よいこのみんな、徹夜はやめよう。
人間、徹夜をするとろくなことにならない。奇行とか平気でやっちゃう。
例えば……土下座の体性で両手だけ万歳するかのようにまっすぐ伸ばして眠ったり、
人によっては何でもかんでも冷蔵庫に仕舞っちゃう事もあるとか。
さて、ここに、一つの日記帳がある。当然俺のものだ。
だが、不可解なことがある。それは、この二月最後の記憶だ。
今年は閏年ではないので28日までしかない。
無いはずなのだが……ある。少なくとも、この日記の中には。
仕事が忙しくて眠る暇も無い状況で家でも作業をしなければならなかった28日。
気が付いたら既に3月を迎えていた。
幸い仕事が後れることは無かったものの、もし遅れていたらと考えるとぞっとする。
それにしても、俺は一体何をしていたのだろう。
その謎は未だに解明する気配すら見えないが、
寝惚けた男の頭の中が理解できるはずも無く、奇妙な日記があるだけだった。
2月28日
眠い。寝たい。ゆっくり眠りたい。
2月29日
気が付いたら二匹の生首がいた。「ゆっくりしていってね!!!」
とうるさい。とりあえず見なかったことにしておく。
朝食何がいいかと思ったら「れいむたちがよういしたよ!!!」
花なんか食えるかと言えば。「たべないと……ふやしちゃうぞ!!!」
と、なぜかご飯を出した。だが、花でご飯が食えるか。
そう言えば「どうしてたべないの!!!」と怒る。
うっせぇ塩気のあるおかずもってこいやと言うと「これならどう!?」と
取り出したのは花。いわゆるフラワー。
花で飯が食えるか塩ッ気のあるものもってこいと言えば、
「さあさあ! このお花さんをおかずにご飯をお食べなさい!」
と来たもんだ。でも普通に美味かった。塩味のエディブルフラワーかよ! ※
「夜のオカズはわたしでも……い・い・の・よ?」
反論する気も起きなかった。
2月30日
今日も平常。からだがだるい。
体の間接をコキコキ言わせながら歩いていたら再び生首がいた。
「足元ががら空きなんだぜ!」
とか言って足払いされた。倒れた先に布団があるとかなんじゃそら。
「ゆっくりゆゆっくりゆゆゆ……」
とか言いながら赤いリボンの生首が震えだした。
悔しい、でも感じちゃう! (筋肉がほぐれるのを)
「お兄さんの体はまりさたちに弄ばれる為に存在しているのぜ?」
「お兄さんの生足をゆっくりゲットしたよ!!!」
明日は体の調子がよさそうだ。エディブルフラワー塩味ってことに疑問を感じるがうめえ。
「この世界では常識に囚われてはいけないのですね!!!」
いつの間に出てきた緑色。
2月31日
体調は非常に良い。
「絶好調なんだねわかるよー」
今度はケモミミか。
「さあ! ちぇぇぇぇんとらんしゃまに好きなだけ悩みをぶちまけなさい!」
ウホッいい尻尾……。9本でいい。
こうして今日は悩み相談室で終わった。
「うんうんわかるわかるよー」
猫耳の方はそればっかりだった。
2月32日
「春DEATHよー!!!」
暦の上とかの以前の問題でまだ寒いっつの。
「春……」
なんかどこかの天使のようなコンビだな。ハイテンション白とローテンションの黒って。
「春!」 「春!」
たとえ寒くなくても暦の上ではまだ二月、冬だっつーの。
「はーる! はーる! はーる!」
結局白い方の熱意に負けて踊り狂った。明日が怖い(筋肉痛的な意味で)
「フィーバー!」
ミラーボールのように見えたのもあいつらの仲間だったらしい。
眩しくてわからなかった。
2月33日
やっぱり筋肉痛で体が痛い。あいつらめ。
「くろまくー」
そうか貴様の責任か
「おーわーびー」
取り出したるは様々なアイス。しかも、全部あの「HagonDaze」(ハーゴンダッツェ)
量は100円クラスの奴の80%前後なのに値段は300%をゆうに越える超高級品。
しかも独りが一日で食える量を明らかに凌駕している。
これは俺の舌を肥えさせて88円のアイスを食べられなくするつもりだな。
だが俺はそんな手に
乗ってしまった。
もう安いアイスなんて食べられない。
黒幕……恐ろしい奴!
……2月33日って何さ?
それどころかアイス食った記憶もないし。
だが、こんなときはとりあえず物的証拠を探せばいい。
冷凍庫にアイスの余りがないなら夢ってことだ。
冷凍庫には高級アイスが山積みだった。
財布の中も銀行の残高も確認したが、少なくても俺が寝ぼけて買った線は否定された。
認めたくはないが、この日記に書かれていることは事実らしい。
「ゆっくりしていってね」
ふいにそんな声が聞こえた。
あいつらがまだいたかのような気分になるが、俺の家には俺しかいない。
結局あいつらに礼の一つも言えなかった。だからせめて返事ぐらいはしてやろうじゃないか。
「ゆっくりしていってね、と」
「みんな、きいた!?」
「ゆっくりきいたよ!!!」
「わかるよー」
「きーいーたー」
冷蔵庫の裏から、床下から、窓から、天井から……。
続々と現れる生首たち。
「それじゃあみんな、これからもここでおにいさんと……」
「「「ゆっくりしようね!!!」」」
さようなら、常識的で静かな俺の忙しい日々。
こんにちは、常識はずれでにぎやかな楽しい日々。それとエディブルフラワー。
おわり
※ エディブルフラワーとは食べられる花のこと。ググれば詳細がわかるかも。
- ちょっと可笑しな日誌を読み返す―――というスタイルが新鮮でした
この主人公、ゆっくりと同居が当たり前になってしまったのかな?
それとも一人になった後で日誌を見ているのかな? すごい不思議な話 -- 名無しさん (2009-05-14 00:35:03)
- バグった僕の夏休みみたいw -- 名無しさん (2009-05-21 13:25:38)
- ジブリの作品みたいに、和やかでいいですね。
やっぱりゆっくりは素晴らしいと思います。 -- ゆっけのひと (2009-05-25 22:26:32)
最終更新:2009年05月25日 22:26