【リレー小説企画】ゆっくらいだーディケイネ外伝 ~きめぇ丸の世界~

ゆっくらいだーディケイネ外伝 ~きめぇ丸の世界~

気がつくと伝子はどこかの山中に立っていた。
「さて、今度はどんな世界かしら。紅里ちゃん、ゆっくりがたくさんいる世界にいてくれたらいいんだけど。」

ディケイネのネックレスとディエイキのペンダントは引き合うようになっていて、ディケイネが別の世界へ移動すると
ディエイキもそれを追って世界を移動するわけだ。ただし必ずしも直接ディケイネのいる世界へ移動できるわけではない。
例えばディケイネがAという世界からBという世界に移動したとき、干渉するCという世界があったときそこを経由してしまう時があるのだ。
これがディエイキがいつも遅れて登場する理由であり、今回の物語もそういった寄り道の話である。


「ネックレスにディケイネの反応はないわね。」取り合えず伝子は人里へ向かって山を降る事にした。
ヒュン…ヒュン…
───この音は!
パシャッ!
「きめぇ丸ちゃんね!」
きめぇ丸より早く伝子のシャッター音が響いた。
「おお…おのれおのれ!」
お株をとられたきめぇ丸はそのままヒュンヒュンと飛び去って行った。
「ああん待ってよう!」
きめぇ丸を追っているうちに山を下り里らしき物に出たようだが建物が小さい。
二階立ての建物ですら伝子の肩ぐらいしかない。まるでゆっくりサイズのような…
「ニャーン」
───猫?
鳴き声がするので振り向くとイカのきめぇ丸がいた。
「…せめて体が猫とかじゃないの?」
回りを見ると犬まで頭部がきめぇ丸のきめぇ犬である。
「携帯電話のCMにでも出れば大人気だろうにね~。」
さらに歩いていくと雪だるまのボディに暖かそうなマフラーをしたきめぇ丸が「おお、ぬくいぬくい」と言いながら
風神録二ボスさながらにくるくる回転している。さしずめすのぅ丸といったところか。
「ちょっと聞きたいんだけど。」
「おお…」
「このあたりのゆっくりはあなた達みたいなきめぇ丸しかいないの?」
「おお、いないいない」
さらに詳しく聞くとこのすのぅ丸は元々雪の降りしきる場所にいて、そこにはレティやチルノも居たそうだ。
しかしある日突然このきめぇ丸しか居ない世界に来たということだ。
(何者かがきめぇ丸ばかりをこの世界に集めたということ?これがこの世界の異変ということ…?)
「ひょっとしてこの世界は…」
「偽者の世界です!」
「え?」伝子が振り返ると
「清く正しいゆっくりあやです!」
「初めてきめぇ丸以外のゆっくりが現れたわね。もっとも射命丸文のゆっくりの一種には変わりないけど。」
その一言を聞いた途端あやの表情が変わった。
「何を言ってるんですか!射命丸文のゆっくりは私だけです!」
「それなのに数に物言わせて自分たちの方が本物のような顔をして!」
「pixivでもゆっくりタグはつけないできめぇ丸タグだけつけてまるで独立した一ジャンルみたいな顔して!」
「ピクペディアでも本家”ゆっくりしていってね!!!”よりもきめぇ丸の項目の方が詳細なんですよ!」
早口でまくし立てるとゼイゼイ息をしていた。
「とにかく私こそが真の射命丸文のゆっくりだということを知らしめたいんですよ!」
それにしてもあやこそオリジナルだと認知させるといってもどうすれば…。
(でもその前にすることがあるわね)
伝子はディエイキに変身するとポシェットからメダルを取り出すと一体のゆっくりを召喚した。
「わふー」
「もみじ!」
あやの顔がぱあっと喜びに輝いた。
「会いたかったよもみじ!」
涙を滲ませながらあやはもみじとすりすりをした。きっとこの世界で一人ぼっちで寂しかったのだろう。

そこへ先ほどのきめぇ丸が現れた。
「おお、スクープスクープ」
「わふ?」
きめぇ丸を見つけたもみじはそちらに駆け寄って行った。
「おお、もみじもみじ」
「わふー!」
もみじは今度はきめぇ丸とすりすりを始めた。
「ちょっと!これはどういうことなの!!」
もみじは両方をまるでゆっくりちぇんのように「わからないよー」とでも言いたげにキョロキョロ見ていた。
もみじからすればどちらも”射命丸文のゆっくり”であるから同じように親近感を持ってしまうのだろう。
「もう怒ったわ!今日こそ決着をつけてやる!」
きめぇ丸に突進していくあやだが伝子はゆっくり同士のケンカなど見たくなかった。
「あやちゃん、ちょっといいかしら?」
ファイナルフォームライドゥ!あ・あ・あ・あや!
あやの体が巨大な年代物のカメラに変形していく。
「いくわよあやちゃん!」
スキルライドゥ!あ・あ・あ・あや!
眩いフラッシュがあやのカメラから放出された!
「おお、まぶしいまぶしい!」
ひとまずフラッシュで怯ませて退却することした。

伝子とあやのふたりは取り合えず山寺のような場所に隠れることにした。
一般のゆっくり用民家では伝子は入れないがここなら大丈夫だ。しかしそれでもかなり天井が低いが。
一方あやは不機嫌そうだ。
「仏像まできめぇ丸とはねえ…。」
「壊してくださいよそんな物!」
「いやそんなことを言われてもねえ…」
「大体あいつ等なに考えてるかわからないんですよ!せわしなくあちこち動き回って嗅ぎ回ってるし!」
そこへまた先ほどのきめぇ丸が現れた。
「おお、スクープスクープ」
「なにがスクープよ!どこまで人をバカにすれば気が済むの!」
あやがきめぇ丸に体当たりするときめぇ丸の烏帽子の中から何かが落ちた。
「これは…USBメモリ?」
伝子はディエイキに変身するとにとりを召喚し河童のパソコンにUSBメモリを挿入した。
「こ、これは!?」
モニターには驚くべき物が表示されていた。
「ゆっくりスレの過去ログ!?」
河童のパソコンでガイドライン板ゆっくりスレの過去ログを参照してみると確かにゆっくりあやのAAの方が先で
煽るように見下す文をゆっくり化したAAが独自の存在感を放ち、それがきめぇ丸という独立したキャラクターになって
それが様々な改変・亜種を産み出すことになったのだ。もしかしてスクープってこれの事?
「あなたたちはこれを探していたの?」あやが問いかける。
「おお、そのとおりそのとおり」
「なぜこんなことをするの?もしかしたらあなたたちが不利になるかもしれないのに…。」
「だってあやがゆっくりできてなかったから」
「すのぅ丸?」すのぅ丸は続けた。
「あやが最初だと言うことがわかるればゆっくりできるんでしょ?だから…」きめぇ犬が続けた。
「タンスからゴミ箱まで探した、探した。」

その時お堂の方からギシギシという音がした。
『───まったく余計な事をしてくれたものだな───』
「え?」
大仏がしゃべり始めた。
『───もう少しで私が理想とする世界・兵士が誕生するはずだったのに───』
寺じゅうの仏像がガタガタと動き出すと宙を飛んで合体し巨大な大仏が完成した。
三面の顔はいずれもきめぇ丸だが禍々しく歪んでいる。そして全身黒一色だが目だけは赤く輝いている。
きめぇ大仏は何本も生えている手に持った錫杖から弾幕の嵐を打ち込んでくる。
あやときめぇ丸は突風で対抗するがきめぇ大仏の無数の腕から繰り出す竜巻にはじき返されてしまう。
すのぅ丸は回転しながら雪玉を飛ばすが炎の錫杖にかき消されてしまう。
きめぇ犬は「おお、怖い怖い」と言いながら逃げまどうばかりだし、
イカきめぇ丸は「ラーメン、ラーメン」と言いながらイカダンスを踊っている始末で戦力にならないだろう。
「しかしあれだけゴチャゴチャくっついてたらまるできめら丸よねえ。ん?きめら丸!?」
ディエイキの頭にピーンと閃いた!
「みんな!力を貸してちょうだい!合体には合体よ!こっちも合体するのよ!!」
「わかったわ!」
「おお、合体合体」
「ファイナルフォームライド!」
すべてのきめぇ丸たちがファイナルフォームライドし、召喚したもみじも剣と盾に変形する。そして巨大なきめら丸のボディを作り上げていき、
頭の部分にディエイキが合体しファイナルフォームライド・きめらディエイキが完成した!
「さあ、これで五分と五分よ!」
錫杖からの弾幕攻撃もきめらディエイキの全身から発する弾幕で相殺されていく。
いや、むしろ合体したゆっくりたちの数が多い分きめらディエイキの弾幕が押している!
「一気に決めるわよ!ラストスペルライド!」

ラストスペルライドゥ!き・き・き・きめらディエイキ!!!

竜巻、フラッシュ、剣、雪玉、イカソーメン…すべての弾幕が収束し、きめぇ大仏に向かっていく。
すべての弾幕が収束した奔流の前にきめぇ大仏は飲み込まれていった。
砕け散ったきめぇ大仏の頭部の面が割れると見たこともないまるでネガのように反転したゆっくりの顔が現れたが誰にも気づかれる事なくさらさらと崩壊していった。

「良かったわねあや、本当のことが分かって。このSSの作者からしてきめぇ丸が先に生まれてそれからあやのAAがノーマルバージョンとして生まれたと思ってた始末だからね~。」
「いえ、もうそんな事はもうどうでもいいんです。」
お互いにどちらが本物でも偽者でもなく射命丸文から生まれたゆっくりということは変わらない、それがわかったのだ。

その様子を見ている一つの影があった。
探偵物語に出てくるような帽子をかぶった謎のゆっくりである。
「ゆっくりの中でもせわしないきめぇ丸ばかりを集めて”ゆっくりできない世界”を作る。」
「なおかつ孤立するあやを入れてゆっくりさせない事によって新たなる”ユックレス"を生み出せるはずだった…」
「この世界は私が理想とする世界にはならなかったようだ…」
謎のゆっくりはひとりつぶやくと何処へかと消え去った。

「ディエイキさんにお礼をしましょう!」
「ゆっくりの親愛の証といえばあれでしょう!」
きめぇ犬やきめぇイカたちが囃し立てる。
「おお、すりすりすりすり」
ああ、夢にまで見た瞬間.ゆっくりによる両側からの挟み込みすりすり!
きめぇ丸とあやがディエイキの両側に立つ。
「「ゆっくりしていってね!!!」」
今まさに挟み込みすりすりをしようとした瞬間ディエイキの体が消えた。
そのことに気づかずあやときめぇ丸はすりすりを続ける。

「おお、すりすりすりすり」
「すーりすーり…え?」

ポッ

「おお…」
いつの間にかふたりですりすりをしていることに気づいて顔を赤らめるあやときめぇ丸。
「おお、ゆっくりゆっくり」



今日の紅里さん

一方異変を解決した紅里は新しい世界を両肩にれいむとまりさを乗せて歩いていた。
「でんこの奴、前回の異変ではとうとう現れなかったな。」
すーりーすーり
「なによれいむ改まってすりすりなんかして…」
ふと目を横にやると肩に乗っていたはずのれいむがだらしなくゆるんだ顔ですりすりしているディエイキにすり変わっていた。
「わあああああ!なにやってんだでんこ!」思わずディエイキを払い落とす。
「それはこっちのセリフよ!何でゆっくりちゃんでなくあなたなのよ!」
「おねえさんあんまりだよ!ゆっくりにとってすりすりは親愛の証なんだよ!」
「やはり胸の小さい女は心も小さいんだぜ!」
「どさくさにまぎれて何言ってんのよ!」
「ゆふふふっ♪」
れいむとまりさはぽいんぽいんと跳ねながら逃げていく。そしてディエイキの両隣に立つと
「かわいそうな伝子お姉さん!れいむと!」
「まりさが!」
「「すりすりしてあげるよ!」」
「すーりすーり」
「すーりすーりなんだぜ」
「「ゆっくりはさまれていってね!!!」」
「ヘブン状態!」
「はいはい、ゆっくりしていってね。」
頬杖をついてしゃがみこみ呆れぎみに言う紅里だが三人を見つめるその表情はとてもゆっくりしていた。

  • まりさと旧魔理沙の対立といい、特定の者同士が出会ったらこうなってしまうのはもはや宿命なのか…
    それでも己の立場を危険にさらしながらもあやをゆっくりさせたきめぇ丸さんマジパネェっす。それはそれとしてイカ、おめー戦闘中に何やってんだw
    にしても、常人がうっかり迷い込んだら精神崩壊しそうな世界でしたね -- 名無しさん (2009-12-07 23:38:04)
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最終更新:2009年12月08日 20:41