※エイプリルフールネタ、東方キャラ以外です。
※つまり、ボカロ+オリキャラ注意。
※オクラの人様、またまた勝手に彼女を出演させて頂きました。申し訳ありません、いやマジで。
好きなもんで彼女。
※これらの話はフィクションであり、実際の事件とかとまったく関係御座いません。
そんな奴らのエイプリルフール(その他)
caseA ミクネルな二人
4月1日。エイプリルフール。
この日は、一日だけ、どんな嘘をついても許される日らしい。
―――初音ミク、コンサート会場。初音ミク控え室内にて。
ミク「という訳でネルちゃん、今日のコンサート、どんな嘘をつけば良いと思う?」
ネル『そんなこと聞く為にお前は私に電話よこしたのか? 本番20分前に。 余裕だな、オイ』
ミク「いやさ、メインの進行は、スタッフさんが考えてくれるんだけどさ、
アドリブで何か四月馬鹿ネタやった方がファンも喜ぶんじゃないかって、マネージャーさんがさ。
それで、本当にどうしようかなって悩んでて。決して余裕がある訳じゃないんだよ!?
確かに、歌や踊りは既に思い返すまでもなく完璧だけど!」
ネル『お前は本当に無駄に才能あるな‥、誉めてないけど』
ミク「だからさ、何かネタないかな?」
ネル『ネタっつてもなぁ、突然聞かれたって私にも‥』
みく『あるよ、みっくりあるよ!!』
ミク「その声は、ボクのゆっくり?通称みっくり?」
みく『久しぶり!みっくりしてた?』
ミク「ああ、ボクはお前のことを絶対に許さない」
ネル『もう許してやれよ‥』
どうやら、ミクは未だに、バレンタインの日、ネルのチョコをゆっくりミクに食われたことを根に持っているらしい。
みく『でも、今はそんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない』
ネル『ていうか勝手に電話に割って入るな』
みく『でも、今はそんなことはどうでもいいんだ。重要なことじゃない』
ネル『殴るぞー?』
ミク「まぁいいや。何か案があるなら聞くよ、ゆっくりボク」
みく「フフフ、よくぞ聞いてくれました!みくのアイディアをゆっくり聞いてね!」
―――コンサート会場。
『皆様、お待たせしました。これより初音ミクコンサート、これより開催いたします』
「みんなー!今日は来てくれてありがとう!! 今日は最後まで楽しんでいってねー!!」
ウオオオオオオオオ、と
観客の歓声で盛り上がる場内。
数万人の熱気と共に、初音ミクのコンサートは開幕した。
はずだった、
「まず最初は‥!」
そう初音ミクが言いかけた途端、
―ゴロン、と
突然、初音ミクの首が転がった。
アイドルの首が突然はずれ転がり落ちる、
そんな洒落にもならないまるで恐怖映画のような一コマ。
「きゃぁああああああ!!」
「うわぁああああああああ!!」
観客の阿鼻叫喚が会場内に響き渡る。
そこで、カメラに拡大され映し出される初音ミクの生首。
それが突然、
『みっくりしていってね!』
そんな言葉を発したと思うと、
「なんちゃってー、嘘でーす!」
衣装の中に器用に本物の首を隠していた初音ミクが笑顔でネタバラシ。
そして床に転がった自分の首、ゆっくりミクを拾い上げる。
「ごめんねー、みんなー!驚かせちゃったかな?エイプリルフールってことで、どうか許してね!
そして、じゃーん!この子が今回の特別功労者、私のゆっくり、ゆっくりミクだよ!」
『みんなー、ごめんねー!』
「なーんだ、ミクちゃんのお茶目な冗談か、こいつは引っかかっちまったぜ、HAHAHAHA」
「でも、見事な演技だったわね!ミクちゃんだけでなく、あの首も。私感動しちゃった!」
「ああ、ゆっくりミクだって。凄いなぁ、ミクちゃんぶ負けないくらいの名演技、そして可愛らしさだぜ!」
そして、会場に巻き起こる声援。
「ミクもゆっくりミクもイカしてるー!」
「どっちも可愛い!」「嫁に来てくれー!」
「ゆっくりミクー!大好きだー!」
どうやら、今回のエイプリルフールネタは大成功のようだ。
そう、今回のライブこそが、
後にこの日本の平成という時代の芸術感を決定付けたと言われる一大アート、
ゆっくりミク、その初舞台となった記念すべき一ステージとなったことを、
気付くものはまだ少なかった‥』
ネル『やっぱ素人考えじゃ禄なアイディア出ねぇよ。お前が考えた方が早いし上手いだろ?』
ミク「うーん、そっかぁ。どうしようかなぁー」
みく『‥‥、あれ、無視? さっきのみくのグレイトフルな作戦はシカトの方向で突き進むの?
勿体無いよ? 間違いなく会場大盛り上がりだよ!』
ネル『そろそろ時間もないだろ、後は自分一人で考えな』
ミク「しょうがないか‥。じゃ、有難うネルちゃん! 結局アイディアは出なかったけど、
本番前にネルちゃんの声を聞けたから、なんだかデキル気が沸いてきたよ!」
みく『みくは? みくの声は?』
ネル『そんなこと言って、大ポカするなよ?後で私の所為にされかねないからな』
ミク「大丈夫!私を誰だと思ってるの?」
ネル「そうだな、お前なら大丈夫だろ、初音ミク」
みく『ねーねー、みくのこと無視らないでよー』
ミク「そういえばさ、今どこに居るの?今日はアルバイトお休みでしょ?」
ネル『あー、今ちょっと買い物で繁華街だ。周りの音が五月蝿かったか?』
ミク「ううん、ちょっと気になっただけ。 それじゃ、またね!」
ネル『おう、頑張れよ!』
みく『じゃぁね!みくも応援し‥』
―――ガチャ。
『今、途中で切られた!?』
「どうやら本当にお前のこと未だに恨んでいるらしいな」
ガーン、と分かり易いくらいショックを受けているゆっくりミクの頭を撫でてやりながら、
ネルは呆れつつ自分の携帯電話を懐にしまった。
『でも、どうしてお姉さん嘘ついたの? 正直に言えば良かったのに‥』
気を取り直し、ゆっくりミクはネルに向かって不思議そうに尋ねる。
二人が居るのは、何万もの人間が敷き詰められた、大規模なコンサートホール。
そこで、ネルは初音ミクと書かれた鉢巻を額に巻き、初音ミクの笑顔がプリントされた団扇を片手に、
更には初音ミクのイラストが描かれたTシャツとはっぴを着て、
初音ミクのライブの開演を、今か今かと待ちわびている状態だった。
「‥‥今日はエイプリルフールだから、嘘ついても問題ない‥」
『いや、少しは素直になろうよ。どう見てもこの会場の中でもトップレベルだよ、その格好』
それと同時刻。
「まったく、ネルちゃんたら。相変わらず嘘が下手」
本番前の控え室。
初音ミクは携帯電話を閉じ、
今同じ場所で、自分のことを確かに見守ってくれているはずの大切な人を想い、
瞳を閉じて、ぎゅっと携帯電話を抱きしめた。
caseB 弟子と師匠な二人
4月1日。エイプリルフール。
この日は、一日だけ、どんな嘘をついても許される日らしい。
―――某港町。
「今日はエイプリルフールみたいだなー」
「そうですね、師匠。だからって格別何かイベントが起こる訳でもないですけど」
一人の少年と一人のゆっくりるーみあが、
港にて水平線を眺めながら、そんな取り留めない会話を繰り広げていた。
「意味は無いが、今から嘘をつくんだけど、聞いてくれるかなー?」
「別に構いませんよ」
じゃ、話すなー、と、ゆっくりるーみあは淡々と話し始める。
「昔の話だけどな、ここと似たような港町でこうやって水平線眺めてたらな、
突然、身体が上空へと引っ張られてな。
けっこうな速さでるーみあの身体が上へ上へと昇っていったんだ。
突然の出来事に何事かと上を見たら、バカでかいUFOがるーみあの頭上にあったのな。
アダムスキー型だったよ。めっちゃ渋かった。
そんで、気がついたらるーみあの身体は、見たこともないような真っ白い空間にテレポートされててな、
やっぱり見たことのないような、蟲だか爬虫類だか分からん気味の悪い生物に囲まれてたんだ。
取り敢えず突然こんなとこに連れてきやがったことについての文句でも言ってやろうと口を開けようとしたら、
少しも動かないのな。気付かぬうちにるーみあはよく分からない光る白い糸で、雁字搦めに拘束されてたのな。
文字通り手も脚もでない状況、どうしたもんかなと考えてたらな、
その蟲だか爬虫類なんかよく分からないのが一匹、るーみあにのそっと顔を近づけてきてな、
突然聞いたこともない言語をまくしたててきやがったのな。
蟲の鳴き声とも牛の鳴き声ともとれる、野太いのとか細いのが合わさった珍妙な言語だったのな。
もちろん、るーみあに分かるはずなんてない。
それなのに、何が目的なのか、気味の悪い顔をさらに近づけて一方的なコミュニケーションは続いた訳だな。
そんでまぁ、るーみあも段々イライラしてきてな。
元々、UFOはコテコテなアダムスキーな癖に、乗ってるのは本とか図鑑でも見たこともないようなタイプの奴らだったから、
その統一感のなさに一種理不尽な感覚を覚えてたんだけどな、
それに気味の悪い顔と訳の分からない言語で、もう我慢できなくて、
つい、な。
本気出して‥、
そのUFO、内部から破壊して落としちゃったのな」
「‥‥リボンは?」
「全身雁字搦めにに縛られてたから、ちょっと後頭部を中心にもがいて、
糸に絡め取らせて無理矢理はずしちゃった」
「そうですか‥」
「UFOは、海に落ちたんだがな‥。ほら、ここからでも見えるな。ちょうどあそこら辺。
そんで、UFOから脱出した後思ったんだな。
『これでよかったのか?』て」
遠い目をしながら、るーみあは語りを続ける。
「そういや、掴まって拘束されたけど、別に直接的な外傷を与えられた訳じゃなかったからな、
話しかけられたのも、単純にこっちの星の状況を何とか聞きだしたかっただけかもしれない。
別に、『地球征服』とか『地球爆発』とか、そういう目的を持った悪い宇宙人じゃなかったのかもしれない。
ただ、生態系や環境を調査しに来た、害のない宇宙人だったのかもしれない。
実は、見た目と違って平和を愛する良い奴らだったのかもしれない‥。
まぁ、そんなこと思っても後の祭りなんだがな」
そしてるーみは、空を見上げた。
日が暮れかかった紅い空には、既にいくつかの小さな星の煌めきが一つ一つ生まれつつある。
「だから、るーみあは夜空を見るたび思い出す」
「ぶっちゃっけ、近い将来に宇宙戦争が起こったら、るーみあの所為じゃね?って」
感慨深く、まるで良い話を語っているかのように、ゆっくりるーみあは語り終える。
「師匠‥」
そんなゆっくりるーみあの様子を、隣にいる少年は優しい表情で見つめ、
「‥‥、その話、嘘じゃないでしょ」
ある一種の確信を抱きながら、聞いてみた。
「嘘な。完全に嘘の出鱈目な。信じちゃ駄目な」
「いや、本当でしょ。本当にこの海岸で起こったことなんでしょ?
マジで宇宙人のUFO叩き落としたんでしょ?
怒らないから正直に話してください、師匠」
「あ、ほら坊や。空を見つめてごらん。あの星々の中には、きっとるーみあ達が創造もしないような未知の‥」
「誤魔化さないで下さい!」
夜空を見つめる二人の頭上に、またたくさんの星が生まれ、新しい輝きを増やしていった。
今日も、この惑星は平和です。
caseC 海のミステリーな二人
4月1日。エイプリルフール。
この日は、一日だけ、どんな嘘をついても許される日らしい。
―――某港町。
一人の少女と一人のゆっくりこいしが、
港にて水平線を眺めながら、海岸線に座っていた。
「あれ? どっかで聞いたような声が聞こえたような」
「そう‥? 少なくともこの辺りには私達以外見当たらないみたいだけど‥。あなた耳良いのね?」
「てへへー」
「ますます鳥妖怪に近づいてるってことかもね?」
「それはそれで‥、内心複雑だったりしているよ」
全身に羽毛が生えてきたらやだなー、と少女は嫌な想像で頭を巡らす。
「そういえば、昨日この辺の漁師さんにエビ御馳走になったって言ってたね、あなた」
ふと、何か思い出したように、ゆっくりこいしは少女に呟く。
「うん、フライにしたのをもらったんだ。お腹空いてそうな顔してるからやるって。良い人だったなー」
「今年はこの辺りじゃ、たくさんエビ捕れたらしいからね!
でもさ、どうして今年は、エビが大量だったか、その理由は知っている?」
「え? 何か理由があるの?」
知らないなー、と少女は答える。
「ええ、飛び切り面白いネタがあるよ!」
「へー、教えてよ、こいしさん」
「うん、良いよ」
ゆっくりこいしは優しく微笑んで、話を続ける。
「エビが大量だったってことはさ、つまり、今年の海はエビの食べるもの、餌となるものが豊富で、
だからたくさんエビが増えることができたってことなんだよ!分かるよね?」
「まぁ、そーだろうねー」
「そんでさ、今年そういう意味でこの海が豊かだった理由だけどね、
一年前さ、大地震起きたでしょ。
ここじゃなくて、こっからけっこう先にある、向こうの大陸で。
けっこう大きな津波とかも起こったらしいね」
「あったらしいねー。私その頃この辺居なかったから知らないけど」
「それで、その大陸沿岸に生息していた、たくさんの生き物がさ、
波に呑まれて海の底へ沈んでいったんだってね」
「ああ、なるほど」
少女はうんうん、と深く頷いた。
「つまり、地震の所為で、そういう生物の死体が海底に蓄積して、
エビの豊富な食料となったって訳でしょ!」
「まぁ、そういうことだよ。
なんたって、大きな港町だったからね!」
「ふーん?」
みなとまち?
その言葉が意味するところを、少女は軽く考える。
「大きな港町で、その海岸でたくさん生息していた生物ってのは人間のこと。
まぁ、もちろん、人間以外の生物もたくさん居たろうけど、その殆どは人間。
それが、津波に呑みこまれて、海底へ沈んだんだよ‥」
クスクス笑って、ゆっくりこいしは少女お腹に突然触って、すりすりとこする。
「美味しかったのかな? あなたが昨日食べた、
“人肉”を栄養にして育ったエビのフライはさ?」
「‥‥‥」
少女は、これ以上ないくらい顔を真っ青に染めて、両手で自分のお腹を押さえる。
そして、恐る恐る、ゆっくりこいしに問い詰める。
「え‥ そんな‥ 嘘でしょ?」
「嘘だよ」
もちろん嘘である。
似たような話を聞いても決して信じてはいけない。
不謹慎である。
「嘘かよ!」
涙目になりつつも、怒りの形相で少女はゆっくりこいしに掴みかかった。
「もう、ローラってば簡単に騙されてくれるから面白いよね!退屈しないよ!」
「酷い、今のはあまりに酷い!本気で怖かった!取り返しのつかなさが!」
「ていうかあなたは妖怪でしょ? 間接的に人間食ったかもしれないってだけの話だよ?
怖がるほうがおかしい」
「だって、怖いでしょ! 普通怖いでしょ!あと私は人間なんて食べたことないよ!」
「しかも、今日エイプリルフールなのに‥。途中で気付こうよ」
「知らないもん!ずっと海の上で暮らしてたんだから、そんなイベント知る由もないもん!」
本気で怖がっていた様子である少女に、やれやれと、ゆっくりこいしは呆れるように首を振り、
「それじゃ、次の話に移ろうか‥。この港にある廃病院の話だけどね!」
「ストップ、もういいよ!話さないでいいよ、もう!」
少女は縮み上がって耳を押さえて、ゆっくりこいしからそっぽを向く。
「大丈夫、嘘の作り話だよ!」
「それでも嫌だよ! こいしさんの話怖いもん!もう今日は聞きたくない!心が持たない!」
そんな頑なな少女の様子に、こいしは小さく溜息をつき、心底呆れるように言った。
「ねぇ、ローラ。あなた、巷で何て言われてるか知ってる?」
この付近の港には、かつてゆイタニック号に出没したという伝説の魔女、
ローレライが出没するという噂がある。
出現率はけっこう高いらしい。
そして、出会えた人は、口を揃えてこう言うという。、
「なんつうか、けっこう俗っぽい感じ」
故に、彼女はこう伝えられる。
“世界三大がっかりミステリースポット”の一つだと。
caseD 先輩と魔女な二人
4月1日。エイプリルフール。
この日は、一日だけ、どんな嘘をついても許される日らしい。
―――とある魔女とその家族が住んでいるいる一般家屋。
「という訳で、先輩!いざ私に嘘をついてください!
素敵な嘘をプレゼントフォーミー!」
「え?」
先輩は、困ったような、私の意図が分からないような、
そういう難しげな顔で首を傾けた。
確かに、さっきの言い方だと意図が通じづらいかもしれない。
「いやいや、今日はエイプリルフールじゃないですか!
だら、普段は決して嘘のつけない、
人生を正直に真面目に素直に素敵に生きている先輩の些細な嘘が見える貴重な日なんですよ、今日は!」
「いや、僕も決して嘘をつかない人間という訳じゃないんだが‥」
「けど、嘘嫌いでしょ、先輩?」
その辺りは普段の先輩の生活を可能な限りすとーきんぐ‥、
いや、憧れの眼差しで見つめている私にはお見通しの当たり前の事実である。
誠実な人って素敵ですよね。
だから、と、私は先輩を全身で迎え入れるように両手を広げ、話を続ける。
「今日くらいは、嘘をついてみてください。折角ですから!年に一度ですから!」
「そんなこと言われてもな‥」
先輩は困ったように目を細めて、何か考えるように腕を組む。
そんな、先輩の頭上から、
「ますたーのムシー」
そんな、のんびりした、
とても腹の立つ声が聞こえてきた。
「あららら、居たの、まりさ?」
「ますたーの、ムシー!」
何が嬉しいのか、リズムを刻むように私の悪口(?)を言ってきたのは、
先輩の頭上に存在している、パンの魔法生物、ゆっくりまりさ。
「それは、私が、蟲ってこと? それとも無視するってこと? どっちにしろ良い意味じゃねぇだら、コラ」
「ますたーの、蟲野郎ー」
「よし、前者だな。その喧嘩買ったらら!」
私は怒りに身を任せ、まりさを捕まえてやろうと両手を真っ直ぐ掲げ、先輩の頭上へ延ばしたが、
「まぁまぁ、落ち着いて。この子、まりさは、嘘をついてるだけなんだから」
なだめるように先輩に身体を軽く押さえつけられた。
私は先輩には身も心も明け渡す気満々なので、そんなことされたら、なだめられるままに身を任せるしかない。
「嘘ですか?」
「うん、今日はエイプリルフールだってことは僕が既に教えてたから。
『ますたーに何か嘘つくー!』って今日は大張り切りだったんだよ」
「嘘だよ!騙されたね、ますたー!」
ケラケラケラ、とまりさは嬉しそうに笑う。
うわー、本当にムカつくパンだなー、こいつ。
その生意気なほっぺを思い切り捻って3回転くらいこねくり回してやりたい心地に襲われたが、
先輩の見ている前で、そんなバイオレンスなことする訳にもいかない。
ここは我慢するほかない。
「ますたーの蟲野郎ー!むーしーやーろーウー!! うー!うー!」
「こら、人を傷つけるような嘘は駄目だってまりさ!」
まりさ、物凄く楽しそうに蟲野郎連呼。
正直、殺意が沸くなー。
これは、多少の暴力は止むを得なくね? と静かな怒りを沸々と感じていた時、
「その、うー!うー!言うのをやめなさい!!」
先輩の頭上に居るまりさに向かって、勢い良く飛び込んだ丸い物体が一人。
「きゃーん!」
まりさはその物体に押されて、先輩の頭上から転がり落ちる。
「まりさ!?」
先輩が驚き、慌てて転がったまりさの方へ歩み寄る。
「ご主人様に向かって蟲野郎とは、無礼千万億千万!」
先ほどまりさをぶっ飛ばした丸い物体、
さなえという名前のアンパンは、
まりさを鋭く睨みつけ、堂々とした態度でそう叱り付けた。
「さなえ!」
「あら、おはよう御座います、ご主人様。
目が覚めたら、あろうことか産みの親であるご主人様を罵倒し続ける駄パンが見えましたので、
とりあえず粛清しておきました」
「あ‥、ありがとね。でもやりすぎちゃ駄目よ(先輩が傷つくから)」
「またまたぁ、この程度じゃ全然足りませんよ」
ゆっくりさなえは、最近私が創ってしまった、まりさと同系統と思われるパン型魔法生物の一種なのだが、
(なんか、私が創ったにしては、珍しく懐いてくれているから、それはそれで嬉しいんだけど‥)
なんと言うか、この子の愛はちょっと重たい。
私に害を成すものは全て粛清する、とでも言いたげな、鋭い刺身包丁のような気迫を常に感じる。
「ゆー、痛いよー」
「まぁ、さっきのはまりさが悪いよ。誰かを傷つけるようなことは言っちゃ駄目」
先輩が床に転がったまりさを抱き抱え、よしよしと撫でながら、注意する。
ま、まりさに関しては総合的に見ればざまーみろといった評価だな。致し方なし。
そして、先輩はしゃがみこみ、さなえの方へ目線を合わせて、頭をさげる。
「さなえにも、ごめんね。今度からなるべくこういうことがないよう、まりさにも注意しとくから」
「当たり前です!ペットの責任は飼い主の責任なんですよ!」
「うん、ごめんね」
そう、このさなえ。
先輩に対しても普通に辛辣なところも大きな不安要素だったりする。
さなえ自身、先輩が作ったとこも大きいというのに、まるで懐いていないようである。
「‥‥、さなえに、怒られちゃった‥」
しかし、
ニヘ、と、先輩はだらしなく微笑んで僅かに身悶えている。
懐かれていなくても、やっぱり可愛いものは可愛いらしい。
私が言うのも難だが、良い趣味していると本当に思う。
「あ、そうだ。一つあったよ、嘘つけること」
正気に戻り、思い出したように、先輩が私の方を見て言う。
「らら? 何ですか?」
「うん、今思いついたんだ。
こうして、私が居て、まりさが居て、君が居て、さなえが居る。
うまくは伝えられないけど、こういうの良いなって、凄く今思ってる。だから‥」
にっこりと微笑んで、真っ直ぐな言葉で先輩は告げる。
「こんな生活が、今すぐにでも終わればいいのにな!」
効果音としては、ドキュゥウウウウンンンン!!!
私の心に、1万2000パワーのダメージ。
「嘘って、こういうことでいいんだよね?」
多分、先輩が微笑みながら私の方を見てそう言っているはずなのだが、
ハート乱れ撃ちされた直後に先輩の顔を見つめられるほど、私の心は強くない。
つまり、凄く身悶える、てか萌えだよ、すげぇ萌えだよ、半端ない破壊力だよ。
先輩の心ってばどうしてこんなにピュアピュアなんだろう‥!
一欠けらの汚れもないぜ、マジで美しすぎるぜ、この先輩。
「‥‥あれ、違ったかな」
「いいえ、至極GJで御座います」
何とか、身悶えつつもそれだけは伝えることができた。
ああ、私も切に思う。想います、先輩。
まりさのような駄チョコパンが居てもいいから、
なるべく長い間、こういう生活が続けば良い。
両想いになれなくてもいい、こういう先輩と私とその他の日々が続くだけ私は凄く幸せです。
「‥鼻血出てるよ? 本当に大丈夫なのかい?」
「ええ、余裕です。よくあることですから」
「ちっ、やっぱ気に食わないですね、あの男女野郎。ご主人様をあんなに身悶えさせるとは‥」
「まりさが言うのもなんだけど、そういう言葉遣いはどうかと思うよ、さなえ」
「てめーみてーな媚び幼児語野郎に言われたくねーですよ、この腐れチョコパンが」
「やっぱさなえの方がまりさより口悪いよ‥」
~中途半端なところがありつつも、終わり~
- さなえが全部もっていきやがった。ヤンデレかいな -- 名無しさん (2010-04-02 12:42:27)
- 東方の方のエイプリルフールネタ含め、バレンタインでもないのにやたら糖分高いよもっとやれ -- 名無しさん (2010-04-02 14:25:03)
- オムニバス楽しかった、よく言われているように糖度が高く、尚且つssとしての面白さも両立しててかなりいい
そして久しぶりにバレンタインの乙女達が見れて嬉しい
まりさ、お前はそのままでいてくれ
これから先多分振り回す側から振り回される側になるだろうけど強く生きろ -- 名無しさん (2010-04-02 22:33:17)
最終更新:2010年04月02日 22:33