あけおめことよろ

少し遅いですが新年あけましておめでとうございます。

『あけおめことよろ』

古いアパートの一室。今年の我が家の正月は鏡餅を置いて、手作りのお雑煮と、
一応のおせちとして縁起担ぎの品目を三つ四つ用意しただけの物である。

「新年あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。」
「新年あけましておめでとう!!今年もよろしく!!!」

同居人、れいむと向き合い挨拶をしながらお辞儀をする。
とは言っても、顔だけの状態のれいむは、俯くように顔を傾けているだけだが。

「じゃあ、一曲いってみよう!!!」

互いに新年の挨拶が終わり、れいむが顔を上げながらそう言うのと同時に、
何処からかスモークがいきなり炊かれ、六畳半ほどの部屋の大半を埋めつくした。
とりあえず、テーブルを持ってスモークの無い窓際に避難し何事かと立ち尽くす俺の目の前で、
土台の上に乗りマイクと共に、色鮮やかなライトに照らされて豪華な装飾がされた
冠のような物を被ったれいむが何もないはずの畳下からせり上がってきた。

「お前はラスボスか。」

第一、そのネタはもう数時間遅い、というかパクリだろう。
しかし、ご満悦の表情のれいむをこのまま放置していたは去年のように大声で歌い新年早々、
お隣に迷惑をかける事は確実だ。故に先手をとり今のうちにマイクを取りあげておく。

「あ~あ~、川の流れのよー・・・ってマイクどこー。」

それに気付かず、歌い始めまで眼を閉じて気分を高めていたれいむがカッと目を開いて
ムードたっぷりに歌い始めた。が、しかし、マイクが無い事に気がつきキョロキョロと周りを探す。

「お前、去年も大声歌って迷惑かけただろ。」
「なによ、あんたも去年はンッギモヂイイって感じで歌ってたじゃない。」

それは言うな。あの時は俺も若かった・・・もとい、酒がだいぶ入ってたせいで
つい調子に乗っちまっただけだ。と弁解しようとしていたら、れいむの後ろから
恐らく途中で出てくる予定だったのであろう、巨大れいむが畳から目の所位まで
出てきて、俺をじっと冷めた目で見つめていた。

「出番まだー?」
「ごめんなさい。また今度お願いするわ。」

れいむがそう言って申し訳なさそうに巨大れいむに謝ると、巨大れいむは
「お家帰る。」と言いいながら、また畳の下に沈んで言った。
 そんなこんなで一騒動が収まったところで俺は、テーブルを元の部屋中央に戻し
何事も無く、正月の祝いを続けようと食事を始める。

「ほら、歌うのは駄目だけど代わりに雑煮食え。後、俺の嫌いなカズノコも一個は食ったから後は全部食え。」
「・・・まったく、好き嫌いは無くしなさいよね。私のように!!!」
「バカ言うな。コンクリだろうが何だろうが噛み砕いて飲み込む奴なんかになれるかっつーの。」

食前まで少し頬を膨らまして不貞腐れていたれいむだったが、食事が進むにつれ元の調子を取り戻した。
やがて食事を終え片付けを終えた後にのんびりとしているとふとれいむが「すっかり忘れてたわ・・・」
と呟きながら浮き上がり、テーブルの上に登ると目を閉じてから一呼吸置いて、

「今年も、ゆっくりしていってね!!!」

と、何時もに増して眉を立てながら目をぱっちりと開いて言い放った。
それを見て俺は思う。ああ、今年もなんだかんだと賑やかな年になりそうだな、と。       即興の人

  • ンッギモヂイイってやな表現だなw -- 名無しさん (2010-01-05 23:45:53)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年01月05日 23:45