どうせなので、作品として一つのページにまとめました!
お楽しみください!
春もの
短編!
「春の陽気はぁ、ぽかぽかなんですぜぇ~」
「ぽかぽかだねぇ、まりさぁ」
緩い坂になっている草原に寝転がる二人。そよ風に揺られて、ふらりふらりと二人の髪がなびく。
「れいむぅ、まりさおねむなんだぜ…」
「なら、寝ちゃえばいいんじゃないかなぁ~」
目を細めながら、空を仰ぎ見つめるれいむ。陽射しとは気持ちいいもので、照らされた草の青々しい匂いがツンと鼻にまで届く。
ゴロンと楽な体勢を取りながら、まりさがれいむの方向に振り向き呟いた。
「れいむぅ、しりとりなんだぜぇ~」
「ゆぅ、やかん~」
「それじゃあ終わりなんだぜぇ~」
どこか抜けた会話も、春の陽気に当てられて気が付かない。
「ところでれいむぅ、まりさ心配事があるんだけど」
「どうしたのぉ、まりさ?」
「れいむ、まりさはいつもご飯を食べてばかりで、このままじゃあ身長が5メートルくらいになるんじゃないかって…」
「ならないねぇ、存分にご飯を食べなよまりさ」
「ならないかなぁ? なら、もりもり食べるよ」
「うん、もりもり食べなよ」
身の無い会話が繰り広がられても、春の陽気だから気にしない。
ぽかぽかと気持ちの良い太陽の下、二人はうとうととまどろんだ。
ゆかりん
「これはっ! …いいものだ!」
倉庫裏でらんが叫ぶ。…大方、またどうでもいい事をおっぱじめるのだろう、今のうちに釘を刺さなければ。
「何叫んでるのよ、らん。今度は何を始める気?」
「はっ、ゆかり様! ただ今倉庫から『蓄音機』なるものを引っ張りだしまして、興味を持ちまして…」
「…レコード式のものだったらともかく、円筒式の蓄音機だなんて。いくらこの倉庫がスキマと繋がっているからって、好き勝手漁っては後々大変なことになるわよ?
それにあなたはゆっくり。もう少し、慎まやかに生活すべきでは無いかしら」
「しかしっ! らんの心から溢れてくる挑戦魂にはほとぼりが無く…!」
「…はあ。まあ、折角出したのですもの。許可するけど。何に、使うの?」
私は手で頭を抱え困った仕草をらんに示すも、らんがそんな事で止まらない事は知っている。顔としっぽだけのらんがこんなに物事に興味を持ってくれるのも、私にとっては嬉しいことだし。
実際の藍は昼食を作っている頃だろう。少し時間もあるし、関わってみますか。私は、らんに話しかける。
「はっ! …その、『蓄音機』って何ですか?」
「…呆れた。なんで、概要を知らなくて存在を知っているのかしら? まあ、いっか。蓄音機とはね」
私は適当にスキマを開き、手で円筒型のレコードをスキマから手繰り寄せて蓄音機に装着する。レバーを回し、蓄音機から奏でられたサウンドは…。
「…へえ、きれい」
「…これは、よくわからないけどロマン派の様なサウンドね」
「ロマン派?」
「ええ。ベートーベンとか、心に訴えかける様な編曲、作曲を施した人。主なクラシックね」
「…へえ」
私とらんは蓄音機から奏でられる音に身を寄せ合い、音が放出されているラッパ部分に耳を傾けてただ時間が過ぎるのを待っていた。
カンフーゆっくり
「はあぁ~! ゆっくり!」
21XX年、世界はゆっくり真拳ブームの渦中にあった!
世の中にはびこる悪や高慢、その様な害悪も極めればまた流水に逆らわない枝木の如き…。
「…れいむ、我閃いたり。ゆっくりとは、己が欲を断ち切ること。煩悩を押し込めず操り別の場所へ放出する、さすれば真のゆっくりが開かれん…」
「師匠! ホットケーキが、焼けたんだぜ!」
「ええ、本当!? いくいく、れいむも行くよぉ! れいむはホットケーキ3つ欲しいな、ねえ、いいでしょう…!?」
「師匠は本当に欲張りさんなんだぜ。これで、なんで師範がつとまるのか謎で謎で仕方が無いんだぜ…」
呆れ口調のまりさ。しかし、れいむには真の強さがあった。
「ひゃっは~! こんなボロっちい家でたたずんでいるなんて、襲われて欲しいって言っているもんだぜぇ~!」
「金よこせ、金!!」
「…あ、あの! 僕ずっとれいむさんのファンだったんです! サインください!」
突然現れたあらくれの3人。れいむは静かに3人の前に立ち、そっと告げた。
「…ほう、この老いぼれに歯向かおうとするか」
「ああ、そうだぜ! 俺たちが正義だ!」
あらくれの一人が突然れいむを殴りかかる!
すると、席についていたまりさが飛び出した!
バコンと、めり込んだ嫌な音が部屋にこだまする! …まりさは、そのまま地面に倒れこんでしまった。
「…へっ、頼りない師を持って無念だったな。師範も師範だぜ、こんな弱く情けない弟子を持って、嫌に思わないのか?」
「…お前らより、強いさ」
「あ゛あ!? なんていった、もういっぺん言ってみろ!」
あらくれは、激昂してれいむに脅し詰め寄る。
れいむは、怯む様子を見せずにあらくれたちからまりさを抱え遠ざけてあげ、構えを取った!
「…確かに、実技や力の強さじゃあ主らの方が強いかもしれんのお。…しかし! 決定的な違いは、」
『心じゃよっ!』
れいむは、覇気をむき出しにする! 腰をすわえた構えから、一気にあらくれ共の背後へと移動する!
「…! じじい、小癪な!」
「遅いわっ!」
あらくれが叫んだ時には、既に打撃が背中に入っていた! 倒れこみながら叫ぶあらくれの一人、何が起こったか理解をしていなく床に向かって拳を出すも、…何も無い!
「…ひ、ひいっ! 撤退だぁ~!」
「俺なんか悪いことしたかなあ…」
「仲間を止めなかったことが悪いのじゃよ」
「し、失礼しました~!」
残ったあらくれは床でのびているあらくれを抱え、一目散に逃げ出した。
「…師匠、まりさは情けなく、弱いです。そんなまりさを先生の門下に置くなど、とても…」
まりさが意識を取り戻したのか、腫れた頬を押さえながら、涙ぐみ言いよどむ。
「…まりさ。本当の強さとは、真っ直ぐな心。それを履き違えては、ならんぞ」
老師は、優しくまりさに語りかけた。
「…はい、師匠! ところで師匠、ホットケーキが冷めてしまいますが」
「…ハッ! 早くいってよ、まりさ! 早くしないと美味しくなくなる、はちみついっぱい持ってきて~!」
「…はあ。こんな人が師匠で、まりさはいいのかなあ…」
ため息は絶えない。しかし、まりさは充実感を感じていた。
21XX年、世界はゆっくり真拳ブームの渦中にあった!
今日もまた、新たな人々がはやる気持ちを胸に門を叩くのであろう、ほら…。
「すみませーん、弟子入りさせてください!」
完ッ!
- ジャンルがどれも全然違うけど和んだwゆっくりと身の無い会話は似合いますね~。
あとなにこの師匠、可愛い -- 名無しさん (2009-05-15 11:16:02)
最終更新:2009年05月15日 11:16