衛星の回収とデータの転送も終わり、超空間回路(ワープチャンネル)に入ろうとした矢先に、異変は起きた。
「密航者?」
そんなはずはない。宇宙船の乗員は私一人だ。
そもそも、予定外の生命体が少しでも入り込んでいる事自体、酸素量だけでも変わってしまう訳で、当然
その時点で異常警報が機能するはずだ。
いわば異物が混入した際の生物の体と同じ。
――――切り詰められた調査環境だ。
みすみす自分以外の生物を受け入れては共倒れになるだけである。
なのに、異常は発見されなかった。
酸素量も積載量にも変化は無いし、熱量さえ伴っていない。
しかし、肉眼で見てしまった。疲れが起した見間違えはありえまい。
倉庫内にて、視界を、確かに何かが横切った。
大きさにすれば、ヘルメット位だろうか?何かの機械ではなかろう。動きに、人工物にはない「ムラ」の様な
ものがあった。
しかし――――――どこで進入した?
まず第一に地球自体には入っていないし、あの大気圏外に生息する宇宙生物の存在は確認されていない。
「同業者か?」
あれ位小型の宇宙人本人か、何らかの生物兵器を潜り込ませたか。
細心の注意は払っても、隙をつける技術を持つ星は、いくつか検討がつく。
いや、この言い方はおかしい。
元々私達に侵略の意図は無い。純粋なる調査目的だし――――結論として、「地球人」は他星とのコンタクト
をとるには精神的に未成熟に過ぎるとの結論に至ったが、別段今の所脅威にもなるまい。
無断で、進入するような剣呑な連中と同盟を結んだ覚えは無い。
手元の武器はハンドガンしかない。
「これだから、長引かせたくなかったんだ…………」
一セット、小型カメラが行方不明になってしまい、どうしても見つからなかった。その原因も解らず、時間を食った
末に、地球人ではないだけマシだが、他の星に見つかったか。何気に競争率は高いのだろうか?
元々戦いは得意ではない。
覚悟を決めて、ゲートを開けると………
「ゆっくりしていってね!!!」
地球人がいた。
喋っているからには生きていると思うが、相手は首だけだった。おそらく『アジア』と呼ばれる地方の民族特有の顔つきだろう。
性別は地球で言えば雌。各地の文化に良く見られる装飾を、後ろ髪に結んでいる。
が、その認識を覆すのに約2秒
第一に、あの星の連中は、頭部だけでは生存できない。脳は頭部に集約されており、医療技術もある程度進んで
いるため、他の部位が欠損しても生存しているケースもあったが、首だけは不可能だ
第二に、顔の構成がよく見ると若干異なった。丸っこい目は平均的な地球人のそれよりも2周りほど大きく、逆に笑みを
たたえた口は一回り小さい。その吊り上げたような端や、眉毛などが、線で引かれた様に一々くっきりしていて、まるで
戯画の様。大きさも、そして柔らかそうな丸っこさも、地球人としては不自然だ。
そう―――――連中の絵画文化、とりわけ近年の漫画をそのまま現実に抜き取るとこんな感じだろう。
あと、鼻がない
第三に――――これは、私が「地球人」ではないためだろうか?直感的に違和感としか言い様がなかった。報告書にも
書きようがない。所謂、生物の擬態とその本物を見比べた時の差と言おうか。
―――――――正直、ハンドガンを構えるを一瞬忘れた。
それほど、緊張感も悪意も無い、間抜けすぎる顔だったのだ。
本当に地球人が平均してこんな表情だったら、どんな悪辣な侵略者も、出鼻を挫かれるに違いない。
しかし脱力の後には警戒心が蘇った。すぐさま銃を構え直し、迎撃の態勢をとったが(首だけで何ができるのか解らなかったが)、
相手は動こうとしない。
「ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってよー」
表情は変えずに、同じ事を。本当にロボットか何かというほうがしっくりくる。
「ゆっくりしていけやあ」
「答えろ…………どこの星から来た?」
丸っこい騒ぐ首は、口をつぐむと、いかにも小ばかにしたような笑みを作ると嘆息し、今度は不満げに話し始めた。
「よくぅ~ こういうことしてるとおー 『えーあなたも現代入りですかあ?』とかぁ、『へー同じですねv僕もポール星出身なんですよお』
とかあ、『同じバンダ星の出身者が見つかってよかったw』とか言われるんですけどおー 生粋の地球生まれの地球育ちでしてぇー」
「――――地球にお前みたいな生物は確認できていないぞ……」
ここで、回収できなかった一機の衛星の事を思い出した。たった一機の事故で、ここまで重要な情報を逃していたとは。
「何者だ………?」
「ゆっ!!! れいむだよ!!! れいむの名前はれいむだよ!!!」
「レーム星…… レギューム星ではなくてか……?」
「こっちも聞きたいけど、地球にはどれくらいいたの?」
地球時間で、約三ヶ月。自分でも短いとは思っている。本当の理解はそんな時間では終わらない。
結局、回収したデータのチェックだけだ。正確さよりもスピードの方が今は求められる。
それにしても言っている事が先程からおかしい。自動翻訳機を信用していない訳ではないが、さっきから言う「ゆっくりしていってね」
自体も、受け入れる側が言うべき言葉のはず。
こいつについて少しでも情報を引き出すには、一度捕獲してセンターに戻り、データベースを探るしかないだろう。
私は、慎重に距離を縮めた。
逃げない。
ハンドガンをそのまま額に押し当てても、抵抗する様子も無い。皮膚自体も生物らしからぬ弾力と柔らかさで、ずぶずぶとのめりこんだ。
「抵抗すれば、そのまま撃つ」
「おお、こわいこわい」
右手で押し当てつつ、左手で掴むと、手の平に吸い付くようだった。
正直、さわり心地が良い
一瞬気が抜けてしまうと――――2回目の衝撃が襲った。
今度は、本当に警報が鳴る。
船自体が大きくゆれ、あまりの不測の事態に、横転してしまった
「ゆぶう」
「す、すまない」
自分から入り込むように、レームがクッションになってくれていた。
この生物の事をもっと調べたかったが、コックピットに戻ると、先に状況の把握のため、ディスプレイに宇宙船の全方位を映し出させると
―――彼は悲鳴を上げた
見渡すかぎり、特に目立った特徴もない円盤群に囲まれている。
一つ一つはこの宇宙船の3分の2ほども無いと思うが、脅威なのはその数
逃げ場はどうにもない。
ワープホールが遠く彼方に感じられる。
「どういうことだ………」
油断していたとは思う。
更に、緩やかだが網状の光線が幾重にもそれぞれの機体から放出され、この船自体が絡めとられている。恐らく1ミリも動けまい。
明らかな敵意に溢れた行為だが、どこの星かと思い出そうとすると―――
「ブラコ星か……あのタンコブどもめ」
先程の不機嫌そうな顔に戻って、レームは言った。こいつが事態を私よりも把握できている事と―――その上げた星の名前も脅威だった。
ブラコ星―――橙色の、割と辺鄙で、住民は赤く気持ちの悪い胞子だけを食らって生きる星だが、非常に剣呑な印象しかない。何でも
最近胞子の収穫量が落ちたとやらで、手当たり次第の他の星の生物を、見境無く攫っては、その胞子が体内で繁殖できないか実験を
繰り返しているような連中なのだ。
「地球にどうやら、適合の生物を見つけたらしいね」
―――それが、何か重要な生物であったり、最悪地球人自身なら、もうあの星はおしまいかもしれない。
しかし、このレームは本当に何故そんな事まで解る
「事前学習と、この船の中で色々学習させてもらったんだよ」
先程から、私はあまり話してはいないのに、先取りするように話している。あまり表情に出る方ではないが、この生物、やはり相当知能が
高いのかもしれない
「⑨だと思ったの? あなたが⑨なの? ⑨って言う奴が⑨なんだよ。 ⑨~~~~!!!」
⑨という意味が今一解らなかった。どんなニッチなスラングなのだろうか? 悪い意味だという事だけは解る。
そうこうしていると、先方から通信が入った。
言語が違いすぎるためか、かなり音質が悪い
『コチラ ブラコ星 Σ小隊。 応答セヨ』
「――――こちら、ユルグ星θ69号 ―――これはどういう事か?」
『非加盟星ノユルグ星ガ、ナゼニ地球ニ干渉スル?」
―――猛烈に悪い予感がした。「加盟」という事場と、円盤の背後にいくつか見知った円盤も見えてしまったからだ。
「こちらは純粋な調査目的だ。地球人への干渉も接触も行っていない」
第一
「ブラコ星・地球間の問題に関しては我々は中立なのだから、部会者に対してのこの過剰な威嚇こそ条約違反のはず。また、『加盟星』とは
何か?」
モニターには、新たにウインドウが開き、蟹をひっくり返したようなブラコ星代表の顔が映し出されている。しかもアップで。
やはり怖い。
『地球ハ我々連合軍ニヨル統治ガ決定シタ。非加盟星ノイカナル地球ニ対スル行為モ、妨害行為トミナス』
何を勝手な……… 狂っている。 本当の狂人かあの連中は
「そんな情報はドコからも聞いていない!少なくとも地球人にはそんな取り決め自体知らされていないはずだ」
地球がどうなろうと知った事ではない。
が――――母星であるユルグ星は、今どうなっている!? 先程から通信しようとしているが、ジャックされているのか、全く繋がらない。
―――最大規模の星間同盟が秘密裏に作られつつあるという話は、地球に調査に来る前から聞いていた。ユルグ星も加盟するかどうかは
その時はまだ解らなかったが―――――その時耳にした現在加盟している名を聞いて、個人的には反対だった。
ザラブ星、ゼットン星、バド星、ヴィラ星――――そして、先程メトロン星の円盤も見えた。いずれも、悪名高い侵略惑星である。
―――そんな悪党どもの集まりなど、どこぞの宇宙警備隊にでも任せて置けばいいのだ。
しかし、辺境の星で、そんな奴等に因縁をつけられてしまったからたまらない
「おいおい、どうするのー?」
「どうするも何もこの包囲網から抜け出さんことには…」
「奴等ヤル気まんまんよ?」
「――――もう一度言う! この船も私の母星も、その同盟へ協力はしないが、妨害の意志は決してない。今回情報の行き違いがあった
事については侘びる」
最悪、収集したデータを破棄することになるかもしれない。
しかし、モニターの向こうのブラコ星人は、図太い針金のような触覚をブヒブヒ動かしながら言った
『少ナクトモ我々ノ領土(テリトリー)に踏ミ込ンダ時点デ、貴様ハ反逆罪ダ。 下等生物ハ 制裁スル」
こっちは下等生物扱いか。 確かに大した資源も技術もない弱小惑星だが――――向こうはそれ程大きな同盟なのだろうか?
と、レームの方から口を開いた
「―――『ここはブラコ星の牧場だよ! 協力してくれない他の星は出て行ってね!!』 ―――か」
「ん?」
明らかに声色を変えていたが、それだけではなく、不機嫌というわけでもない薄ら笑いを浮かべていた。それも、見るものの苛立ちを書きたてるような、
明らかな侮蔑の色を
「やれやれ。ちょっと仲間が増えただけで、自分が強いと勘違いしちゃったか」
「実際に奴等強いぞ………?」
実の所を言うと、この船自体はブラコ星ごときに撃墜される事は無いという根拠があった。ただ、捕獲はされてしまっているので、このままどこへ連れさら
れるか、他に、かの連合軍に加盟している星で気になる連中がいるのだ。
心配事はその2点。そして逃げられれば――――
「宇宙って怖い所だねー」
「………全くだ。どうすれば……」
「あいつらを倒すのが目的じゃないでしょ?だったらゆっくり逃げればいいじゃない」
「簡単に言うな」
「ま、れいむはあんな宇宙人達よりも悪い事をしてきたんだけどねー」
レームを見返したが、何もかwら無かった。理由はわからないが、苛立ちとは違う、恐怖を初めて感じた。知識も不十分なまま、初めて宇宙に出た時期
のことを思い出す。
「助けるよ。地球が奴等の思い通りにされるのも癪だしね」
「何を馬鹿な」
「どれ、そこの端子にれいむをつないでね!!!」
気がつくと、本当に気がつくと、「見たことも無い」端子が口をあけて待っている。今までこんな所にこんなももはなかったのに。
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更にレームの方はというと……
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'r ´ 弋ノ ヽ、ン、
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レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||
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「さっきまでそんな形じゃなかったじゃないか!」
「細けえことぁいいんだよ!!! ほれ、はめちまいな、ガップリと!!」
母星には――――特に私を待つ妻子もいないし、同胞としての忠誠心も誇りもあまりあるほうではない。
しだが、普通の生物としての生存本能と、人間としての正義感だけはある。
―――私は、ガップリとはめた。
抑揚の無い声をレームはあげる。
「プラグイン! ゆっくり霊夢EXE、 トランスミッション!!!」
端子からは波打ち際の様な轟音が聞こえ、瞬間、レームは端子ごと消えていた。
程なくして、新しいウインドウがモニターに開き―――
そこに映っていた。
『ゆふふ・・・・・・・良い船だね。ウイルス一匹いなかったから、簡単に支配できたよ』
「お前………何をした!!?」
『ゆっくり外を見てごらん』
ちなみに、内部には全く影響は無い。
ウインドウの一つは、今も埋め尽くさんばかりに集っているブラコ星の円盤群が。それに取り巻かれているのは……
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「なんてこったああああああああ…………」
『ゆっくりしてもらった結果がこれだよ!!! さあ、ワープホールに向かうよ』
そう―――円盤から雁字搦めにされていはずなのに、船はしっかり動かす事ができた。よく見ると、肉眼でギリギリ見える
範囲で、船全体に綺麗に丸くバリアーが張られている。
解析は全く出来ない。本当にバリアーか?
『ああ、結界を張ったから、光線はこれでばっちりだね!!! 物理的なものにはこの船強いでしょ?』
「これが………これが地球の技術なのか!!?」
『違うよ!!! 支配してわかったけど、この船凄いね! ぺダニウム加工なんて何者よ?』
それは――――説明した矢先に――――嫌な予感が的中した事がわかった。
躍起になって、『結界』とやらに無駄な抵抗を続ける連合軍達の円盤をぬって――――3体ほど、見覚えのある『部品』
が見え隠れしたのだ。
そう、『円盤』ではない
『どしたの?』
「―――もっと、スピードは出ないか?」
『無理だね!!! ゆっくり進めばいいじゃない!!! どうせあいつら束になったってこの船は安全n………』
どうやら、レームも気がついたらしい。
まさに目の前で、並み居るブラコ星やゴドラ星、メトロン星の円盤を押しのけ―――― それ単体ではなんだか解らない
「部品」が集まっていく。
子供の玩具の様に―――足元から、一つ一つ。
『これって…………』
「冗談じゃない」
そして、それは一つの息を飲むような完成形を作り出した。
/A._ ,.._ r、
ョ| _ _. リ 〉| ,.ィ´\ Y´ ヽ. GWASH!!!
rtyf^}`ヽ.__/|: : /|: :`ソ八 サ /\ ヽ \j、
_.-'_,-''^il`l / ´!: :|oヽ:[_/^∨´/ヽ `\ _,.イ´〉、\
|l}|||||li!jl} !./ 凧: ヽo\: | / `\ /::// \\
|t!-''´´-'^|.ヾ ヽソ、: :\/:|. / /:::::::7\ ヽ .`/
r─‐K _..-t(ッ)|∨ .: : : :\: : :! 〈..: ..: .:: ./::::::::/ヽ. \.: / GWASH!!!
rvj-' !(ッ)t_l´ j .∨_.:: : : : : : /`´ |..: ..: ..:/::::::::/ ヽ ヽ/
j_几] j rt..,-''´ ̄Y´ ̄ ̄ ̄`! >ヘ/\::/ /
rf´!`=>、 `-t、.....!-‐'´v'_,..--、 .|§ .: : : :.| ./^\ ヽ∧.:: ..: ...../ GWASH!!!
| ト、>\ノ> `‐f|r-、. ||l嫋嫋ヽt-=〒==-'t=-'\ .Y´ソ::::\..://
ヽ八 ソ\ !|嫋|| l|嫋嫋嫋始!l |::}-'ィイイイイイ.\.j=\.:::..:ノ/
V/ ソ\ }|嫋|| |l嫋嫋嫋嫋|| |〈 | :::::`ー―‐∨
出来上がったのは、黄金色の巨人
製作者であるぺダン星人達は、何故かシンプルに「スーパーロボット(これ以上無い程的確な二つ名だ!!!)」としか呼ばないため、
正確な名称は実は不明である。
しかし、その風格と、最強のロボットとしての実績から、大抵の宇宙人達が今でも呼ぶ名前がある
――― KING JOE ―――
『おほおお』
「もう……本当に駄目だ!」
所謂飛び道具は一切持たないが、分解した各部が敵地に送られ、その場をパワーだけで完膚なきまでに破壊しつくす、決戦用兵器である。
逃げ切れた例は、今の所知らない。
レームは興奮している。
『シンプルイズベストデザイン!! それに、自星で加工した船だから、自星でつくったロボットなら壊せるだろうって理屈だね!』
「まさかぺダン星まで加盟していたとは………元々信用できない奴等ではあったけど………」
『いやー やっぱりかっこいいねこいつ! でもでも、どちらかというとナースの方を見たかったよ!!
―― キングジョー、 ナース、 ビルガモ、 ロボネズ、 ガメロット、 メカギラス、 ザタンシルバー 作った宇宙人より、ロボットの方が
スタイリッシュなのは宿命だね!!! あ、でもインペライザーはb………』
「うわあああああああああああ!!!」
『うっぎゃああああああああああ!!!』
逃れられなかった。
コクピットから先は、普通にキングジョーの手の内しか見えない!!
最初から速度がゆっくり過ぎたし、頑強さだけを武器に進んでいたが、それを越えるパワーの前には、なす術も無かった。
キングジョーは、たやすく船を、レームを掴むと、全力で握りつぶしにかかっている!!!
警報は、ついに赤いランプへ!!!
何か、肉感的な音さえたてて、船が軋む!!!
「祖国よ…………!!」
『ぬう……… ライトンも無いし、アイスラッガーでつけた傷も無いね………どうしよう』
「すまん…………こんな事に巻き込んで……」
『ゆ……ゆ……ゆゆゆゆゆゆう………!!!』
ii イイ iiゝゝ、、イイ人人レレ//__ルルヽヽイイ ii ||
レレリリイイii ((ヒヒ__]] ヒヒ__ンン ))..|| ..||、、ii ..||||
レレリリイイii ((ヒヒ__]] ヒヒ__ンン ))..|| ..||、、ii ..||||
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!!YY!!"""" ,,______,, """" 「「 !!ノノ ii ||
LL..'',,.. ヽヽ __ンン LL」」 ノノ|| ..||
LL..'',,.. ヽヽ __ンン LL」」 ノノ|| ..||
更なる揺れで、私は強かに頭を天井に打ち付けた。
そして同じくらいの衝撃でしりもちをついたが――――
コクピットの外は、宇宙。
「手が離れた――――?」
見ると、キングジョーは遥か先に。丁寧に「気をつけ」のポーズで漂っている。
破壊はできないのだ。ただ、機能を停止した時に、あのようなポーズをとると噂で聞いた。
という事は――――
「どうしたんだ!!?」
『いや、振動してみたら、何か大丈夫だった』
「・・・・・・・・・・・・」
これで、このまま帰ったところでどう報告しようかと、助かった喜びが実感できずに頭を捻ってしまっていると
――――コクピットに、私の背後に映る影を見て、私はまた腰を抜かした。
割かし広めに作ってある操縦室だが―――― 4人は少し多い。
「調子に乗りすぎたようダナ、 ユルグ星人」
「…………」
「地球から盗んだ技術ハ凄いジャナイカ。 ビクともしない」
「だが、こうして内部に入ってこられるとは盲点だったであろう」
「このまま宇宙空間へ放り投げてやろうか!!!」
3人の宇宙人。
髭まみれの、耳ばかり大きい間抜けなイカルス星人を筆頭に、最も一人で会いたくない宇宙人2位(1位はキュラソ星人)
のダダ。 二人とも空間を越えて移動する技術が個人的に備わっているようだから解るが、もう一人のゴドラ星人は、一緒
にくっついてきただけか。
実際の宇宙人個体の強さにランク付けがあるとすれば、こいつも大した事は無いとは思う――――ただし、地球人同様、
我々ユルグ星人は、ランク圏外である。
イカルス星人は、諸手を上げた。
確か――――全身から。腕とか目ではなく、体全体から光線が発射されるのだ……
―――その時。 ドアが開いた。
反対側の
「…………あれ?」
「生首村じゃない?」
「あーv いかるちゅ星人たんだー!!!」
地球人だった。
少年である。
その足元に――――レームが――――いや、レームに非常に良く似た生物が居た。
体はあるが、不自然に小さい。
顔つきが似ている―――というか、同じである。 顔だけとれば、流れるような短い銀髪くらいしか違いがない。
「あの………すみません。間違えて入ってしまいました……」
「ダダしゃんまでいるー!!!」
そして、足元には、レームを極端に縮小したようなこっちは首だけの連中が藁藁と、子供らしい声で騒いでいる。
本人たち含め――――状況を把握している者は、本当に誰一人いない。
「貴様等ぁ!!! 何者だ!!!」
虚勢なのか、3人の中で一番弱いゴドラ星人が一番に吼える。
レームによく似た奴が、どうどうといった
「どうも!!! 梵Nippori製鉄所 のギターのMyonです!!!」
意味不明。
解析不能。
イカルス星人は、無言で全身からアロー光線を放った!!
室内の温度が一気にあがり、鈍く部屋の半分が光る。
反対側のドアは――――塗料でも塗りたくった様に、真っ黒に焦げていた。
その上で、へたり込んだ地球人の少年と、そのレームの仲間? 達がうんざりした様子で立っている。
「ゆっくりしゃがまなければ、死ぬ所だった………」
「おお、怖い怖い」
「なんて無骨な人達………!」
床も同様に焦げているのだが………
首を傾げる宇宙人に、あのレームと全く同じ、馬鹿に仕切った顔で――――Myonとかいう奴は――――持参していたらしい、
剣を構えた。
「来なさい……… イカルス星人、ダダ、ゴドラ星人」
それでも、楽しそう。剣を持つ事がか?
「私が相手です!!!」
「や、やめてええええええ………」
...:::.: :. :: ::;:: ::.: :. :: ::;:: ::.: :. :: ::;*:: ::.: :. :: ::;:: ::.: :. :: ::;:: ::.: :. :: ::;:: ::.: :. :: ::;:: ::.:
ワープホールまで、あと一時間程だろうか?
とにかくゆっくり過ぎる。
ふゆふゆふゆふゆふゆ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
静かになって解ったが、この船、進む音が間抜けすぎる。
一気に操縦室の温度も下がった。
「寒いですね………」
「ああ……………………」
正当防衛とはいえ………凶悪な宇宙人とは言え………… 3人も目の前で殺害を許容してしまった。
いや、正確には死んでいない。 ダダは倒れた途端に消えたから、単に逃げただけと思うが、ゴドラ星人と
イカルス星人は、Myonが綺麗に真っ二つに袈裟切りしてしまったのだ。
それをMyonは針と糸で縫い直していて――――どうやら死ぬ事は無いようだが、これが星際問題に発展する事は
目に見えていた。
他の連中は、隅っこで大人しく見守っている。
「う~ん………」
『でもえらいね』
「何が?」
レームは相変わらず元気だ。
『だって、この船、ペダニウムランチャーを装備してるのに、一回も自分で使わなかったね!!!
非戦の信念?』
そういえば そうだった
一応武装はしているのだ。
それも、先程のペダン星の。
余程の事が無い限り、使う事を厳しく禁じられていたため、使わなかったのだ!!
実質、武器に頼らなくても、キングジョーも撃退したわけだが……… これから先の事や、あのブラコ星人の言い草を
考えると、段々腹が立ってきた。
今も、周りを囲んでいる円盤がたくさんある。
本当に幅広く集めたらしく、ゴース星やバルタン星まで…………
「全く、侵略者どもが………!」
――――こんな場所で、乱闘してはいけない。
――――流石に、どこかおかしくなっていたのだろう。
――――関係ない部分を叩いた弾みか
その、最終兵器が発動した。
「あ……あまり意味も無いのに…………」
『おい、やめろ馬鹿』
レームもこちらの事情を汲んでくれているのだろうか?―――――と思いつつ、半ば自暴自棄に外の円盤群を見る。
見事に全弾、ミサイルが円盤にヒットする。
しかし…………私は………… そのミサイル一つ一つまでもが、なにか丸っこく、変に幼稚なデザインに変えられていた事に気がついていた。
もうもうとたちこめる煙が晴れるとそこには…………
_,.-─-、,
≦⌒>- 、 , '´ 。ヽ。
|::::;'⌒ヽ:::: ヽ_ ,' , , 、 (ω)
_|::/ >‐<__/ ( ( ,ヘ, ( サ/ナλ エワ:キ、i.iヾ ,ヘ, ))
::::::_;'ニ二>-<ハヽ/`7 '、ノ ヾルヨ(ヒ_]'`' ヒ_ンfノ | |
「イ / /|∧/|∧l 」∨ |:| ハi !""r-‐¬""iz!/ |:|
〉 /レ,,(ヒ] ヒンレ|丿 |:| ノ !ゝヽ、__,ノ_ノノ.く |:|
/ ノ l ヽニ' 从| |:| ,へノ弋Λ。/入/| .|:| 《_,ニ=─-< ̄》
∧〈 )>‐--‐<,ハ 弋,___,,ノ .〈 |::| 〉 \._ノ ,≦=- -=≧、ヽ
_∠二二二二ヽ_ ノ |::| λ l ィ\人レ/∧ lハ|
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/ ヽ _∠二二二二ヽ_
〈 ____ ____ 〉 / 0 O ○ O 0\
ゝ ノ ─、───;─ ゝ ノ (( (_________ ) ))
` ─ ´ \_/ ` ─ ´ ゝ,__ノ ゝ,__ノ ゝ,__ノ
『あーあ、どこもかしこも、宇宙人さん達、みんなゆっくしちゃったじゃない!!!』
「という事は…………」
仮に、あの円盤一つ一つが、同じ様に攻撃して、それが被弾した場合―――――その対象もやはり―――
『ゆっくりするだろうね』
「………………」
それがいい事なのか悪い事なのか…………
素敵な未来と、恐ろしい未来の両方が想像できる。
星星も円盤達も、 ゆっくりゆっくりと、静かに宇宙の時間は流れて行った。
未だに操縦室は寒い。
了
- 梵Nippori製鉄所の神出鬼没っぷりにびっくりですわ -- 名無しさん (2010-01-11 21:39:22)
最終更新:2010年01月11日 21:39