4月15日 06:20
かくしてゆイタニック号は深き海の底へと沈んでいった。
4月18日 09:00
港で、私を1番最初に出迎えてくれたのは、見覚えのある、大きな大きなふかふかボディだった。
私は、それまで感じていた寂しさと心細さと懐かしさが混ざり合ってあふれ出しそうになり、
無意識のうちにドスに向かって駆け込み、そのふかふかボディに抱きついていた。
「ドスっ!!ドスっ!!」
「良かった、無事で‥本当に良かった」
なんだか、一気に安心して涙が出てきた。
嫌だな、こんな泣き顔、誰かに見られたくない。
だから、私はドスのそのふかふかした身体に一層身体を委ねた。
「ドスぅ‥ドスぅ‥私、私‥」
「話は聞いているよ。頑張ったみたいだね」
ドスがいつもの優しい声で語りかけてきてくれる。
違う、私があの時あの場所で出来たことなんてほんの少しだ。
頑張ったのは私じゃない。頑張ったのは。
「ドスぅ、まりさが‥まりさが‥」
「分かってる、ゆっくりと話を聞こう」
船は沈み、もう二度と浮かび上がることはないだろう。
残ったのは生存者達の命と、
彼らが語る“ゆ劇”のみ。
あるゆっくり達は、仲間と力を合わせ逆境を乗り越えた。
ある女性は、残る必然を乗り越えた。
ある女の子は、何十年も前に死んでいた。
ある博士と助手とゆっくりは、いかだで遭難していた。
ある料亭は、化け物共の襲撃を受けた。
ある漂流者は、この次元に舞い降りた。
ある大泥棒は、過去との決別を果たした。
ある海賊団は、ちょーかわしろかった。
ある青年は、幸せな日々を繰り返した。
ある姉妹は、襲い掛かる悪意を振り払った。
あるお姉さんは、ころしてでもうばいとった。
あるゆっくりは、大切な存在を護り通した。
あるゆっくりは、思索の末大切なものを手に入れた。
あるゆっくり達は、暴露大会に興じていた。
ある神は、助けを呼ぶ者の声に応えた。
あるゆっくりは、相棒の無茶にまた付き合わされた。
あるゆっくりは、バナナをムシャムシャした。
あるゆっくりは、嘗ての教え子と舞い踊った。
ある暗殺者は、最強の標的と相対した。
ある聖緩慢天使は、リアルが充実して妬まれた。
そして、彼女もまた、
“ゆ劇”を語り、
新しい物語の形を紡ぐ。
ゆイタニック号沈没事件。
被害総額 :計り知れない
語り継がれるゆ劇:プライスレス
確認された犠牲者:0
以下、補足
※頑張って沈み逝くゆイタニック号から脱出しましょう。
別に脱出に拘る必要はないです。きっと他の人が良い生存方法を考案してくれます。
※ゆイタニック号のスペック、事件のタイムテーブルはほとんどタイタニック号と同じにしました。
ただ、本物は氷山と激突した後、午前2:20には沈没しきってしまいます。
それだと創作の幅が縮みそうだったので、ゆイタニック号にはもうちょっと粘ってもらいました。
※企画所に投稿したものと若干の差異がありますが、互いに矛盾するものではありませんので、どっちを規準にしても大丈夫です。
※沈み方は映画『タイタニック』を参考に。エンダァ~♪
※世界観は基本的に私たちが居る現代設定ですが、書きたいものによってフリーダムに。
ゆっくりが居るんだから妖怪も居てもいいし、魔法使いや妖精だって居てもいいと思います。
ゆっくりもペットだろうと野生だろうとブルジョワだろうとアリです。フリーダムで。
※犠牲者0とは飽くまで、乗員名簿と生存者を照らし合わせた結果。つまり‥
※船長については、自分でもよく知らないので、書きたい方がいらっしゃいましたら、どうぞご自由に。
- 何か物足りないと感じていたので加筆修正ですよ。エピローグだけどプロローグ風にしてみました -- かぐもこジャスティス (2009-07-18 02:26:36)
- それぞれの“ゆ劇”の紹介が面白すぎですw -- 名無しさん (2009-07-19 12:41:29)
最終更新:2010年08月28日 19:19