そろそろ修学旅行の季節?

そろそろ修学旅行の季節?


「いっしょの班になろうよ」

突然言い寄ってきたのは、キスメだった。
桶から身を乗り出して、こちらを見上げている。
残念だが――――僕は、もう決めていたメンバーがいた。これから声をかける所だが
4人ずつの班。

「ごめん。もう決まってるんだ」

嘘をついた。女子二人・男子二人ずつ。
友達の川崎君と組んで、後は――――組みたい相手がいるのだ。

「誰?」
「ん、まあ、明美さんと」

先ほどまで床に置かれていたのに、踵を返すと、もう目の前の机の上に、桶ごと移動していた。

「あんな鯛焼き女、無理して同じ班になったって旅先疲れるだけですぜ。それよりあたしを見てくんな。
 土産物入れとして持ってくつもりはねえかい? お兄さんがた!」

――――滅多に話したこともなければ、街中でもキスメは見かけないが……こんなキャラなのか?
と――――そのキスメの後ろには、明美さん当人がいた。
知ってから知らずか、キスメは毒舌をはき続ける。

「いや・・・・・遠慮しとくよ。土産物入れは紙袋で十分だし」
「明美より、キスメの方がいいじゃない? 明美なんかさあ・・・・・・ ―――あっ ・・・・やっぱり明美より
キスメの方がゆっくりできるって」

一瞬後ろを確認して、明美さんを見てから僕にまだ毒を吐いている。
明らかに明美さんを意識している。
このキスメ―――――何の宣戦布告だ!!? 
まさか―――――ここまで来ると、本当に僕と一緒に・・・・・・・?
しかしだ。

「いや、悪いんだけどさ・・・・・あんまりゆっくりと一緒の班を組む気はないんだ」
「何で? 差別なの? 男尊女卑丸出しなの?」
「そうじゃなくて、ゆっくりと一緒に旅行すると、ゆっくりしすぎてあんまり行きたいところに回れない事があるんだ」

これは、仕方がない。むしろそうした事を求めて、ゆっくりと進んで班になる生徒もいるから、価値観の違いだが・・・・・

「俺は、キスメと一緒に回りたいけどなあ」

―――――川崎君、君もか

が、キスメは一瞬半眼で川崎君を睨むと、再び後ろの明美さんを確認して、毒舌を吐き続けた。

「本当にあいつ、人間のくせいにゆっくりしすぎだし、可愛いけど調子に乗ってるし、ゆっくりが好きな振りして、相手にしてるのは
 るーみあちゃんとかちぇんちゃんとかちるのちゃんばっかだし”!」

何度も後ろを振り返りながら――――内容が少しずつ変わってきている。
そろそろ僕の方も見ていない。
これって・・・・・・・

「いや、解った。じゃあ、他のゆっくりと班を組めばいいじゃないか」

周りを見ると、決まってない様子の少し焦り気味のゆっくり達が、二組

 ―  大ちゃん・こあくま・ときこ(?)

 ―  パルスィ・ ヤマメ―――――→ 何やらこちらを睨んでいる

「――――あいつらと?馬鹿にしてるの?同類だっての?」

そうと言いたかったが、それは禁句だと解った。 でも、同じ匂いがするんだよなあ
と―――ここで大変な事に気がついた。
明美ちゃんは班がもうできていたのだった。

ルーミア・チルノ・ちぇんと4人・・・・・・・・・・・・・・・ 男子2名女子2名のきまりのはずだが、ゆっくりはカウントされないのか?
確かに、首だけの奴が多いから、体育等で着替える事もないし、胴のある奴はある奴で、あれがまるで肉体の一部かのように、
プールの時さえ着替えずに何となく上手くやっている。
運動競技は基本男子にも負けない
そういえば、女子トイレに入る所を見たこともなければ、男子トイレでも見た事が無い。 物は食べているのにだ。
考えてみれば何なんだこいつら?

しかし問題は、性別の概念を突破して、こいつら事もあろうに明美ちゃんを3人で独占しているという事。
そりゃ、付き合いは古いかもしれないが、こんな時にこそ・・・・・
と、ルーミアがふよふよ浮遊しながら言った

「私は、抜けるからキスメを入れてあげるのはどうなのかなー?」

――――へ?

キスメは、わざとらしく、わざとらしく顔を真っ赤にさせて振り返った。
明美さんは、全く怒った素振りも見せずに、何もかも見透かした表情で、無言でキスメに笑いかけている。
そのまま、桶に不自然に引っ込むキスメ


――――何だ? この茶番・・・・・・・・・


「ヤマ・・・・いやキスメちゃん? 私も、ちょっとお土産買いすぎちゃう事があるから、運ぶの手伝って欲しいんだけどな・・・・」
「ば、バカジャナイノー 誰があんたと同じ班なんかにー」


まったくだ。
しかも名前を間違えて・・・・・・・・・・・・
更に困った事に、今度はヤマメが憤慨しててやってきた。


「キスメ。やっぱり帰ってきなさいよ・・・・・もうあんたを怒ってないから」
「でも・・・・・」
「通帳と印鑑を勝手に持ち出したのは、許してあげるから。折角の修学旅行だもの。一緒にゆっくり回ろう?」
「怒ってない?」
「怒ってないよ」
「じゃあ、戻る―」

あっさり。

ダブルのフェイントか
僕を見てる振りをして、明美さんを見てるふりをしているのでもなく、その反対側のヤマメを見ていたのか。
何をやらかしたのか知らないが、僕と明美さんを含めて出汁に使ったらしい。
本当に茶番にも程がある。
それでも、桶から身を乗り出して、猫の様にヤマメの真ん丸い胴体により縋っているのを見ると怒る気にもなれない。

こうして、 ヤマメ・キスメ・パルスィの班が3人できあがり、

「それなら、私は離れる必要はないのかー」

明美さんの班は元通り。

気がつくと、クラス中、ほぼ全ての班が決まっていた。 ふらついている男子は僕達二人だけ
大昔のドラマや漫画などで、結婚式に白馬で元恋人に新婦を連れ去られる旦那ってのはこういう感じなのだろうか?
いや、まだ何も 始 ま っ て さ え いなかったが・・・・・

が、空いているのは、それぞれ3人である先ほどの 地霊組と ほぼ中ボス組のみだった

「仕方ない。俺、キスメの所行くわ」
「いや、どちらかというと僕も今はそっちが・・・・・・」


が、少し話し合って、僕はその班に入れてもらう事になった。

会釈した僕に、こあくまがニヤニヤと皮肉混じりな笑みを浮かべている。

「こうなると思ってたよ」
「そうだな――――――こんなスレ投下での一発ネタ」



 ・・・・・・・・・・・・主人公の男に、 普通名前なんてあんまりつかないもんな



 わざわざ明美だの川崎だのなんてついてたのはそのためだったのか



男子校だったのですが、共学の場合、こうやって班作るんですよね?
違っていたらごめんなさい


  • この場にいたら凄く楽しそう。
    自分が通ってた学校の場合は、同性4人でしか組めなかったからドキドキも何もなかったw -- 名無しさん (2009-09-19 23:06:54)
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最終更新:2009年09月19日 23:06