普通の魔法使い魔理沙ちゃん 第一話

命短し、恋せよ乙女!
私は普通の魔法使い魔理沙ちゃん!
自分で自分のことちゃん付けして恥ずかしいのは内緒だぜ☆
「ゆっくりしていってね!!!」
こいつは魔法少女に必須のマスコットキャラクター、ゆっくりアリス。どぎつい都会派コメントがチャームポイントだ。何気に飛行能力も持ってるんだ。
私の使命は単純明快、困った人を助けてあげること。そのために今日も幻想郷を忙しく飛び回ってるんだ。
「しくしく……しくしく……」
おっ、さっそくいかにもな泣き声を上げている少女を発見!
「森の中で一人佇み泣く少女! きっとらんぼうされたんだね!」
「いや、第一話からそういう重いのは勘弁してくれ」
ともかく泣くな乙女! 今行くぜ!
「しくしく……しくしく……」
「どうしたんだいお嬢さん……ってアリスか」
泣いてたのは私のご近所さんのアリス・マーガトロイドだった。孤高で強かなこいつが泣いているなんて、何があったのだろうか!
「おねえさん、泣かないで」
おっとこいつもいたのか。小さいから気がつかなかったぜ。アリスの足元でアリスを慰めているのはゆっくりまりさ。私と同じ帽子を被った実にチャーミングなゆっくりだ。アリスはこいつを飼っていることは周知の事実。今も一緒に散歩でもしていたのだろうか。
「しくしく……しくしく……」
とにかくアリスに事情を聴こう。
「なんで泣いてるんだ、アリス?」
「ゆっくり説明してね!」
「しくしく……魔理沙に話したって無駄よ……しくしく」
「そんなことないぜ! 友達だろ? できることなら何でもするぜ!」
「しくしく……本当に?」
「乙女に二言はない」
「魔理沙はうそつかないよ!」
「そう……」
アリスの口元が微妙に引き攣った気がした。
「魔理沙って言葉遣いがガサツじゃない、なのに自分のことを『俺』とは言わない。何で言わないんだろう、そう考えてたら悲しくなってきて……しくしく」
「え、いや、それは……私は女だし」
「ガサツで適当で卑しくて、そんな魔理沙が中途半端に女ぶっているのを考えると涙が出てきて……しくしく」
「何か、悪口言われてないか私?」
「気のせいよ……しくしく……魔理沙が一度でも自分のこと『俺』って言ってくれれば、この悲しみも治まるかも……しくしく」
「おいおい。そういうのは……何というか、恥ずかしいじゃないか」
「何でもするってのは嘘だったのね……しくしく」
「う……ゆ、ゆっくりアリス、同じアリスとしてなんとか言ってくれよ」
ゆっくりアリスは目に星を浮かべて私を見つめていた。その期待する目はやめろ。
「アリスおねえさん! まりさが代わりに言うよ! おれまりさ! おれまりさ!」
おいおい、そういう健気なこともやめてくれ。そんなことされると――
「まりさ、もういいのよ。私が我慢すればいいんだから」
「まりさに言わせるなんて、魔理沙は鬼畜だね! 鬼畜王魔理沙だね!」
ほら、こうなる。というか、何で私が一人悪者になってるんだ? あとゆっくりアリス、いつの間にアリス側に移った。
「わかった、わかったよ。一度だけだぜ?」
「「本当!?」」
おいアリスども、声を被らせるな。ゆっくりまりさはきょとんとしている。さすが元が私なだけに可愛いぜ。
「ん、えーと、わ……俺は魔理沙」
「声が小さくて聞こえませーん」
「大声だしてね!」
……こいつらうぜぇ。
「……俺魔理沙」
「聞こえた? ゆっくりアリス」
「ぜんぜん聞こえないね!」
……
「お、俺は魔理沙! 俺は魔理沙だぜ!」


あっ。あれ、いきなり首が回った。左頬が痺れて熱い……えーと、アリスが右手を振りかぶってるな。んーと、んーと……ビンタ喰らった?
「あ、アリス、なんで」
「魔理沙は『俺』なんて言わないっ!」
「…………は?」
「ふー、すっきりした。じゃあまりさ、帰りましょう」
「おねえさん、今日のおやつはつぶあん? こしあん?」
あれ、何でこいつら普通に帰ってるの。
「どっちも外れ。晒し餡よ」
「わーい! 晒し餡だー!」
立ち尽くす私とアリス達の距離はどんどん離れて、やがて見えなくなった。……何か涙出てきた。
「ゆっゆっ」
「……なんだよ。ゆっくりアリス」
「明日があるさ」
「うるせえ」


  • 続き激しく希望 -- 名無しさん (2008-08-25 20:06:11)
  • ほのぼのしていて楽しいwww -- 名無しさん (2008-08-25 22:08:58)
  • クソワロタ -- 名無しさん (2008-10-06 15:29:57)
  • 不条理すぎるwwだが、そこがいい! -- 名無しさん (2008-10-06 18:16:31)
  • アリスが精神的に不安定すぎるw -- 名無しさん (2009-08-15 22:17:51)
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最終更新:2009年08月15日 22:17