「…はあ」
今日も一人、あまり気の乗らないまま学園へと足を進め、教室に入る。この春から一年生、高等部へと進学した。
…までは、よかったけれど。クラスの空気にどうも馴染めず、一人ぼっちの毎日を過ごしている。
「はあ、嫌だなあ」
無意識に、溜め息と共に言葉が漏れてしまう。そこまでいじめられている訳では無い、ただ気まずく居づらいのだ。圧迫されている様な感じがして、すぐにでも帰りたい。
「おい、りぐる! 机にぽつんと座ってて、面白いのか?」
「…ふん」
クラスで騒いでいる馬鹿どもが僕に話しかけてきた。僕は軽くあしらい、席に座り鞄の中に入っている本を取り出して読み始める。
馬鹿どもの一人が僕が使っている机の上に手をバンと叩く様に置き、僕を脅してくる。しかし、僕は気にもせず読書を続行する。
僕は、他の奴みたいに馬鹿どもに躍らされるほど愚かではない。ましてや、同じ様に馬鹿騒ぎするなんてもっての他だ! こんな奴らに屈したりなどはしない、しないが…。
…素直になれるのであれば、教室で身を小さくして過ごすのではなく、のびのびとした生活がしたい。
早く、時間が過ぎて欲しい…!
「おい、お前たち。りぐるくんは嫌がっていますよ、やめたらどうです?」
「…善人面、しやがって」
クラスの人の鶴の一声によって、あいつらは僕の周りから去っていった。…正直、助かった。目が泳いで、読書どころでは無かったからだ。
声をかけた人が近付いてくる。この人は僕の名前を知っている様だけど、僕は誰一人名前を覚えていない。
何だか、情けなく思う…。
「…全く。人をからかって、自分たちだけが楽しければ良いと思っているのでしょうか。怖くて行動出来ない人もいるのに、相手の立場を尊重してあげたらどうでしょうかね。
…私、楽器をやっているんですよ。一緒に、やりません? いずれセッションなどもしませんか」
「…え、えっと」
「別に無理には言いませんし、趣味があるのなら全然構わないですよ。それは、りぐるくんが決めて下さい。でも、なんというか。憧れません、バンドって?」
「…確かに、格好いいと思う。でも、僕なんかに出来るのかなあ」
「…コツは、臆さないこと。見返してやりません? 見返すとまではいかなくても、見せ付けてやりましょうよ」
「…ごめん、あなたの名前は?」
正面を向いて、瞳にはどこか炎が宿っている彼女。彼女が、口を開いた。
「東風谷、さなえ。よろしく!」
東風谷さなえのロックバンド!
- お疲れ! -- 名無しさん (2009-05-07 00:52:34)
- もっと続いて欲しかった。素直にそう思えた作品です。
ともあれ、お疲れ様でした!次回作を楽しみに待ってます。 -- 名無しさん (2009-05-08 01:25:48)
最終更新:2009年05月08日 01:25