「おっふろ♪ おっふろ♪」
「ふふ。れーむは、私とのお風呂がそんなに楽しみですか」
「ゆうっ、うんっ! おねーさんとの、お風呂なんだよお~っ!」
「ちょっと、れーむ! そんな風に叫ばれると、流石に恥ずかしいですよ…」
最近暑い日差しが続く常日頃。
汗をかき、体がべたついている私たちはホイホイ里のお風呂屋さんまで来たのでした。
銭湯の料金は5文、良心的ですね。れーむの分と共に払い、私たちは広い更衣室へ足を進めました。
「ゆうっ! おねーさん、ロッカーがいっぱいあるね!」
「ええ。里の皆が、利用しますからね」
「それにしては人がいないね、貸し切りかなあ?」
「ふふ。そういう訳ではありませんが、似たようなものですね。ラッキーですね、れーむ」
れーむを一旦床に降ろし、汗ばんだ巫女服をがばあと脱ぐ。
「うわあ、おねーさん大胆…」
「普段共に居るのに、今更何を言っているのですか。脱ぎ終わりましたし、向かいましょうか」
私はれーむを再び胸に抱え、浴場へ続く戸を静かに開けます。
お腹に抱えたれーむの感触は普段と違いペタペタしている様に感じ、ちょっぴり新鮮です。
私が汗をかいていると言う事も関係あるのでしょうが、もともともちもち肌のれーむです。
ちょっと浮かせてお腹にくっつけるといい具合にピタンとはまって、気持ちいい…。
…れーむからジト目で見られてしまったので、自重しますか。
そのまま、浴場の中へと入っていきました。
「…あれ。意外」
「どうしたの、おねーさん?」
目の前に広がる浴場の景色は、私が居た現代のものとさほど変わらない設備の整った銭湯でした。
シャワー、サウナ室が完備されています。
無論、私の時代から比べればちょっと古臭くなってしまうのはご愛嬌ですが。それでも、大層手間がかかることは無い、便利なお風呂屋さんといった感想を抱きました。
これは助かるなあ。私は家から持って来ていたシャンプーセットを戸から少し離れたシャワーの手前に置き、温い湯を出してれーむの頭に掛けながらわしゃわしゃと手首と指を使い掻き回します。
「ゆうっ! おねーさん、ちょっと痛いよ…」
「我慢していなさい」
私は嫌がるれーむを手で静止し、シャンプーハットを被せシャンプー液を手のひらに乗せてそのままわしゃわしゃと再び掻き回します。
いい具合に泡が立ってきたのでそれをすすぎ、シャンプーハットを外し今度はリンスをれーむの髪に撫でる様に掻いてゆく。
ある程度れーむの髪にリンスが行き届いた所でそれもすすぎ、持ってきたタオルでれーむの体回りを軽く拭いてあげて、終わりです。
れーむは饅頭で汗をかかないそうですし、これくらいでいいでしょう。
れーむは目をポケーとまばたきさせたまま何があったかわからない様に辺りを転がり回っています。
んもう、大袈裟なリアクションなんですから。滑って壁に顔をぶつけても、知りませんよ。
次は私です。とは言え、実はれーむと銭湯に行く前に余りに我慢が出来なくて、一度神社の風呂で湯浴びをしているのです。
そんなに汚く無いし、軽く適当でいいかな…。
適当に髪にわしゃわしゃ湯をあて、体をタオルで拭き、メインとなる風呂へと向かいます。
特に私は髪が長いから、乾かすのが大変なんですよね。これ位は、妥協させてください。
「…おねーさん。もっと丹念に洗ったら」
れーむからクレームを貰ってしまいました。
うう、厳しいですね、れーむ。
しかし、私はその様な時にすぐに対処ができる、魔法の言葉を知っています。リサーチ済みの私に隙はありませんでした。
「れーむ。これが、大人ですよ」
「…ゆ、むう」
れーむは納得行かない様子で、ぴょんぴょん跳ねて私の後を付いて来ます。
れーむをお腹のいつもの場所に抱え、足先から少しずつ風呂へと身を入れていきます。
「熱いっ」
私が瞬時に感じた事は、風呂の湯が慣れていない身にはとてつもなく熱いという事でした。
風呂の温度計に注目すると、…48度。
なるほど、どうやら私たちは一番風呂に入ってしまったみたいです。
れーむが『情けないねえ、おねーさん! 江戸っ子れーむを見ていなよ!』と意気揚々に言うもんですから、信用して抱えている腕をはずして任せてみました。駄目なことは、わかりきっていますが。
お馬鹿なれーむの事ですから、きっと何かをやらかすのでしょう。
案の定、一目散にれーむは風呂へと飛び込んで『熱い! 熱い!』とお風呂の中で苦しみのたうち回っていました。
全く、わかってはいたけどお馬鹿なんですから! 多少の熱さを堪え、足先から少しずつ風呂に入って行きなんとか肩まで入りれーむの側へ近寄ります。
「ゆ゛あ゛あ゛…。おねーさんは、熱く無いの?」
「慣れちゃいました」
強がるための嘘を言葉にし、腕を風呂の縁に置いてしばらく湯に身をうずめます。
もくもくと湯から登っていく湯気。私たちはものの数分で蒸し物のようにされてしまいました。
「…あ゛ー゛、」
「…いいですねえ、れーむ」
「そ゛う゛だね゛え゛、お゛ね゛ー゛さ゛ん゛」
れーむは先ほどからポコポコと泡立つジャグジーの所で何やら遊んでいます。
このまま完全に茹で饅頭になってしまわないか不安なので、あがる事にしました。
「あがりますよ、れーむ」
「ゆえー? もっと居たいよ、れーむ」
そう言いつつもれーむの顔色は真っ赤にすっかり茹であがっています。
文句を言うれーむを引き連れて、更衣室へ出てロッカーに入れて置いたバスタオルでれーむと自分の体と髪をバサバサッと拭きます。
受付前まで行き、最後にお金を2文払いそれぞれコーヒー牛乳、ヨーグルトを手に取り好きな方をれーむに渡します。
「…れーむ、フルーツ牛乳が良かった」
「知りません。私が飲みたいものです」
れーむは横暴だとのたうちまわりますが、じきに落ち着いてコーヒー牛乳を選びました。
蓋を開けてあげて瓶の縁をれーむの口元へ持っていくと、れーむはいい飲みっぷりでごきゅごきゅと喉を鳴らしました。
私も手を腰に当ててヨーグルト牛乳を一気に飲み干します。
キンと冷えた牛乳、頭にくる偏頭痛がどこか気持ちいいです。
れーむも、満足げにベンチに座っています。
…時間が無くて慌ただしかったけど、今度はじっくり行きたいな、銭湯。
- お風呂あがりに、牛乳瓶飲料を頂いて…。
外に出たとき。
夏虫の歌声…。
風鈴の囁き…。
夕闇の微風…。
ゆっくりしてます…。
-- ゆっけのひと (2009-05-12 23:22:31)
- ↑あぁ…もう幻想入りしちゃったからなぁ銭湯…
ゆっくりしたいなぁ… -- (・ω・´) (2009-05-16 02:13:49)
最終更新:2009年05月19日 02:04