昆布が漂っている
あそこで固まっているのはネギだ
見渡す限りが茶色だか褐色だかで濁り、油揚げがいい色に染みている
・・・そう、例えるなら形成前の元素を掻き混ぜたミソスープのような混沌の中で、
宇宙船“ゆっくりしていってね号”は地球を出発してからたかだか数百万年もたたぬうちに停滞していた
「なんでこんなとこにいるんかのう」
「ハカセが面白がってワープしまくるからですヨ」
「だっていくら進んでも周りになんもいんじゃもん」
人類はあれやこれやで超長々距離の航宙技術を手に入れてから次々と自らを宇宙に放り出してきた
その中でも“ゆっくりしていってね号”は名前通りにゆっくりと億単位の歳月をかけて航行するために設計された探査船であり、
そしてどういう因果か派遣隊として選出された葉加瀬博士と助手のジョシュ君なのである
だがこの宙域へ突貫するに至ってから前進も後退も出来なくなっていた
エンジン自体は正常に稼動しているにもかかわらずそれが推進力へと置換されないのが問題なのである
航宙技術といってもそれは物理法則が普遍的に広がっている前提のものでしかなく、
力系が整備されていないような宇宙の辺境では勝手が異なるようだ
「帰ったら設計者に文句言っちゃろ」
「帰れたらの話ですネ」
宇宙探査という仕事としてはある意味当たりとも外れとも言えるような状況ではある
が、環境レコードなんかは自動で保存されるし他にやることもなかったりする
「ふてコールドスリープでもしてようかのう」
「HAHAHA!」
・・・り
「む。ジョシュ君や、なにか聞こえんかね?」
・・・ろーり
「そういえバ何か聞こえマース」
・・・そろーり、そろーり
「!?」
船体に衝撃が走った
それは先ほどからちょこちょこぶつかっている豆腐の比ではない
慌ててモニターを切り替えると巨大な顔面のどアップが映し出された
「なんやて!?」
むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~!
かくしてタイヤキ型宇宙船“ゆっくりしていってね号”は宇宙を飛空するゆっくり霊夢に飲み込まれたのだった
暗 転
「そーゆー夢なのデス」
「夢落ちかい」
鯛焼きを頬張る
ゆっくり研究所の一行は、時期の遅い花見を決め込んでいた。
「じゃが星海の向こうにでっかいゆっくりがいるなんて、まさに夢物語じゃの」
「ミソスープの海は辟易ですガ」
「ゆっ!れいむにもたいやきちょうだいね!」
「Hi、ドウゾ」
「しかし宇宙か・・・」
博士は空を見上げた
「そういえばユーフォーにのったゆっくりとかいたのう」
「・・・そう、あのゆっくりがもたらした超長々距離の航宙技術が全ての出発点でした」
「え?なんじゃと?」
「それを契機にして宇宙へと飛び出した我々は、やがて物理の限界にぶつかった
しかし深宇宙を遊泳するゆっくりに呑まれ、同化する事によって深宇宙の航行能力も得る事ができるようになったのです」
「なにを言うとるんじゃ君は・・・?」
「地球には到底いる筈の無いゆっくりがいつの間にか隣人としている歴史に紛れ込んでいるのはなぜか」
「むーしゃ、むーしゃ、ゆ?」
「つまり」
「いったでしょう?この世界はコールドスリープ中の私達とゆっくりが共有した・・・そーゆー夢なのですよ」
きょとんと見上げたゆっくり霊夢の遙か真上
宇宙の彼方から“ゆっくりしていってね”と呼ぶ声が聞こえた、気がした・・・
「・・・という夢をみたのじゃ」
「もうええわ」
「HAHAHA!」
「おあとがよろしいようで」
+
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蛇足 |
「という訳でゆっくり&鯛焼きシリーズもなんとか揃える事が出来たのう」
「気づいている人もいると思いマスが物語の作り方ページにあるプロットパターンA~Eをそれぞれ元にしまシタ
しかし後になるにつれてゴーインに書ききった感がバリバリですネ」
「なにおう。たこやきれみりゃやヨコハマタイヤキさんのAAなんかこの為に用意したんじゃぞい」
「既存のAAをいじっただけじゃないデスか」
「しくしく」
「しかし元にした割にプロットの原型が見えないほど変わりまくってマスね」
「そうじゃなぁ・・・まーそこはそれ、こんなアレンジの仕方で作るSSもあると参考にでもなれば幸いじゃ」
「こんなちょこざいなSSもあるんだから、怖けずに皆どんどん発表していいんダヨ!的反面教師な意味で?」
「しくしくしく」
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- ヨコハマ鯛焼きは自作か。通りでガ板になかったわけだ
ネタのためにAAを自作する根性に惚れた -- 名無しさん (2009-04-25 20:15:56)
最終更新:2009年04月25日 20:15