オリキャラが出るので注意です。
母さんの部屋の本棚には原稿用紙が所狭しと詰められている。
母さんは作家らしいけど僕は一度も母さんの作品を見たことが無かった。
だから僕は好奇心でもって一束の原稿用紙を取り出す。それには不思議な一文が描かれてあった。
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『怪異とは奇妙な隣人である』
これは私が尊敬するとある民俗学者が言っていた言葉だ。
怪異はどこにでもいてどこにもいない。求めるときにそこに初めて存在するということだそうだ。
ちょっと分かりづらい、まるで量子力学のような考えだが、私はを身でもって味わうこととなる。
そう、それは私が23歳の夏、まだ私が体を積極的に動かしまくった若い時である。
19XX年、私はY大学の怪異探求会という民族学研究のサークルに入っていた。
ただ、他の皆は文を呼んだりして伝承を集め回っていたのに対し私は足を使って『怪異』そのものを探し回っていたのだ。
折角怪異に触れる研究をしているというのに何故伝聞でしか成り立たない伝承を集めなければならなかったのか。
けれど皆は私に言う。怪異と言うのは伝承から成り立ってるものだと。
「わっけわかんない、鬼太郎の世界ではいつでもどこでも妖怪がいたでしょうに」
「それとはちょっと違う気がしますけど」
で、その言葉に逆上した私は実際に妖怪がいるということを証明するためにN県の山奥までやってきたのだ。
どうやらこの辺で最近何か巨大な白蛇が出たという噂があるらしい。噂は噂、伝承じゃない。
「どうしてわたしまで……」
「いやぁ私方言とか分からないから、お願いあきゅん」
「それでも文学部ですか」
そう言ったって仕方が無い。この付近にある丸休村の方言はこの国でもトップクラスの複雑さなのだ。
だから方言を専攻している知り合いのゆっくりあきゅんをこれだけのために呼び寄せたのである。
「大丈夫、話聞いたらあとは私一人で探すから」
「むちゃをしますね、ほんと!」
けれど私の我儘なんかに付き合ってくれて本当にありがたいと思っている。
ゆっくりと人間の学業は分けられていて私とは別の大学だというのにも関わらず、彼女は二つ返事で了承してくれたのだから。
「まぁゆっくり頑張りましょう」
「だな」
丸休村。N県北部の山奥にあって村人の3分の2はおくうやちるのと言ったゆっくりであり、方言がもう日本語とは別と思えるほど複雑なのが有名な村である。
⑨なゆっくりがいっぱいいるから複雑だという話もあるが、腐っても文学部の私はその説を支持出来ない。あきゅんも私と同じ考えだ。
そして山奥と言っても他の村とは普通に交流があるし発電所さえあって意外と文明化しているのである。
こんな場所では神秘性も伝承も廃れていってしまうだろう。けれどそれと反比例するかのように噂というものは広まっていったのだ。
私達は昼のうちに村に到着し、その噂の元となっているちるのおくう夫妻の家へとお邪魔したのであった。
(ここから先はあきゅんの翻訳を介して会話しております)
「アタイ、マジ、まるきゅー、みたいな!(あたいみたよ!かわらのしげみででっかいへびがうねってたの!)」
「うにゅーいこーるいちごだいふく!べりーべる!(わたしはしょうにゅうどうのなかだったよ!あれはやばいね!)」
「河原に鍾乳洞……湿った所を好むということか」
そう言った湿った場所には怪しいものが住み着くものである。幽霊が湿気ったイメージがあるのもそう言う所からだろう。
私はそう言った情報や思いついたことをつらつらとノートに書きつけ再び二人の話に耳を傾ける。
「安置があるっていっても所詮イージーだよ!てかげんしてあげてるんだよ!(あれはあたい五人分のながさがあったよ!あとすっごくしろかった!)」
「かくゆうごうってほんとうにクリーンなのかな?(へびみたいだったけどなんかちょっとちがったかな?)」
「白い?あと蛇とはちょっと違う……ねぇ」
ちるのの説明がちょっと鮮明すぎるのが気にかかる。
蛇とちょっと違うというのはまだ許容できる範囲だ。妖怪とは大抵異形であってもおかしくないからだ。
とりあえず情報として役に立つのはここまでか。私は二人からその川辺と鍾乳洞の場所を教えてもらい出発の準備を始めた。
「あ、あの、無事でいてくださいね!」
「まーかせなさい」
心配するあきゅんの視線を受け私はまだ見ぬ異形を求めて旅だった。
「……」
期待しすぎた、と河原に訪れた私は嘆息をついてしみじみ思う。
どんなおどろおどろしい場所かなと思ったらそこらの川辺と変わらないではないか。
歩きやすいように平べったい石が敷き詰めてあるし、ふっつーにコンクリート製の橋が小奇麗なままで架かっている。
というか全体的に明るい。妖怪お断りという張り紙が貼ってあるような雰囲気だ。
これならあのちるのの説明の繊細さにも説明が付く。
「はぁ、最近の山奥って発達してんのね」
とりあえず何かいるとしたら河原に散らばる草の中か。
なんか不思議を探すというよりも落し物を探すといったような感じで私は草をかき分ける。
そして見つけた。一風変わった珍しいものを。
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/ 鴉の /| / 苗取歌 /|
/子作り記録./ / //|
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「みなきゃよかった」
河原にこういった本が捨てられているというテンプレ的事態を目の当たりにするとは。
まさかさなえさんのあれがこうなって数えられるなんて、一生ものの後悔をしてしまった気がする。
「結局怪しいものは無いか。これ以外」
川に捨てるのも環境に悪いので本は元の場所に戻し、私は念入りに河原を調べてみるとした。
石の一つ一つ探してみることでも結構収穫があったりするものである。
眼鏡を用意してうろうろしているうちに私は妙な痕跡を発見した。
まるで何かをひきづったような跡が克明に残っていたのだ。このサイズはゆっくりの大きさではない。
だが、それと同時に蛇のサイズでも無い。まるで円盤をひきづったかのような跡であることがうかがえる。
「……蛇、じゃないのかな?」
ちるのの証言だとあたい五人分、つまり約150㎝越えの大蛇。だが形跡から判断すると円盤状の生物だったりする。
これらの話を統合して怪異の正体を頭の中で形にし、私はとある龍の存在を思い出した。
「うむむ、まさかあれが実在していた?そうだったとしたら」
その龍が実在する可能性を心の隅で歓喜して私はその跡の行き先を追ってみる。
河原から道路へ戻るところはコンクリート舗装されていて跡が消えていたがその行先は見当が付いていた。
「鍾乳洞、ね」
道がちゃんとあるため推測は容易い。私はそのまま鍾乳洞へ向かって歩を進めていった。
河原では期待外れだったがこの鍾乳洞はまぁまぁ期待通りだった。
それなりに暗いし、足元を流れる水もどこかおどろおどろしい。妖怪いつでも来い、と言わんばかりの内装だ。
「ひっ」
天井から水が私の頭にぽたんと落ち、私はその冷たさに激しく驚いて妙な声を上げてしまう。
語りは平然としている私だが実際は足が震えて懐中電灯を振り回しながら恐る恐る移動しているにすぎないのだ。
本音を言うと、普通に怖い。期待通りということは人に恐怖を与えるだけの空気を持ち合わせているということなのだから。
「で、出てくるなら出てきなさいよ!!」
私は声を震わせながらも威勢よく虚空に向かって言い放つも、その声が反響した後はずっと無音が続く。
出てもらった方がずっと気楽だ。それに何も見つからずにびくびくしたまま終わるなんて世話になったみんなに申し訳ない。
「……死んだり、しないわよね」
怖いけれど精いっぱい勇気を振り絞り私は鍾乳洞の奥へと進んで行く。
奥の方になるともう日の光は差し込まず、光源はこの懐中電灯だけとなる。
そうなるともう水が垂れる音でも疑心暗鬼に陥ってしまいそうになるが、私はもうがむしゃらに懐中電灯を振り回して探し始めた。
「きゃあああああ!!!」
脈絡もなく突然叫んだのでいきなり何事かと思うだろうが、また水が頭の上に垂れたにすぎない。
あまりにも恐怖心を煽られてしまったのでらしくない声を上げてしまった。こんなの知り合いに見られたら生きていけないレベルである。
あきゅん連れてこなくてよかった。
「うう、キャラじゃないわよこんなの……」
気を取り直して進もうとすると、ふとなにか妙な音がするのに気が付いた。
今まで水が滴る音くらいしか聞こえなかったはずなのだが急に妙なうめき声が聞こえるのだ。
私はいても立ってもいられず懐中電灯を振り回しその音の発生源をくまなく探していく。
んでんでんで、こういう時に限ってまたまたべちゃんと嫌な音を立てて液体が私の頭の上に落ちていったのである。
「きゃわわわわわわわあああああああああ……わ?」
流石に三度目だからかそれほど驚かず、落ち着くにつれこの感触は水ではないことに気が付いた。
試しに頭に付いたその液体に触ってみると妙にぬめぬめする。それにどっかで嗅いだことのある匂いだ。
これが上から落ちてきたということは、そう思って私はすかさず懐中電灯を天井に向けた。
「アー……ウー……」
「あ、あ、ああああああ!!!」
脱色したかのように白く、大砲のように太く、醜くグロテスクに口を剥き出しにした蛇が天井からぶら下がっていた。
こいつだ、と判断した私はパニックになりながらもカバンの中から証拠を撮るためのカメラを取り出す。
だがカメラを構えようとした瞬間蛇の口から強烈な音と衝撃が放たれたのだ。
「へ、へ蛇が鳴いた!?!?」
「ヴー……ヴアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
衝撃でカメラを落としてしまったがその時のフラッシュでようやくそいつの全体像が明らかになった。
台形のような体にちょこんと二つの目、頂点から蛇の頭が生えているといった感じだ。
あまりにも奇怪な姿だけど私はこいつの姿に見覚えがあった。
「す、すわこの帽子!?!?」
「あーーーーーーーーーーーうーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
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「ア、アーアーウーウーあーうー」
「もしかしてこれってすわこの巨大種!?」
ゆっくりには巨大種と言うものがあって例えばまりさの巨大種はドスまりさ、れいむの巨大種はビグれいむと言ったところだ。
しかし巨大種の大体が普通のゆっくりを巨大化させた程度のもの。目の前にいるこのすわこは明らかに新種と言ってもいいほど独自の進化を遂げているではないか。
なるほど、この形状ならあの河原の跡にも説明がつく。
「しかも帽子だけとは……これは一大発見じゃない!?」
それに元々すわこはZUN帽と呼ばれるいつも被っている奇妙な帽子が本体と言う説がある。
こいつはその説を完璧に裏付ける決定的な生き証拠だ。ゆっくり研究の教授にでも渡せば単位をただでくれるかもしれない。
私は落としたカメラを拾い再びファインダーを天井に今もくっついてるでっかいすわこ帽に向けた。
「ア゛、あーうーあーうー、ヒィハァ」
「?」
二三回シャッターを切った私だが、すわこ帽が妙な動きをしているのに気付き写真を撮るのを止めた。
何故か蛇頭を何回もそこらの岩に擦りつけているではないか。
縄張りのマーキングのように見えるが、擦りつけている間何回も興奮するかのようにくねっているのが気にかかる。
その行動の真意に気付いた時には もう手遅れだった。
「あーーーうーーーーーーーーーーー!!!!!」
「い、いやああああああああああああ!!!!!」
9回ほど蛇頭が岩に擦りつけられると蛇頭の口からバチバチと光が放たれ、呆然と立ち尽くしていた私はその光に巻き込まれてしまった。
電撃か何かの類なのか、全身が麻痺したかのような感覚に襲われ足に力が入らず、私はその場に倒れてしまった。
動けない。なんとかギリギリ動かせる頭で状況を確認しようとしてるとすわこ帽の影が地面に降りてじりじりと私の方へ寄ってくるではないか。
「あーうー……オカズーーオカズゥゥゥ!!!!」
失念していた。すわこは元々祟り神という性質を持ったゆっくりだということを。
懐中電灯はあらぬ方向を向いてもうすわこの姿を見ることが出来ない。体の麻痺も治らない以上私は自分の命が散るのを悟った。
さらばマイハズバンド、さらばマイドーター。あなた達の大切な人はここでさようならを告げさせてもらいます。
蛇頭の怪しく湿った吐息が辺りを満たし、私は全ての運命に身を任せ瞳を閉じた。
「このバカッ!!」
「あうっ!?」
と、そう言って覚悟を決めているというのに妙な声と妙な撲殺音が聞こえるだけで何も起こらない。
恐る恐る目を開けてみると辺りはなぜか明るく、長身の女性が丸太で蛇頭を何回も殴っているではないか。
「相変わらず!人にばっか迷惑かけて!折角ここへ来た意味が!ないじゃないか!!」
「あうーごめんよかなこぉー」
「すいませんねぇうちの亭主がホント迷惑をかけて……大丈夫かい?」
よく見てみるとこの長身の女性は人間ではなく体つきのゆっくりかなこだった。
かなこは申し訳なさそうな顔をしてすぐさま動けない私の手を取り、ゆっくりゆっくりと起き上がらせてくれた。
「あ、わたしは打水 かなこと言います。で、こちらが亭主の打水 フルすわこ」
「……どうも、私は古賀 咲子といいます」
「あーうーゆっくり覚えていってね」
ゆっくりにも結婚や名字が認められるようになったものだなと感心し、つい反射的に自分も自己紹介してしまった。
というかフルすわこっていうのかこいつ。それに普通に喋れるのかよ。
さっきまで捕食被捕食関係にあった二人がこうすぐにじっと対面しているというのも変な話である。
「このっイロボケガエル!すぐにこの人に謝るんだよ!」
「あうーごめんなさいーおかずにしてごめんなさいー」
「え?過去形?……まぁ一応覚悟してきてるわけだし別にいいですよ」
だけど結局妖怪はいなかったのかと私はガクッと肩を落としてため息をつく。
これじゃサークルのみんなに笑われるだけだ。せめてこの目の前の珍種の生態だけでも調べてたいと思い私は二人に尋ねてみた。
「あの、あなた達ってもしかしてこの洞窟に住んでるんですか?」
「いや~K府の方からちょっと旅行のつもりでさ……というかダンナの禁欲のためというか」
K府って私が住んでる所じゃないか。生息地が都会だなんて新種って言い張るには説得力があまりにもなさすぎる。
こりゃあ生態をまとめるのは無理だなと思って私はひどくがっかりした。
「ひどいんだよかなこは~わたしはこうえんでウォッチングしてるだけなのに」
「その視線の先にはいっつも女の子ばっかじゃないのか!」
再びかなこさんが背中のオンバシラでフルすわこの蛇頭を思いっきりぶったたく。
随分板についているようで流れるような動作だった。どれほど仲が良かったらここまで息を合わせられるのだろう。
「ここならそう言うのもないかなと思ったんだけど結局いつもと変わらないまま‥…一体どういうことなんだか」
「ゆふふふふ、かなこにはわかんないだろうね~あーうー」
いぶかしんでいるかなこをドヤ顔でにまにまするフルすわこ。
しかし禁欲か。そんな中であの河原にあった本を読んだりしたら大変だよな。
でもよく考えたらあの河原にはこいつのものと思われる跡があったわけだから……そういうことか。
「かなこさん、河原の茂みでも探してみたらどうかしら」
「あら、そう?」
「ギャーバレターーーーー!!!!」
その後は私達はまるで井戸端会議のように互いのことについて語り合った。
大学のことや家庭のこと、趣味のことや友人関係のこと……
特に興味を引いたのは互いの子供のことだった。
「うちのさなえも連れてこうかと思ったけどまだ結構幼いしこんな旅行に連れてくのも難だと思ってさ。近所の家に預けてきたんだよ」
「まぁ1、2歳じゃ大変よね。私は趣味でここへ来てるから夫に任せてるの」
「あーうー、かなこあそびにいってもいい?」
「ダメ」
さっきまで興味の対象だったフルすわこも今では除け者。
2時間、いや3時間くらい経ったころだろうか、楽しく歓談しているとふと辺りが少し暗くなったのに気が付いた。
「お、もうこんな時間か、ランプの明かりも無くなってきたし」
「ランプ?ああ、その星ちゃんが持ってるっぽい物のこと?」
「そうそう、この村の特産品で『霊烏路の灯』ってものらしいのよ。放射線は出ないらしいけどやっぱ紫外線はきになるよねぇ」
私はそう言った肌のケアにはあまり気をつけない人間だが歳を取るにつれて気にかけるようになっていくのだろうか。
だんだんランプから光が少なくなってきているので私はかなこさんと話しながら出口の方へと向かっていった。
「そう言えばなんでかなこさんはこんな化けも……あ、ええとこんなのと結婚したんですか?」
「はは、はずかしくて言えないよ。でもこんな化け物みたいや奴でも……好きさ」
「あーうーかなこぉー」
あーあーのろけちゃって。でもその巨体で抱きつこうとしたフルすわこは反射的と言っていいほどの速度でオンバシラにぶんなぐられた。
夫婦と言うより夫婦漫才と言う感じだ。何年もこの調子が続きそうで羨ましい限りである。
そうこうしているうちに私達は出口まで辿り着いた。長話しすぎたせいで辺りはもうすっかり夕方。
あきゅん待ちぼうけしてないかなぁ。
「そんじゃ、あたしたちはこれで。さて、河原になにがあるのかねぇ」
「やめてよぉーーーー」
そうやって別れを告げ、かなこさんはあのフルすわこの巨体を引きずって河原へと向かっていった。
夕暮れの中私は一人ポツンと残される。先ほどのまでの出会いはまるで夢のようだったかのようにさえも思ってしまう。
いや、怪異と出会うということはそう言うものなのだ。現実味がないのも当然に決まっている。
とりあえず私はこれからのことを考えて村の方へと帰って行ったのであった。
こうして私の怪異探しは終わりを告げた。
結果はカメラに残ったフルすわこの画像くらいのもの。これでは到底提出出来たものではない。
私は今までの疲れを吹き出すように深く肩を下ろしてあきゅんと一緒に丸休村からの帰路についていた。
「ごめん、結局無駄足に終わっちゃって」
「いやいや、わたしはわたしで色々収穫がありましたから。丸休村の方言レポートも作れそうです」
「へぇ……たとえばどんなふうな感じ?」
「ほんとうの⑨はめのまえあんちのだんまくをぷろぐら(本当に手に入れたいものは目の前にきっとあるは)」
「あー分かった分かった」
思えば不思議な旅行だったけど、よくよく思い返すと彼女らは私が住んでいるK府に住んでいる。
つまり街中を歩いていれば会うことが出来たのかもしれないということだ。
都会にだって怪異が好みそうな暗闇がある。いや、生活圏にその闇がある以上、怪異は田舎よりも私達の傍にいるのだ。
少し意味は違うが私もこの言葉を皆に送ろう。『怪異とは奇妙な隣人である』と。我々のすぐ隣にも怪異が存在している。
少し語ってしまったがここで本筋に戻そう。
このお話では怪異ではないが、隣人が宇宙人という意外性のある展開となっている。
その事実は少年が隣人の奇怪な行動を観察し続けていたからこそ発覚したのだが、もし少年に好奇心がなかったら、
また隣人が怪しい行動を取らなければ見つかる事は無かったのかもしれないだろう。
最近では近所に無関心な人もけっこう多い。王道的展開なこのお話だが今となってはどこか皮肉めいたものになってしまっていると私は思う。
そしてこのお話で最も特徴的なのが宇宙人の正体、そうイカルス星人であろう。
こいつはこの話きりで新セブンにも出てきたことはないが、ウルトラファイトではレギュラーとして登場したため知ってる人も多いはず。
とはいってもこの話では四次元装置と言うものを使って四次元の世界から三次元を攻撃するという非常に科学力の高い作戦で地球を侵略してきたのだ。
ただ、その科学力の高さが心に隙を生んだのだろう。
いくら人の少ないといっても一応人が住むはず別荘地帯を拠点にし、結果として少年に発見されてしまったのだ。
というか隣に人が入ったことくらい分かるはず。それでもなお怪しい行動を続けていたというのは油断しすぎだと私は思う。
さらにはダンに四次元空間に潜入されたにも関わらず徹底的に始末せず、四次元装置を壊されてしまうものだからもう始末に負えない。(しかもこの時はダンは変身できなかった)
最後にこのセリフ。「私はお前を見くびっていたようだ。お前は誰だ」 ウルトラセブンがいることくらい調査しておけ。アホすぎる。
けれどもこのお話はイカルス星人のデザインの秀逸さもあってかなり見ごたえがある作品だと私は思います。
名作とまではいかないかもしれないけど良作。こう言ったお話が多いウルトラセブンに出会えて私はこの道を進んだようなものです。
侵略者との戦いのお話はみんなに色んなことを教えてくれる。私もそうした話を描けるよう一層努力していきたいです!
(ウルトラセブン第10話『怪しい隣人』についての感想 没原稿)
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ありのまま起こったことを話そう。エッセイを読んでいたと思ったらいつの間にか特撮関連の話になっていた。正直訳分からん。
「ただいま~、あ、なに人の原稿読んでるのよ恥ずかしい」
「母さん、なにこれ」
丁度これの作者、というか僕の母さんが帰ってきて僕はすぐに尋ねてみた。
僕はあまり母さんのことを知らない。だからこれはいい機会だと思ったのだ
「ああ、セブン関連の本で特撮脚本家として考察を送れって言われたのよ、でもちょっと自分語りが多くて没になっちゃった」
「脚本家だったんかい」
文学部とか怪異探求会に入ってるって書いてあったからてっきり小説家か民俗学者だと思ってた。
まぁ特撮好きだから内心喜んでる自分がいるけど。
「確かに没原稿、突っ込みどころは色々あるけど一番言いたいことは」
「ことは?」
「……隣人を化物扱いってどうよ」 スワコ!マタケイサツカラレンラクアッタケド!
「いや、あれは化けもんでしょ」 アーウー!ユルシテヨカナコ!スキナモノヲスキデイラレルノハスバラシイコトデ・・・・・・
「そう言われると否定できない」 キヨウトイウキョウハユルシマセンカラネ!サナエ!オンバシラモッテキテ!
ワカリマシタ!Lサイズモッテキマス!
今も隣の家から賑やかで、楽しそうなゆっくり家族の声が聞こえてくる。 サナエー!ア、デモサイキンナレテキテムシロキモチイイ・・・・・・
世界にはいろんなことがあって、怪異じゃなくてもそれは意外と身近にいたりするものだ。 テオクレダー!モウオコッタエロボンモヤス!
僕達はそう言った不思議なもの、ゆっくり達と一緒に暮らしていく。 ウワーン!
ずっとずっとどこまでも。不思議な隣人として。
- もうゆっくり全部怪異で良いよwそして語りすぎw
フルフルがどんなに卑猥なモンスターかすわこさんのお陰でよく分かりました -- 名無しさん (2010-09-20 12:58:36)
- まさにポルナレフがありのままに話す状態w -- 名無しさん (2011-06-15 16:07:10)
最終更新:2011年06月15日 16:07