしないで、ゆっくりなかよくしようね?」
それを聞いたまりさ、パっと明るくなり、
「うんっ!」
と笑顔でうなずいた。
「ふふ、泣いた烏がもう笑った、さ、ご飯にしましょう?」
「「ゆっくりおなかすいたよ!ゆっくりたべるよ!!」」


次の日、アリスはお肌がちょっと荒れた。
ゆっくりたちがアリスと夜遅くまで遊びたがったからだ。
ゆっくりを寂しがらせた結果がこれだよ!!


  • アリスさんマジイイ飼い主 -- 名無しさん (2010-11-27 15:13:11)
  • アリスさんマジ天使 -- 名無しさん (2012-07-25 20:54:42)
  • アリスさんどこぞのははババアとはちが(ピチューン) -- 名無しさん (2012-10-11 17:30:52)
  • アリスさんはどこぞの鬼巫女とはちが(ピチューン) -- 名無しさん (2013-08-25 19:40:23)
  • 癒された~ -- 名無しさん (2016-11-28 22:39:07)
  • ずるっこまりさもちゃんと謝れて偉いね。癒されました -- 修一 (2017-01-11 22:27:16)
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最終更新:2017年01月11日 22:27