クリスマソ

久しぶりに即興でお借りします・・・が、久しぶりに書くもんでなんか色々と文がおかしい。

『クリスマソ』

今日は無宗教の人間と特定の宗教の人間にとって縁の無い日である。
縁の無いはずの日であるにもかかわらず世間は騒ぎたがる日である。

「今日はクリスマスを祝いたいと思う。」
「フーッ!!!クリスマスイエス!!!」

そんな訳で意図せずして今日が休日となった俺は何となく気紛れで、
何故か我が家で同居人をしているゆっくりれいむと共に世間に乗じてパーティをと思った訳である。

とは言え年末の俺の財布で大した事が出来るワケが無く、古アパートの一室にある我が家で、
お情けばかりの小さなツリーの玩具を片隅に置き、ボロい畳の上に置いてある、
いつもどおり装飾も何も無いテーブルの上にコンビニで売られていたケーキと
クリスマスらしさをなんとか繕った料理群を並べただけの極めて簡素な物なのだが、

「ツリーイエス!ケーキイエス!!料理イエス!!!酒イエス!!!!」

それでもれいむは(無理矢理感はあるものの)相当テンションが上がったらしく、
頭にはどこから出したのやらサンタの帽子をかぶり、頬を紅潮させ
畳の上で上目になりながら、空中にトゲトゲしい噴出しを飛ばしまくっている。

「よーし、いいテンションだれいむ。ほれ始めっぞ、カンパーイ!!」
「かんぱーい!!!」

畳から生えてきた生々しい女性の腕がテーブルに置かれたグラスを持ち、俺の持つグラスに当て鳴らす。
そんのまま腕がれいむの口元にグラスを運ぶと同時に、俺もグラスに注がれたワインを一気に飲み干した。

「・・・っこのワイン、安かった割には結構イケてるな。」
「っぷはー・・・確かに。でも私は日本酒の方が良かったかな。」

文句を言いつつも、もう一本畳から生やし二本に増えた腕を使って手酌しながら
流し込むようにワインをついでは飲み、ついでは飲むれいむの飲みっぷりは中々豪快だ。
適度に酒が入り、ひとまず飲むのを止めたれいむは次に料理を味わおうと思ったのだろう。
ステーキが乗った皿がひとりでに宙に浮きれいむの口元まで自ら移動すると、
れいむは新たに生やした二本の腕にナイフとスプーンを持ち、切り分けてから口の中へと運ぶ。

「もぐもぐ、結構な味ね。なかなかイケてるわ。」

それをじっくりと味わう様にして咀嚼し飲み込んでから一言感想を言い終えると同時に
別の大皿に持った一口料理がまるで自分から食べられに行くようにれいむの口に飛び込んで行く。
さらに続いて、今度は周りの畳やテーブルから次々と生えた数本の人間の腕がスープの皿を
自分の前に運ばせると、また別の腕に持たせたスプーンで静かにすくって飲む。

「おい、そのスープ俺が作ったんだぞ。なにか感想を言え。」
「可もなく不可もなし。私が作ったのと大差ないわね。」「さいですか。」

客観的に見てこんな光景は聖夜と呼ばれる夜にあまりに似つかわしくないホラーそのものと言えるだろう。
だが、この光景が日常と化した俺にはそんな事よりも、普段は一癖も二癖もあるれいむが素直に楽しんでくれている
のがホラー・・・もとい、嬉しいものであり、簡素ながらも催した甲斐があったというものだった。

「むーしゃむーしゃ、しあわせー!!!」
「珍しいな、久しぶりに聞いたぞそれ。」
「ちなみにこのセリフ、別のもの食べるときにもたまに言ってるけど
これって実は今みたいにチキンを食べた時に言うのが本来の用途なのよ。」

上機嫌でそんな事を語るれいむにそりゃ初耳だ。と相槌を打ちながら、その
心底美味そうに酒を飲み、心底美味そうに食を進める姿を眺めつつ、俺自身も酒を飲み、料理を味わっていった。

それからも簡素で奇妙なクリスマスパーティは料理を喰らい尽くし、買い込んだ酒を飲み干すまで続いた。

「そろそろ時間がやばいな。明日仕事だし、れいむお開きにするぞ。」

身につけている帽子やリボン、髪飾りと同じ赤色に染まったれいむが、へいへい、と適当な返事をすると
同時に、空になった料理の皿が次々と宙に浮いては勝手に台所の流しに移動し始めた。

「毎日俺の分の食器もやってくれりゃ楽なのに。」「甘えんな。今日は特別だ。」

はいはい、とれいむの予想通りの言葉を流しながら、俺は生えた腕と協力してゴミ片付けを進めて行く。
一通り片付き、生えていた腕も消え去っていつもの風景に戻った部屋で時計を見ると、もう、時間も相当遅い。
このままでは睡眠不足も良いところなので残った食器洗いは明日にまわして寝ようと思い、
テーブルを壁際に寄せながら、その側で先程から動きを止めていたれいむに声をかけると、

「れいむ、布団をひくからどいてくれ・・・って。」「zzz・・・。」

れいむは目を閉じて、満足そうな表情を浮かべながら、その絶妙なUの字を描く輪郭は崩れること無く
そのありのままで、静かに寝息を立てながら眠っていた。本当にマイペースなものだ。
と寝顔を見ながら思いつつ、このままでは布団を敷くには邪魔なので、寝ているれいむをゆっくりと持ち上げる。
触れると同時にぷにっとした柔らかな感触が指から伝わり、酒の所為か、いつもよりも温かい、熱いぐらいの
温度が俺の手のひらから全身に伝わる。その感触と温度は心地良いが、時間が時間なので、
速やかに邪魔にならない部屋の隅にそっと静かにれいむを置く。
移動させても終えても相変わらず眠っているれいむを背に、布団を敷こうと押し入れに向かったその時、

「ねえ、・・・こっちを見て・・・。」

背後から怪しく、艶やかな声がしてそれに反応してそっと振り返ると、起きていたのか起きたのか、
先程までの顔だけの姿では無く、何故かセーラー服を着た女性のボディでれいむが立っていた。
その体を見れば、出る所は出て引っ込む所は引っ込む。そんなナイスバディではあるのだが、
当然顔はれいむのままというアンバランス極まりない状態は、あまりにも不自然で奇妙な姿である。
で、なぜいきなりそんな風貌でつっ立っているのか。そう問おうとすると、

「これ、今日のお返し、・・・その、私からのプレゼントなんだけど。」

しおらしく、もじもじと恥らいを見せつつ箱をこちらに差し出すれいむの態度は、非 常 に 怪 し い 。
れいむがこういう態度を見せるときは、大概何かしらの仕掛けをしている時だ。
警戒の為、外側に何か仕掛けられていないプレゼントの箱をまじまじと眺める。

「だいじょ~ぶよぉ、変なものは入っていないから。」

その言葉が一番怪しいが、どうにも開けなければ寝させてもくれなさそうなので恐る恐る開いてみた。

「・・・栗?」

なぜか栗が一つだけ、宝石のように御大層な赤いクッションの上でつややかに輝いている。
なんの意図か全く解らず、ただ首を傾けながらそれをじっと眺めた。

「栗でスマン。」

そんな俺に、何時の間にやら頭だけの姿に戻っていたれいむが、
しおらしく俯き加減に何度も同じ言葉を繰り返し口にしながら謝る。
そんな態度に不信を覚え、考えを巡らしている内に俺は思わず「あっ!!!」と大声を上げてしまった。
気が付いてしまったのだ。れいむの繰り返される言葉から導き出される衝撃の真実に・・・。

栗でスマン、栗スマン、クリスマス・・・。

「ダジャレかよ!!!しかも苦しいし!!!」
「イエス!!!クリスマン!!」

下らないダジャレで幕を閉じた、なんとも締まらないクリスマスの夜だったとさ。         即興の人

  • れいむの「こっちを見て」の言い方にちょっとドキッとしてしまった自分を殴りたい -- 名無しさん (2009-12-26 23:36:22)
  • このれいむからは感じたくない色気を感じてしまったよw -- 名無しさん (2009-12-27 21:59:40)
  • れいむ酒飲んだ後キャラ変わってるw -- 名無しさん (2009-12-28 23:23:37)
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最終更新:2009年12月28日 23:23