いただきますさなえちゃん短編

「さなえっ! 今日はね、とっておきのプレゼントがあるんだよ!」

「…ほえ?」

 テーブルの上に座り、お皿の上のクッキーを小さな口で咥えてはむはむと顎を動かしているさなえに、嬉々に声色を高くして声を掛ける。
 呼び掛けに応えたさなえはこちらを振り向く際に口の動きを止めさせてしまい、半分だけ残った食べかけのクッキーをお皿の上にポロリと落としてしまう。
 うーん、可愛い。
 さなえを目前まで引き寄せて、自分の頬を満遍なく活用しさなえの頬面を思う存分に摩擦する。
 一通り擦り終わり気持ちが落ち着いた所で、頬擦りに夢中で少し忘れかけていた本題に入る事にした。

「ゆ、はあっ、おねーさん、…あう、卑怯ですよお…」

「さなえが愛くるしいがいけないのよ」

 顔を紅潮させ、それを隠すためか俯くさなえの額に軽く唇を当ててキスをする。
 さなえはさらに動揺して面持ちをして、ついにはコロリと倒れてしまいテーブルの上から落っこちてしまった。

「ゆ、あう…」

「あっはっは! 今日持ってきたのはね、これなんだ」

 私はさなえから見えない様に背中で隠していた『缶ジュース』なるものをさなえに見せ付ける。
 手のひらに伝わる、握っているとひんやりと気持ちいい冷えた感触。
 足元でまだ混乱して揺れているさなえのほっぺたに缶を当ててやり、脅かしてやる。
 ぷにんぷにんで、弾力を持ち柔っこいそれに当てられた缶は吸い込まれるように軽くめり込んだ。

「ひゃうっ!?」

 さなえはひっと身を起こし、私の足元からわき目もふらず後ずさりをする。
 ただでさえパニック状態なのに、冷たい感触の刺激を受けて驚いたのだろう。
 さなえはとうとう目の端に涙を浮かべて、声を押し殺し私の足に体を寄らせてすがりつく容体となってしまった。
 …やりすぎたか。
 ごめんねと一言ささやきながら床下に居るさなえを優しく抱きかかえ、さなえの体を小刻みに揺らして落ち着かせる。
 不安そうなあんばいは拭えないものの、さなえは大分冷静さを取り戻したか、いつしか私に甘える態度を取ってきたのだった。

「ゆう…」

 唇をツンと前に出して、瞼を閉じ何かを待っている素振りのさなえ。
 その様子は上目遣いと言ったもので、…私にはさなえが何を求めているか、よーく理解出来てわかりきっていた。
 しかし、先ほどイタズラをされたにも関わらず無防備なさなえにまた私の遊び心がくつくつとくすぐられて、…先ほどに懲りず、さなえをからかってやることにした。
 もちろんイタズラをする私も悪いが、まるで誘うかの様なさなえのいじらしさが一番いけないのだ。
 右手に抱えたまだまだキンキンに冷えている缶ジュースを、さくらんぼの様な果実の、悪魔的に誘惑しているさなえの小さな唇へと近づけてゆく。

「ん…、…やあっ!?」

 予想していた生暖かい感触とは打って変わった冷たい刺激に、さなえは驚いたか頓狂な声をあげて動揺する。
 缶の腹部を確認してみると唇の形に水滴が無くなっている他に、唇の形の真ん中部分が嫌にきれいにアルミ姿を覗かせていた。
 さなえは体を引きつけさせて悶絶している様子である。
 どうしたのだろうとさなえの姿を窺うと、口を半開きにして涙を堪えている。
 …唇の先端だけではなく、舌の先っぽまで湿っている有り様だった。

「…なるほど。舌まで絡めてこようとして、さなえはえっちな子ね」

「うう、う…」

 鼻回りを一層赤くして、恥ずかしさやら情けなさにつままれて震えているさなえ。
 さなえの気持ちを察するに、恐らく今にでも私の胸に飛び込んで埋まりたい一心なのだろうが、イタズラをした当人が私であるためその場に立ち尽くすことしかできないのであろう。
 …さなえの顔を見るとどうしても遊び心がくすぐられてしまい、ついつい意地悪をしてしまう。
 いい加減にしないと、本当に取り返しのつかないことになってしまうため、私はここまでで自重することにした。

「ごめん、ごめん。もう調子に乗ったりしないから」

「…ほんと、ですか」

「ええ。愛しのさなえですもの、そう幾度もいじめたりなんてする筈がないわ」

 私がさなえに陳述すると、さなえはまるでその物言いがからかいだと言わんばかりにいじけた様子で目線を投げかけてくる。
 そしてとうとうさなえは抱き締められた状態ではあるものの私の胸に寄りかかった態勢から体を起こし、ツンとそっぽを向いて完全に態度を拗ねさせてしまった。
 からかいと言うのは勿論さなえの言う通りで、私はただサラサラに手触りの良いさなえの髪の毛を撫でて機嫌が直るのを待つだけだった。
 しばらく時間が経った頃、ようやくさなえが静かに私に体を預けてきた。
 まだまだしかめ面でふて腐れた体裁ではあるが、大分良くなった方である。

「ふふ。…これはね、飲み物なんだ」

「…飲み物?」

 さなえは缶ジュースに興味を持ってくれたみたいだ。
 少々面白半分に羽目を外しすぎたため、取り合ってくれないのではないかという不安があったのだが、その様な様子も無くほっと一安心して胸を撫で下ろす。
 興味津々にそれは何かと尋ねてくるさなえにはにかんで、缶ジュースのプルタブを開けてコクリと喉を鳴らし、一口だけジュースの中身を試し飲みをする。
 ラベルで中身を判断できなかったのだが、どうやらこのジュースは炭酸ものの様である。
 この世界では中々お目にかかれない、上等なものだ。
 感動を共有したく、さなえを一気に抱え上げて缶のプルタブ口からジュースを飲ませようとするも、何故だかさなえは嫌々とだだをこねて一向に飲む気配を見せない。
 嫌がっているというか、その様子は戸惑いのものであるように感じた。

「どうしたの、さなえ? やっぱり私の口付けた缶ジュースなんて、嫌なのかな」

「う、うう…。おねーさんったらわかってる癖に、いじわるしないでくださいよっ」

 涙目になりながら、気恥ずかしそうな面持ちでふるふると体を動かし落ち着かないさなえ。
 どうしてと、なるべく柔らかい声色を意識してさなえに尋ねる。
 さなえは言い淀み、返事をひねり出すように私に目を向けてきた。

「だ、…だって!」

「だって?」


「おねーさんと、か、間接キスじゃないですかっ!」



 私の中の大切だったものであろう、一線が胸のスキマへはじけ飛んだ様に思える。
 しかし、そんなものは些細な事であった。

「あ、ひゃあ! くすぐったいですよ、いきなりさなえの体をまさぐるなんて…、…おねーさん?」

「さなえが悪い。いただきます」



 ゆっくりのさなえを肩に乗せて、やけに広い館の廊下を見回る。
 主に掃除箇所のチェックの為であるが、開いている窓を閉めたりなどのちょっとしたケアレスミスの尻拭いもある。
 そしてその内に歩いている途中、ちょっとしたお客さんが足を運ばせていたのだった。

「にゃーん」

「…あら、猫ね。茶と黒のとら猫、どこから入って来たのかしら。足に泥をつけて歩き回って、困ったさんね」

 廊下に猫が立っていた。
 脅えて逃げ出す様子もなく、ただ腰をすわえてどっしりと居座るばかり。
 あどけない表情をして舌にて体の毛繕いをしていて、緊張といった態度は見受けられず、とてもリラックスしているにゃんこであった。
 口の端が綻んでしまう、ちんまい訪問者に近付いて顎回りを優しく撫でながらこいつを抱えて床に座る。
 外から来たのだろうか、この可愛らしいにゃんこのお腹部分や手足の先所々に泥がこびり付いていた。
 ポケットに入っている雑巾で、手足に付いた泥を取ってあげる。
 カーペットについてしまった泥もある程度取り除き、指先で猫の喉を撫でてやる。
 ゴロゴロと、猫は気持よさそうに喉を鳴らし、目を細めて私の膝に顔を預けたのだった。

「にゃふんっ」

 …ものの数秒だろうか。
 愛すべきおちびちゃんはすぐに私の膝越しに立ち上がり、ぴょんと勢いを十分に窓を跳ねてどこかへ去ってしまった。
 この場所の階層は一階で、気まぐれの拍子に紛れ込んだのだろう。
 手のひらにはまだあの子を触っていて感じた体温が、ふんわりとおぼろげに残っていた。

「…ふん。猫は、嫌いです」

 さなえは、面白くなさそうな面持ちで鼻を鳴らす。
 ずっと肩に乗り終始を眺めていて、嫉妬してしまったのだろうか。
 …さなえには悪いが、とある対象に対して嫉妬されるというのは、ちょっぴり嬉しいかも。

「あら、なんで?」

「おねーさんを一人占めするからです。おねーさんにとっての猫は、私一人で十分ですっ」

 このままさなえに何も気をかけないと言うのはあまりに気の毒で薄情であるため、会話を繋げる程度に相槌を打つ。
 しかし、私の浅はかな発想など見抜けられているのか、さなえはつんとそっぽを向くのみ。
 …その内に、何やらガサゴソと動くさなえ。
 どこから用意して取り出したのか、いつの間にかさなえは猫耳のバンドを自分の頭に付けていた。
 極め付けにさなえはもじもじと照れて体をたじろがせながら、私に振り向きこう鳴いた。

「に…、にゃーん///」

 恥じらいながら、私に目を向けて微笑みかけるさなえ。
 体だけでなく、ぷるぷると小刻みに柔らかく震える、上等のマシュマロの様な頬。
 恥じらいをひしひしと感じているのか顔色を真っ赤に染め上げ、こしょばゆそうに表情をゆがめさせている。
 瞳の端にはひとしずくの涙が溜まり、今にも零れ落ちてしまいそうだった。
 気が付いたら手が既にさなえに伸びていて廊下に倒れ込んでいたが、仕方の無いこと。些細な事だろう。

「あ、おねーさん、…もっと、にゃ///」

 もう駄目だ。いただきます。






「うーん、ああん、嫌ぁ…」

「どうしたの、さなえ?」

 業務もある程度終わり一度自分の用意された部屋に戻ってみると、さなえが何やら顔をしかめてむず痒そうに体をもじもじと、鬱陶しそうに動かしていた。
 『んあぅ』『ああんっ』と、不機嫌そうな声を出して、一見やましい不祥事を起こして自責の念に駆られているかの様に網膜に映じるけれど…。
 何をしているのだろうと、私はさなえに声を掛けた。

「あう、おねーさんっ。さなえの、耳がむずむずして気持ち悪いんです…」

「…軽い、微熱かな。頭痛とかはする?」

「ううん。耳が、痒い…」

 …思案を巡らせるに恐らく、さなえは自分で耳掃除を行おうと躍起になって悪戦苦闘していたわけだ。
 しかし、さなえには胴というか顔だけで、手と腕が無い。
 どんなに体を動かし駆使しようと、何か長い棒の様な物を使わないと耳の掃除は行えない。
 されども、自分一人で長い棒の様な物を使うのは危ないと判断したのだろう、…実際に私でもさなえが一人で耳掃除を行おうとしたら飛んで止めに行くだろう。
 だからずっと、ベットの上で転がったり体をこすりつけたりしていた訳だ。
 さなえにとっては死活問題だろう。
 しかし、さなえには失礼だが、…私にとっては平然と届く欲求に悩むさなえを微笑ましく思い、思わずくすりと笑ってしまった。

「お、おねーさん! ひどいじゃないですか、さなえにとっては重大な問題なのですよ!?」

 さなえが顔を真っ赤にし、まくしたてるように私に訴えかける。
 瞳の端に涙を溜めているその様子も愛くるしく、いとおしい。

「ふふ。ごめんね、わかってますよ。どれ、ちょっと待ってなさい」

 私はドレッサーにある小物入れから竹製の耳かきを取り出して、さなえの隣のベットの上に座り込む。
 さなえが、私の体に寄り添ってくる。
 耳かきをもっていない手でさなえの頬をハグする様に優しく撫で、自分の顔をさなえの頬まで持ってきて頬と頬をピタリと当てあう。

「じゃあ、体を楽にしてね」

「ひうっ!」

 さなえの体を抱え上げ、片耳を私の目の真下に置くように膝枕をしてあげる。
 ずっしりと、瞬く間に手のひら全体にに重みが伝わってゆき、それでいて張りのある感触がある種の香辛料として感じ取られ、質の良い手触り感をとやかくに堪能する。
 少しずつさなえを手のひらから膝に下ろしてゆき、私の膝に乗せる。
 膝一面に張り巡らされている神経は、しっかりとさなえの重さを感じ取っていた。

「うう、うあ、…」

 さなえの態度を察するに、恐怖に打ち勝つために目を強く瞑り耐えて、怯えているあんばいで体を縮こませていた。
 私の右隣に垢を置くためのティッシュを二つ折りにし用意し、さなえの耳周辺に乗っかっているサラサラした触りの緑髪を掻きあげてさなえの耳をむき出しにする。
 耳掻きの温度はドレッサーの引き出しで長らく放置されていたため、片手に握りっぱなしだった今もなかなかに冷たい感触を保っている。
 試しに匙を耳たぶ付近に当てると、ひやりとした感触が通ったかさなえは『やあ』と弱弱しい拒否の声を示した。

 耳かきの匙でさなえの耳の穴の入り口周りをそっと触れるように掻き回し、1,2回回した所で一度匙に乗った垢をティッシュに乗っける。
 そのまま耳の穴をなぞるように匙を奥へとスライドさせる。
 冷たい、こしょばゆい感触がするのだろう。さなえは『ひゃうっ』と一度すっとんきょうな声をだすものの、再びじっと目を瞑り耐えるように身を固めさせた。

「…ちょっと、失礼じゃない? 私だって、耳かきくらいは出来るわよ。それに、上手よ?」

「うう、そうだとしても、怖いですよ…」

 おじけつくさなえの頬と髪を空いた手で撫でてやり、さなえの耳かきを再開する。
 ゆっくりにも産毛に当たる毛があるみたいで、細かくふさふさとした産毛をなぞるように匙の先っぽでカリ、カリと優しく丁寧を心がけて耳の垢を剥がしてゆく。
 等間隔に続く、細かい振動。

「ひゃうっ!?」

「大丈夫よ。一つ、大きいのが取れただけよ」

 その内奥に見えていた耳垢がペリリと、そこそこ大きい塊で剥がれて匙の上に乗っかり、さなえはこわばらせ引きつらせた表情を『ほっ』と柔らかいものに変化させる。
 一度耳かきをさなえの耳穴から取り出し、トン、トンとティッシュの上に匙を叩いて垢を乗せる。
 さなえには手足が付いていないからもっと耳垢が酷いものだと思っていたが、もともとゆっくりは汗をかかない生き物だ。
 ただ日常生活にて出る老廃物については無力で、その様なものが蓄積してしまっても自身ではどうする事も出来ないのだ。
 それゆえに、ゆっくりと共に生活を送っているものは、時折耳掻きなど垢を取る行為を行ってあげなけれなならない。

「あう、ひゃ、…ううん、あうぅ!」

 …見られていて少し興奮をしているのか、鼻回りを主に赤みを帯びて懇願の眼差しを仕向けてくる。
 上から見下ろして覗いてみるからにさなえの耳垢はこのくらいしか無いようだ。
 さなえの耳穴は元々からきれいさっぱりといったもので、普段耳掃除を行っているのではないかと思ってしまうほど清潔なものになっている。
 きっと、気に入らずいらいらしていた原因はあの大きな耳垢だろう。
 もう一度一通りゆっくりと掻き回してみるものの、特に垢は取れなかったので私はこれ以上は耳を傷めるだけと判断し、反対の耳へ移ることにした。
 さなえに反対側と告げて、今度は私の膝に向けていた耳を私の目線から見下ろせる位置へ持ってきてさなえに膝枕をする。
 再び、さなえの耳周りを軽く撫でて匙を少しずつ奥の方へと進ませる。
 さなえは先ほどまでの用心していた様子と打って変わって『あひぃ…』と喘ぎ声を漏らし、恍惚のくだけた表情を浮かべて気持ちよさそうに私に身を委ねるばかりだ。

「…」

 ちょっと強めに、耳かきの匙を奥に当てつける様に指の力をいれる。
 思ったとおり、さなえは安心しきった表情から『あひっ!?』と驚いてうろたえたものにする。
 その後体を強ばらせるも、すぐにリラックスさせた肩の力が抜けた身に戻る。
 『ひうん』『んやあ』と、心持ち、その、…。
 …えっちな響きを持つ感嘆も、次第に口から漏れる回数が多くなってゆく。
 意識したため、変な気分になってしまった。

「さなえ」

 私は、さなえに呼びかける。
 この時はまだ理性を保てていたのだと思う、…しかし。
 自分としては気持ちの紛らわせにスキンシップを取るため何気なく話しかけたのだが、脳裏にて、さなえにイタズラをしてやろうと意地悪な発想がよぎり飛び交じって、…やがてその思考が私を支配し始めたのだ。

「なん、あふぅ、なんですか?」

 さなえは耳かきの快楽に酔いしれながら、私に返事を返す。
 きょとんとした面構えは、私を信頼してくれている証拠。
 とても嬉しく思う反面、これからやるであろう事を考えると申し訳無いと全身が締め付けられる思いなのだが、…やがて考える事をやめた。
 今の私には、抑え切れなかった衝動をぶつけるのみなのだ。

「気持ち、いいでしょ」

「はい、カリカリと柔らかい耳かきの感触と、垢が取れた時のピリッと電流が走る様な刺激がなんとも…。ああん!」

 体をもじらせて自身がどんなに至福を味わっているのか丁寧に説明をしてくれるさなえ。
 空いている片手にてすべすべときめ細かい肌触りであるさなえの頬を撫でながら、一つの物事を尋ねる。
 その質問は私の欲求をそのまま表し、実行するのに手っ取り早いもの。
 所詮悪魔のささやきというものなのだが、…さなえには悪いが、私の心身はすでに悪魔に委ねてしまっているのだ

「もっと、気持ちいいことしたい?」

「はいぃ…。さなえ、もっと気持ちいいことしたいです…」

「そう。いただきます」

 さなえは目を細め幸せを噛み締めていた様子から、ハッと一気に目を見開くも時すでに遅し。
 耳かきをゆっくりと引き抜き、私は一目散にさなえを抱き締めながらベットの上で覆い被さった。



「んーしょ、よいしょ、ゆっくり!」

 何やら、さなえは物置で整理をしているようだ。
 『どうしても館の物置に行きたい!』とせがまれたから仕方なく連れて行ったのだが、さなえは何をしているのだろう…?

「ゆっ、ありましたおねーさん! 『ケンダマ』です!」

 さなえは顔をほこりまみれにさせながら、嬉々と体を跳ねさせてけん玉の取っ手を口に咥える。
 けん玉が予想以上に重いのか、咥えてもすぐに顎から取っ手が落ちてしまい、ゴトリと鈍い音を立てて床に落としてしまう。
 されども、懸命にひたむきといった態度ですぐに咥えなおすさなえ。
 さなえの焦々とした様子に、胸の奥がキュンと締め付けられるような感触がして、…何だか込み上げてきてしまった。
 『昔の遊びに触発されました!』とか言っていたけれど、倉庫に行きたいというのはけん玉を探すためだったのか。
 言ってくれれば、すぐに見つけてあげたのに。
 …まあ、その様にあまり知恵が回らないところもまた、ほとばしるほどに可愛いのだけれど。

「ゆうっ! これをこうして、…え~い!」

 さっそく玉を上手いこと横の皿に乗せようとするさなえだが、そもそも玉が上に行かず振り子として帰ってきた玉がさなえの頬にこつんと当たる。
 さなえはむううと声を鳴らし照れながらもう一度玉を上にあげる。
 今度は勢いを付けすぎたか、皿に乗るどころか一回転してしまい頭部に大きめである玉が勢い良くと当たってしまったのだった。
 さなえは咥えていたけん玉の取っ手をポロリと落とし、しばしの間じっと震えて、やがて『ふえええええ』泣き叫びと鼻の上を真っ赤にさせてしまった。

「はーいはいはい痛くないですよー。さなえは強い子だから。ねっ?」

「お゛ねーさん、さなえ、さ゛な゛え゛!゛!゛」

 ぷるぷると体を震わせながら瞳から涙をためらい無く流すさなえ。
 耐えられなくなったのか、とうとう私の胸にうずまってしまったのだった。
 …その様子に、もう一人の私が抑え切れなくなり、感情の赴くままにさなえを抱擁する。
 そのままほこりまみれの壁にさなえを押し付けるだけだった。

「ゆ゛う! …ゆっ、そ、倉庫内で!?」

「我慢できません。いただきます」



「おねーさん、なんだか熱っぽいよぉ…」

「そう。いただきます」

私はさなえの頬を甘噛みしながら所構わずさなえと共に倒れこんだ。


  • ネチョってもいいのよ

    しかし耳かきは何故あれほどエロいのだろう・・・ -- 名無しさん (2009-05-11 21:07:41)
  • お姉さん、自重しろwどう見ても手遅れで重症ですが、本人達が良いのならそれで良いのでしょう -- 名無しさん (2009-05-15 15:08:38)
  • これはエロい
    いいぞもっとやれ -- 名無しさん (2009-06-16 21:21:05)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年06月29日 00:52