※東方原作キャラのルーミアが登場します。
※設定につきましては俺設定が含まれておりますので、イメージと違う場合もございます。
「食べないお饅頭」
ある暑い夏の日の昼下がり──。
人肉大好き妖怪として一部で有名なルーミアは、この日も幻想郷の空を一人ふよふよあ
てもなく飛んでいた。
日差しは強いが暗闇を展開すれば、炎天下の元でも快適に飛行できる。
彼女が単独で飛んでいるのには理由があった。
最も仲の良い友達である氷精、夜雀、蛍の妖怪の三人が、今日はそれぞれ別の用事があ
るそうで、一緒に遊んでくれなかったのである。
氷精は同じ妖精仲間と大蝦蟇退治の約束、夜雀は屋台の食材調達、蛍は時期だから眷族
たちの世話と、それぞれ忙しい。
次に仲の良い、紅魔館門番の元へ遊びに行ったら、どうやら居眠りを見咎められたらし
く、メイド長に説教&体罰をされている真っ最中だった。
門番とは仲良しでも、メイド長とはあんまり仲良しではないため、ルーミアは素早くそ
の場を立ち去った。
「今日はみんな遊べないのかー」
暗闇の中でルーミアは残念そうに呟いた。
遊ぶこと、食べること、寝ること、気が向いたら弾幕ることが、ルーミアにとって楽し
いことである。
遊べない日は、それだけ楽しさが減ってしまったような気がして、なんとなくて寂しく
悲しい気分になる。
一人で居ることには慣れているし、誰にも配慮せず気ままに過ごすのも好きだが、人恋
しい時もある。
ルーミアは空を飛びながら、他に心当たりが居ないか考える。
「んー……巫女、魔法使い、人形遣いは遊んでくれるかな?」
考えてみたが、巫女は機嫌が悪いと物凄く邪険に扱うし、魔法使いは普通に遊ぶのでは
なく弾幕ごっこをやりたがるだろうし、人形遣いはそもそもあまり親しくない。
「……幽香は、ちょっと怖いしなー……うーん」
遊びに行ったら、たぶん相手はしてくれるだろうが、二人っきりだとなんとなく気が休
まりそうにない。
と言うか、大陽の畑でうっかり暗闇を展開すると「あなた、向日葵に恨みでもあるの?」
と思い切り怒られるから、ちょっと怖い。
「うぅ~、橙は修行があるって昨日言ってたし……困ったなぁ、今日は本当に一人だ……」
片っ端から知り合いの顔を思い浮かべてみたが、今すぐ無条件で気兼ねなく楽しく遊べ
そうな相手が思い浮かばない。
今が昼間ではなく、夜だったならば──紅魔館の主のところに行くという手もある。
メイド長はルーミアが来るのをあまり歓迎してくれないが、何故か主は「闇の妖怪なら
ば私の眷族に相応しいわね」と言って、暇なときは遊んでくれるし、美味しいものをご馳
走してくれる事も多い。
あまり会うことはないが、紅魔館主の妹も「あなたの闇は落ち着くわ」と、何故かルー
ミアをやたらと気に入ってくれている。
「んー……夜まで寝ようかなー」
やや暗闇を薄めて地上を確認する。
ちょうど、どこかの森の上空に差し掛かったようだ。
「寝るのに良さそうな場所、あるかな?」
どこの森なのかはわからないが、普通の森ならば寝場所には困らないだろう。
適当にあたりをつけてルーミアは降下を開始した。
「ゆっ! ま、まりさっ! なんかくろいのがおりてくるよっ!」
空から降りてくる黒い塊を見て、ゆっくりれいむは友達のゆっくりまりさに声を掛けた。
「お、おちつくんだぜ! あれはきっと……に、にっしょくなんだぜ!」
昼なのにお日様が隠れる現象があり、それは日食と言うものだと、前にゆっくりぱちゅ
りーに聞いたのを思い出しながら、まりさはれいむにそう言った。
「そ、そうなの? すごいね、まりさ! さすがだね!」
まりさの発言をれいむは信じた。
間違った知識を植え付けられてしまったのであるが、別にそれは些細な事であろう。
「それほどでもないぜ! そうだ、れいむ! にっしょくをつかまえようぜ!」
日食を捕まえればいつでも厳しい日差しを防げる、そうまりさは考えた。
ゆっちゅりーの話をちゃんと聞いていれば、そんな発想には至らないはずなのだが、ま
りさは日食を勘違いして覚えている。
「ゆゆゆっ!? にっしょくって……つ、つかまえられるの?」
れいむはそもそも日食という言葉自体、今初めて聞いたばかりである。
「ゆっ! た、たぶんつかまえられるぜ……とにかく、いってみようぜ!」
目に見えて存在していて、それが降りてくるのなら、捕まえられると思ったのである。
とりあえず行ってみればわかるとばかりに、まりさは降りてくる暗闇の方へと向かって
行った。
「わ、わかった! ゆっくりついてくね!」
なんとなく怖い気がしたが、まりさがどんどん先に行くので、慌ててれいむはその後を
追った。
ゆっくりついてゆく、と言いながらも全速力で。
「ちょっと高く飛びすぎたわ……んー、降りれそうな場所は……」
闇を展開して飛んでいるときは、ルーミアは地面へ降りるようにしている。
以前に大丈夫と思って木の上へ降りたら、暗くてよく見えなかったため、枝が刺さり怪
我をした経験があるのだ。
暗闇を消せば良さそうなものだが、着陸する程度のことで闇を収めるのを、ルーミアは
よしとしない。
それは光がないと不都合だと認める事なのだから、闇の妖怪としてのプライドが許さな
いのである。
「あ、良い具合の広場があるわ! あそこに……あら?」
降下目標地点に、何か妙な物が見えた。
一見すると人の生首のような物が、ぴょんぴょん跳ねながら何か喋っている。
「なんだろ? 新種の妖怪? ま、いいか」
おそらく害はないだろうと判断し、ルーミアは降下を続けた。
「ゆっ! こ、こっちにむかって、おりてきたぜ! れいむ!」
「そ、そうだね、まりさ! ゆっくりこっちにきてるよ!」
ふよふよと降りてくる暗闇を、二匹仲良く並んで見上げる。
薄められた闇とは言え、明るいところから暗いところを中まで見通すのは難しい。
ルーミアから二匹の姿は見えても、まりさとれいむからルーミアの姿は見えない。
「ん? 巫女と魔法使いに、似てる……そーか! あれがゆっくりなのかー!」
だいたい地上10メートルほどの位置まで高度を下げたあたりで、ルーミアは生首の正体
に気付いた。
話に聞いたことはあるが、実物を見るのは初めての珍生物である。
「本当に似てるなー……あはっ、なんか喋ってる」
なにを言っているんだろう、と耳を澄ませる。
「ね、ねぇ、まりさ! にっしょくって……ど、どうやってつかまえるの?」
「ゆぐっ! れいむ……そ、それは、これからかんがえるんだぜ!」
「かんがえるって……ど、どうするの! むかってきてるよ!」
「ゆっ……そ、そうだぜ! と、とびかかってみるんだぜ!」
二匹の会話を聞き、ルーミアはちょっとからかってみようと思った。
「……愚か者めー、この私を捕まえる気なのかー!」
なるべく荘厳な感じの声を作って、二匹に向かい語りかける。
「ゆゆゆゆっ! しゃ、しゃべったぜ!」
「ににに、にっしょくって、しゃしゃしゃべるの?」
暗闇に突然話しかけられ、二匹は驚いた。
「わーたしはー……えっと、やぁみのーかぁーみぃーなーるぞー! ひかえーい!」
どうしてもあまり荘厳な声にはならないが、とりあえずそれっぽく、神様らしく聞こえ
るようにルーミアは努力した。
闇の神と言うのは、もちろん単なる思いつきである。
「ゆっ! かみさまだって、まりさ! にっしょくじゃないよ!」
「や、やみのかみさま? そんなのきいたことないぜ……ど、どうしよう、れいむ?」
疑いもせず、あっさりと二匹は暗闇からの声を信じた。
「こぉらー、ひぃかえーいというのがー、きぃこえーんのかぁー!」
──やばい……この子ら面白い……!
吹き出しそうになるのを、必死でルーミアは堪えている。
「ゆっ? ひかえろって? どうしよう、まりさぁ?」
「んっと、そ、そうだぜ! お、おじぎするんだぜ、れいむ! かみさまにはおじぎだぜ!」
こうするんだと手本を示すように、まりさは暗闇に向かって身体を傾けた。
四肢が無い以上、頭を下げるにはこうするしかない。
下げすぎてバランスを崩し、地面と顔面をキスさせないよう懸命にふんばる。
「ゆっ! わかったよ、れいむもゆっくりおじぎするねっ!」
「きっ、きをつけるんだぜ、れいむ……ころんだら、しつれいなんだぜ!」
日頃からちょっと鈍くさいれいむが、まりさは心配でならない。
神様に失礼なことをしてしまったら、罰が当たるとゆっちゅりーから聞いている。
どうか、れいむが転ばないようにと、まりさは祈った。
「うむー、そーなぁたたーちはー、れーぎをぉわかーっているぅなー、よはーまんぞぉー
くじゃー」
──これじゃ神様じゃなく殿様かな?
そう思いながらも神様のふりを続ける。
「とーきぃにー、そぉなーたーたちーは、ちぃんをーとらーえーようぅとーしてたーなー」
──朕なら天子様の一人称だから神様だよね?
氷精と同レベルの頭と思われがちなルーミアだが、実は意外と博識である。
ルーミアの「そーなのかー」と言う相槌が広く好まれており、トリビアや豆知識などを
語り聞かせる人が多いため、耳学問で結構知識を蓄えているのであった。
「ゆははー! ご、ごめんなさいだぜ……にっしょくとまちがえたんだぜ!」
誤魔化したところで、神様相手じゃ誤魔化しきれないと思い、まりさは素直に謝った。
「ち、ちんってなに? え……えっちなことば? えっちなかみさまなの?」
まりさとは対照的に、れいむは物凄く頓珍漢なことを言った。
「ばっ、ばかっ! れいむ、かみさまになんてこというんだぜ!」
とんでもない発言に、まりさは血相を変え、厳しい声でれいむを叱った。
「えぇっ!? れ、れいむ……なんかへんなこといったの? って、れいむばかじゃないよ!
ゆっくりあやまってね!」
馬鹿と言われて、れいむは腹を立て怒鳴った。
「ゆっ! れいむ! えっちなかみさまだなんていったら、ふつうおこるぜ! だから、
れいむはばかなんだぜ!」
「ゆぅぅぅっ! ひどいよ、まりさ! だって、ちんっていやらしいことばだよ! れい
むしってるもんっ!」
「……ぷっ、ぷぷぷっ! あはははははっ! もう、だめ、おっかしーい!」
目の前でいきなり口げんかを始めた二匹が、面白くてたまらない。
笑いを堪える努力は限界に達した。
「ゆっ? わ、わらってるんだぜ……?」
不思議そうな顔で、まりさは暗闇を見つめる。
「もうっ! なんでわらうのよっ! かみさまだからって、れいむをばかにしてるの?
まりさもかみさまも、れいむにゆっくりあやまってよ!」
怖いもの知らずと言うよりも、口げんかでヒートアップしたれいむは、笑われたことが
大変不満であった。
「ばっ、ばかれいむっ! かみさまに、なんてこというんだぜ! か、かみさまっ! こ
のれいむは、れいむはばかなんだぜ! みのがしてやってほしいんだぜ!」
れいむの無礼な発言を取りなそうと、まりさは必死に暗闇へ向かって懇願する。
「あははははっ、ご、ごめ……も、もう……それぐらいに、してよ……あははははっ!」
ルーミアの腹筋は崩壊寸前である。
元から彼女の精神年齢は、箸が転がってもおかしいような年頃なのだから、この二匹の
反応は面白すぎた。
「もうっ! またれいむのことばかっていった! ひどいよ、まりさ! かみさまもわら
ってばかりでしつれいだよっ!」
慌てるまりさ、笑うルーミア、そして怒るれいむと、傍から見れば非常に混沌とした状
況である。
「あー、もうっ……あはははっ……うん、私が悪かったよ」
もうこれ以上はお腹が痛すぎるので、闇を消して姿を現す。
「ゆっ! く、くらやみがきえた? お、おねえさんがかみさま?」
姿を現したルーミアと、未だ激高しているれいむを交互に見ながら、まりさは言った。
「おねえさんひどいよっ! かみさまのくせに、れいむをばかにしないでよっ!」
ぷりぷりと怒り、れいむは頬を膨らませる。
すでにもう自分が何を言っているのか、れいむ自身も今ひとつわかっていない。
「うんうん、からかってごめんね。私は神様じゃないよー」
にっこりとルーミアは微笑んだ。
「ゆっ! おねえさん! まりさたちをだましたの? ひどいんだぜ! ゆっくりあやま
ってほしいんだぜ!」
「そうだよっ! かみさまじゃないのに、れいむをわらうなんてひどいよっ!」
まりさの発言はもっともだが、れいむの言葉は相変わらず何かずれていた。
「あははっ、だからごめんってば。面白そうだからちょっとからかったのよ。あなたたち
私を捕まえようとしたんだから、おあいこでしょ?」
笑顔を崩さず、ルーミアはしゃがんで二匹に目の高さを近づけた。
「ゆぐっ、そ、それはそうなんだぜ……まりさもわるかったぜ、ごめんなさいだぜ」
捕まえようとしたのは事実なのだから、まりさは素直に謝った。
すでにさっき謝ったことは忘れている。
「ほんとだよっ! おねえさんも、まりさもひどいよ! ゆっくりはんせいしてね!」
れいむの怒りはまだおさまらない。
なんとなく、自分が蚊帳の外に置かれているような気がして、ちょっと腹立たしかった。
「あはは、本物の魔理沙よりも素直だね、あなた」
怒っているれいむはさっくりと無視して、まりさにルーミアは話しかけた。
「ゆゆっ? まりさはまりさだぜ。ほんものってなんだぜ?」
「ああ、ごめんごめん。あなたに似てる人間の知り合いがいるのよ」
ルーミアは怪訝そうな顔するまりさに説明した。
確かに似ているが、性格や話しやすさとかは、魔法使いの霧雨魔理沙よりも、こちらの
ゆっくりまりさの方が自分と合いそうな気がする。
「む~っ、れいむをむししないでよ~……ねぇってばぁ!」
無視されていることに、れいむは不満の声を上げた。
「別に無視してないわよ。落ち着いた?」
まりさかられいむへ視線を移し、ルーミアは微笑みかける。
こっちのれいむは、ちょっとわがままそうだが、やたらと殺伐としている巫女の博麗霊
夢よりも、話がしやすそうだと思った。
「ゆ? う、うん、もうおこってないよ! おねえさんはゆっくりできるひと?」
「ゆっくりできるひとなら、まりさたちとゆっくりしようぜ!」
二匹は最重要事項を、遅ればせながら確認する。
このお姉さんはゆっくりできる人に見えるが、確認しないと気が済まない──人間は怖
い生き物なのだから。
「ひと? ううん、違うよ。私は妖怪だよ」
さらりとルーミアは自分の正体を明かした。
まだ知り合って間もないが、ルーミアはこの二匹に好意を持っている。
しかし、妖怪であることを隠して、人間だと偽ってまで仲良くなろうとは思わない。
これで怖がって逃げるようなら、少し寂しいけどそれまでだと考えていた。
「ゆゆっ! よ、ようかいなの、おねえさん? こんなかわいいのに?」
「ゆっ! おねえさん、またからかうきなの? まりさはだまされないぜ!」
全く信用していない。
妖怪は怖い──人間よりもっと怖い存在だと信じ込んでいるため、目の前のお姉さんが、
またからかおうとしているんだと決めつけている。
「むー……可愛いって言ってくれるのは嬉しいけど、ちょっと傷つくなぁ」
まるで妖怪が可愛くないみたいじゃないか、と少し不満である。
「……そうだ! ねぇ、あなたたちは、食べてもいいお饅頭?」
ちょっと脅かしてやろうと思った。
怖がって逃げられるのは寂しいが、妖怪だと信じて貰えないのも微妙なのである。
「た、たべるって……やだっ! れいむはたべちゃだめだよ! たべれるけど……」
「ゆっ! おねえさん、たべないでほしいぜ! ゆっくりしようぜ!」
食べる、と言う言葉に二匹は敏感に反応した。
自分たちが甘味品である事を、ちゃんと自覚はしているが、食べられるのは痛くて怖い
から嫌なのである。
「んー、食べちゃいけないなら食べないよー。それに私、甘い物好きだけど、もっとおい
しくて好きな食べ物あるもん」
怯えた二匹を安心させるように、ルーミアは言った。
「そ、そうなの? も、もっとおいしいたべものってなに?」
「ゆっ!? お、おねえさん、おいしいものにくわしそうだぜ。おしえてほしいんだぜ」
食べないと言ってくれたので二匹は少し安心した。
安心すると、その「もっとおいしいもの」が気になる。
「あはっ、人間だよー。人肉ってすっごーくおいしいんだよ」
思った通り乗ってきた二匹に向かって、自分が人食いであることをアピールする。
「ゆゆゆっ! ににに、にんげん……お、おねえさん……にんげん、たべちゃうの?」
「ゆげげげっ! じょ、じょうだん、や、ややめてほしいんだぜ……」
人間は怖くて強い生き物だ。
そんな人間をこのお姉さんが食べるなんて信じられない。
「食べるよー。だって、私は妖怪だもん。頭からばりばり食べるよー」
脳みそとモツがおいしーんだよ、と付け加え、ニヤッと不気味に笑ってみせる。
「ゆぅぅぅぅっ! こ、こわいよっ、おねえさんっ! ゆっくりしようよっ!」
「ゆひぃぃぃっ! お、おねえさん、ほんとにようかい!? ゆっくりしようぜ!」
そんなに生々しく話されたわけでもないのに、人間を食べるお姉さんの姿を想像して、
二匹は怯えた。
口々に、ゆっくりして欲しいと懇願する。
「あなたたちは食べないよー。だから怖がらないでよ」
ちょっと怖がらせすぎたかな、と少しだけルーミアは反省した。
「そ、そうなの? なら、おねえさんはゆっくりできるようかいだね! ゆっくりしてい
ってね!」
「ゆっ! ゆっくりしてくれるんなら、ようかいでもまりさはだいすきだぜ! ゆっくり
していってねだぜ!」
ほんの少し前まで、失禁しそうなぐらい怯えていたのがウソのような笑顔を、二匹は浮
かべた。
「んー、何かわかんないけど……ゆっくりするね」
ずっと二匹が言う、ゆっくりと言うのが何を指すかわからないが、ともかく怖がらない
ならいいやと思った。
「ゆっ! おねえさん、ありがとう!」
「ありがとうだぜ! おねえさん!」
ゆっくりする、とルーミアが言ったのがとても嬉しい。
妖怪でも、ゆっくりしてくれるのなら、ゆっくりたちにとっては仲間なのである。
「う、うんっ! ゆっくりするね!」
二匹が喜んでくれたので、ルーミアは安心した。
具体的にどうゆっくりすればいいのかは、良くわからないが。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
異口同音に、ゆっくりがゆっくりと呼ばれる由縁な言葉を口にする。
「あ、うん。ゆっくりするね!」
どうするべきなのかわからないので、とりあえず返事をした。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
ゆっくりすると言われたならば、このように返すのが種の本能であった。
「え、あ……う、うん。ありがとう」
無限ループとなる危険に気付き、ルーミアは返事を変えた。
今度は、二匹は無言でにっこりと微笑んだ。
無邪気な可愛らしい笑顔である。
自分たち以外の誰かが一緒にゆっくりしてくれるのが、何よりも嬉しいのであろう。
なんだかわからないが、ルーミアも嬉しい気分になった。
だから、優しく微笑み二匹の頭を撫でた。
「ゆふふっ、ゆぅっ~……」
撫でられるのが好きなのか、れいむは気持ちよさそうに目を細めた。
「ゆへへへっ……おねえさん、くすぐったいんだぜ、ゆへへっ」
口ではこう言いながらも、まりさも嬉しそうな声を出している。
「あはっ、あなたたちって可愛いね……そうだ、私と遊ばない?」
ずっとこうやってのんびり過ごすのも良さそうだが、遊んでもっと仲良くなりたいと思
った。
「ゆっ、いいよ! いっしょにゆっくりあそぼうね!」
「いいぜ! ゆっくりかくれんぼしようぜ!」
ルーミアの提案に二匹は賛成した。
どちらも、一緒に遊びたがっていたのかも知れない。
「かくれんぼかー、うん! いいよ」
遊ぼうと提案したものの、どんな遊びかまでは考えていなかったので、まりさの希望に
賛同した。
「れいむも、かくれんぼでいいよ!」
「ゆっ、きまりだぜ! さいしょのおにはまりさがやるぜ!」
れいむの賛成とほぼ同時に、まりさが宣言した。
「ゆっへっへっ……それじゃ、ゆっくりじゅうかぞえるから、はやくかくれるんだぜ!」
ぴょんぴょんと跳ねて近くの木まで移動し、顔を木の幹にくっつけてカウントを始める。
「ゆっ! は、はやいよ、まりさぁ~っ! ゆっくりかぞえてねっ!」
口を尖らせて文句を言うと、れいむは茂みの中へと跳ねてゆく。
「ゆっくりきゅぅぅぅぅぅぅぅぅうっ……ゆっへっへっ、まりさはゆっくりかぞえてるん
だぜ。れいむがどんくさいんだぜ! ゆっくりはぁぁぁぁぁちぃぃぃぃぃぃっ……」
本当にゆっくりとまりさはカウントしている。
「……わ、私も隠れるねー」
本気で隠れていいものかと悩みながら、ルーミアもその場を離れた。
「あはっ、ゆっくりってどんな生き物かと思ってたけど……楽しくて可愛いじゃない」
隠れ場所を物色しながら呟いた。
さすがに本気で隠れたら、絶対に見つけられないだろうから、まりさの声が聞こえる範
囲内で隠れることにした。
手頃な大きさの倒木の陰に、ルーミアは身をかがめた。
ここなら、すぐ見つかることはなさそうだが、見つからないような意地悪な隠れ方でも
ないだろう。
「…………ゆっくり……さぁぁぁぁんっ……」
「ゆっくりの数える十って長いのね……ま、ゆっくりだからゆっくりなのかな」
そんなに急いで隠れたわけではないのだが、まだリミットまで充分な余裕があった。
「ふふふっ、友達になれたらいいなー」
そうすれば、今日みたいに寂しい気分で、空を飛ぶ日も少なくなるだろう。
ルーミアは、まだこの時点では気付いていない。
ゆっくりたちに「ゆっくりするね」と答え、その言葉通りゆっくりして一緒に遊んでい
る以上、もう彼女は友達なのである。
「さぁて、今日はいっぱい遊ぶぞー」
もういいかだぜ、と叫ぶ、まりさの声が聞こえてきた。
十数えると言った割りには、実質的にだいたい百数えるのと同じぐらいの時間である。
「もういいよー! ゆっくり探してね!」
ルーミアは大声で叫び返した。
見上げると、木々の間から覗く大陽は充分に高い。
暗くなる夕方までたっぷりと、ゆっくり遊べるだろう。
■END■
読んでいただき、ありがとうございます。
ルーミアって、ゆっくりと仲良く遊べそうなイメージがあるので、書いてみました。
- ほのぼのとしててよかったです。平和でいいなー -- 名無しさん (2008-08-13 22:16:36)
- そーなのかー -- 名無しさん (2008-08-18 02:22:44)
- ルーミアだと!?と一瞬身構えたが、そんなことはない、仲良しになるお話。和みました。 -- 通りすがりのゆっくり好き (2008-09-13 23:53:40)
- なんというナイス設定…。ルーミアを上手く使った良同人誌は確かに有る。 -- 名無しさん (2008-11-28 17:25:32)
- ミスったorz 作者GJ!!!おつかれいむw いい気分に・・ゆっくりできたのぜ♪ -- 名無しさん (2008-11-28 17:26:50)
- ゆっくりなのかー -- 名無しさん (2009-01-03 20:24:22)
- 確かにお友達になれそうなイメージですね -- 名無しさん (2009-09-06 20:00:33)
- いいね -- 名無しさん (2010-07-09 20:01:42)
- 人間は嫌い。ゆっくりと友達になりたい。 -- 名無しさん (2010-11-27 14:43:58)
- ↑そーなのかー -- 名無しさん (2011-04-14 06:08:11)
- ルーミアよく朕なんて言葉知ってるなw -- 名無しさん (2011-05-19 14:49:43)
- ゆっくり欲しい.。o○ -- 名無しさん (2012-07-17 16:29:39)
- 食べるかと思った!れいむ飼いてー -- 名無しさん (2013-01-22 20:02:32)
最終更新:2023年04月22日 12:35