春だけど最近暑いよね?

「ゆぅぅぅぅぅ!!ころさないでぇぇぇぇぇぇ!!」
…お前もかよ
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※数分前―

俺のバイトは焼肉屋が経営する肉屋の惣菜調理、なんだかんだで5年になる。
へたな社員より古株だ
ここは焼肉屋が大元なだけあって材料が良い物を使えるのでほとんど手作りの…
ええい、営業トークは好かん!

さて今月の特売は餃子『お一人様3パックまで』だ。
半年ぶりの餃子特売だから相当な数が出ると予想され、連日餃子作りだ。


さて、挽き肉が挽けるまでの間にニラを切ってと、
塩、砂糖、胡椒、味の素、ニンニク、生姜、隠し味、醤油と胡麻油を量り…
あとはキャベツをプロセッサで微塵切りにし脱水すれば具の準備が完了する。

ペリ…ペリ…

最近キャベツは値段が上がって
しかも春キャベツだから量が少なくて外側剥がすのがめんどい
…ペリペリ
しかし良く喰われてるな、こりゃ相当味が良い証拠

…ペリ

―あ

「ゅぅ…ゅぅ…ゅ?」

外側の葉を剥がしてたらゆっくりちぇんが出てきた
「あらら、ゆっくり?」
「あら~、結構育っちゃってるじゃない」
ちぇんの声にパートさん達が気付いたらしい。
確かにちょっと大きいな、まあ大きいっても子ゆっくりくらいだが。

「ゅ?わからないよー…ここどこ?おにいさん」
―怖い工場ではないぞ
「わかるよー ちぇんはきゃべつさんでねちゃったんだねー」
―迅速な理解感謝する


こうゆうゆっくりには畑に侵入して野菜を食べてそのまま中で眠って紛れるゆっくりの子供と、
農家が農薬を減らすために野菜につく虫を食べさせるゆっくりがそのまま紛れる子供の場合がある。
でかい奴でもたまに器用に中をくりぬいてすっぽり収まってる奴もいるとか…

多分キャベツの具合からしてコイツは後者だろう。

で、ゆっくり達は眠ったまま冷蔵庫にいれられると時間が止まったように眠り続け、
こうして発見されたり、冷やされっぱで萎んでしまったり、
最悪包丁で切る時まで気付かれず一緒に切られてしまったりらしい…ッス

「若い人は詳しいのねぇ」
「まー、切られなくて良かったねぇ」
「ここがどこだかわからないよー?でもちぇんはうんがよかったんだね、わからないけどわかるよー」

未だ頭から「?」が抜けないらしいが、さすがに農家で飼われてたちぇんは事態の飲み込みが早い。

箱に書かれた産地は…珍しく遠い所のだから悪いが同じ所には帰せんな。

「ゅぅ…もうおじさんやかぞくにはあえないんだね、わかるよー…」
―すまんが強く生きてくれ
ペリペリ…
―あんま都会じゃないから割りと棲める場所もあるかもしれん
…ペリペリ
―まあ箱に分けた中から食べれそうな葉っぱでも食べててくれ、知っての通りの春キャベツだしな
ペリペリ…

―あ、後 静かにな ザク…ザク…

「わかるよー、おにいさんはおしごとちゅうでちきゅうにやさしいんだねー、わかるよー
むーしゃ、むーしゃ」

ザク…ザク…

―ん
「…ゅく?」

―おーい、ちぇん仲間がいたぞ
「ゆ♪ゆっくりし…に゙ゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
Σビックゥ!
「わぁ!…なに?」
「びっくりしたわぁ…」

―…二匹目です。

ちぇんの次はゆっくりらんか、運が良いのか悪いのか
パートさんはともかく、先輩のイタズラで耐性のついた俺を驚かすとは油断ならんな。

つーか何故怯える……包丁か。

「ゆぅぅぅぅぅ!!ころさないでぇぇぇぇぇぇ!!」
…お前もかよ


前にも仕事中、うっかり包丁持ったままパートさんを注意したら
寝不足で顔色と目付きが悪かったのが相まって「殺されるかと思った」と言われ未だにネタにされる
…傷つく。

「しにたくない!しにたくないよぉぉぉぉぉっ!!」
―いい加減落ち着きなさい。

出てきたらんを葉っぱごと持ち上げる

「いやぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「わかるよらんしゃま!!びっくりしたんだねー!でもだいじょうぶだよー!!ゆっくりするんだよー!!」
「ゆあぁぁぁっ!…ゆ、ゆゆっ?ちぇん?ちえぇぇぇぇぇん!!」

葉っぱ伝いに駆け寄るゆっくりらん、
同じく駆け寄るゆっくりちぇん、
そして互いにスルーから定位置に来ての……

「「ゆっくりしていってね!!」」

この連携である
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 ・、
とりあえずちぇんの説明だと、このらんは別のお宅から手伝いに来て後は同じ経緯らしい

―春だからなぁ… 「はるなんだよー」 「はるだね!」

恐るべし春
ペリペリ…

―あ。

「ぁちゃぃ…しゃぃきょ…」
恐るべし春。

 ・・・、

ついに現れた春の犠牲者・ちるのの回復後、どうするかを聞いてみると…

「ちぇぇぇぇぇん!!」
「らんしゃまぁぁぁぁぁ!」
「ちぇぇぇぇぇん!!」
「らんしゃまぁぁぁぁぁ!」
「ちぇぇぇぇぇん!!」
「らんしゃまぁぁぁぁぁ!」
…(省略)

「しんぱいむようなんだよー!みんなでがんばるんだよー!」
「ちぇぇぇぇん!ちぇぇぇぇぇん!」
「しゃいきょーにょあたいにまきゃせときにゃしゃい!」

とゆう事になったらしい……とゆう事になったらしい。
まぁ頑張れ

餞別になるべく食べれそうなキャベツを三匹と一緒に外に置いて俺は仕事に戻った。

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すっかり仕事モードで忘れて、仕事が終わる頃にさっき置いた場所を見てみるとすでに三匹の姿は…

「ぁちゃぃっ…ちぇびゃ…ゆっきゅ…」
―あ、溶けてる

恐るべし春。

だが…すでに残りの二匹の姿はなかった。

ちるの曰く、
『あの二人を邪魔するなんて野暮な真似はしないさ…フッ』と言う事らしい。

結局ちるのはこれからの季節この周辺で暮らせないので、常務に相談した所…

「氷作る手間が省ける電気代と水道代節約だな!」と、ちるのは店の配達用の商品を凍らせる《冷凍係》の仕事を与えられた。
「あたいぎゃいにゃきゃまったくゆっくりししゅぎね!」
そういやなんで畑にちるのなんていたんだ?

そんな事を考えていたら報酬として常務から昼飯の残りの菓子パンを貰えた

菓子パン代浮いた、サンキューちるの!
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帰りの途中で俺はなんとなく、今日の夕飯はいなりずしにしよう
そう思った。


ご飯炊いてないや…


おしまい。

あとがき

れいむとだらだらしてると暇人にしか見えなくても
ちゃんと働いてて、違うゆっくりも紛れる事もあったり…な話を書いてみました

では

  • ちるの欲しいなー^^ -- 名無しさん (2011-09-21 08:24:26)
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最終更新:2011年09月21日 08:24