森の中で元気よく跳ね回る二匹のゆっくり。
ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙だ。
今日は朝から二人でお出かけ、お母さんたちと朝ごはんを食べた後にお隣の魔理沙と一緒に別行動。
他の家族はお隣さんとお散歩、今日は天気がいいので川の方へ行くらしい。
「まりさ、ゆっくりはしってね!!」
ピョンピョンと勢いよく進んでいく魔理沙を懸命に追いかけていたが、やっぱり疲れる。
抗議するでもなく、何時もの口調で話しかける。
「ゆっ! ごめんね、れいむといっしょにゆっくりあるくよ」
てへへ、と申し訳なさそうに笑いながら霊夢の側に駆け寄る魔理沙。
今日は久しぶりのお出かけ。
久しぶりに二人だけで、舞い上がるのも頷ける。
「「ゆっくりさせてね!!!」」
森の中心の辺り、鬱蒼と木が生い茂り緑色の空が何処までも続く場所。
薄暗いここは、普通のゆっくりなら近づかない。
そんな場所にある一つの空洞。
斜面と木の根と岩が生み出したその空洞内は、木の根のおかげで光が入り、岩のおかげで夏は涼しく、斜面に生えたコケのおかげで冬は暖い。
そんな空洞に向かって言葉を発する二匹。
「ゆっくりちてってね!」
直ぐに返事が返ってきた。
どうやら、ここにゆっくりが住んでいるらしい。
「ぱちゅりー! きょうはゆっくりあそびにきたよ♪」
「れいむもきたよ。ゆっくりしようね!!」
「うん。ゆっくりちていってね!!」
賑やかに挨拶をして、奥へと進んでいく。
そこにはもう一匹のゆっくりの姿。
「おそいよふたりとも! とかいはのありすは、じかんにるーずなゆっくりはきらいだよ」
既に来ていたアリスは、笑顔で二匹に向かってしゃべる。
その目の前には、パチュリーが集めている本が開かれていた。
パチュリーは本を集めて自分の家に蓄えている。
中心部のこの辺りには、何故か時々本が落ちている。
落ちているのは聖書や哲学書、稀に漫画なども落ちてはいるが、殆どが人が読むにも苦労する代物だ。
だが、ぱちゅりーはそんな事は関係ない。
勿論ある程度文字はよめる。
ただ、本を読む、事がしたいのだ。
だから内容は二の次三の次だ。
「ごめんね!! れいむたちでみんなそろったね」
「きょうはみんなでゆっくりあそぼうね!!!」
魔理沙が高らかに宣言する。
体が弱く本を読みたいパチュリーは、あまり遠出できないため、時々皆でここに集まる。
そして泊りがけでゆっくりするのだ。
「きょうはなにをしてゆっくりしようか?」
「ぱちぇりーもゆっくりできるようにしようね」
「むきゅ~、みんなとゆっくりするよ!」
「ありす、おもしろいあそびしってるよ!!」
その一声で、興味津々になった三匹に説明しながらある物を見せる。
どうやら風船らしいそれはアリスが頭で押すと、ふわっと浮き上がりゆっくりと落ちていく。
「すごーい!! ふわふわのもふもふだぁ!!」
「ありすはすごいね!! まりさもやりたい!!!」
「むっきゅ~!! すごい! すごい!」
「いいよ! せっかくだから、みんなでゆっくりするのにかしてあげるよ!!!」
霊夢が高くあげる、負けじと魔理沙がもっと高くあげる、パチュリーも頑張って上げる。
空洞内では高さが足りなくなって、外に出る。
制限が無くなった風船はもっともっと高く上がる。
「れいむのほうがたかくあげられるよ!!!」
「まりさだってたかくあげられるよ!!!」
「ふーせんくらいでおとなげないよ。 とかいはのありすはこんなのみあきたもん」
しれっと答えるアリス。
しかし、しっかりと視線で高く上がる風船を追い続ける。
「むっきゅー! ふたりともしゅっごーい!!」
対するパチュリーも見る事に専念している、高く上がる風船を見て喜んでいるようだ。
「そうだ!! ふたりであげたらもっとたかくあがるよ!!!」
霊夢が魔理沙に提案する。
いっぱい飛び跳ねた所為か、少し息があがっている。
「れいむあったまいい!! そうしようそうしよう!!」
風船を軽く上げて、二匹はタイミングを合わせる。
「「せーーの!! ……ゆっくり~~!!!」」
二匹の期待通り、風船は高く高く上がる。
フワフワ上がって、緑の空に届きそうなくらいまで上がったその時。
パァン。
と乾いた音と共に破裂した風船。
そうやら枝にでも刺さったようだ。
突然の音にびっくりする一同。
しばらく固まっていたが、均衡を破ったのはアリスの泣き声だった。
「うわーーん。ありずのふうせんがーー!!!」
ペナペナになった風船に駆け寄って号泣するアリス。
「ふーせんでみんなどゆっぐりしたがったのに。ふーせんがあればみんなどゆっぐりできるとおもっだのに」
初めて見た風船で、皆とゆっくり遊びたい。
そう思ってアリスは意気揚々と持ってきていたのだ。
心配そうに駆け寄る三匹。
それぞれが、思い思いに励ます。
「ありすごめんね。でもふーぜんがなくてもみんなでゆっくりできるよ」
「ごめんねありす。でもまりさたちはふぃーせんでゆっくりできたよ」
「むきゅ~、たのしかったよ。ありすありがとうね!」
「ぐすっ、……ほんとぉ?」
「「「うん、ゆっくりできたよ!! ありがとうありす!!!」」」
「……うん、ありすもうなかない! みんなよろこんでくれてありすもうれしいよ♪」
その後はゆっくりとパチュリーのお家へ戻って、皆でゆっくりとお話しする。
性格は女性なのだろうか、三匹ならず四匹集まれば随分と姦しい。
一匹が自分の話をして他の三匹が聞く。
いつの間にか、そんなスタイルで話が始まっていた。
霊夢がお母さんに叱られた事をはなせば、皆が励まし。
魔理沙が何処そこに冒険に行った事を話せば、ハラハラしながら聞き入り。
パチュリーが何とか読めた本の内容を話せば、時に笑い時に泣いて終いには感動した。
アリスが都会の話をすれば、スゴーイと言う歓声が沸き起こった。
あっという間に夕日が沈み、月明かりが辺りを照らし始めた。
「ゆゆ! もうゆうがただよ。ごはんをたべようね!!!」
「ゆっくりたべようね!!」
「むきゅ~! ごはんじゅんびしたよ! みんなでたべようね!!」
パチュリーが昨日一日かけて集めたご馳走を見せる。
美味しそうな木の実や果物、そしていい香りの舞茸。
どれもこれもゆっくり達にとって、ご馳走と呼ぶに相応しいものが並んでいた。
「ゆゆ!! すごい!! ありがとうぱちゅりー!!!」
「みんなでゆっくりたべようね!!」
「すごい、みつぼしほてるのでぃなーみたい!!!」
「「「「ゆっくりいただきます!!!!」」」」
そう言って仲良く食べ始める。
家族で食べる時も楽しいが、やっぱり友達同士で食べるのはもっと美味しい。
「ぱちゅりー。これおいしいよ、じゅんびしてくれたおれいにあげるよ!」
「こっちもおいしいよ、ぱちゅりーもたべてね」
「これもおいしい、でもありすはきらいだからぱちゅりーにあげる」
「むっきゅ!! おいしい!! おいしい!!」
三匹は、より美味しいもの、栄養の有るものをさり気無くパチュリーに食べさせる。
美味しそうに食べるパチュリーを見ながら、ニコニコと食事の時間を満喫した。
「「「「ゆっくりごちそうさま!!!」」」」
夜。
ふかふかの苔の上で、お互い向かい合うように横になる。
三匹は、自分達のお家にはない苔に興味津々のようだ。
「ふかふかだね!!」
「まりさのおうちにもほしいね! こんどおかあさんにはなしてみるよ!!!」
「かぁぺっとみたいね」
「むきゅ~、きょうはつかれたけどたのちかった!! みんなありがとうね!!」
三匹を見ながら、興奮気味に話すパチュリー。
今日は、普段は自分以外誰も居ないこの家が賑わったもが随分と嬉しい事。
なにより、こんな所まで遊びに来てくれた皆が嬉しかった事。
その気持ちを全てひっくるめてありがとうの言葉を出した。
一瞬ぽかーんとした表情を浮かべたいた三匹も、直ぐに口を開いて。
「ぱちゅりーはともだちだもの!! れいむもたのしかったよ!!!」
「ぱちゅりーがゆっくりできてよかったよ!! またゆっくりしようね!!」
「ぱちゅりーが、こっちまでくるときゅうにたおれると、こっちがわるいみたいだから、きてあげただけだよ。べつに、ぱちゅりーのからだをしんぱいしているわけじゃ、ないんだから!!」
三者三様の答えだが、皆が自分を大切にしてくれていることが伝わったパチュリーは涙をこぼした。
ちょうど月が隠れて漆黒が訪れたおかげで、その顔は三匹に見られなかった。
「また、ぱちゅりーのおうちでゆっくりしていってね」
「「「うん、ゆっくりするよ!!!」」」
そう言った四匹は、月が隠れたの合図に目を閉じた。
夢の中では未だ四匹で楽しくゆっくりしていることだろう。
Fin
- ゆっくりした時間をありがとう。 -- 名無し (2009-03-27 02:01:40)
- これは癒されるゆっくり達♪
こんな風にゆっくりしたいもんですねぇ -- 名無しさん (2009-03-31 01:55:37)
- こういうゆっくり同士で和気あいあいという話は大好きです -- 名無しさん (2009-09-11 19:37:21)
- なんていいゆっくりなんだろうか
-- 名無しさん (2010-06-07 18:27:44)
- ゆっくりはかあいいな -- 名無しさん (2010-11-27 13:09:39)
- ゆっくりしていってね!! -- カマキリちゃん (2011-07-28 12:28:16)
- 風船を持って森に行く俺、プライスレス。 -- 名無しさん (2012-08-10 22:12:07)
- ツンデレってるとこもずでぎだばあああ -- 名無しさん (2012-08-11 10:17:40)
- 超イイネ!! -- 名無しさん (2012-12-02 11:51:51)
- あらかわいい -- 名無しさん (2013-01-29 01:45:40)
最終更新:2023年10月31日 16:52