「ゆーっ!」
こいつは相棒のまりさ。ゲームセンターで出会い、ギルティギアでお互いの力を
出し切り、最後はタイムアップで俺の勝ちとなった。そして、俺は
店長さんに呼ばれある話をした。「このゲームセンターもつぶれてしまう、引き取ってやってくれないか」と言うことだ。
勿論俺は快諾した、こんだけ楽しめる対戦相手がいつも近くにいてくれるんだ、こんなにうれしい事は無い。
このまりさ、中々の達人でゲーセンでは『ゲームセンターゆらし』と呼ばれていたらしい。
ちゃんとスティックが握れるのか?最近は技術が発達しており、
コントローラーがDDRみたいなマットになっててゆっくりでも
ゲームが楽しめるようになっているのだ。
俺はゲーム機今懐かしの「ファミリーコンピューター」を起動する。まりさもコントローラーの上に乗り
何かを考えている。きっと戦略だろう。
今回のゲームは「大乱闘 スマッシュブラザーズ」にも登場したキャラが主役の「アイスクライマー」
これは山の頂上を目指すゲームで、協力しあう事も、邪魔しあうこともできる。
勝利条件は頂上のコンドルのつかまる事。
勿論の事、ルールは後者。俺はコントローラーを握り締める。手に汗を握る対戦。
始まりは、ファミコン特有の気の抜けた音楽だった。
「行くぞッ!まりさ!」
俺は叫ぶ、いつもはお調子者のまりさも、今回ばかりは真剣だった
最初のステージ……互いに、上へ向かう戦いが始まった。
敵キャラを避け切りつつ、相手を邪魔して上に上がる。なんて熱い戦いだ。コントローラーを握る手は不思議と
力強くなっていく。
そして、ステージ1クリア。最初は俺の勝利だ。俺とまりさの緊張感とは裏腹に、勝利画面で
空気の読めないジャンプ音が響く。
「フッ……」
一勝したからか、少し余裕を持つことができた。が、その余裕が命とりだと知ったのは、すぐだった。
「なッ!は…速いッ!」
まりさは最速で頂上を目指していた。このゲーム、1つ上に行くごとに1つ下の層が消えるため
取り残された俺は当然、ゲームオーバーとなる
「きさまッ!このゲームやりこんでいるなッ!」
「こたえるひつようはないよ」
そうだ、忘れていた。このゲームはゲームセンターでアーケード版としても設置されていて
まりさもそれをやりこんでいた……流石我がライバル、一筋縄ではいかんか
その後も、俺とまりさの戦いは続いていた。そして最終ステージ。互いに一歩も譲らず同点。
このステージで勝利したものが、勝者となる。
俺はゆっくりと上に進む。このステージ、吹雪が吹いており立ち止まっていると吹きとばされてしまうのだ。
指を動かしつつも、まりさの様子を見るとッ……
「ひっさつッ!ゆっくり炎のゴマーッ!」
まりさは回っていた。そして、その周りに炎が吹き荒れる。
着実にコントローラーを操作しているまりさは、いとも簡単に頂上へたどり着いた。……負けた。
「負けたよ。」
いつの間にか出っ歯の生えているまりさを胡坐の上におく。
「ゆふん、当然だよ。まりさだって簡単にやられるわけにはいかないんだから。」
出っ歯を器用に外しながらまりさは言った。さっきの必殺技のせいか、すこし香ばしい匂いが漂う。
「今度は何で対戦する?」
俺は箱の中のディスクやカセットを弄くりながら、まりさに聞く。
「その前にごはんがたべたいよ!さっきのひっさつわざはおなかがすくんだから!」
プンプン、とまりさは怒り出した。俺もお前の匂いを嗅いで少し腹が空いていたんだ、それもいいだろう。
「えーっとアンキモ!アンキモ!アンキモ!」
俺は呪文の様にアンキモを連呼する。今日の料理はアンキモを使おうと思っていたのだ。
料理を作っている途中、まりさは一人でアイスクライマーをプレイしていた。
あいつは完全勝利主義、きっと一面からやり直しているのだろう。だが、倒れてしまっては困るので
俺は急いで料理を開始する事にした。
「そうだ、おにいさん。」
「ん?」
まりさは跳ねながら、俺にこういった
「明日、まりさたちのいたゲームセンターつぶれちゃうらしいから、いきたいんだけど…」
まりさは珍しく遠慮がちに言った
「構わないさ、じゃあ明日早く起きてくれよ?」
「うん!」