【2009年冬企画】聖夜だ!メリクリ!カップ麺!!(SS738)

 「もうおしまいだー」

 器は殆どが裏返っていたので、ハロウィンの時のかぼちゃ畑の様な光景が広がっている。
しかし季節は冬。あの時、かぼちゃの横でゆっくり達が楽しそうに転がっている光景を微笑ましく
見た覚えがあるが、今も、従業員のゆっくり達は焼け野原をわいわいと転がりまわっている。
正直な所鬱陶しい
 丁寧につるつるした下部を天に向けているので、さながらお饅頭畑といったところ。

 「止まれ、遊んでる場合か!!」
 「いや、これはこれで楽しいのよ。地面が暖かいし」

 カップ麺工場が爆発した。
 中に居た従業員のゆっくり達は、ほぼ全員無傷だったのが救い(しゃがんでよけたとか、ふざけた
事を言っている)。
 製品の3分の2は灰になった。
 残りはゆーびぃが咄嗟に口に含んでおかげで無事だった。
 しかしこれからどうしよう?社長と工場長は今は卒倒して病院に運ばれてたまま。
 恐らく問題をおこした技術責任者は失踪中である

 「やり直せばいいじゃない」
 「簡単に言うなよ」
 「一個どれくらいで売ればいいだろうね?」
 「今まで一個160ルーボルで売ってるでしょう」
 「じゃあサービスで5ルーボルで売ろう」
 「少しは考えろ。仮に残っているのが10万個だとしても、50万リーボルにしかならないぞ。債権には遠すぎる」
 「労災とかこの会社はどうなってるの? まーとにかくみんな見捨てたりはしないよ。一緒に頑張ろう」

 しかしながら――――ヤポンスキーの間では広く重宝されているらしい、この国ではニッチ産業のインスタントラーメン
が、どこまで通じるか?
 (元々、この商品自体、社長が山の沢から大きな袋に入って流れてきたものを拾い、改良したとかしてないとか)


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 翌日、ニコラフスキーは、仮説小屋にて、ホワイトボードを使ってブレーンスーミングにかかっていた

 ――一般販売以外に、レストラン等の飲食店での販売
 ――学校の給食に使ってもらう
 ――格安で恵まれない人たちに・・・・

 「恵まれてないのは俺達じゃないか」
 「恵まれていないなら、まずこのカップ麺を食べてもいいよ」
 「やだね。こんな不健康なもの」

 この会社には誇りもあるし、何とか他の社員達と同様、再建の道を開きたいが、このカップ麺が好きかどうかは
彼の中で別の話だった。

 「ヤポンスキーの味覚はわからないな。何でこんなまずいものを好む」
 「社員がそういう発言するのもどうかと思うよ;」
 「言っておくが、私はあんな不健康なもの、一回も食べた事は無いぞ」
 「いや、本当にうまいって」

 出版社や、まして印刷会社や製本会社の人間だって、作られた本一つ一つに愛着を持つわけでもないだろう。
むしろ、ものによっては却って嫌悪しているはずだ。と、彼は勝手に思っている。統計を取ったわけではないけど
 それでも、レティとルーミア、ゆーびぃがもそもそと無表情にすすっていた。

 「確かにまずいといえばまずいですね。ヤポンスキーどもは何を考えてるんだか」

 その横で同調していた早苗は、自分の一言で何か気がついたようだった


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 ・お湯をはったどんぶり
 ・ヤマメ印の壷
 ・TEN〇A

 「さて、まずは見た目から、一番中に入って楽しそうなのはどれ?」
 「愚問だな。TEN〇Aこ至高の容器。あの重厚感溢れるボディ。自己主張の激しくない粘り気と弾力を伴った
  内部。丼も壷も素晴らしいが、仮に職人による一級の壷や丼だとしても、普通のTEN〇Aにも遠く及ばん」
 「なら、これはどう?」

 モニターのすいかとゆーぎの前に、カップ麺が置かれる、チキン味だった。

 「ぬう・・・・・・・・・・」

 ゴクリ、とすいかが喉を鳴らすのを、ニコラフスキーは聞き逃さなかった。
 多少スープの独特のにおいはあるが、おずおずとTEN〇Aと比べて迷っていたが、やがて堪えきれなくなった様で
―――これまたヤパンのクラシックな某怪盗アニメの様に、頭から飛び込んだ

 「ど、どうです?」
 「「ヘブン状態!!!」」

 結果は上場。大量の在庫を「食べ物」と思う事を、ニコラフスキーとゆっくり達一同は既にやめ始めていた。

 「あらあら、食べものを粗末にするのはいただけないわね」

 レティだけが、しらけた顔でずるずると啜り続ける。
 カップの中の鬼達も、つかりながらずるずると中身も食べていた。

 「ついでに、オマケもつけよう」

 これもまた在庫を抱えていた、ミニチュアの傘を突ければ更にオサレに



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 さて、発想を転換して、新しい可能性を見つけたまではよかったが、出来る限りのローコストでの広報と売り込みを
どうすればできるだろう?

 「正直、あれなら一個200ルーボルでもいけると思うんだ」

 仕事帰りに、BARで部下のむらさと一杯飲みながら、ニコラフスキーは興奮気味に話す。赤いのはウオトカのためだが、
そのために誇大妄想に陥るのはいただけない。

 「そういや、何で工場が爆発したんでしたっけ?」
 「あるゆっくりの胴体が、炉に挟まっていたらしいんだよ。一応それがきっかけ。首からきれいに分離されていたから、
  多分上の頭の部分は元気にしているだろうね」
 「腹の立つガキだなあ。捕まれられないんですかぁ?」
 「胴体は何故か裸だった・・・・・・何であんな所で裸になって、胴体まで落としたのか知らないが、最初はらんしゃま
  かてんこじゃないかと疑われたんだ。中身が芋餡子だったから多分違う」
 「失敬な」

 声の方を見ると
 ゆっくりてんこが、泣きながら酒を飲んでいる。

 「根も葉も無い先入観を周囲がばら巻きてんこは深い悲しみに包まれた」
 「別にあなたのことを言ったわけじゃありませんよ」
 「 そんな真のてんこを知らないお前らがドMだのDQNだの言ってネタにしてる事は大変失礼
  お前らにてんこの悲しみの何がわかるってんだよ

 頼みもしないのに、てんこは自分語りを始めた。人間との関係が上手く行っていない山で、ゆっくりたちの新しい楽園とも
いえる村が過去に完成された事。そしてその閉鎖的な空気が気に入らず、幼い頃に飛び出してこの町に来た事。

 「そんなてんこも、てんこ大家族(ファミリー)のボスにまで登りつめた」
 (う、うわああああああああ)
 (こいつそうだったのか)
 「しかし部下の玉子が、なめた口をきくので緋想の剣でバラバラに引き裂いてチームに送りつけた」
 「ちょ・・・・・・・」
 「ボス、一度帰省したら良いじゃないですか」
 「気楽にボス、じゃなくナイトと呼んでくれ。プライベートではモンクだがなw」

 あの村は、私を許してはくれないだろうと、悲しそうにボスは言ってウオトカをあおる。
 しかし
 ――――閉鎖的な、外来の文化を取り入れたがらないコミュニティー。
 そんな所こそが、本当のビジネスの開拓地だろう


 「ボス、いやナイト。そろそろクリスマスですし、思い切って乗りだせば、本当に仲直りのチャンスだと思いますよ」
 「んん?」


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 「け、ケーキ自体が一個もいらないって・・・・・・・? 何かあったんですか?」
 「『今年はカップ麺だけで過ごすんです』 ってそう言えって、てんk・・・・・」
 「おい、やめろ馬鹿」
 「誰かいるんですか?」
 「『誰もいません』 お願いですから解ってください」

 毎年の得意先から、今年のクリスマスケーキが相次いでキャンセルされ、町の菓子屋は大打撃をこうむっていた。
年一番の稼ぎ時にである。
 顧客からも、本人たちも――――12月も末に、電話の前で悲鳴が木霊した―――――顧客の横にいる者の
正体にも気がつかずに。
 同様ことが、ターキーの市場でも起こっていた。
 それと同時に――――反比例して需要が跳ね上がっているのが、今までニッチ産業であったヤパン食・カップ麺
であった。
 確かに、ゆっくりが入ったときの楽しさはTEN〇Aに迫るものがあるとされ、モニターの口コミによるだろう。しかし、
宣伝費も極限まで切り詰められていたのに、売り上げはそろそろ工場が爆発する前を凌ごうかと想われた。


 ―――嬉しさのあまり――――一同は、この不自然過ぎる売れ行きに、疑問をもてなかった。



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 クリスマス当日、ニコラスフスキーとむらさは意気揚々とトラックに乗り込み、山間部にあるという生首村を目指す。
一緒にボスてんこも乗っている。

 「いやー 良かったですね。仲直りできたみたいで」
 「・・・・・・・・」
 「「こっちも、販売が拡大できて嬉しいですよ」

 ふるさとに大量の御土産を抱えて帰れるというのに。
 てんこは何か不満そう。やはりわだかまりが抜けないのか。
 村の目印が見え始めた所で、ぽつりとてんこは言った。

 「そろそろそっちから気づけ」
 「??」
 「あ、煙草吸うんですか?」
 「お前等は馬鹿すぐる。これだけの売り上げを確保できたのは誰のお陰だと思う?」
 「そりゃあ・・・・・・」
 「民草がケーキやターキーを差し置いて、ヤポンのカップ麺なぞを選ぶと思った浅はかさ愚かしい」

 ガタガタとハンドルを握る手が震える。
 恐れていた、直視したくなかった事実が全て現実を怯えて襲い掛かってくる。

 「そ、そんな仕事まで頼んだ覚えはありません・・・・」
 「おっと、知らなかったとは言えるかな?いわば最も迷惑をこうむった業者さん達が、あんたを白だとは
  思うまいな。気の毒に」
 「わわわわわ、我が社にどうしろいうんです?」
 「それなりのマージンを支払うべきそうするべき」
 「御幾ら?」
 「9割でよい」

 良い訳ねえだろ!!! と言うのを堪え、車を止めるのが精一杯だった。
 気がつくと、周りにはたくさんのスィーが止まり、見渡す限りのてんこがそろっている。

 「ゆっくりマフィアを馬鹿にしたら秋まへんで」
 「ゲラゲラゲラゲラゲー」

 その内の一人は、ついにバールの様な物を持ち出した。



 ―――――――  その時である


 「ドラゴンフィッシュ ライダーキぃーック!!!!」


 普段は真横に放つ技だが、上空からけしかけたのは―――――


 「193 大家族(ファミリー) 見参!!!」


 車道脇のもみの木の上に立っているのは、羽衣をまとったゆっくり一の常識人集団、イクさん達!!
 見渡す限りのイク!!!

 「人のシマで随分好き勝手やってくれたじゃあねえかあ」
 「オラオラ!! 空気の読めねえ荒しどもはどこだ?」
 「い・・・・・・・いく・・・・・・・・・・・・・・・」

 何やらてんこよりも数段ドスがきいている。
 何世紀も前のアナクロな戦争か、もう少し低レベルに言えばザコが8割の悪の軍団とライダー達が
対峙してる様――――てんこ大家族(ファミリー)と193大家族(ファミリー)の壮絶なる殴り合いが始まった。


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    、-''ニニニ,ゝrト,,/ニニニ''ーァ   > 蹴りなさい!蹴りなさい!!!<
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   、-''ニニニ,ゝrト,,/ニニニ''ーァ   > その命、神に還しなさい!!!<
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 殴り【合い】 にはならなかった。

 「気持ちいい 主に  私が気持ちいい」
 「行きましょう」
 「行こうか」

 再びトラックに乗りこんだニコラフスキーとむらさは、再びパーティー会場へ向かう。
 後方ではてんこの叫びだけが嬉しそうに聞こえたが、徐々に193達の声も生暖かい響きに変わっていった



                                       了

  • 753ネタは反則だろw表情すら変えないしw -- 名無しさん (2009-12-28 11:34:59)
  • <<その命、神に還しなさい!!!
    シュールww -- 名無しさん (2009-12-28 11:51:29)
  • てんこといくさんってば、なんだかんだで仲良いなw
    しかし爆発事故しゃがんで避けたゆっくり達すげぇ! -- 名無しさん (2009-12-29 17:07:24)
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最終更新:2009年12月29日 17:07