彼女は「運命」を受け入れた―――
元々人家の軒下に巣くっていた黒谷やまめ。人間を病気にする程度の能力を持っていたが、河童に嫌われたり、キスメと間違えられたり
とさえない地上生活を送っていた。ある日、彼女は紅と青のスパイーダーマスクを発見するが使い方を持て余していた。そんな時、――――
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「
.∧ ○、,_
○、.,_ / ', / `ヽ.`ヽ.
/´ `ヽ)!へ,/V/、 ':,_,ノト 、 『だ……… 誰だお前は!!!』
,' _[_`ゝ-‐''´ヽ、/ !/ ,ハ ,|
,' ´ |レへ,! / !
/_.7-‐ァ' ̄!二7´ ̄7ヽ、/`ヽ._! !/ |
r' ̄7-‐'"´ ̄  ̄`ヽ、_!`ヽ、___! |、/ヽ|
!ァ'´ ゝ、 !. / ァ'/! 、`ヽ、___7、 ,ハ |
;' ,' /(◯), V 、(◯)ハ/! ヽ. ヽ ! / /
! ! ;' '"" ,rェェェ、 "" ! /! ハ!/ /
`ヽ! ! .|,r-r-| .レ' ,' ./ |‐--‐<
レ'7 `ニニ´ .,' レ' ./ く\
〈 ヽ、 ,イ / ハ 〉 < `>
`ヽ./!>.,、.,___ ,. イ;'/、/_!/>、,__,.>'´
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,' ヽ_rゝゝ-' ー',.-、- 、イ、 i
i ,.へ_トー'"____,.ィ ! ハ、___ イヽ、イ
r'⌒ r´γ /__,.i i / V__ハ ゝ
〈_,.イ イ ,ィ´ レ´ `!ヽ! ハ
i i .レイl' rr=-, r=;ァ ! ハ/ヽ
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ノ イ /ヽ、| i>r--r,=´/ _ハ,
,' ) i,.-ハ/ ゝ、__ 7 iゝノヽi ヽ.イ
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ケツ十字団め…許せるっ!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
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――――今日はここで、おしまい」
「――――ここで~?」
「もっと読んでよー」
「むしろこれ、残り少ないから明日は物足りなくなるような………」
「子供は寝る時間よ~」
お婆ちゃんは、ポフンと音をたてて、ハードカバーの漫画を閉じる。
「これ以外にもまだまだ本はあるから大丈夫」
「本当に!!?」
「じゃ、明日はその次の本も読んでくれる?」
「全部は駄目よ。ちょっとずつ」
自分の頃は、この時間なら自動的に眠くなったのに――――最近の調査で、子供の平均睡眠時間がどんどん少なくなっていると
ニュースで見たが、本当だろう。
が―――一番したの子だけは、流石にうつらうつらしている。恐らく、さっき読んであげた分も思い出せないだろう。お婆ちゃんは笑い
ながら彼女を優しく抱き上げ、上の男の子達を部屋から外へ促す。
名残惜しそうな顔はしているが、皆手を振って出て行った。 何だかんだで、いい子達だ。
「今年も来るのね――――――」
「ええ」
お母さんが、暖炉の火を消して、遠くを見るような目をしている。別に嫌がっている訳じゃないけれど
寧ろ嬉しいのだけれど
「これが来ないと、一年が始まった気がしなくてねえ」
「――――――また、頑張って考えてくるんでしょうね」
そう―――――どこから始まっていたのだろう?
もう死んでしまった大お婆ちゃんの頃からだろう。
これは流石に年のせいで、もう色々思い出せなくなっているけど、子供の頃もの凄く怖い思いをした事は覚えているが、今一思い出せない。
ただ、立ち直ったプロセスは覚えている。
他人に何かしてもらった訳ではなく―――――正確に言うと、目の前で助けてもらったと見せかけて、実は大した事はしてもらっていない。
だが―――――もらったものは大きい。
例えば、ありったけの勇気とか。
「年をとると、臆病になる人とかえって怖いものが無くなる人がいるんだけど、私はどっちかというと臆病になっちゃったけどねえ」
「いや……お婆ちゃんは勇気ありますよ…………」
――――そう。毎年こんなものを何十年も見続けてきたのだから――――
照明が、全て消える。
不自然なほどの暗闇の中――――
(今年も来た………………)
二つの緑色の光が灯る。
何やら汚水の様にじとっとした輝き
―――暖かい暖炉 家族 絵本 そして可愛い赤ちゃんに、この足の指の先まで分かれてる気持ち良さそうな靴下…… 妬ましい……
今年も一段とドスが利いている
―――ああ 妬ましい妬ましい 幸せそうな親子4代が妬ましい………
もう解っているはずなのだが――――お母さんと、お婆ちゃんは、思わず身を寄せ合って、お互いに思い切りしがみつく!
でも目は笑いまくっている
「きゃあああああああー」
「誰かー」
「助けてー」
芝居のかかった悲鳴。はっきり言って、全然上達しない。
それでもいいのだ。
この時、間違いなくお婆ちゃんは少女の顔をしている。異論は認めない。本気で。
明かりが灯る
そろそろ、おねむだった赤ちゃんが、泣きもしないと思っていたら、いつの間にか御婆ちゃんの胸から消えている。
――――何という早業!
「ふふふふふ………」
「な、何て事をー」
{ ! 、,ゝ===く:::: __ 、,ゝ===く:::: ! }
ィ彡三ミヽ `ヽγ `ヾ, _,.__'"_ `ヽ、 γ `ヾ, /` ィ彡三ミヽ
彡'⌒ヾミヽーく( r,J三;ヾ )>/ ト、く( r,J三;ヾ )> ー彡'⌒ヾミヽ
ヾ、 ; {三●;= } ,=/ // ′ i ヽ;{三●;= } ,=ソ /
_ `ー―'ゝ≡三=ノ ! {/! __ } | }ゝ≡三=ノ `ー―' _
彡三ミミヽ ,! _〈 ヽ、 !}从__` ノ┐ ヽ 彡三ミミヽ
彡' ヾ、 _ノ /ィ {.、 ´i i,}__) ゙リリ.テテ,ハヽ,} ,! ハ \_ ヾ´ ´ミ
`ー ' ,ゝ(_N__Yテテテ 弋zリ !ノ ! r 、r┐ `ー ´
お母さんが指差す方向には、器用にも天井から下がった―――――何と定義すればいいのだろう? 怪物? が一人。
鬼みたいな仮面の目の部分から、先程の緑の明かりが漏れている。
そして手には、可愛い可愛い、愛しの孫が……
「誰かー お助けー」
「ふはははははは!!! この娘はもらっていくぞ!!! 返して欲しくば―――――ぬうっ!!!」
大層大袈裟に驚く、緑の目のモンスター。
それもそのはず。
その赤ちゃんとおもったら、それは―――――何だろう? 毎回?
,,.. -―- ..,,
/ \ /\
./ (ヒ] ヒン) ヽ
{ '" ,__, "' .}
\ ヾ_ノ /
`ー-----ー^
「ハハハハハ!!!!」
同時に轟く哄笑!!!
―――――この正体は、勿論知っている。
だが、この瞬間を、一年待ちわびずにはいられない。 何回も繰り返したシーンだが…………
「すりかえておいたのさ!!!」
ゴブリンとは反対側に、赤ちゃんを抱きながら天井から器用にぶら下がっているのは!!!
―――物言わぬ赤子の親の愛に泣く女
グリーンアイドゴブリンめ、許せるっ!!!
_人人人人人人人人人人人人_
彡⌒ヾ、 > 黒谷スパイダーマッ!!! <
ハVヾ ) _,, ---―ァ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
r‐-―┴-ーノ"⌒ハ::ィヽ.;:::::::::::/
\:::::::::::::::::/´ ` ヽ:::::/ ・
\:::::::ノ イ. ハ} /l V!ハ丶ヾ (⌒)
く` ノV i'「\ヽ|/ /}lヾ ノ ノ ~.レ-r┐、
ヽ `ヽ、,゙ー‐゙*゙ー‐゙i;},ゞ.ノ__ | .| | |
\\弋 ナ十弋 |〈 ̄ `-Lλ_レレ
\トメ‐十ー/  ̄`ー‐---‐‐´
『す、すぱいだーまっ!!!』
この掛け声も同じ。
皆笑顔だ。
無事戻ってきた赤ちゃんも、お母さんもお婆ちゃんも
―――きっと、マスクの下の ダーマッ も、グリーンアイドゴブリンも。
「おのれええええ スパイダーマッ!!!」
「行くぞ!!! とうっ!!!」
――― キャプチャーウェブ!!!
――― 丑の刻参り!!!
――――――――――そして始まる、世にも美しい、光り輝く弾幕と弾幕の一騎打ち
上の男の子達は、最近始まったらしい、日本の「ゆっくらいだー」というシリーズがお気に入りらしい。
確かにあれはとてもかっこいい。
「エレクトリックまりさ」も名作だった。
しかし―――― この家の彼女達にとって―――――
本当のヒーローは、やはり、この蜘蛛女だった。
これからも。
この赤ちゃんにとってもきっと。
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「うわー おのれ スパイダーマっめ!!! 覚えてろー!」
「----さあ、今年はこれまでだ!!! 良い夢を」
『ありがとう、黒谷スパイダーマっ!!!』
今年も名勝負
息もつけぬ、弾幕の応酬の果て、それでも、最後にはダーマッが勝って、今年も終わる。いや、今年が始まる。
グリーンアイドゴブリンも、最後の方は苦しいはずなのに、何故だか嬉しそう。
ダーマッは心地よい疲れと、勝利の余韻を隠そうともしない
「さらばだ!!! 来年まで、ゆっくりしていってね!!!」
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「ああ……… 今年も楽しかった………」
「本当ね」
台所で、ホットミルクを啜りながら、お婆ちゃんとお母さんは、「今回」について語り合う。
赤ちゃんは寝かしつけている。
―――理由と原理--- 彼女達が何者なのかは知らない。
ただ、毎年、1月のこの日に行われる現象-----いや、行事といっていいだろう。冠婚葬祭の一つのような。
悪人が現れて、家の中で何かを起したかと思うと、漫画の中にしかいないはずのヒーローがやってきて助けてくれる。
基本的にはそれだけの事。
きっと、来年もまたこうして過ごす。
お婆ちゃんが天に召されたら----その時は解らないけど、きっと、赤ちゃんが大きくなっても、あの二人はやってきて、
皆の前で戦い、楽しませてくれて、勇気をくれる。
理由は無いけど、そんな気がする。
――それでも
お婆ちゃんと見られなくなる時。
赤ちゃんが自分の手を離れるくらい大きくなる時
それを想像すると少し寂しくなって、お母さんは何気なくお婆ちゃんに聞いてみた。
「そういえば、変身する前の ダーマッ の本名って何だったかしら?」
「確か、黒谷キスメ だったと思うよ」
了
- ヤマメだぁぁあぁ!!!!
原作どおりとは言え、「許せる!」で笑ってしまうw -- 名無しさん (2010-01-11 00:24:07)
- ヤマメだよ!
混ざってる混ざってるw -- 名無しさん (2010-01-11 18:57:05)
最終更新:2010年01月11日 18:57