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「ごめんなさい、私甲殻類じゃないと駄目なの」
7月18日。
ゆっくりれいむは振られた。蟹に。
『ゆ゛~ゆ゛~ゆ゛~』
「五月蝿いわねぇ、いい加減泣き止みなさいよ。それが無理ならどっか他人に迷惑の掛からない静かな場所で泣け。一匹ぼっちで泣け。むしろ他人に迷惑かけてもいいから私の傍で泣くな」
博麗神社の縁側にて、夕日に向かって泣き叫ぶゆっくりれいむに霊夢が眉を顰めながら言った。
『ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛』
ゆっくりれいむ初めての失恋である。
事の発端は最近気になっていた化け蟹の須藤さんを夏の間一緒に遊びにいこうと誘ったときのことだった。
一緒に海に行って取れた蟹のバーベキューしたり、山に行って山蟹のバーべキューをしようと思っていたのに、
あの短尾下目はあっさりと振ってきたのである。
「幻想郷に海はないでしょうが」
『こまげぇごたぁい゛い゛んだよっ』
振られた今となってはもうどこに行って遊ぶことも出来ない。
「へ~あそこに遊び行ったんだ。誰と行ったの? え、誰も連れないで行ったの…………マジ?」
「えーマジぼっち!!」「ぼっちが許されるのは胎児までだよね!」「キモーイ」「キャハハハ」
そんな事を言う他人の目が耐えられないのだ。
一匹で遊びに行くことなんて恥ずかしくてできないのだ。
ゆっくりれいむはせいぜい一匹で花火大会に行くのが限度のガラスのハートの持ち主なのである。
『ゆ゛っ~~ゆ゛っゆ゛っ――』
「はぁ……しょうがないわね……。大体何で化け蟹なんかに惚れたのやら」
女は柔らかい体ゆえに男のゴツゴツとした体を求めると言うように(※幻想郷では当てにならない)、
伴侶を選ぶ祭には自分にはないものを求めるという(※自然界では当てにならない)。
ゆっくりのぽよぽよとした体(頭)は、蟹の堅い体に魅力を感じたのかもしれないと霊夢は予想する。
『かに大好き! 美味しいよね!』
「好物って意味!?」
どうしてこんなことになったんだろうとゆっくりれいむは涙する。
顔にはあまり自信が無いけど、スタイルとプロポーションには自信があった。
体で釣ればいけるかと思ってたのに。
これから先の40日、リア充とぼっちとでは大きな差が出る。
夏が明けた後の思い出話に付き合うことがどれだけ辛いことか。
あの化け蟹め、ひっくり返して音撃のオーケストラでもブチかましてやろうか?
思わず逆恨みしてしまいそうになる。
『やっぱり顔なのねぇぇぇ!!』
「あーもう! うざったい!!」
霊夢は頭をくしゃくしゃと掻きながら台所の方へとスタスタと歩き、
氷の入った冷蔵庫を開け、再び戻ってくる。
「ほら、これでも飲んでぱぁっと気晴らししなさい」
その手にはキンキンに冷えた瓶ビールがあった。
◇
日も暮れて大分日中の暑さも和らぎ、ぬるい風がそよそよと心地よく体を撫でる中、
茜色に染まった空を背景に霊夢とゆっくりれいむは博麗神社の縁側に座っている。
霊夢の右手には大きなジョッキがあった。
ジョッキは冷蔵庫の中に入れていたためかとても冷えており、掴んでいる右手が冷やっこい。
左手に持つ同じく冷え切ったビール瓶を傾ける。やっぱり左手が冷やっこい。
傾かれたジョッキの中にとくとくと注がれるビールは黄金色に輝き、
その炭酸のシュワシュワとした泡が存分に香る。
おっとっとと泡が零れないように縦に戻すと、泡はふんわりと蓋のように安定する。
まるでビールの冷気を逃さないようにしているかのように。
霊夢は思わずごくりと唾を飲む。
ゆっくりれいむも神妙な顔つきのままリボンをぱたぱたと羽ばたかせている。
期待を隠し切れないようだ。
それをもう一杯作り、霊夢とゆっくりれいむはジョッキを構える。
「乾杯!」
『かんぱ~い!』
カチンと互いのジョッキを鳴らした後、頭から被りたくなようなそれをグィっと煽る。
ごくり、ごくりと喉を鳴らすと、喉からビールの芳香が鼻の奥へと広がる。
喉を通ったビールは胃へと運ばれ、炭酸の心地よい刺激を胃に与えながら体の奥を冷やしきる。
爽やかな苦味が舌のみならず口全体に広がり、頭の奥をジンと痺れさせる。
「ウマイ!」
『ウマイ!』
美味かった。そう、ビールほど夏に合う酒は存在しない。
低めのアルコール度数のため乾いた身体を潤す冷水のようにガブガブと煽ることができ、
キレのある苦味は口の中を走り爽やかな後味を残す。
体内の芯と頭の奥を冷たさとアルコールが響き、それがまた快感となる。
霊夢とゆっくりれいむはクゥ~っと両目を瞑って嬉しい呻き声を上げる。
後に残った冷たさと味の余韻をひとしきり楽しむと、
霊夢とゆっくりれいむはつまみである、同じく冷蔵庫で冷やしたきゅうりの漬け物に目を向けた。
塩が水分を吸い取ったためか表面はしわくちゃとなってはいるが新鮮さ溢れる艶のある青々しい緑色をし、
中心部は水分によって瑞々しく満たされている。
それを手にとり、口に放り込む。
コリコリコリ。きゅうりの外側の程よい歯ごたえと弾力溢れる食感が口の中を踊る。
もっきゅもっきゅ。水分が飛んで凝縮された濃厚な旨味と塩のしょっぱさが口いっぱいに広がり、
それが体の隅々まで広がる錯覚。汗で塩分が抜けた体にはたまらない。
「ぱない!」
『ぱない!』
そこに更に苦み走ったビールを一口、二口、三口。ゴクゴクゴクと呑み、
漬け物の塩味で渇いた喉をまた潤す。塩味が苦味を引き立ててより一層ビールが美味しく感じる。
塩とアルコールのハーモニーが奏でられた。
『しあわせー!!』
「しあわせー!!」
生首であろうとビールは美味い。霊夢も思わず真似をする。
パァァァァと、霊夢とゆっくりれいむには後光が差したように幸せな気配を漂わせていた。
霊夢はゆっくりれいむが半分やけ酒をするかもしれないと思っていたのに、
実際にはゆっくりれいむはあっさりと機嫌を直し、ビールと漬け物に夢中になった。
美味しいものとは人だけではなく生首も幸せにするのだ。
食べることと飲めることはそれだけで素晴らしいことなのである。
◇
『れいむ胸貸してー! ゆっくりなぐさめてー!』
「何調子に乗って酔っ払ってんのよ。暑苦しいから却下。お風呂入ったから汗掻きたくないの」
『ケチー! せっかくれいむの小さいおっぱいで我慢してあげよーと思ったのに~!』
「小さくて悪かったわね。胸の小さな女の子の方が世の中の役に立つのよ。氷作ってビール冷やしてくれるから」
『そだねー! チルノってやつの仕業だね!』
ケラケラケラ。なんてこともなく笑いあう。
『ビールサイコー!』
「漬け物サイコー!」
この楽しみが味わえるだけでも夏という季節には価値がある。そう、夏は楽しいものなのだ。
結局のところ夏の楽しみ方なんていくらでも存在する。
皆それぞれなのだ。楽しいことは見つけたもの勝ちなのだ。
ゆっくりれいむは楽な気持ちになった。
ぼっちがなんだ、他人の目なんて気にするな。
明日から2chで夏厨の振りする遊びでもしようかな。
エロゲーも夏多く発売するしたくさんできるね。
コミケだってあるしね!
夏休みはまだ始まったばっかりさ!
ゆっくりれいむの夏休みは希望に満ちていた。
『ゆっくりれいむの夏休み! ゆっくりご期待していってね!』
次の日ゆっくりれいむのパソコンが暑さでぶっ壊れた。
ゆっくりれいむの夏はバイトと倹約によって潰れたという。
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夏休み企画。カテゴリー①の中央にあるAAです。
幻想郷は月日の現し方が現代日本と違いますが、わかりやすさのため現代日本方式にさせていただきました。
※7月24日 若干加筆修正
6スレ
- 夏なのに熱燗飲みながら笑って見ていたが
>「えーマジぼっち!!」「ぼっちが許されるのは胎児までだよね!」「キモーイ」「キャハハハ」
ここだけマジ凹みorz -- 名無しさん (2010-08-06 17:44:37)
- ↑気にすんなよ。
大丈夫どうにかなるって… Don't worry be happy -- 名無しさん (2010-08-09 22:05:00)
最終更新:2010年08月09日 22:05