リンリーン…
一応、今日は七夕
どっから聞いたのかちびが聞いてきたんで七夕の事を教えると
きゃいきゃいはしゃぎながらあやと一緒に覚えたてのひらがなで『ゆっくり。』と書いた短冊を持ってきた。
笹なぞ用意できんので代わりに風鈴に短冊を吊るしてやった。
最近会話が多くなった影響かちびの発音もしっかりしてきたが、こうゆう辺りはまだ子供だ。
それから夕飯の後からちびは『天の川を見るまで寝ない』と言って張りきっていたが
いつもより25分ねばった後、結局ゆぅゆぅと寝息を立てていた。
まぁ天の川は今のご時世じゃ拝めないだろうから、夢の方が見れるかもしれんな。
そういや俺も最後に見たの、いつだったかな…
リンリーン…
風が心地良い…星は少ないけど悪くない七夕だ。
目を閉じて最近珍しい涼しい夜風を感じる
「おにいさん」
すると、どこからか声がした。
ちびか?と思い振り返ると俺の部屋は消え、コンクリートブロックの床が広がっていた…
ここは覚えがある、俺の中学の屋上だ。
中学?そういやさっきの声は…
「おにいさん」
今度こそ声の主を見る。
そこにいた予想通りの相手に俺は呼びかけた。
―まりさ…か?
「会いにきたよ。」
そう言って、まりさは微笑んだ。
所々が小綺麗になってるが、このとぼけた顔と帽子に付いたねこじゃらしが
俺の覚えているまりさのなにより確かな証拠だ。
そのままとりあえずコンクリートの床に仰向けに寝そべってみると、
空には今まで見たことのない数の星が輝いている。
年甲斐もなく「わぁ…」と声を洩らしてしまった。
「久しぶりだね。」
―…お前、こうゆうの普通お盆とかだろ
「そんなの知るよしもないよ!」
相変わらず素直な即答だ。
―つーか、七夕にしたってもう過ぎたろ
「おそらの上はいつでも七夕だよ」
…それもそうか。
なんか、やっぱ懐かしいな。
昔、昼休みに話してた時と変わんない
俺とあいつとまりさと三人でよく他愛もない話をしてたな。
全然変わんない。
「おにいさん」
―ん?
「ゆっくりしてるね」
―…どうなんだか
「おにいさんの近くを見ればわかるよ。れいむは家族とはなれててもゆっくりしてるよ」
―そりゃ良かった、あいつに文句言われずに済む。そういやあいつには会わないのか?
「あのおにいさんはゆっくりしたてだから、まだまだ…まだはやいよ」
―…そうゆうモンか
「うん」
――、
フワッと吹いた柔らかな風がまりさのねこじゃらしを揺らした。
「ゆゆっ、時間がきたよ」
―そうなのか
「久しぶりのおにいさんとゆっくりだったよ、じゃーね!」
そう言ってまりさは振り向き『むこう』へ跳ねていく。
その途中まりさを一匹のありすが迎え、頬擦りを交わしていた。
あぁ、あれが昔言ってた『まりさのありす』か。
そして頬擦りの終わったまりさとありすは俺に向かって「ゆっくりしていってね!!」を言った…と思う。
そして二匹は『むこう』へ進みそのまま見えなくなっていった。
・・・・・・・
目を開けると外は夜明け。
ずいぶんと早く起きすぎた…
適当に部屋を見るとちびは座布団の上で「ゆぅ…ゆぅ…」と、まだ気持ち良さそうに寝ている。
こっちは窓際に座ったままだったから、まだ眠い…今度はちゃんと横になって二度寝だ…
暑いから掛け布団はいらんからそのまま布団の上にゴロンと寝そべる。
―んじゃ、ゆっくりさしてもらう……
リンリーン…
まだ吹いてくる涼しい風を感じ、俺は目を閉じた…
ろだの投下報告がてら、短編を付けさせていただきました。
一日ずれの短冊⊃『SS書きが早くなりますように』
では
最終更新:2009年07月12日 21:46