休憩で入った深夜のファミリーレストラン。食べ終わった頃、彼女達はやってきた。
見覚えはないはずだったが、挨拶をされると自然に返してしまった。
向かいの席に、妙に恭しく頭を下げて座る。
「ジョシュア・デイボブア監督ですね?」
「突然の訪問、申し訳ない」
「はあ」
「今年度発表予定の
『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』
についてお伺いしたいのですが」
改めて見ると、片割れは東洋人だった。変に背が低いと思っていたら、本当に幼い。妙にウェーブもかかってボリュームも
ある髪の毛のせいだろうか。
もう一人のショートの方は、随分と大人びていたが、やる気が無さそうだった。
二人とも、とても野暮ったいコートに、サングラスをかけている。
「あれ………ご自身ではどう思われます?」
「いや……最高傑作です」
これは堂々と言える。
Cartonn.netのゆっくりシリーズの脚本を手がけてかれこれ2年は経つ。ショートショートを専門に、最初は戸惑ったが何とか
続けてこられたし、劇場版が制作されるまでに至った。確かに、途中でトラブルもあったし、クレームもあった。
特に、「ゆっくりしていってね!!!」について深く調べれば調べるほど、実は表現には気を使わなければならない部分が
あるという事も知った。それでも彼はスタッフと探求し、シリーズを続けた。
TVという媒体で、ゆっくりを扱うのは難しいが楽しかった。
「元々こうした長編の脚本が専門だったので、本領発揮と言いますか、今までの全てを詰め込んだ話にしているつもりです」
「なるほどなるほど。確かにあれは、よくできている」
いや………製作途中なのに、何故内容を知っている?
「確かに、あなたも思うところがあって長く続けられてきたんでしょう」
「ええ」
「キャラクターの下地はあっても、決まっている様で実は曖昧。そして何より、原作ストーリーが存在しない。なのに、
多く知られているキャラクターを使う。中々できることではありません」
「そこまで褒めてもらえると………」
流石に思い切り過ぎた事はできずに、元々あった2chのログや、まとめwikiという所から拝借して、それらしくストーリーを作ってた
のが現実なので(元々5分間番組だし)、だから、この長編こそ、本当のオリジナルの第一歩と言える。
「それだけに、我々は困っている」
「また――その、公式が云々という話ですか?」
このシリーズ、明確な設定があまりないため、とにかく公共の電波で流すには、ハードルが高い。つまり、TVで放映する事自体が
表現の自由を狭めるという批判があり、設定は人それぞれ、という事は、それだけ違う価値観がぶつかり合う訳だ。
それは仕方の無いことなのだ
ただ、その葛藤から色々なもの生まれる
寧ろ困ったのは、原初主義者というべきか、TVアニメでやる事自体がおかしいと抗議する声だった。中には、イラストなどに起す事
自体が間違っているという主張すらある。
穏やかに見せかけて、この二人もその手合いか?
ならば話はできない。最初から前提が違っているのだから、まともに会話するのを諦める事を彼は覚えていた。
「まあ――――そういう事です」
「ならば話しは早い」
目付きに敵意はない。しかし、二人はしげしげと頷くと、悲しそうな顔で、おもむろに持参していたカバンに手を入れ――――中身を
装着した
「あ・・・・・・・・・」
「別に強烈なフリークとか、原理主義者とかではないです」
「まずは改めまして、こんにちは」
長髪の東洋人は、白いリボンが巻かれた、魔法使いの様な大袈裟な尖がり帽子。ショートの方は、赤いカチューシャ
作画担当も、一番のポイントだと言っていた。
「どうも、 ゆっくりまりさ です」
「ゆっくりアリス です」
―――――単なるコスプレ女と思えばそれまでだが…………それが言えなかった。
気がつけば、店の中には誰も居ない。
何と言って、追い払おうかと思ったが、口に出せない。
いや、寧ろ、「ゆっくり本人」という言葉に真実味すら感じる
「――――大丈夫ですか、あなた達?」
「ゆっくりの事なら大体答えられます」
「まりさ と アリス に関してはね」
「――――それじゃあ」
彼も過去ログを読み込んできた。例えば、有名なAAがいつ頃何スレ目で生まれたとか、ある程度は答えられる――――が、
それを正確に、二人は即答した。
しかも、レス数まで
「整形アリス」や、「親不孝アリス」が作られたその場の流れまで、細かく語りすぎて、正直正解かどうかも言えない。
しかしこれは覚える事は不可能ではない。 そう言ったら
「信じられないのも無理はない。じゃあ、これはどう?」
イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ
`! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ
i ! 'ー- レ' -― .Ti !ハノ ,' o
!ヘ ,ハ !rr=- r=;ァ. イ/ i 〈
人間では無理だ。
ガタガタと震えながら席を立とうとする彼を、「ゆっくりアリス」は優しく両肩に手を置いて腰を下ろさせた。
しかし有無を言わせぬ力があった。
「あ、あんた達は一体………?」
「まあ、見ての通りの者ですよ」
「流石に、首だけでやってきたら驚かせますから、これは仮の姿です」
「で、相談がある」
既に、敬語ではなくなっていた。
「私に何をしろと………」
「日本人の作った言葉なんですが、 『YOUKAI(妖怪)』という単語をご存知かな?」
確か、原作の「TOUHOU PROJECT」の登場人物の大半がそれのはずだ。 人ならざるもの。魔境の住人
と言った解釈彼はしている。
「大抵、『Monster』『Goblin』『Demon』と訳されているが、厳密に言うとどれも違う」
「所謂『種族』や『怪物』ではなく、『人では捉えられない現象』の全てに何らかの人格と名前を与えたものですな。
本来なら、一匹・二匹とカウントするものじゃない」
「それが………何だ?」
「『ゆっくり』はそれに近い。――――既に、『こういうもの』としての現象の個別の集合体―――妖怪なんです」
確かに――――流れを見ていたり、自由でいいはずと言われているにも関わらず、ある程度の類似性ができてしまう事は
よくあったし、不特定多数のユーザーが好き勝手に匿名で作っているのにも関わらず――たまに、「ゆっくりは生きている」という
錯覚に陥りそうになる事はある。
それが、本当に意志を持ったとでも?
「そういう事もあるんですよ…………」
「馬鹿な………」
「普通はそういう反応になりますよね」
「大抵、妖怪の方から人間に話しかけるなんて事はしない―――――でもだ」
再びサングラスをかけ直す。
「あなたはそのバランスを壊してしまった」
―――それが、本題か
「よ、妖怪の事を表に出してはいけないというなら、他にもそんなものはあるだろう」
「そんな事にまで口出しはしませんよ」
「何か間違った表現があって、ゆっくりが誤解されるとかなら………」
「その逆です」
二人は身を乗り出した
「正確すぎるんですよ
『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』は」
「へ?」
「もう少し上手く言うと、あなたが書いた
『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』
と『全く同じ世界』が存在するんです」
そうした話は、どこかで聞いたことがあるが―――――
「あんなに生き生きとゆっくりを描いている作品はない。まあ、世界観が被ってしまう、同一の設定で動いている世界がある、
そういう事はままあるんですが、あそこまで見事に一致してしまった例はない」
「しかも………これが劇場版。 商業作品として、公式に全国で公開されるとなると、もう他人事じゃない」
それとなくは解ってきた。
「じゃあ、この映画の公開を中止しろと?」
「そこまでは言わないよ。内容を変えて欲しい」
「…………断ると言ったら?」
「境界が壊れて、困るのはあなたなんですよ?」
例えば何が起こるというのだ――――――と、何の気なしに外を見て―――――腰を抜かしそうになった。
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「始まったな…………」
「この世界には現実にゆっくりはいないのに」
「だからと言って、これはない!!!」
流石に、これは二人にとっても驚きだったらしく、彼をおいて二人で話し合っている。どうも、かの映画以外に、
日本で行われているリレー企画とやらが原因らしいが、日本で起きた現象がこうして肉眼で見えるというのは
どういう訳だ?
「脅迫かこれは!!?」
「コッチだって困るんですよ。好きでこういう事を引き起こしてるのが我々じゃない」
ゆっくりまりさはカバンから、今度は束ねた原稿用紙をを取り出した。
「とりあえずこの通り書き直してくれませんか?」
「どれだけだ!!?」
「何簡単な事。台詞および配役、ちょっとしたプロットの変更です。大筋は変わりませんから」
「ぬう……・・・ 」
本当にそれだけで済むのなら―――――これから何が起こるか解らないが、確かに心血注いだ脚本ではあるが、
やむ終えまい。
本当に見てくれるチビっ子達の未来のためなら…………
が――――渡してくれた原稿は、少し酷かった。
何と言うか―――――何か「こうしてくれないと困る」というか、作成者の焦りがありありと感じられるのだ。ありがちな
展開や台詞回しではない、が、その「ありがちさ」を意識して、無理にその反対のものを作ろうとしているような。
その割にはアリスの役どころが酷い
他の奇をてらったしわ寄せが一気に彼女に押し寄せてきた様。それだけ、よくありがちな描かれ方を凝縮して
固めたような、好感を持てないアリスだった。
誰が描いたのかは知らないが――――――というか、目の前に座っているのが、そのゆっくりアリスの象徴とも言える存在
なので、辛くないのかと思ったが、よく見ると口の端をつぐんでいる。
やはり面白くないのだろう。
「おい………お前、不満なわけ?」
「別に」
「勘違いすんじゃあねえぞお………お前なんか、『いつも通り』って言わせときゃいいんだよ…」
「そんなのたくさんあるじゃない」
「うるせえ!!! テンプレがある方が入りやすいんだよ!!! 台詞も行動も大体そんなもんが決まってりゃあとっつけるだろ!!!」
「―――あっそ」
「表出るか?ん?」
ゆっくりAAや、その他の創作でも、ここまで醜い言い方をするゆっくりまりさも、不憫なゆっくりアリスも見た事がない……
疑問に思った時―――――
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窓の外に、何か居る。
ただてくてく歩いているだけで、窓ガラスを割って中に入り込もうとか、そういう訳ではなさそうだが―――――とにかく、
この世界が何かに蝕まれているという事だけは解った。
「さあ、この世界を救うためにも……」
「わ、解った。しかし、原稿は自宅だ。書き直しには…」
「いやいや、この契約書にサインをいただければいいですよ」
差し出したのは、とにかく極悪なデザインの便箋だった。どす黒い赤で、クセ字なのか、余程遠い国の言語なのか、
何か蟲がのたうちもがいている様な文字が書き連ねられ、プリントされている動物のイラストも、黒山羊やバッファロー・
セイウチといった、あまりガラの良くない面々ばかり。
「…………………」
そんな事よりも、彼の脳内をよぎり、筆を一瞬止めさせたのは――――― 仕事仲間たちの顔だった。
最初からほぼメンバーは変わる事無く、寝食を共にした戦友
映画化が決定した時、抱き合って喜んでくれた
「――――――――ごめん。みんな」
目頭が熱くなるのを堪えて、ペン先を走らそうとした時だった。
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> そのサインちょっと待ったああ!!! <
:  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
_,,....,,_
.,,-''"::::::::::::::::\
ヽ::::::::::::::::::::::::::::\
|::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ
|::::ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__
_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 そいつらは偽者よ!
_..,,-"::::::rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7
"-..,,_r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ
!イ´ ,' | ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ
( `! !/レi' rr=-, r=;ァ レ'i ノ
y' ノ !  ̄  ̄ i .レ'
ノノ ,ハri^ixx 、__, xxrvィ人
( ,.ヘ,)、 〉、`ー-、 .___ ,.-‐' / ハ
( )',. / `ァ 〉r‐┤ r‐':./} ノ
ノヽ {. / /:.:l ./| |: :/ |
隣のテーブルだった。
大きさはビーチボール程度。
何故か巨大なパフェまで注文している。
ちゃんと体があると思っていたら、椅子から降りた瞬間に消えていた。 何なんだ
床には――――本当に生首だけのゆっくりまりさが転がる。
「監督、そいつは偽者なのぜ!!! 大切なことだから2回言いました!!!」
「何だって?」
普通に考えれば、生首の方が偽者のはずなのだが―――――
「大体誰だよお前等。きもい。主に体がきもい」
「ふん、解りやすく首だけでやってきたか。しかし、そんな見た目だけで騙されるほど人間も愚かじゃないのよ」
「監督、騙されてはいけません。そのゆっくりまりさこそ偽者です。私達を信じてください」
相手が ゆっくり と限定すると、目の前の6頭身より、1頭身を信じたくなる。
「口車に乗せられてはいけないのぜ! こいつらは都合のいい事を言って、脚本を書き換えるつもりなのぜ!
自分の作品は自分で守らなければならないのぜ!」
「黙らっしゃいこのへちゃむくれ!!」
「もう一度頭を冷やすのぜ。運命は受け入れるもの。親に対して、もう一度違う設定で産み直してくれ、
なんて要求する子どもがどこにいるのぜ」
正確に言うと、自分は親ではない。
が――――改めて、今までゆっくりと向かい合った2年間と、喜んでくれたチビっ子達の声を思い出す
「ささ、監督こんな所に長居は無用。一端スタジオに帰りましょうぜ」
「………」
「御代はまりさが先に立て替えておいたのゼ」
「――――ふむ。行くか」
彼は、1頭身を信じることにした。
荷物を手早くまとめると、通路にはあの6頭身の二人が立ちはだかっている。
ふよふよと浮遊する、凶悪な武装を施した人形達、そして片手には八卦炉―――あとバールの様なもの
「おっと、これはバールの様なものではなく、乙 ですよ? 何をそんなに怯えているんです監督?」
「逆だろう普通!」
その瞬間―――――二人は気づいていない様子だが、後ろから猛烈な勢いで、狭いファミリーレストランの
テーブルの合間をぬって走ってくる物体が見えた。
台車の様に見えるが、取っ手が無く、押している人間も無い。そして分厚い。
聞き覚えのある音だ
スィー ・・・・・
「ぐはあっ!」
「うぼぁ」
思い切り踵に突撃され、ひっくり返る二人。
劇中、何度も登場した名車。通称「スィー」。ひねりが無い事この上ないが、変な名前をつけるべきではないとして
皆こう呼んでいる
「乗るのぜ監督!」
「わ……………解った!」
もんどり打つ二人の6頭身を乗り越え、4人がけのダイニングテーブル程の上に体育座りで乗ったが、もの凄くバランスが悪い。
あまり真面目に考えていなかったが、どうやって皆運転してるんだろう?
「出発ー! スタジオへGO!」
店員は誰もいなかったが、スィーはがさつにも扉のガラスを蹴破って飛び出した
外は猛吹雪になっていた。
さっきまで晴れていたのに…………
まりさはもぞもぞと動いて、顎の下にあるらしい突起を押した。
と―――――スィーに内蔵されていた、赤と緑の照明が灯る。
これは――――
まさしく『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』に
登場する予定の「ネオスィー」の演出!
「間違いない! 君こそ本物のゆっくりまりさ―――― いや、エレクトロニックまりさなんだね!」
「何度も言ってるのゼ!」
しかし――――ちょっと気になったことが
サイド部分の照明が、何か下品な口唇の形を作っているのだ
「こんなデザインじゃなかったぞ」
「多少アレンジがあると思うのぜ」
――――まさか、口車に乗せられている!!?
凍えるような雪の中、パーキングエリアから出ようとすると――――前方に照らし出されたものがある
,....、,
/:::::::::`ー-、
/./゙''ー 、、::ヽ、
il" `'-、::゙' 、
.l゙ ゙''- \
l .,..-''''"^゙''ー ..,,. ゙' .\_
.! /゙ _-ー - .. 、 \. ヽiヒ_ン)
! l /ヘ / ヘ /゙i 、, .\ ヾ'::ヘ.
.!! |`l 丶 '!'´ | ''、 ヽ. ヽ::::::.:.,
│.!ゝ //\ /!'  ̄/ヘ `. ヘ.::::::::,, ジョ……… ジョーズ!!!
.! !」 / ゝ、__/_. ! ! ヽ::::::.,
.l |丿 イ ,ヘ ヽ /ヘ .! l.:::::::.l
l |⊥ ナ ル ヽ、ナ‐- /ヽ "::::::..l
l`l│(ヒ_] ヒ_ン ) i}./、! !::::::::.l
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,,.! 、人 ヽ _ン ∠ノ ; } .!::::::::::.l
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ヽ、 l::::::::::::l
{`_‐-、 /´ i
ヘヽヽ \ / ハヽ
', ヽ ヽ,.`..-‐‐ 、// ヽ 、
,7"Y:::::::::::::::::::::\..,_ ノン
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,'::/:::i::{::::i:::::ハ::::::i::::ヽ:::::::::::7 H フ それに……おりんりんドラゴン!!!
i::i:::::i/レ_iL/!ヽ、」r=;ァソ ヽノ ソ
レ'::::イ rr=-:::::::::::::::::, レ';.彡ル
∨' ー=彡" `y、イノ
iY', iノ イノ
〈ン::ヽ ./{ノイ
┐┐_(Y〉 ` ヽ 、_ ノ"´ノハ!
/"二"\i┐,,.., ) ( /⌒ヽ
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∠二_/ ./ \ .\ \
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N 、 / <__,,.--, \--ゝ
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/ー‐' / ∪ __,___, __ `ヽ| お………おりんりんドラゴンまで!!!
ト、___/ `''ヽ _ン_`′ \
__ト ^∪ ,. ´/\__∧ ̄フト、 \.
∨ /|\/-'‐' ̄  ̄ヽ|/ヽ 〉 へ/ヽ/i __
. r┤ c /ト、ノVレ'7;__,.!/V !__ハヽ`, lノ ヽ , ─ 、 ノ
iヽ/ヽ∧ { ハ ィレ == == lゝ( / i ! >
< ,─、ヽ iヘ / !///∪ ,___,/// i 〈ヽ/ `─ '/
( i i \ \ i 〉 ヽ _ン ∪ 人 iハ〉 /
 ̄\`- ' \ ヾ|ヽ/ヽ ノヽ/\/ヽ,ハ ノ /
┴|i \. `┴─┴‐┴一─,ハヘ /
/ ! ヽ, /\ /
ヽ i ‐一'´ /
いずれも、『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』のみ
登場する名悪役達である。 よくみると、遠くには、スピンオフで
冬休み子ども劇場『黒谷スパイダーマッ 逆襲のグリーンアイドゴブリン『』に登場した水橋グリーンアイドゴブリンまでいる。
「本当に現実に出てきてしまったのか………?」
「突っ切るのぜ! しっかり捕まってるのぜ監督!!!」
「そういえばまりさ。今回主演は君だが、相方のれいむはどうした?」
「あー……… カナダの刑務所にいるよ」
確かに、色々人間を食べたりとか、結構悪い事をさせてしまったから………
吹雪で視界も悪いのに、すぃーは真っ直ぐ3体のモンスターに立ち向かっていく。ジョーズはもとより動けないが、
おりんりんドラゴンは本当に炎を吐き出した。
熱い!
が、まりさはへばりつくようにスィーに対して扁平に生ったかと思うと、その全体重を右に傾ける!
何やら饅頭と言うよりプリンのようでもの凄く気持ち悪かったが、スィーがそれによって傾き、結果としてドラゴンの
股の間を潜り抜けた!
その先にせまり来る尻尾があったが、今度は反対方向へ傾け潜り抜け――― 二人はモンスター達3体を突破
した!
「すごい! パーキングエリアって舞台もそうだが、本当に映画そのものじゃないか!!!」
彼は、この『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』の
成功を確信した。
しかし―――――
「こんなに広かったか?」
「広かったよ」
雪で視界が悪いとは言え、パーキングエリアの出口が見えない。
真っ暗な空の下、スィーのエレクトリカルな照明で照らされているが、永遠に続いてるかのような錯覚を受ける。
そういえば、段々寒くなくなってきた。
感覚が薄れたのかと思ったが、別に眠いわけではない。
「ど、どれくらいかかるんだ?」
「―――監督は余計な心配はしないでいいのぜ」
ザボザボと雪を掻き分けて聞くと――――――――
再び、現れた巨大な影がある
今度は4体
「何だ………こいつら…………?」
「あ…… アークオルフェノク!!! デスイマジン!!! バットファンガイア!!! それに………ブラックエンドまで!!!」
何だこの統一感の無さは
大体
「こんな奴等、『劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記』に
登場してないぞ?」
「いや、出てきただろ」
「他作品のボス達じゃないか!!!」
しかも日本の実写の………
「まりさ……… 私の事、だましてないか?」
「だましてないーよっ♪」
白い煙を上げながら、スィーは急カーブでブラックエンドが放つ火球を避け、ついでにアークオルフェノクに体当たりを食らわす
「いや、さっきの6頭身達も信用したわけじゃないかが、何と言うか………」
「気にしないで。何も考えずに、任せなよ!」
「え……… 何だって?」
どういう原理か解らないが、運転はしたまま、一頭身のまりさの唇が、耳たぶすれすれに近づく
熱っぽい口調で、吐息とともに囁かれた
――――そんなもの、任せときゃ、いいのさ………
「そんなに近づいて話すな。気持ち悪い」
「あ、ごめん」
吹雪は止みそうにない。
相変わらず寒くは無いが、いつ、このパーキングエリアから出られるのだろう?
了
- バールのような乙で吹いたw
途中二次創作や3次創作、2chにおけるAAのあり方などについて考えさせる内容かと思ったら、
そんなこともなかったぜ。 -- 名無しさん (2010-01-11 00:20:14)
- アークオルフェノクゥゥゥ!!! -- 名無しさん (2010-01-11 11:16:42)
最終更新:2010年01月11日 11:16