注意
- やまなし落ちなし意味なしです。
- 全体的にカオスってレベルじゃねーぞ
- 美鈴が変態淑女です。
- 世界美咲(咲美)劇場ですが、多分名作じゃない。
- 中国製PAD
- 咲夜さんの能力について独自解釈あり。
以上の点を受け入れられる方でも大丈夫かどうか分かりませんが、自分は心が広い!と自負される方のみ、続きをご覧下さい。
※9月22日、加筆修正しました。
十六夜咲夜は夢を見ている。
誰も居ない紅魔館の廊下。
理由も分からず、咲夜はそこにを歩いていた。
ふと顔をあげると、後姿らしき人影が見えた。
咲夜は理由も分からずそれを怪しむ。
「誰?」
人影は答えない。
「誰かと訊いているの。」
答えはかえってこない。振り返りもしない。
顔も見えないその人影に、咲夜はふいにあざ笑われているような気分を覚えた。
次の瞬間、人影のすぐそばの柱にナイフが突き刺さる。
「答えなさい!」
人影は、ゆっくりと振り向いた。
十六夜咲夜はそこで目を覚ました。
「んふふ~。」
「美鈴。」
「ん~ふふ~カワイイなぁ~」
「美鈴!」
「ハァハァ……たまらんぜ……。」
「中国!!」
「誰が中国ですかこんちくしょー!!」
「……何やってるの、美鈴。」
とある日の紅魔館の門前。
完璧で瀟洒な従者は、不審に何かを撫でている門番に声を掛けた。
「あ、咲夜さん。おはようございます!」
「……もう昼でしょう。それより、何をしていたの?」
そう言って美鈴の手元を覗き込む。
「あ!駄目ですよぉ!見ないで下さい!」
手元のそれを咲夜から見えないように、美鈴は背を向けた。
「なによ、いいじゃない。しん○すけスマイルでニヤニヤしてた癖に。」
美鈴の前に回りこもうとする咲夜。
「それがどうしたって言うんですか!安月給なんですから楽しみくらい一人で楽しませてください!」
美鈴は強情に咲夜の視線からそれを避けようとして、気付いた。
「はれ?」
いつの間にか抱えていたそれは腕の中に無かった。
見ると、それは既に咲夜が手に持っている。
「あー!時止めるなんてずるいですよ咲夜さん!」
「……やだ……なにこれこわい……。」
責め立てる美鈴をよそに、当の咲夜はそれを手にしてドン引いていた。
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_,r‐!7´ー-v―-、 `゙' 、
r'「>-'、-─'-<こ`ヽ,__ ヽ.
,r'ア´ ´ `ヽ|/`ヽ ':,
く7 / / ,! ,! /! ノ`ヽ/´! i ニヤニヤ
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ノイ ハ/─ ∨ ,riiニヽ/| ハ Y |
'´ | /! ,riiニヽ "" |/|`ヽ\ ',
レ'│"" _,,.. -‐' !メ|),ハ ̄ '.、
八!ヘ. ノメハ/ | ,ハ i
〈rヘメソゝヽ 、_ ノ "イ/´ノ__ノ_ハ ソ
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∠_ハ ノソ_)
「もういいじゃないですか。そろそろ返してくださいよ!」
「……いや、聞いてるんだけど、美鈴。」
「そうやって、堪能する時間を稼いでるんですね!!汚いな流石瀟洒きたない」
咲夜はなにも言わずに謎の生首を美鈴に放り投げた。
「説明して頂戴。」
「エヘヘ……かぁーいいーなー。」
トスン。
美鈴のすぐ側にあった木にナイフが突き刺さる。
「はやく。」
「なに妬いてるんですか、もぉ。……この子はヨコハマサクヤさんって言うんです。」
「ヨコハマサクヤ……?」
「さんを付けろよデコスケやろ……すみません。その、ゆっくりの一種です。……可愛いでしょ?」
満面の笑みで語る美鈴を見て、咲夜は項垂れため息をついた。――少しナイフを刺し過ぎたかしら?
「兎も角。今は仕事中なんだから、その……怪しげなシュミに気を取られないで頂戴。」
「はいはい、分かりました。」
「『はい』は一回!」
「は、はい!……妬いちゃってまぁ、こわいこわい。」
ぎろり、と咲夜は美鈴を睨む。
「……いい加減にしなさい。」
「申し訳ありませんでした!」
美鈴はすかさず土下座で危機を回避した。
「……まぁいいわ。許してあげる。」
調子のいい美鈴にあきれつつも、咲夜はひとまず許すことにした。
「ははー、ありがたき幸せ。……ところで咲夜さん。」
「何よ。」
「昨日の差し入れ、ありがとうございました!」
いきなり美鈴に頭を下げられて、咲夜はすこしばかりたじろぐ。
「ふぇ?え、あ……なんのこと?」
「昨日頂いたマドレーヌですよ。忘れちゃったんですか?」
咲夜は記憶を巡らせたが、そんな記憶は全く無い……。
「なんのこと?昨日はお菓子なんて作ってないんだけれど……。」
「やだなぁ、咲夜さん。……もしかして健忘症かなにかでs」
ひとまずナイフをお見舞いして、咲夜は門を後にした。
「咲夜。」
主の声を聞きつけた咲夜は、すかさず時を止めた。
息を切らすなどという見苦しい姿を晒すことの無いよう、優雅に、そして途中紅茶の準備をし、彼女はレミリアの元へと向かう。
そして――
「やだ……なにこれこわい……。」
「あら、第一声がそれなのかしら?咲夜。」
レミリアの部屋に入った咲夜の目に入ったのは、主の姿と――
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く7 / / ,! ,! /! ノ`ヽ/´! i
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八!ヘ. ノメハ/ | ,ハ i
〈rヘメソゝヽ 、_ ノ "イ/´ノ__ノ_ハ ソ ウフフフ
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∠_ハ ノソ_)
その膝元に乗せられた、あの生首だった。
「……申し訳ありませんがお嬢様、それは……」
「あら、知らないのかしら?ヨコハマサクヤさんって言うのよ、このゆっくり。」
そう言ってレミリアはヨコハマサクヤの頭を撫でる。
「可愛いでしょう?」
満面の笑みだった。
「は、はぁ……そうですか……。」
どうともいえない複雑な気持ちを抱えつつ、咲夜は主とそれをちらちらと見る。
「……ところでお嬢様、ご用事の方は。」
「ああ、そうだったわね。紅茶を入れてきて頂戴。私とヨコハマサクヤさんの分を。」
「……よ、ヨコハマサクヤ、の分もですか?」
思わず咲夜が聞き返すと、レミリアはその表情も険しく、
「さんをつけなさいよ、デコスケ野郎!」
と激昂し、
「……あ、いえ……ごめんなさい、咲夜。」
すぐさま萎れた。
「……は、はい……かしこまりました……。」
咲夜はそう言って時を止め、頭を抱えた。――いくらなんでも退行が酷過ぎするわね、最近のお嬢様……。
咲夜が紅茶を持ってくると、レミリアは不思議そうな顔をした。
「あら、……いつもと同じ紅茶?」
「え?その……いつもと同じですが……?」
「この前、珍しい紅茶を仕入れたんじゃないのかしら。今度淹れるって言ってたわよね。」
記憶にない。
「……いいわ。いつもの紅茶が不満と言うわけでも無いし。気が向いたら淹れて頂戴。」
「は、はい。」
「それにしてもヨコハマサクヤさん……いい感触ね……うー☆」
踵を返し、主の部屋を出るとき、咲夜は時を止めてちらり、とそれを見た。
静止した時の中でも、ヨコハマサクヤ……さんは相変わらずなんともいえない笑みを浮かべていた
そしてそれから、咲夜の、紅魔館の日常はヨコハマサクヤさんに侵食されていった。
とある日は地下室。
フランドールの部屋におやつを持ってきた咲夜は、フランドールがそれと楽しげに戯れているという、異質な光景に立ちすくんだ。
――少々情緒不安定ではあったけれど、まさか行き着くところまで……。
「あの……妹様……それは……。」
_,r‐!7´ー-v―-、 `゙' 、
r'「>-'、-─'-<こ`ヽ,__ ヽ.
,r'ア´ ´ `ヽ|/`ヽ ':,
く7 / / ,! ,! /! ノ`ヽ/´! i
| ,' | /、ハ /レ'__,!イ , ∨] | _/\/\/\/|_
ノイ ハ/─ ∨ ,riiニヽ/| ハ Y | \ /
'´ | /! ,riiニヽ "" |/|`ヽ\ ', < ニャーン!! >
レ'│"" _,,.. -‐' !メ|),ハ ̄ '.、 / \
八!ヘ. ノメハ/ | ,ハ i  ̄|/\/\/\/ ̄
〈rヘメソゝヽ 、_ ノ "イ/´ノ__ノ_ハ ソ
[ンく_] ヽ '.、[ンく_]' ____
∠_ハ | ノソ_) ̄ `ヽ、
l :: .. ゙i l
ヽ, :i __;i、 :|i l
|`i i"´ ̄ ̄ `'くヽ、 ! |.|
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. ‘ーィ'_ノ r'_/ r'_ノ
「ゑー?知らないの、咲夜。PADラッシュだよ!」
「ぱ、PADラッシュ……?」
「さんをつけろよデコスケ野郎!!」
「何処にですか?!」
咲夜の突っ込みを物ともせず、フランはマドレーヌをパクついていた。
― ― ?
「妹様、それは……?」
「?何言ってるの咲夜。咲夜が持って来てくれたお菓子じゃない。」
とある日は大図書館。
喘息の薬と紅茶を持ってきた咲夜の目に、またしてもそれが映った。
「あの……パチュリー様……。」
「なにかしら、咲夜。」
「その、それは一体……。」
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/ | ヽ,r‐!7´ー-v―-、__`゙'/ ,/ !
,-'"ヽ ,' l _r'「>-'、-─'-<こ`ソ__ / ,ヘ |
/ i、 ,r'ア´ ´ `ヽ|/`ヽ ':, _/\/\/\/\/\/\/\/|_
{ ノ く7 / / ,! ,! /! ノ`ヽ/´! i \ /
/ | ,' |メ、ハ /レ'__,!イ , ∨] | < そんなことより野球しようぜ!! >
/ ノイ ハゝ、 ∨ ,riiニヽ/| ハ Y | / \
i '´ | /! ,riiニヽ "" |/|`ヽ\ ',  ̄|/\/\/\/\/\/\/\ /\/ ̄
/ レ'│"" _,,.. -‐' !メ|),ハ ̄ '.、
i' /、 八!ヘ. ノメハ/ | ,ハ i
い _/ `-、.,, 〈rヘメソゝヽ 、_ ノ "イ/´ノ__ノ_ハ ソ
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(,,/ , ' _,,-'" i ヾi__,,,...--t'" ,|
,/ / \ ヽ、 i |
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`` ` ! 、、\
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「知らないのかしら、咲夜。いぬさくやって言うのよ。」
パチュリーは澄ました顔でそう言うと、読みかけの本に視線を戻す。
「……PADラッシュではなくて、ですか……?」
「さんを付けなさいよデコスケ野郎!」
何だかものすごい勢いでパチュリーは咲夜を睨む。
「……申し訳ありません、パチュリー様。……えーと、『いぬさくやさん』」
「違うわ。『ヨコハマサクヤさん』よ!」
咲夜は反射的に時を止めて頭を抱えた。――頼みの綱のパチュリー様まで……。
そして、極めつけはやはり門番だった。
「んー……」
「……ウフフフ」
キスしようとしていました。
「ゴルァぁぁぁぁぁ!!!!何しとんじゃ中国ッ!!!」
咲夜は渾身の勢いでナイフを投げた。
しかし、美鈴はそれを指二本で挟み、受け止め
「オウフ」
切れなかった。浅めではあっても美鈴の額には見事ナイフが突き刺さっていた。
「はぁ、はぁ……、何してるの、美鈴!」
「いいじゃないですか、咲夜さん。」
そう言い放つ美鈴の目は、正に『据わっていた』。
「私がお饅頭さんに劣情を抱こうが、熱いベーゼを交わそうが、ゴロニャンしようが、自由じゃないですか。」
「表現が古っ!というか出来ないでしょう!?頭だけなのよ?!」
「出来ますよ!……なんなら、教えてあげましょうか?あなたは淑女の恐ろしさを知らないんですよ、咲夜さん……。」
「……遠慮するわ。勝手になさい。」
もう駄目だこの門番。淑女にも程がある。
なにかもう色々と諦めた咲夜は踵を返した。
「ヨコハマサクヤさんって可愛い!」
後ろでは、美鈴の嬌声が響くばかり。
一歩一歩美鈴から遠ざかる度、咲夜の視界は滲んでいった。
咲夜は紅魔館の通路を歩いている。
その頭思い浮かべるのは、あの生首。ヨコハマサクヤ。
「……一体なんなのよ、あの生首。」
いや、時には犬だったりもするが。
兎に角、咲夜にはアレが癪に障る。
なんともいえないニヤついた笑みも嫌いだったし、それでいて何処と無く自分に似ているのも嫌だった。
なにより、それと一緒に居る誰もが、酷く幸せそうだったのも。
私はヨコハマサクヤの様に、彼女達を喜ばせられるだろうか。
「……。」
ふと立ち止まって、咲夜は門の方向を見る。
どこか情けない気持ちになった。自分はあんなもので代用されてしまうのか。
「……あんなので満足なら、そうしなさいよ。」
精一杯の強がりを言って、前を向いた時だった。
__r─┐ r┐ へ
/⊥___ ̄ 丁| |トv┐
/ヽ/ ´ ̄ ̄``ヽ、/ 〉 _
く / | ヽ \`勹|
|Y / | | | ヽ \ \/
|j / // | ヽ ヽ L⊥ヽ \\ミ__
/ / /// \ヽ)ヽ!⊥ミヽ `ーミ、
___//レ'TT{ _ィ {{r'´,riiニヽヽ┬ミへ、
 ̄ ̄ //八_Yハ,riiニヽ "" ト、|し !
/Y / トイ ハ"" _,,.. -‐' 〈 トイ | |
/ ハ トイ || | トイ { ヽ
| | | トイ ||ヽ、 ___, イ川lトイ ) ||{
jハ ヽ {_} ||(⊥ __⊥] |Lj八/リ
〃ハ┴─Fヽ Y∨ レ⊥ゝ」r' }} l!
(___,ィT フ[ ̄]ー、 レ个、フヽ-⌒ヽ
|\ /{( (__/ / 厂| ヽ \| / ハ ヽ
| \ / ヽ、」人 | | __」 / | ヽ
|\ヽ \ ⌒Y レヘ ハ∩ | //// )/ ヽ
ヽ `丶、 \. | | └┘ | | // // |
____ヽ、___`ヽ、ヽ|_| | し'´ ∠/ |
\ / ヽヽ-、___ノ // , ----、 |
_ `ー‐┬─'^ヽ | | ` ‐--<└‐ァニ/ /--'´
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/ 〈 | ー─ヽ ` ー──'⌒l ヽ、 __/_
__|__ ヽ__」 \ //ヽ \  ゙̄フ
{ | 厂| / `ー─ '´/ / ヽ / /
レ‐ | レ┐`ヽ、/ / / ヽ /\ /
〈 ヽ 〈 // ( ヽ ヽ/
\ ヽ } | / !
| ヽ | 」 / / | | | |__
| / | ヽハ / | | | |-イ┌'
∨ | ヽ \__/ ,、 | | /ヽ< tレ'
自分の姿形そっくりの、ヨコハマサクヤが居た。
「……なによ、今度は猿真似かしら?」
咲がそう言って、ヨコハマサクヤの側を通りぬけようとした。
その時だった。
見たことの無い場所。廊下を歩いていたはずの咲夜は、そこに立ち尽くしていた。
「……どういうこと。」
いや、本当は察しがついている。
「空間を弄らせて頂きました。」
後ろから声が聞こえた。ヨコハマサクヤだ。
酷く、咲夜の声に似ていた。――いや、きっと全く同じ。
「なんのつもり?あなたが私と同じ能力を持っていると見せびらかしたいのかしら?」
「いいえ。ただ少しお話がありまして。」
気がつくと、目の前にヨコハマサクヤが居た。
思わず咲夜は目を逸らす。
「手短におねがいするわ。」
「私に、『十六夜咲夜』という存在を明け渡して頂きたいのです。」
思わず、咲夜は逸らしていた目を戻す。
「……どういうことかしら。何にしても、『明け渡せ』なんて随分大きく出たものね。」
「それはそうです。あなたは十六夜咲夜の名を失い、ただの人間になるのですから。」
「……名前が欲しいならお嬢様にでも頼みなさい。お嬢様が仰るなら、あんたにだろうと名前を譲ってやっても――」
トスン。
「……何のつもりなのかしら?」
いつの間にか出来ていた咲夜の後ろの壁に、ヨコハマサクヤの放ったナイフが突き刺さる。
「貴女も強情ですね。名前になんて興味はありません。ただ――あなたと、立場から「他人にとっての貴女の印象」から何まで譲って頂きたい。それだけです。簡
単な話でしょう?」
「……簡単に言ってくれるわね。そんな妄想を。」
ヨコハマサクヤはそのにやけた顔から更に微笑んだ。
「妄想?いえ、違いますよ。」
「なにが違うのかしら。……自分でいうのもなんでしょうけど、この紅魔館は私なしでは成立しないでしょうね。―あんたに私の代わりが出来る?馬鹿も休み休みに
しなさい。」
「マドレーヌは好評でしたよ。」
咲夜は目を見開く。
「流石は咲夜と――『当然』の評価をいただきました。」
「あれは……貴女の仕業?」
いつの間にかそこにヨコハマサクヤは居なかった。
振り返ると、壁は消え、代わりにはただ広い廊下。
その先にぽつん、と佇む人影は――
「質問に、答えましょう。」
振り向けば、その姿も顔もすべてが咲夜だった。
「私はサクヤ――あなたですよ。」
咲夜は時を止める。
先手さえ打てば何も問題は無い。スペルカード・ルールに従わなければ、相手はただの的なのだ。
しかし咲夜は、まるで動き回る紅白や白黒を相手取るかのようにナイフの陣を敷き、放つ。
まるでその後の展開を知りながら、それに抗うかの様に。
「――動ける?どういう手品かしら……!」
それこそ紅白や白黒の様にナイフの弾幕をかわしていくのを見て、咲夜は思わず洩らす。
それをあざ笑うかの様に、サクヤは咲夜の微笑みを浮かべる。
「さあて、何故でしょう?私の時はあなたの物では無いようですが……」
刹那の内に自身の目前に展開された弾幕。
「ッ!」
「あなたの時は、私の物の様です。」
咲夜はそれを気合で避けていく。
「やって……られないわね!!」
弾幕が途切れると、すぐさま咲夜は返しのナイフを放つ――
はずだった。
冷たく硬いナイフを握るはずの指が触れたのは、熱く脆い屑。
「!」
「およそ人が知るもので、経年によって変化――いえ、劣化しないものはありません。」
咲夜の片足が沈む。――その一部分だけ床板が腐った、いや、サクヤによって腐らされたのだ。
「小癪ね……!」
すぐさま飛び退き、咲夜は体勢を整える。
「無論、人も同じです。」
「御説法なら、あとにしてもらえるかしら!」
隙を突き、咲夜はナイフを投げつける。
しかし、それはまるで釣っていた糸が切れたかのように、落ちた。
「……!」
ナイフの減速にかかる時間。それだけを加速させている。
「あなたも人なら、いつかは死ぬ。」
サクヤの向こうに見える花瓶の花が、一輪だけ枯れていく。
「この館の誰よりも早く。」
「……陳腐なセリフね。」
「陳腐すぎて……考えたくは無かったこと。ですか?」
自分の寿命。訪れる別れ。残していく悲しみ。残される悲しみ。
咲夜のナイフがすべて朽ちておちる。
「貴女が『十六夜咲夜』のままなら、皆にとってあまりにも早く悲しみは訪れてしまう。」
違う。
「……お嬢様は、私の命にたいして執着していないわ。」
「『お嬢様は』、でしょう。」
違う。
「誰も彼もよ。妹様もパチュリー様も小悪魔達も妖精メイド達も誰一人――」
――いや、違う。
本当は誰も。いや、何よりも。
「――耐えられるでしょうか。あの人は。」
サクヤの顔は、酷く悲しそうだった。
「……知ったことではないわ。」
握る拳の中、自分の爪が手のひらに食い込んでいくのを咲夜は感じた。
痛くて仕様が無い。けど、握り締めなければ吐き出してしまいそうだったから。
「痛そうですね、掌。……確実に訪れるそんなものではない苦しみと痛みを、あの人に与えていいんですか?」
「……知った……ことか!!!」
柄にも無く咲夜は激昂する。
大したことなど言われて無いではない。
ふと思いつくような当然のこと。
誰もが抱くありきたりな悲劇。
なのに――気に食わない相手に言われただけで何故こうも不安になるのか。
「……見苦しい。彼女から逃げる様な『十六夜咲夜』など、誰も求めません!!」
咲夜に同調するかの様に、サクヤは恫喝する。
「偽物が……ふざけないで頂戴……!」
咲夜は、いつの間にか目の前に居る存在は自分のように感じていた。
「私がふざけているとでも?本当にふざけているのは……」
いや、――きっと自分なのだ。
「私になら出来ます。貴女として、『十六夜咲夜』として貴女の代わりに貴女であり続けることが貴女以上に。だから。」
「だから――」
「だが!!」
正に轟音。
隔離されたはずの空間に、瓦礫が舞い、威勢のいい声が響く。
「断る!!!」
「めい……りん?」
「お話の都合上、話はすっかり聞かせてもらいました!」
ぽっかりと開いた壁の穴に足を掛けるのは、紅美鈴。
紅魔館の、門番である。
「……邪魔しないで下さい。」
サクヤはそう言うと、美鈴の前に立つ。
「それは出来ませんよヨコハマサクヤさん。私は門番ですから。館の住民は何としてでも守らにゃいけません。」
サクヤは酷く悲しげな顔をする。
「私は守ってくれないんですか?」
「いやいや。残念ですが、おいたする悪い子は懲らしめないと。」
途端、美鈴の気が漲る。気の事など皆目分からない咲夜にですら、はっきりと分かるほど。
「……本気ですか。」
「あなたと同じですよ。サクヤ。」
「美鈴!」
咲夜が声を掛けると、美鈴は振り向くことなく、いつもの様な朗らかな声で答える。
「大丈夫です。分かってますよ。」
そのやり取りに、サクヤは少しばかり苛立ちを覚えた。
「邪魔をするなら、少しばかり歯向かわせてもらいましょうか。」
ナイフを構えるサクヤ。
「望むところです。」
なにやら良く分からない構えを取る美鈴。
勝負は一瞬。
先に動いたのは、美鈴。
「先手必勝!!ここでいいとこ見せて咲夜さんとちゅっちゅしたい!!!」
動いたと言うか何故か叫んだのだが……なんか、こう、淑女的なことを言って怯ませようとしたのだろう。
最低だった。
しかし、
美鈴が劣情を叫んだその一瞬。ヨコハマサクヤは時を止めた。
咲夜も美鈴も、すべてが静止する。
動くのは、サクヤだけ。
サクヤは咲夜を一瞥すると、構えから動きを止めた美鈴を見据える。
美鈴の妖怪としての生命力、回復力、そして痛みに対する耐性を鑑みるに、生半可な攻撃では牽制にもならないし、
動きを止めるには不十分。とはいえ、あまり傷つける訳にもいかない。
これは彼女達のための反逆なのだから。
ならば、腱を切り動きを止める。妖怪であれば、そこから回復することも無理では無いはず。
サクヤは改めて美鈴を見る。
美しかった。
色々とアレなことを言った直後ではあったが、意思のまっすぐさを感じさせる瞳。
流れるような赤く長い髪。女性としての美しさと強さを兼ね備えた体。
ひどく愛しい彼女はしかし、咲夜のことばかり見つめている。
サクヤは目を閉じた。
そして、美鈴の肩に手をかけ、そっと唇を寄せる。
柔らかで暖かいその感触は。
けれど唇ではなく。
彼女の掌だった。
「……おいたはいけませんよ。」
どこか優しげに、美鈴はサクヤの腹部に掌を当てる。
「華符、『彩光蓮華掌』。」
そして次の瞬間。
極彩の虹色が、サクヤの体から迸る。
「――――」
ヨコハマサクヤは言葉を紡ごうとしたが、虹色に包まれて何もいえなかった。
「起きたかしら。」
ヨコハマサクヤが目を覚ますと、十六夜咲夜が濡れたタオルで自分を拭いていた。
「……負けたんですか。」
「そうよ。……弾幕すら凍りつく、静止した時の中で、どうして物が動かせると思う?」
ヨコハマサクヤには分からない。
「簡単な話。それだけ能力が及ばないようにしてるからよ、理論上はね。けど、正直意識してやったことはないわ。」
例えば手で物を掴むとき、人はそれぞれの指を的確に動かし時にしっかりと、時におっかなびっくりに、時に優しく掴む。
しかし、それはそれぞれの指の動きを別々に考えて行うものではない。それらは「掴む」という行動とひっくるめられて、
ほぼ無意識の内に判断し、実行する。
時を止めるのも同じこと。静止した中で、必要に応じて個別に時を動かす。
「あなたは私、と言ったわよね。」
「はい。」
「結局、あなたはなんなのかしら。」
「さあ……。私としては貴女の能力から零れ落ちた何かに不純物が色々と混ざって出来上がったアレかと認識してます。」
「……確かにこの小憎たらしい顔は不純物が混じってそうよね。」
「ほめないでください。てれてしまいます。」
「褒めてない。――にしても恥ずかしいわね。いくらあてずっぽうとは言え、私の能力はこんな出来損ないを自分と勘違いしてたのかしら。」
咲夜は時を止めるとき、当然自分にはそれが及ばぬ様に自身の時を操る。それもまた特に意識はしていない。ならば、時を操る能力を通して見たとき、彼女に非
常に良く似た存在があれば、それはどうなるだろうか。
「それにしてもあなた、大胆なことをしたわね。」
「……その、見てました?」
ヨコハマサクヤの顔が赤らむ。――なんだかやたらと不気味だ。
「当然よ。タネがわかったのなら、それなりの対応をするまで。私と美鈴の時を『能力の対象外』にして、あなたを引っ掛けたのよ。まさかあんなことするなんて思わ
なかったけど。」
「それにしても……何故美鈴さんはその仕掛けに乗れたんですか。」
「あの子、ああ見えてカンはいいのよ。私のコピーである時点で時を止められることには察しがついてただろうから。」
まるでそれが当然であるかの様に話す咲夜に、ヨコハマサクヤは心中おだやかではない様子だった。
「……そういえば、美鈴さんはどちらですか。」
そう言うと、ヨコハマサクヤは辺りをキョロキョロと見回す。
「美鈴ならいないわよ。残念だけど。」
「なんなんだぜ、これは……。」
パチュリーから本を死ぬまで借りに来た魔理沙は、紅魔館の門前で変な物体を見つけた。
ナイフの刺さったプリケツを晒す、美鈴の哀れな骸(寸前の体たらく)である。
お礼のキッスを性的にねだった結果がこれだよ!!!
「こりゃあラッキーだぜ。……そんじゃま、堂々と中に潜入っと。」
そんな美鈴を跨いだ魔理沙は人目憚ることなく、紅魔館へと入って行き、
そして後悔する。
「あ!咲夜の言うとおり魔理沙だ!!」
「げげ!フランッ?!」
そこには明らかに待ちくたびれた様子のフランが!!
魔理沙の進入に備え、EXボスを配置して置いたのだ!
「ねぇねぇ、あそぼ!!」
「タンマ!んな命掛けの遊びなんてやって……られないって言ってんだけどー?!!」
「きゅっ、としてどかーん!!!」
「わー!!箒がぁぁぁ!!!」
「……気が知れないわね。あの役立たずの何処がいいのかしら。」
呆れたようにため息をついて、咲夜はタオルをたたみ始める。
「……なによ。」
ヨコハマサクヤの視線を感じて、咲夜はじろりと睨み返す。
「だって、わかりますよ。」
ヨコハマサクヤはニヤニヤと咲夜を見ている。
「わたしもサクヤですから。」
――
気晴らしにめーさくを書いてたらこんなカオスに……どういうことなの……。
それにしても、ヨコハマサクヤサンッテエロイデスヨネ
PADラッシュ元ネタ
ゆっくり怪談の人
「お嬢様ぁ!!」
「あら、どうしたの美鈴。」
「私……咲夜さんの子供をにんっしんっしちゃいました!!」
「ふぇ?」
「見てください。もう臨月なんです……。」
「なんてことかしら……全く気が付かなかったわ(棒)。咲夜、申し開きはある?」
「……昨日は見事なボンキュッボンだったわね、美鈴。」
「えへへ。」
「褒めとらん!!」
「咲夜……疑ってるの?(棒)」
「……お嬢様。い い 加 減 に し て く だ さ い 。」
「分かりましたよ!なら、証拠を見せてあげますよ!」
バッ!
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_,r‐!7´ー-v―-、 `゙' 、
r'「>-'、-─'-<こ`ヽ,__ ヽ.
,r'ア´ ´ `ヽ|/`ヽ ':,
く7 / / ,! ,! /! ノ`ヽ/´! i 仲睦まじく
| ,' | /、ハ /レ'__,!イ , ∨] |
ノイ ハ/─ ∨ ,riiニヽ/| ハ Y |
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レ'│"" _,,.. -‐' !メ|),ハ ̄ '.、
八!ヘ. ノメハ/ | ,ハ i
〈rヘメソゝヽ 、_ ノ "イ/´ノ__ノ_ハ ソ
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∠_ハ ノソ_)
「……腹部に何仕込んでるのよ美鈴……!」
「これはもう責任取るしかないわね(棒)」
「責任……って何ですか、お嬢様?!」
「式場予約は済ませてあります!で、どっちがウエディングドレス着ますか?」
「……もういやだこのやかた」
PADEND
最終更新:2009年09月22日 16:49