世にもゆっくりしている物語

即興出来る時にとことん即興。

『世にもゆっくりしている物語』

それは、四月。まだ肌寒い時期。連日の残業の末、風邪で寝込んでしまった俺は、
いよいよ熱が39℃台にまで上がり素直に(本当は嫌だが)医者の世話になろうと近所の診療所までやって来た。

「すいませーん・・・。」

力の入らない腕で、ゆっくりと戸を開け中に入ったものの何か雰囲気がおかしい。
入り口から仕切りも無く直ぐ横の待合室には誰も折らず、受付にも人の気配が無いのだ。
とりあえずさっさと診察を済ませて、帰ろうと小窓に顔を近づけて呼んでみるが。

「すいませーん。診察お願いしまーす。」
「診察室に直接どぞー!!!」

なぜか、待合室と薄い壁一枚で遮られている診察室から大きな声が響いてきた。
俺は首をかしげながら、受付の小窓に顔を突っ込んで出せるだけ大きな声を出して返事をする。

「えーっと・・・。受け付け終わってないんですけどいいんですかー!!」
「いいですよー!!!どぞー!!!」

熱で呆けた頭は疑問を浮かべながらも声に従う事を選択し、受付すぐ脇に有るスリッパを取り出し履き替え診察室のドアを開けた。
 ・・・この時。熱があって頭が回らなかったとは言え、慎重に考えて行動すべきだったのだ。

中に入り、薄いカーテンの奥に進んでいくと其処には赤いリボンをした黒髪の女医が机に向かって何かをやっている。
しかし、何か様子がおかしい。何がおかしいと言えば、頭だ。まるで顔の被り物を被っているかの様に不自然に大きく、
また、形も丸顔と言ってしまうにはきっちり正方形にはまってしまいそうなぐらいで不自然に整っていた。

「おちゅーしゃしますから其処に座ってください。」「はっ?」

恐らく、聞き間違いではない。こちらを向かずに手で椅子を示す奇妙な女医は診察もせず、いきなり注射をすると言ったのだ。

「いやいや、まずは診察をですね・・・というか注射嫌なんですけど。」
「かもーんまりさ。」「へーい、了解。だぜ。」

女医と同じような比率の頭をし、金髪に場所に不似合いな黒いトンガリ帽子を被った姿の看護士が女医の横に音も無く現れたかと思うと、
眼にも留まらぬ動きで俺を後ろから羽交い絞めにしたのだ。

「は、はなせ・・・。」「直ぐ済みますから大人しくしててくださいねー。」

急な出来事の上熱で力が出ず、締めを解くことが出来ない。だが、身の危険を感じた俺は、渾身の力を込めて身体をよじる。
すると偶然にも赤リボンが持ってい注射が後ろの金髪の顔に刺さったのだ。

「うわらばっ!!!」

大声と同時に頭が弾け飛ぶ金髪。しかし、身体の方は頭を失った筈なのに力が弱る所かどんどんと強くなっていく。

「れいむ、酷いんだぜ。」「ごっめーん☆間違えちゃったー。」

爆散し、液状化した金髪頭の声が何処からか聞こえて来たかと思うと、散らばった液体が集まり
女医の足元で頭だけという奇異な姿で無表情に女医に訴えかけている。
もはや、俺の頭は理解を超える出来事と熱で限界を迎え、緊急事態に関わらず気を失う。と言う選択を強いられたのだった。

それから何が有ったのかは解らない。気がついた時には家の布団の中で、何故か風邪は直っていた。
先程のあまりに突飛な出来事は夢だと思うことにして、病み上がりですっきりとしない頭を抱えながら顔を洗おうと立ち上がる。すると、

「お医者さんゴッコは楽しかったね・・・。」「さて、風邪も治ったことだし今日は何で遊ぼうか・・・だぜ・・・。」

背後から何かが聞こえ、後ろを振り向けば、其処に居たのは・・・。                           即興の人

  • 北斗神拳吹いた -- 名無しさん (2009-05-13 16:43:36)
  • ゆっくりしてるね -- 名無しさん (2010-11-29 18:18:06)
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最終更新:2010年11月29日 18:18