素晴らしきは羊羹である
ゆっくり達がウチの子になってくれた最大の要因は
きゅうりの魅力ではなく羊羹の魔力だった
・・・きゅうり美味しいのに
ともかく家に住んでくれることになったゆっくり一家に
人の里で暮らすための約束ごと教えるべきだろう
今回のように収穫目前の作物を荒らすことがあったら
家業として農作物を育てている人間は間違いなく駆除しようとするだろう
特に、気が短く喧嘩早い隣の旦那さんを怒らせるのは非常に不味い
とりあえず、人間の作った作物には絶対に手をださないようにお願いすることにした。
「まりささんや、人間の作っている作物を食べると作っている人に怖い目に遭わされるから・・・」
「ゆっ!! まりさは人間さんの作っている物には手を出さないようにしてるのぜ?」
話の途中でそんな事は言われなくても解っている!といった感じで、脹れながら ゆふ~と息巻く
その様子を可愛いなぁと思い、ゴメンゴメンと謝りながら頭をなぜる
どうやら頭を撫ぜられるのは好きらしく、撫ぜ始めた途端に膨らむのをやめ嬉しそうな顔になった
しばらく頭を撫でていたら頬を染めたまりさに とくべつにゆるしてあげるのぜ と言われたので
手触りを惜しみつつお礼をいって頭の上から手を退ける事にした。
機嫌が直ったようなので話を再開しようと思い
句切りを付ける為に、お茶を口に含んだが眉をしかめることになった
まりさの頭を撫ぜている間にすっかり温くなってしまったようだ
庭のトウモロコシは私が作ったものなのだと説明すると
流石にばつが悪かったのだろう慌てて弁解をはじめた
「ゆゆっ!小さいから畑だとはおもわなかったのぜ!畑はもっと広くて 同じものをたくさんあるのぜ!
それにカラスさんもあれを食べてたから まりさも食べていいとおもったのぜ!まりさはわるくないのぜ!!」
たしかに私の菜園は庭の一角の20坪(約66㎡)程度に作ったもので
そこにトウモロコシやキュウリやカボチャなど食べられる物を節操なく育てており
畑というにはかなりお粗末である。(※畑一枚を一反=300坪として考えています)
矛先を変えるためだろう、カラスさんがわるいのぜ と言い募るまりさを落ち着かせるために頭を撫ぜ、そうだねカラスが悪いねと話に乗る。
すると今まで何度もカラスに苦しめられた事があったのだろう、カラスに対する不満を口にしだした
「・・・だからカラスさんはゆっくりできないのぜ!まりさのおちびちゃんも何度か連れて行かれちゃったのぜ!それに・・・」
話の途中で野生の生き物の過酷な生存競争の一端を垣間見たきがする。
捲くし立てたせいであろう ぜ、ぜ と息を付くまりさに水を用意し、落ち着くまで待ち
これからご飯は自分が用意するから花や作物を採ってはいけないと念を押す。
するとまりさは自信たっぷりに胸をはって私に宣言した
「おに~さんがまりさとちびちゃんたちに まいにちごはんをくれるなら
まりさはおに~さんのお手伝いをしてあげるのぜ まりさはえり~とまりさだから なんでもできるのぜ」
お手伝いをしてあげる。というまりさの得意そうな顔を見ながら
力仕事はできないであろうし、危険があるような事はもっての他だ
となると、やはり趣味でやっている菜園を手伝ってもらおうとまで考えた所で
親と同じ黒い帽子の子供が「ゆ~ む~にゃ む~にゃ おにゃかいっぴゃ~い ちあわちぇ~」との声が聞こえた
そちらに目をやるとヘアバンドの子供二人と仲良く3人で座布団の上で身を寄せ合い幸せそうな笑顔で眠っている
キュウリや羊羹の他に出した、自家製梅酒の梅を一人1個ずつ食べたらほろ酔い状態になってしまい
子供たちだけで、歌ったり踊ったりしたとおもったらパタリと眠ってしまった
まりさは5個ほど食べても平気な所を見るとやっぱりまだ体が小さいから酔いの廻りが早かったのだろう
久々に客人をもてなすからと少々興奮して奮発した結果に反省しつつ、疑問に思った事を聞いてみる事にする
「まりささんや、他の家族はいないのかい?」
「ゆっ!そうだったよ。お兄さんにはまだ教えてなかったけど、まりさのおうちに居るかわいいおちびちゃんは、
まりさとありすとありすの他にまりさとありすがいるんだよ」
番(つがい)の事を聞いたつもりだったが子供の事しか答えが返って来ないという事は…、つまり…、そういう事なのだろう。
しかし話には聞いていたが種の名称がそのまま名前になる。というのはややこしいな
同じ名前が連続で出ると混乱しそうだ。そんなことを考えていると次の言葉が聞こえてくる。
「本当はもっとおちびちゃんたちがいたのぜ…」
しまった!まりさの表情が曇った。話の流れを変えなければ!
「では、まりささんのお家に家族を迎えに行こうか」
「ゆっ!わかったよおにいさん!でもちょっとまってね」
どうしたんだい?と聞くとちょっと世界が廻っているという答えが返ってきた
…実は酔いが廻ってたのか!外見と応対では気が付かなかった
裏山にあるというまりさの家に出かけるの時間は、子供たちが目を覚まし
まりさの酔いが落ち着くのを待つと大体昼時より少し前になりそうだ。
握り飯でも用意しておくとするか?気分は遊山に出るようなものだ。
子供たちが起きるまでにまりさとしていた雑談によると、群れに所属しているそうだ
ならば挨拶の品でも持っていった方が良いのだろうか?人間の食べ物以外をそれとなく聞いてみた所
「座布団さんはすごくゆっくりできたのぜ!」
という答えが返ってきたので、私は薪ではなく座布団を背負子(しょいこ)で背負って山に登ることにした。
来客用の座布団を押入れから引っ張り出し、5枚重ねにして風呂敷で包んだものを4つ用意した所で押入れから座布団がなくなった。
流石に来客用の座布団が一つも無くなるのは拙いので風呂敷1個分は戻す事にしよう。
背負子に風呂敷を積み、縛る途中でなんとなくの思い付きが沸いたので実行に移す事にする
子供達が通らない程度の目の粗い竹籠を用意し、底に布を敷き、背負子にくくりつけた座布団の上に縛りつけた。
見た目は悪いがコレなら輿(こし)になるだろう。深めの籠だから私が転びでもしない限り落ちる心配もない。
子供達はコレを喜んでくれるだろうか?よし!底に敷く布をあと2枚ほど増やしておこう。
- この生意気でどこか憎めないまりさをどう動かすのか、これからが楽しみです
-- 名無しさん (2009-08-19 13:44:39)
- ごめんなさい
菜園ならあまり大きくないかも・・ということを解っていませんでした
まりさがんばれー
作者さんもがんばれー -- ゆっけのひと (2009-08-19 21:08:58)
- 続きが気になりますなぁ・・・ -- 名無しさん (2009-10-27 23:14:51)
- 物わかりが良く、「働かざる者食うべからず」の精神も持っているとは
かなり優秀で善良なまりさですな -- 名無しさん (2010-11-28 21:49:55)
- いいまりさだ -- 名無しさん (2011-05-13 04:50:04)
- カラス涙目www -- 名無しさん (2012-07-30 17:27:41)
- 天狗じゃ!
天狗のしわざじゃ!! -- 名無しさん (2012-09-08 18:37:40)
最終更新:2012年09月08日 18:37