昨晩寝てるときに何となく思いついた妄想を居ても立ってもいられなくなり
文章にしてみた。
流石に普通にアップする内容じゃないのでここに投下します。ゆっくりも全然でないし。
これはもしもの話です。
第3次αのイデエンド的なもので、『夜雀~』本編とは一切関わりありません。
また、描写的にリョナ的なものを含んでいるような気がしなくもないです。
物好き意外は見てはいけないと思います。
見終わったら『この変態!変態!変態!!』と作者を罵るべきです。
条件は以下の通り。
①勝敗が決した時、幽々子のHPが70%以下。
②ゆっくり進化イベントを起こす。
③味方増援A(妹紅)
味方増援B(ルーミア、リグル、チルノ)
味方増援C(文)
上記どれかの味方増援が幽々子戦中に現れる。
①、②、③いずれの条件も満たさないで、対幽々子戦で敗北する
以下本文。
その瞬間、心中にあった思いは諦め。
実力の差は最初から分かっていたことだ。
それでも、彼女は奪われた妖怪としての誇りを取り返すため、あらゆる手段を投じて宿敵に立ち向かった。
弾幕勝負とは元々力の無い人間でも妖怪を退治できるように、
ある程度の力の差なら弱い者でも覆すことのできる勝負形式だ。
そのルールの中でなら、いくらでも勝つチャンスはあり、
例え勝利を掴めなくとも一矢報いることくらいはできるはず、
彼女は、そう思っていた。
だが、無駄だった。
実力の差は、その力の壁は、余りにも厚く高く、彼女に飛び越えられるものでは無かった。
胸の中の無力感は絶望へと変わり、彼女を身体の端から少しずつ覆い潰していく。
朦朧する意識の中、最後に聞こえたのはあの亡霊のクスクスという笑い声だった。
かくして、夜の弾幕勝負はミスティア=ローレライの惨敗で勝負を決した。
夜雀たちの歌 ~BADEND~ 『籠の中の鳥』
次にミスティア=ローレライが眼を覚ましたのは、広く厳かな和室に敷かれた布団の上だった。
「‥‥、ここは‥?」
まだはっきりしない意識の中、彼女はそのままの疑問を口に出す。
何故自分はこんなところで眠っていたのだろうか。
明らかに自分が普段暮らしている森とは違う、人工的に作られた人間の住処。
見覚えはない。
起きてもう少し回りをよく見てみよう、そう思い彼女は上半身を起こし、
背筋に鈍い痛みを感じて『ぎっ』と声にならない呻きをあげた。
そして、その痛みによって、彼女は完全に思い出した。
「そっか‥、私は負けたんだ‥」
ぎゅっと腕を掴みながら、堪えるような声で彼女は呟いた。
彼女の身体には大小多くの傷があり、それらには丁寧に包帯が巻かれていた。
決して消すことのできない、敗北の証。
「けれど‥なら私はどうしてこんな所に‥」
それに‥この包帯。
敗北者であるはずの自分を、いったい誰が手当てをしてくれたというのだろう。
よく見ると、着ている服も気を失うまでに着ていたものではない、値が張りそうな寒色系の浴衣だ。
「あら‥お目覚めかしら?」
ガラ、と突然部屋の襖が開けられ、誰かが部屋の中に入り込んできた。
その者の顔を見て、ミスティアの顔が一瞬で青ざめる。
ミスティアの記憶に恐怖と絶望と共に刻まれた、恐ろしいモノ。
西行寺幽々子。
「ひぃ…いや‥嫌‥来ないでぇ!!!!」
圧倒的力の前に惨敗した昨晩のトラウマが甦り、ミスティアは震えながら大きな叫びをあげ彼女を拒絶する。
だが、ミスティアは蛇に睨まれた蛙のように、その場から一歩も動くことができなかった。
「あらら、大丈夫よ。危害は加えないわ」
そんな彼女の恐怖を無情に微笑みながら、幽々子はゆっくりと彼女に近づいた。
そして、震えるミスティアの頭に向けて片手を伸ばし、
「ひっ」
怯える彼女の頭を優しく撫で上げた。
母の掌のようにぬくもりと温情を込め、自分は恐くない存在なのだと赤ん坊を諭すように。
だが、ミスティアはそんな幽々子の態度が却って不気味だった。
「な‥なによ!!何するつもりなの!!」
「そんなに恐がらないで。これからはずっと一緒に暮らすのだから」
「はぁ!?」
ミスティアには目の前の亡霊が何を言っているのか、意味が分からなかった。
「な‥何を‥」
「気にいったのよ、飼ってあげるわ。夜雀」
にんまりと、新しい遊びを見つけた子供のような眼で、幽々子はミスティアの恐怖で染まった瞳を真っ直ぐ見つめがらそう言った。
「いいでしょ?勝負に勝ったのだから、貴女の身体はもう私のもの」
「‥そんな‥そんな訳‥!!!」
冗談じゃない。
こんな恐ろしい亡霊に、妖怪である自分が飼われるなんて考えられない。
誰かに飼われて自由を失うなんて御免被ることであるし、
何よりこの亡霊は自分の宿敵だ。
そんなこと‥
「あら‥嫌なの‥?」
ぞぞぞ、と。
ミスティアの背筋に強い悪寒が走った。
幽々子の表情は変わらず微笑んでいるばかりだ。だが、その笑みの向こうには恐ろしいほどの死の気配がこびりついていた。
に‥逃げないと‥
両腕を立て、座り込んだまま後ずさろうとしたミスティアの肩を、幽々子の手が優しく掴んだ。
「ひぃっ」
決して強い力は篭められていない。ミスティアが本気を出せば簡単に振りほどけるほどの弱い束縛。
だが、ミスティアにはそれが出来なかった。
その手を振りほどけば、幽々子に対し、その提案に逆らうというミスティアの意志を示してしまうことになる。
もし、この提案を断ったら、幽々子は自分に何をするか分からない。
その先の見えない未来がミスティアには恐ろしかった。
そして、何よりも‥。
逃げられる気が‥しない。
昨晩の戦闘で、ミスティアの、幽々子へ立ち向かった意志は完全に砕けてしまっていた。
ミスティア自身が自覚していた訳ではなかったが、もう幽々子には勝てないものだと、心の奥底では分かってしまっていた。
闘う意志は、もう夜雀にはない。
もし無事逃げおおせることができたとして、いつまたこの亡霊が昨晩と同じように自分の目の前に現れるか分からない。
その時、何をされるか。
逃げ続ける限り、その恐怖が永遠に続く。
ミスティアはそのことを、心の奥底で深く、鋭く、理解してしまった。
夜雀の少女は怯えた表情のまま顔をあげる。
そこには、変わらぬ笑みで微笑む幽々子の姿があった。
「ねぇ、いいでしょ?私のモノになりなさい。夜雀ミスティア=ローレライ」
その誘いに答えるということは、自由な妖怪としての生き方を自分を永久に失うということ。
1年間、幽々子に対して貯めに貯めてきた幽々子への敵愾心を、自分から捨ててしまうということ。
そして、夜雀としての、ミスティアがそれまで生きてきたこの誇りを、何より大事なその歌を、
自分から相手に差し出してしまうということ。
「はい‥」
そのことを全て分かった上で、ミスティアは肯定の返事と共に力なく幽々子に対し頭を垂れた。
恐怖にかられ涙を眼に溜めながら、それでも乾いたような笑顔と共に。
そして幽々子はミスティアに、自分のペットになった記念のプレゼントだと言って、懐から何かを取り出しミスティアに手渡した。
それは、皮でできた青色の、普通のものより値の張りそうな首輪。
第3者の目から見てもすぐ分かる、所有物であるという証。
「それを、自分で、自分の首につけなさい」
意地悪く頬を紅に染め微笑みながら、幽々子は新しいペットに対し最初の命令を下した。
ミスティアは戸惑うような視線を幽々子に向ける。
だが、その表情は決して変わらない。
闘うことを諦めたミスティアでも、さすがにこれを首に巻くことには強い抵抗を覚える。
だが、拒んだところで幽々子はそれを決して許しはしなだろう。
ミスティアが実行するまで、変わらない笑みでニヤけたまま、その様子を観察し続けるに違いない。
「‥くっ」
意を決して、ミスティアは首輪を自分の首に回す。
そして、首が絞まらないよう調整して、自分の首に首輪を固定した。
悔しさと恥ずかしさで、その顔を真っ赤に染まり、眼からはついに何滴かの雫が零れ落ちた。
これで、自分はもう完全に、幽々子のペットに、誰かの所有物というレベルにまで、堕ちてしまった。
幽々子は満足そうにその光景を見届けると、
ミスティアの顎の下に手を回し、クイ、と彼女の顎をあげその下に巻かれた首輪をまじまじと見つめる。
「うん、貴女にならよく似合うと思っていたわ。貴女も嬉しいでしょう?」
幽々子は本当に嬉しそうに、残酷なまでの微笑をミスティアに向けた。
「はい‥」
幽々子となるべく眼を合わせないよう顔を背けながら、力なくミスティアは答えた。
「聞こえなかったわよ?もう一回言いなさい」
少し語気を強め、口元だけを歪ませながら幽々子はミスティアに対し、命令した。
ミスティアは再び恐怖に身を包まれながらも、その命令に本能的に従ってしまう。
「う、嬉しいです。私は‥ミスティアは‥今‥とても嬉しいです」
「そう、良かった。その首輪大事にしてね」
「はぃ、分かり‥ました‥」
そして、幽々子のペットとなった夜雀は、諦めと失望を篭め、最後に自分の主人の名前を言った。
「幽々子‥様」
GAME OVER
コンティニューしますか?
はい ニア いいえ
「ぴ、ぴやぁああああ!!!」
「ゆ、ゆゆゆ!!」
昼寝をしていたミスティアはガバッと身を起こした。
胸の上に乗っていたらしいミスティアのゆっくりがゴロンと転がり落ちる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ‥何だ、夢か‥」
「んもう、お姉さん、危ないでしょ!突然起き上がらないでよ!」
「うう‥。ああごめんごめん。ちょっと怖い夢を見てた」
ぷんぷん怒るゆっくりを取りあえず脇に置いて、ミスティアは起き上がり周りの景色を確かめた。
ここは、暖かい日差しが一面に広がる縁側。
中庭には、見渡す限り一面の桜の木がその花びらを舞わしている。
季節は春。暖かく、風も少ない。
絶好のお花見日和といったところか。
この陽気に誘われついうつらうつらしてしまったらしい。
しかし、どうかしている。あんな夢を見るなんて。
「あら、起きたのね。本当によく眠っていたけど」
ミスティアの後方から、聞きなれた亡霊の声がした。
ミスティアは振り返りながら答える。
「春の陽気が私を不意打ちしたんですよ」
そこにはいつもと変わらぬ笑顔でミスティアを見つめる亡霊の少女がいた。
「妖夢がお団子を作ってくれたわ。貴女も食べるでしょ?」
「はい、幽々子様!!頂きます」
「ゆ、れいむも食べるよ!置いてかないで!!」
あんな、昔の夢を見るなんて。
そう思いながら、夜雀の少女は敬愛する主人の背中を追っていった。
その首には、大事にされているのであろう、綺麗なままの青い首輪を付けながら。
BADEND?
※作者→かぐもこジャスティス
最終更新:2009年07月05日 09:18