ゆっくりみすちーは焦っていた。
「今日こそかかってるかなあ?」川に仕掛けたウナギ筒を覗き込む。
今年の土用丑の日は2回あると言え7月の31日、いかにゆっくりといえど焦ってくる。
「ちんちん♪」一本目、無い。
「ちんちん♪」二本目、無い。
「ちん…♪」三本目、無い。
「……」これが最後の仕掛け…やっぱり無い。
「どおおおおしよおおお!ゆっくりしたけっかがこれだよ!」
ゆっくりした結果というより土用丑の日といえばウナギの消費量が急激に上昇する日。ゆっくりみすちーにまで廻ってこなかったのだ。
とぼとぼ(というよりふらふらと飛行しながら)家路につくみすちー。そんなみすちーを見かけたのが川で流しそうめんを楽しんでいるゆっくりにとりとりぐるだった。
「ゆゆ?どうしたの」にとりが声をかける。
「ゆっくりした結果ウナギがかからなかったんだよ!」いつも明るい歌声でゆっくりさせてくれるみすちーの顔はどんよりと曇っていた。
「ゆう…でも夏の味覚はウナギだけじゃないよ!一緒にゆっくり流しそうめんを食べようよ!」とりぐるがさそってくれた。
「ありがとう…」
「「ゆっくり食べていってね!!!」」にとりが上流からそうめんを流す。
「つーる、つーる、しあわせー!」お腹が膨れると幾分か笑顔が戻ってきた。
「余った海苔もお土産にあげるよ!ゆっくり元気になってね!」
「ありがとう!にとり!りぐる!」
まだ1日ある…でも明日もかからなかったらどうしよう…そう思いながら飛んでいると「ゆんしょ!ゆんしょ!」という声が聞こえてきた。
下を見ると泥まみれのれいむとまりさが山芋の蔓を引っ張っていた。どうやら蔓を引っ張って引き浮こうとしているようだ。
さっきはにとりとりぐるにゆっくりさせてもらった…。今度は自分がこの二人をゆっくりさせてあげよう。
何よりゆっくりとしてゆっくりしてないゆっくりを見るのはつらかった。ゆっくりとはそういうものである。
「みすちーが手伝ってあげるよ!」れいむとまりさが引っ張っている蔓を受け取ると木の枝に引っ掛けてたらし、れいむとまりさに渡すとみすちーも蔓を咥えて飛ぶ。
横方向でなく上に引っ張ろうというわけだ。やがて山芋はぐらぐら揺れだしすっぽりと抜けた。
「ゆわーい♪山芋さんが抜けたよ!」れいむは大喜びである。
「ちんちん♪でも先っぽの方が折れちゃってるよ。」
「ああ、それはいいんだぜ。」まりさがいうには山芋は一部を残しておけばまた同じ場所から生えてくる。むしろ根こそぎ掘るのはマナー違反である。
だから一部だけ残るように穴を掘っていたのだ。
「ゆっくりありがとう!お礼にみすちーにも山芋をあげるよ!」
これで今夜のおかずには困らない。しかし明日の事を考えるとブルーにならざるを得ないみすちーだった。
家の近くまで来ると「ちぇぇぇぇぇぇぇん!」という声が聞こえてきた。
どうやらちぇんが木の上に登ったまま降りられなくなったらしい。
みすちーはゆっくりちぇんを降ろしてやるとらんしゃまは何度もお礼を言った。
「ありがとうございます。お礼に今から美味しい油揚げをあげます。」
ウナギだったりいいのにな…と思ったものの口には出さなかった。その時海苔…山芋…油揚げ…豆腐!みすちーの脳裏に稲妻のように閃いた!
「らんしゃま!油揚げじゃなくて豆腐のままちょうだい!」
「え?油揚げの方がおいしいのに?」
「いいから!」
らんしゃまから豆腐を受け取ると家路を急いだ。すりつぶした豆腐と山芋を混ぜ合わせてウナギの皮に見立てた海苔の上に載せる、そして油で揚げて
みすちー秘伝のたれをからませると精進ウナギの出来上がり!
「これで土用丑の日を迎えられるよ!」
7月31日・土用丑の日。みすちーはお世話になったゆっくり達に精進ウナギをふるまった。
れいむは「こんなにおいしいのは食べたことがないよ!」といい、
まりさは「こってりしてるけどもたれないんだぜ!」とごまんえつである。
らんしゃまは「豆腐にこんな食べ方があったなんて!」と感激している。
ちぇんは「わかるよー、おいしいんだよー」とむーしゃむーしゃしている。
にとりは「ウナギとはまた違ったさっぱり感があるよ!」
りぐるは「ゆっくりまにあったね!」と我が事のように喜んでいる。
「「「「「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」」」」」
8月1日
ウナギは大漁だった。
「ウナギさんゆっくりしすぎ!!!」
最終更新:2009年07月30日 23:05