「さて、ここはハワイなんだぜ!」
「何処をどう見てハワイなんだ、言ってみろよ、馬鹿まりさ」
クーラーは熱風しか吐き出さないうえ、窓が締め切られているため、苦し紛れに出てきたのは、大量の氷をぶち込んだ冷麦である。
それを入れた桶をはさみ、妙に空々しい笑顔を浮かべたゆっくり魔理沙と、その発言に苛苛しているのか、青筋の立ったゆっくり霊夢が、うまくもない冷麦をすすりながら、まりさを罵っている。
ハワイにつき物の、青い海、広い空、シリコン入りの胸のねーちゃん。そういったものとは、根本的に無縁であった。というのも、畳敷きの四畳半にちゃぶ台というハワイが何処にあろうか、というものであった。
もっとも、壁にはむやみやたらと暑苦しい笑顔を浮かべたゆっくり雲山がビキニ姿でビールを呷っているポスターがかかっている辺り、ハワイ臭は微妙に漂っていないこともない。
もっとも、ロケ地は伊豆大島と書いてあるので、まったくもって関連は無かった。
「で、なんでこんなことやってるんだっけ」
やることもないから、といった風情で汗をだらだら流しながら、れいむはニヤニヤと笑い、まりさに聞く。それを聞いたまりさは、というと、瞬く間に撃発した。
「お前が今年はハワイに行くって自慢しまくったからだろ! おかんとおやじだけでハワイに行くとか、どんなギャグだよ! そりゃそーだよなあ、結婚記念日だもんなぁ! とんだトラップだぜ!」
まくし立てたまりさは、ぜえぜえと肩で息をする。とはいえ、両方ともこれでもかと自慢しまくっていたので、別段れいむだけの責任とは言いがたいのであるが。
ぴんぽん、というチャイムの音がする。
まさか、家賃の集金か、と隠れるまりさを尻目に、れいむは悠々と扉を開ける。そこには、むやみやたらと元気なうにゅほが立っていた。
「よばれてきたよ! って汗くさっ?! ゆっくりしたけっかがこれかよ! なにこの亜空間!」
「まあまあ、そういうわけで、ハワイ演出です」
れいむはニヤニヤと笑いながら、うにゅほを部屋に押し込んで、後ろ手に扉の鍵を閉める。
なるほど、逃がさないつもりなのだな、とまりさは他人事のように考えた。
まてよ、ハワイ演出ってなんだろう、と考えていると、うにゅほはくちゃい、などと呟きながら冷蔵庫をあさっている。
「ハワイと言えば日焼け。この方程式を否定できる奴はたぶん居ないわ!」
「で、うにゅほってことか。良いアイディアだぜ」
視線を注がれたうにゅほは、というと、いささか困惑顔であったが、日焼けと聞くと、途端に元気になり始める。核融合し放題だからだ。
「うにゅ? 太陽を作ればいいんだね!」
「とびっきりのやつをたのむぜ!」
「期待できそうだね!」
そして、四畳半は人工の太陽で明るく照らし出された。それはもう大げさなほどに。
8時のニュースです。東京都台東区で、人工太陽によるガンマ線熱傷を負ったゆっくり三人が、病院に搬送された模様です。
そのゆっくり達は、すごいハワイだなどと意味不明な言葉を発しています。また、部屋からは雲山のハワイ道場という本も見つかっており、何らかの事件性があるのではないか、と警察は慎重に調べを進める模様です。
Q:爆発オチ?
A:いいえ、こんがり焼けただけです。
- ウルトラ上手に焼けましたんですねわかるよー -- 名無しさん (2009-10-03 20:30:46)
- みんな仲良くて和んだ。くちゃいと呟きながら冷蔵庫を漁るうにゅほの暢気さといったらw -- 名無しさん (2009-10-13 01:31:31)
最終更新:2009年10月13日 01:31