【2009年冬企画】冬休み子ども劇場『黒谷スパイダーマッ 逆襲のグリーンアイドゴブリン』(SS747)

 彼女は「運命」を受け入れた―――

 元々人家の軒下に巣くっていた黒谷やまめ。人間を病気にする程度の能力を持っていたが、河童に嫌われたり、キスメと間違えられたり
とさえない地上生活を送っていた。ある日、彼女は紅と青のスパイーダーマスクを発見するが使い方を持て余していた。そんな時、――――




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 「

              .∧     ○、,_
        ○、.,_ /  ',   / `ヽ.`ヽ.
       /´ `ヽ)!へ,/V/、    ':,_,ノト 、      『だ……… 誰だお前は!!!』
       ,'   _[_`ゝ-‐''´ヽ、/     !/ ,ハ   ,|
      ,'  ´             |レへ,!  / !
      /_.7-‐ァ' ̄!二7´ ̄7ヽ、/`ヽ._!    !/ |
    r' ̄7-‐'"´ ̄   ̄`ヽ、_!`ヽ、___!    |、/ヽ|
    !ァ'´  ゝ、 !. / ァ'/!  、`ヽ、___7、  ,ハ   |
   ;'  ,' /(◯), V 、(◯)ハ/! ヽ. ヽ ! /   /
   !  ! ;' '"" ,rェェェ、   "" ! /!  ハ!/   /
   `ヽ! !   .|,r-r-|    .レ' ,' ./ |‐--‐<
     レ'7    `ニニ´    .,' レ' ./    く\
     〈  ヽ、        ,イ / ハ  〉   <  `>
      `ヽ./!>.,、.,___ ,. イ;'/、/_!/>、,__,.>'´



         ,.--、_,,....,,__,. -- 、
     ,.- '"// ⌒ヽヽ  //⌒l |
   /   l | ___ ___',',nイk___,// ヽ   ,『ハハハハ!  ry
  ,'   ヽ_rゝゝ-' ー',.-、- 、イ、   i
  i  ,.へ_トー'"____,.ィ !  ハ、___ イヽ、イ
  r'⌒ r´γ   /__,.i i / V__ハ   ゝ
 〈_,.イ  イ  ,ィ´   レ´   `!ヽ! ハ
   i  i .レイl' rr=-,   r=;ァ ! ハ/ヽ
   〉.  i  i ' 〃 ̄     ̄"从 (
   i  /〈  lヽ,    'ー=-' ,.イノ Y
  ノ  イ /ヽ、|  i>r--r,=´/  _ハ,
 ,'  )  i,.-ハ/ ゝ、__ 7 iゝノヽi ヽ.イ


         _人人人人人人人人人人人人人人人_
         >  ケツ十字団め…許せるっ!!  <
          ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


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 ――――今日はここで、おしまい」


 「――――ここで~?」
 「もっと読んでよー」
 「むしろこれ、残り少ないから明日は物足りなくなるような………」
 「子供は寝る時間よ~」


 お婆ちゃんは、ポフンと音をたてて、ハードカバーの漫画を閉じる。


 「これ以外にもまだまだ本はあるから大丈夫」
 「本当に!!?」
 「じゃ、明日はその次の本も読んでくれる?」
 「全部は駄目よ。ちょっとずつ」


 自分の頃は、この時間なら自動的に眠くなったのに――――最近の調査で、子供の平均睡眠時間がどんどん少なくなっていると
ニュースで見たが、本当だろう。
 が―――一番したの子だけは、流石にうつらうつらしている。恐らく、さっき読んであげた分も思い出せないだろう。お婆ちゃんは笑い
ながら彼女を優しく抱き上げ、上の男の子達を部屋から外へ促す。
 名残惜しそうな顔はしているが、皆手を振って出て行った。     何だかんだで、いい子達だ。

 「今年も来るのね――――――」
 「ええ」

 お母さんが、暖炉の火を消して、遠くを見るような目をしている。別に嫌がっている訳じゃないけれど
 寧ろ嬉しいのだけれど

 「これが来ないと、一年が始まった気がしなくてねえ」
 「――――――また、頑張って考えてくるんでしょうね」



 そう―――――どこから始まっていたのだろう?
 もう死んでしまった大お婆ちゃんの頃からだろう。
 これは流石に年のせいで、もう色々思い出せなくなっているけど、子供の頃もの凄く怖い思いをした事は覚えているが、今一思い出せない。
ただ、立ち直ったプロセスは覚えている。
 他人に何かしてもらった訳ではなく―――――正確に言うと、目の前で助けてもらったと見せかけて、実は大した事はしてもらっていない。
だが―――――もらったものは大きい。

 例えば、ありったけの勇気とか。


 「年をとると、臆病になる人とかえって怖いものが無くなる人がいるんだけど、私はどっちかというと臆病になっちゃったけどねえ」
 「いや……お婆ちゃんは勇気ありますよ…………」


 ――――そう。毎年こんなものを何十年も見続けてきたのだから――――


 照明が、全て消える。
 不自然なほどの暗闇の中――――


 (今年も来た………………)


 二つの緑色の光が灯る。
 何やら汚水の様にじとっとした輝き


 ―――暖かい暖炉  家族  絵本  そして可愛い赤ちゃんに、この足の指の先まで分かれてる気持ち良さそうな靴下…… 妬ましい……


 今年も一段とドスが利いている


 ―――ああ 妬ましい妬ましい  幸せそうな親子4代が妬ましい………


 もう解っているはずなのだが――――お母さんと、お婆ちゃんは、思わず身を寄せ合って、お互いに思い切りしがみつく!
 でも目は笑いまくっている


 「きゃあああああああー」
 「誰かー」
 「助けてー」


 芝居のかかった悲鳴。はっきり言って、全然上達しない。 
 それでもいいのだ。
 この時、間違いなくお婆ちゃんは少女の顔をしている。異論は認めない。本気で。 

 明かりが灯る

 そろそろ、おねむだった赤ちゃんが、泣きもしないと思っていたら、いつの間にか御婆ちゃんの胸から消えている。
 ――――何という早業!


 「ふふふふふ………」
 「な、何て事をー」




{    !    、,ゝ===く::::           __       、,ゝ===く::::        !    }
ィ彡三ミヽ `ヽγ      `ヾ,    _,.__'"_    `ヽ、  γ       `ヾ,    /` ィ彡三ミヽ
彡'⌒ヾミヽーく(   r,J三;ヾ   )>/              ト、く(  r,J三;ヾ    )>   ー彡'⌒ヾミヽ
     ヾ、  ;   {三●;= } ,=/      //       ′ i ヽ;{三●;= }   ,=ソ  /
  _   `ー―'ゝ≡三=ノ !       {/!   __   } | }ゝ≡三=ノ `ー―'     _
彡三ミミヽ            ,!    _〈 ヽ、 !}从__` ノ┐ ヽ              彡三ミミヽ
彡'   ヾ、    _ノ     /ィ {.、 ´i i,}__)  ゙リリ.テテ,ハヽ,} ,!   ハ    \_   ヾ´    ´ミ
      `ー '        ,ゝ(_N__Yテテテ    弋zリ !ノ     !   r 、r┐ `ー ´





 お母さんが指差す方向には、器用にも天井から下がった―――――何と定義すればいいのだろう? 怪物? が一人。
 鬼みたいな仮面の目の部分から、先程の緑の明かりが漏れている。
 そして手には、可愛い可愛い、愛しの孫が……


 「誰かー お助けー」
 「ふはははははは!!! この娘はもらっていくぞ!!!  返して欲しくば―――――ぬうっ!!!」


 大層大袈裟に驚く、緑の目のモンスター。
 それもそのはず。
 その赤ちゃんとおもったら、それは―――――何だろう? 毎回?





                       ,,.. -―- ..,,
                    / \   /\
                   ./   (ヒ]   ヒン) ヽ
                   { '"  ,__,  "' .}
                   \   ヾ_ノ   /
                     `ー-----ー^



 「ハハハハハ!!!!」



 同時に轟く哄笑!!!

 ―――――この正体は、勿論知っている。
 だが、この瞬間を、一年待ちわびずにはいられない。 何回も繰り返したシーンだが…………



 「すりかえておいたのさ!!!」



 ゴブリンとは反対側に、赤ちゃんを抱きながら天井から器用にぶら下がっているのは!!!





               ―――物言わぬ赤子の親の愛に泣く女



          グリーンアイドゴブリンめ、許せるっ!!!

                  _人人人人人人人人人人人人_
     彡⌒ヾ、         >  黒谷スパイダーマッ!!!  <
     ハVヾ  )   _,, ---―ァ ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
r‐-―┴-ーノ"⌒ハ::ィヽ.;:::::::::::/
\:::::::::::::::::/´    `  ヽ:::::/ ・
  \:::::::ノ イ. ハ} /l V!ハ丶ヾ   (⌒)
   く` ノV i'「\ヽ|/ /}lヾ ノ ノ ~.レ-r┐、
    ヽ `ヽ、,゙ー‐゙*゙ー‐゙i;},ゞ.ノ__  | .| | |
     \\弋 ナ十弋 |〈 ̄   `-Lλ_レレ
      \トメ‐十ー/  ̄`ー‐---‐‐´



 『す、すぱいだーまっ!!!』


 この掛け声も同じ。
 皆笑顔だ。
 無事戻ってきた赤ちゃんも、お母さんもお婆ちゃんも


 ―――きっと、マスクの下の ダーマッ も、グリーンアイドゴブリンも。


 「おのれええええ スパイダーマッ!!!」
 「行くぞ!!!  とうっ!!!」




      ――― キャプチャーウェブ!!!


              ――― 丑の刻参り!!!





 ――――――――――そして始まる、世にも美しい、光り輝く弾幕と弾幕の一騎打ち






 上の男の子達は、最近始まったらしい、日本の「ゆっくらいだー」というシリーズがお気に入りらしい。
 確かにあれはとてもかっこいい。
 「エレクトリックまりさ」も名作だった。


 しかし――――  この家の彼女達にとって―――――



 本当のヒーローは、やはり、この蜘蛛女だった。




 これからも。
 この赤ちゃんにとってもきっと。


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 「うわー おのれ スパイダーマっめ!!! 覚えてろー!」
 「----さあ、今年はこれまでだ!!!  良い夢を」


 『ありがとう、黒谷スパイダーマっ!!!』


 今年も名勝負
 息もつけぬ、弾幕の応酬の果て、それでも、最後にはダーマッが勝って、今年も終わる。いや、今年が始まる。

 グリーンアイドゴブリンも、最後の方は苦しいはずなのに、何故だか嬉しそう。
 ダーマッは心地よい疲れと、勝利の余韻を隠そうともしない


 「さらばだ!!!  来年まで、ゆっくりしていってね!!!」


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 「ああ……… 今年も楽しかった………」
 「本当ね」

 台所で、ホットミルクを啜りながら、お婆ちゃんとお母さんは、「今回」について語り合う。
 赤ちゃんは寝かしつけている。

 ―――理由と原理--- 彼女達が何者なのかは知らない。
 ただ、毎年、1月のこの日に行われる現象-----いや、行事といっていいだろう。冠婚葬祭の一つのような。
 悪人が現れて、家の中で何かを起したかと思うと、漫画の中にしかいないはずのヒーローがやってきて助けてくれる。
 基本的にはそれだけの事。
 きっと、来年もまたこうして過ごす。
 お婆ちゃんが天に召されたら----その時は解らないけど、きっと、赤ちゃんが大きくなっても、あの二人はやってきて、
皆の前で戦い、楽しませてくれて、勇気をくれる。
 理由は無いけど、そんな気がする。


 ――それでも
 お婆ちゃんと見られなくなる時。
 赤ちゃんが自分の手を離れるくらい大きくなる時
 それを想像すると少し寂しくなって、お母さんは何気なくお婆ちゃんに聞いてみた。


 「そういえば、変身する前の ダーマッ の本名って何だったかしら?」
 「確か、黒谷キスメ だったと思うよ」



                                            了

  • ヤマメだぁぁあぁ!!!!
    原作どおりとは言え、「許せる!」で笑ってしまうw -- 名無しさん (2010-01-11 00:24:07)
  • ヤマメだよ!
    混ざってる混ざってるw -- 名無しさん (2010-01-11 18:57:05)
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最終更新:2010年01月11日 18:57