~前回までのあらすじ~
『私は貧乏な国の貧乏なお姫様です!!わが国には資源や食糧!あと出番がありません!みのりこさえいれば焼き芋で皆を救えるのですが……』
『ゆ……私がいなきゃだめなようね。シュン、私抜きでも頑張れるよね……?』
『みのりこぉ!お前ってやつは……』
『残念だがこの国は滅びてもらう!いけっ!リなんとかズきゃなこん!』
『ここは私が食い止める!いや、この国が滅びるのは見てられない。今ここで倒す!!』
『みのりこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
「てな感じならきっと人気もでるよ!!」
「ふざけんなよてめー」
嘘です嘘ウサ。というわけでゆっくりもんすたあ第五話始まります。
ゆっくりもんすたあ第五話 『激闘!コウマジム!!』
中ボス三人組との戦いから数時間が経っただろうか。
道の様子も次第に今までの現代的なものから西洋的なものに変わり、うっそうと霧まで漂ってくる。
『霧が陰る街』が近づいてきた証拠だ。まだ見ぬ地を目の前にして僕の心も一層高ぶり始めていった。
「れいむ達のつよさを見せつける時が来たよ!」
そう言ってれいむは僕の腕の中で暴れまくるが僕は少し不安を覚えている。
何しろ一つの町のリーダーと呼ばれる人と戦うことになるのだ。今まで戦ったトレーナー達とは一味も二味も違った強さを見せつけてくれるだろう。
「不安になってちゃ困るよ!ちゃんとゆっくり頑張ってね!!」
「……そうだな」
戦うのはゆっくり達だが僕達トレーナーもしっかりとゆっくり達をサポートしなければならない。
僕が頑張らなくちゃいけないんだとれいむの言葉にほんの少し勇気を授けられ僕は進んでいく。
そして見えた。赤き街を象徴する城門を。
「さて、行くぞ!」
「おっしゃー!」
全てを受け入れるように城門は扉がなく、街との境界を取り決めているだけ。
僕は勇気を持って城門を勢いよく駆け抜け、ようやく紅き街コウマシティへと入っていったのであった。
とはいっても、いきなり何の準備もなくジムリーダーに挑むのは愚策というもの。
とりあえず休憩と情報収集も兼ねて僕達はコウマのメディカルセンターにお邪魔したのであった。
「モダンだねぇ、とりあえず霧で髪の毛濡れちゃったから拭いてね~あとおなかすいた」
「全く……」
ふてぶてしいれいむの要求にうんざりするも僕も結構お腹がすいていたので、髪を拭いてあげたあとメディカルセンターの食堂スペースに連れて行ってあげた。
ゆっくりジムが存在するからかメディカルセンターもかなりの設備を備えている。この食堂などカザハナやトキハには無かった設備に僕は驚きを隠せなかった。
「よしっ出てこいみのりこ」
「秋らめたくない!」
食堂で席を確保して僕はゆっくりボールからみのりこを出した。
食券式の食堂だったので二人に何が食べたいか聞いて(れいむはカニ雑炊、みのりこはきのこパスタだそうだ、いっちょまえにいいものを……)僕は食券を買いにいった。
「おっ」
と、食券販売機に向かおうとしているところ僕は壁にかかっているゆっくリーグのポスターに目を奪われた。
『ゆっくリーグ、それはゆっくりトレーナー達が切磋琢磨し頂点へ目指す為の機関、および大会のこと。2年に一度オトハ島で開催される。
参加するためにはゆっくリーグ公認のジムからバッチを8つ手に入れることが必要。地方ごとに8つジムがあるが、諸事情とかで別の地方のジムに挑戦してもいいらしい。
ただしバッチには期限があり、リーグが開催されるとそれ以前に手に入れたバッチは全て無効となる。
つまり2年の内に各地を回って8つ集めなればならないということだ。
ゆっくリーグ大会はリーグ式で行われ、8つ集めたトレーナー達とリーグ公認のゆっくり四天王と頂点を目指して戦うことになる。
もちろん挑戦者たちが全部敗れ四天王が頂点を制すことだって十分にあり得るし挑戦者が0の時だってある。だから挑戦者たちには頑張ってもらいたい、普通にウケがいいから。』
そんな地味に願望が混ざった説明文の上には次の開催予定日と四天王らしき人々が描かれていたりした。
次の開催予定日は今から1年3ヶ月後、リーグを目指すには十分時間がありそうだ。
橙子に言われて始めたことだけど、いつしか乗り気になっている僕が今ここにいる。
むしろ今の僕の生きがいにもなっている。だからこの戦いは絶対に負けられないのだ。
そう決意して僕は歩を進めるが丁度その隣にあったポスターも目に入る。どうやらそれはこの町のジムに関するポスターのようだった。
丁度いい。あまりにも情報が少なかったから参考になるぞと思って見てみたが、ポスター一面に跨るどでかい文字が僕に強烈な印象を残していった。
「全国最強ジムリーダー……R・スカーレット……」
……誇張じゃないよな。
まさか最初に訪れたジムが最強だなんてそれなんて負けイベント?
改めて見直してみるもその文字は変わらずにどでかく書いてあるし真横には(リーグ調べ)なんて文字さえも見えた。
絶望が僕の心を覆ったように思えた。ポスターのジムリーダーが僕を怪しく嘲笑っているようにも見えてしまう。
「嘘でしょお……」
衝撃の事実にかなり気が沈み、僕は肩を落として食券販売機まで足取り重く進んで行く。
希望が無くなったわけではない。ちゃんと他のジムリーダーと戦えばいいわけだし数に関しても他の地方に行けばいいのだ。
けれど橙子との約束はどうしよう。『コウマでバッチを手に入れたらバトる』なのだからここでバッチを手に入れなければならないはずだ。
まぁ橙子も勝てるかどうか分からないし見かけたら普通に戦えばいいだけの話である。
ただ問題なのは、もし橙子がそのジムリーダーに勝ってしまったとしたら。
「あ~~~~~~~~もうやだあああ」
「むーしゃむーしゃしあわせー!おにーさんどうしたの?食べないなられいむがたべちゃうよ!」
「さっきからなんか変よ?」
結局気分がブルーのまま僕は食事を買い、食欲も消え失せ先行き不安のまま机に蹲ってしまった。
『えー勝てなかったの?ちぇっ見込み違いか』とか言われてしまわないだろうか。ただでさえスカーハートな僕はその一言で完全に沈没してしまう!!
「なぁ、早めにこの街出て次のジムに行かないか?」
あまりにも不安なので僕はついそんなことを呟いてしまった。二人は当然のように見下すような眼でこちらを見てる。
「何言ってんの……?」
「私達がまだ弱いと……?」
「いや、忘れて!今の言葉忘れて!!」
そんな憐れむような眼で僕を見ないでくれ。
けれどれいむ達は水に流す気などさらさらなく、食べる手を置いて僕を叱責するかのように机をたたいた。
「あのねぇ、どんな臆病風に吹かれたのか分からないけどそう言うのが一番ウザい」
「もっと自信持ってくれなきゃ背中預けられないわよ!」
「……………ゴメン」
ゆっくり達の言うとおりだ。トレーナーとして酷いことを言ったと思う。
例え相手が強いと分かっていても逃げていては何も始まらない。一度決めた以上戦わなければいけないのだ。
負けてもいい、全力を出し切ること。それがゆっくり達に出来る最大の手向けだ。
僕は不安を振り払って、カバンから1枚の危なっかしい装飾が付いたバンダナを取り出し頭に巻きつけた。
傷がまだ治りきってないため痛い。けれどこれは二人を裏切りそうになった罰だと思え。
「よしっ!!よしっ!!よし!!」
気合を入れなおして僕は自分が注文したチャーハンを喰らい尽くし、一息つく。
今から行こう。そう思って僕は先に食べ終わった二人を抱えてメディカルセンターを発ったのであった。
「びっくりした……いきなり抱えられたもんだから心臓が……」
「って心臓あるんかーい」
「よし、準備はいいな二人とも!」
今僕は二人を抱えてコウマジムの目の前にいる。
この扉を開けばジムリーダーが待ち受けているはずだ。びっくりしているわけじゃないが僕の心臓は激しい音を立てて鼓動していた。
「ん~準備ねぇ、ま、れいむの実力にかかればお茶の子さいさい!」
「私はいつでも人気者……じゃなくて戦う準備はできてるわ!」
二人とも準備万端で僕は安心する。そして僕はれいむを頭の上に載せてドアノブに手をかけた。
「相手は全国最強のジムリーダー!!行くぞぉ!」
「……え?」
「全国最強って……きいてないわよ!!!」
なんか二人が急にグチグチ言い始めたけれど普通に無視し、僕は精いっぱいの勇気を持って扉を勢い良く開ける。
ジムの内装はまるで洋館のよう。整然と敷かれた紅いカーペットが挑戦者たちを招き入れているように見える。
だが入ろうとしたその瞬間頬の辺りに風が吹き、ガラスが割れるような甲高い破壊音が丁度僕の真後ろから聞こえてきたのだ。
「………」
ふと、頬に何か温かいものを感じたので恐る恐る触れてみると、ねちゃねちゃとした液体が頬から流れ出ているようであった。
後ろを振り向いてみれば扉についていたガラスが全てにコナゴナになって地面に散らばっている。
「このーーーーー!!!!セリエさん!いい加減にしてください!!」
「聞き分けのない人ですね、無理なものはなんだからしょうがないでしょう」
何が起きているのか理解できないまま僕はドアの前で硬直しきってしまった。
ジムの中ではメイドと思われる人物とバニーガールっぽい人が口論しながら地形を駆使して空中戦を繰り広げていたのだ。
メイドさんってTVとかで見たことあるけど実物は初めて見た、バニーさんも胸が揺れてえっちぃ。
「あ、ありのまま今起こっていることを……」
「トレーナーさん!!い、い、今は危険です!!」
思考が麻痺しきってしまいその光景を呆けながら見ていたけれど、他のメイドさんが呼びかけてくれたおかげで僕はなんとか正気を取り戻す。
一体何が起こってるのか聞こうかと思ったがメイドさんも相当パニック状態になっているようで尋ねる暇もなく僕はそのまま外へと連れ出されてしまった。
「はぁ……はぁ……今コウマジムは大変なことになっているので!一時間ほどは立入り禁止です!!二人ともやめてくださいぃ」
「クーゲルシュライバァァァー!!」
「東方流奥義!!四天方!!大車輪んんんんんん!!」
ジム内では今でもこの世のものとは思えないバトルが繰り広げられており、僕を連れだしたメイドさんはあたふたしながら中に入って扉を強固に閉じていった。
これが全国最強ジムの正体……か、一味も二味も違う。
先ほどの勇気もどこへやら、僕はまわれ右してどこへ行くわけでもなくそのままコウマの霧の中に潜っていった。
「さっきの提案だけど……やっぱその通りにする?」
「でもかっこ悪いよなぁ……」
数分後、ある程度霧で頭を冷やしていつも通りの思考を取り戻した僕らはコウマシティ入口の城門で色々話しあった。
あの光景は確かに奇天烈なものだったけれどあそこは一応ゆっくりジム、だからゆっくりの強さとは関係ないと僕達は割り切ることにしたのだ。
「とりあえず一時間ほどは入っちゃいけないって言ってたけどそれまでの間どうするか……」
「え?やっぱり戦うの?」
「いや確かに不安だけどさ、命取られるわけじゃないし」
折角出した決意と勇気を不意に捨てるのももったいないことだ。
れいむとみのりこは苦々しい顔をしているけれど僕の背中を押したのは二人。だから地獄まで付き合ってもらおうではないか。
「大丈夫大丈夫、強くなればいいんだから。あ、そうだこの一時間他のゆっくりバトルして鍛えようか」
「他人事みたいにいって……」
「どこが他人事だよ」
こんな空回りしかかっている僕とは裏腹に二人は未だ割りきれずにうだうだそこらを転がっていたりする。
これでは説得は難しい。なので僕は有無を言わさず二人を鷲掴みにしてそのまま城門を出ていった。
「「はなせ!」」
「はなさん!」
こうして再び僕達はコウマとトキハを繋ぐ森へと戻っていく。
霧に満ち落ち着いた感じの石畳の道だが、一度道を外れれば野生のあのやかましいゆっくり達と出会えることだろう。
僕は道脇にある草木を乗り越え森の中を散策する。だが数分ほど歩いてもゆっくり達は一向に姿を現さなかった。
「あれぇ?どうしてだろ、いつもは来るんじゃねぇと思っても来やがるのに」
「ゆふふ……これじゃあしょうがないね」
「いや、別に戦わなくなってジムリーダーのところには行くぞ」
「ゆがーん……」
一応気配だけはするのだが視線を向けるとその気配もどこか遠くに消えてしまう。
もしかして避けられているのだろうか。ただの偶然とは考えにくい。
「これは……」
「何か分かるのか?みのりこ」
「多分中ボス三人組に勝っちゃったからみんな私達のこと怖がってるんじゃない?」
あと被害の復興のために動員されているかも、と付け足してみのりこは再び腕の中でくつろぎ始める。
力を持ちすぎた人は尊敬と同時に畏怖を人々から受けると言うが、流石にそこまでのことを僕はしたとは思えなかった。
これは謙遜じゃない。僕達はまだジムリーダーとも戦ってない駆けだしということを忘れてはいけないのだ。
と、言ったところで本当にこれからどうしようか僕は頭を捻らせる。
腕の中でダレきってる二人にメリハリをつけさせるためにはやっぱり戦いが一番だと僕は思う。
でも野生のやつらは姿を現してくれない。それならば。
「トレーナー……か」
そうと決まれば僕は森の中を駆け巡って人影を探し回る。
ジムがあるコウマならばトレーナーの数はカザハナやトキハよりも多いため探すのは容易なはずだ。
そして僕達は霧の中でゆっくりトレーナーらしき人影を発見した。
「そこのトレーナーさん!突然ですが僕達と勝負してください!」
そう叫ぶと相手は僕達に気が付いてくれたようで霧の中から姿を現してくれた。
僕よりも背が高い大人の男性だった。何日もさ迷い歩いたかのように服が土と水で汚れていたがそれだけこの人が年季が入っているという印象を与える。
「子供……か?」
「そうです、でも侮らないでくださいよ」
「分かった。それにしても丁度いい、強くなった俺達の強さを見せるぞ!」
その人はすぐに腰のゆっくりボールを掴んで臨戦態勢を取る。
こちらも左手のみのりこを突き出し、こうしてゆっくりバトルが始まった。
ゆっくりトレーナーのケシキがしょうぶをしかけてきた!
「いくぞ!みのりこ!」
「……わ、わかったわよ!仕方ないわね」
みのりこは僕の左手から飛び降りて緩みきった体をきちんと元の球形に戻す。
前の戦いで無くなったブドウもしっかり再生して戦闘準備は万端である。さて、相手はどう出るか。
「行くぞっ!もこたん!」
「インしたお!」
相手の投げたボールからは炎の翼と長い白髪を持つゆっくりが現れた。
今まで僕達が見たことのないゆっくりだ、なので僕はすかさずゆっくり図鑑を開く。
r-r、 ,.-ァ、
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ヽi /アー- .|_/ Lア-― .ヽ. ,ゝ ',
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/ .// |/ / |/ | | |〈 }> ゆっくりNO、 もこたん
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このこは かしこいこ なんだよ ただ けーね がもっとかしこいだけ
このこは やさしいこ なんだよ ただ けーね がもっとやさしいだけ
このこは さみしいこ なんだよ でも けーね がちゃんとそばにいる
「行け!火炎放射!!」
相手のもこたんはとんでもない早さでこちらが準備する間もなく先制攻撃を仕掛けてくる。
もこたんの口から吐き出された業炎はみのりこを的確に容赦なく火の海に包んでいった!
「うぎゃっ!」
「みのりこぉぉ!!」
マズいと僕は本能的に察知した。
みのりこは一般的に言う草タイプ、いくら周りが霧で炎の強さが軽減されていたとしても相性が悪ければひとたまりもないだろう。
炎の中にみのりこの影だけが写る。もしかしたらもう消し炭になっているかもしれないと僕は居た堪れなくなり両目を瞑った。
だが絶望的になりかけた僕の耳にとある声が聞こえた。
「しっているか……」
この声を僕は知っている。僕は恐る恐る片目を開いてみのりこが沈んだ炎を見つめた。
声は炎の中から聞こえてくるという事実が分かったことだけで僕の希望は再び息を吹き返した。
「不死鳥は………炎の中から……甦る!!」
その叫びと共に炎の中からみのりこが火中の栗のように飛び出し、空を飛んでいたもこたんに体当たりで吹き飛ばしていったのだ。
「な、なにぃ!?」
「秋神なめんなよ!」
そのまま地面に降り立ったみのりこはふてぶてしい笑顔で体に残っていた火を地面に擦りつけて消していった。
「みのりこ!大丈夫か!?」
いくら耐えられたとしても相当な重傷を負うはず、けれどもみのりこの体はほんの少しの火傷が残っているだけであった。
一体どういうことだろうかと悩んでいると僕はみのりこの体から甘い香りが漂っていることに気が付いた。
「そう、私は焼き芋よ!だから火なんてそれほど問題じゃないわ!」
「な、なるほど」
「ゆ、ゆぅ、おまえのどこが不死鳥だぁ……」
納得している間に吹き飛ばされたもこたんは負傷しながらもフィールドに戻ってくる。
相手トレーナーも不測の事態にかなり困惑しているようだった。攻めるなら今だ。
「みのりこ!攻撃!」
「いえっさ!!」
みのりこはすぐに攻撃を仕掛けるがもこたんはとっさにみのりこの攻撃が当たらないところまで飛翔していく。
卑怯だ、と言いたいがこういった陣取りも立派な戦法だ。
みのりこではこれに対処できないと思い僕はみのりこをゆっくりボールに戻そうとしたが、一歩遅く相手の指示が先に森に木霊した。
「もこたん!!J!フェニックス!!!」
「不死鳥はぁぁぁ!!!ここにあり!!!」
もこたんは体を炎で包み、そのままギリギリ目に捉えきれる程度の速度でみのりこに突進していく。
その姿はまるで不死鳥のよう、舞い散る火の粉が森を過剰なほどに照らす。
翼を広げているため真横に逃げることは不可能に近くみのりこはみすみすその攻撃の直撃を喰らってしまった!!
「ゆぅぅぅぅぅ!!!」
「みのりこ!!!!」
先ほどとはケタの違った攻撃には流石の焼き芋みのりこも耐えられなかった。
帽子が燃えたままみのりこは地面に伏して目を回す。目を覚ますまで待っていたら完全に焼き炭になると思って僕は苦々しくみのりこをボールに戻した。
「くぅ……れいむ!行け!!」
「わ、分かったよ!」
れいむのジャンプ力と機動力なら空のもこたんにも余裕に攻撃が出来る。
けれど僕がれいむを出した途端、相手のトレーナーはもこたんをボールに引っ込めたのだ。
「なにぃ!?」
「よし、やはり僕達は強くなっている。次行くぞ!!」
「……むっ」
その相手トレーナーの言葉に僕は少しカチンとくる。
さっきからこのトレーナーはなんか僕達を実験台として見ているような気がしてならないのだ。
もちろん単なる被害妄想である可能性だって否定できない。でもそう考えてもこの嫌な気分だけはどうしても晴れなかった。
だから僕は叫ぶ。れいむと息を合わせ出来るだけかっこいいセリフを。
「いいですよ!あなたがこの僕を軽い気持ちで蹴散らすというのなら!」
「まずはそのふざけた幻想をぶちころす!!」
「……そうか、それなら……本気で行くぜ」
なんか少し口調が変わったような気がするが、僕達は構わず臨戦態勢を取り続ける。
そして相手トレーナーは一度取り出したボールを腰に戻し、別のボールを掴んで投げた!!!
__ _____ ______ 所詮、私の手のひらの上で踊っていたにすぎません
,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 ゆっくりゆっくりしておいきなさい
'r ´ ヽ、ン、
,'==iゝ、イ人レ/_ル==', i
i イi rr=-, r=;ァ ヽイ i | ゆっくりすれば極楽浄土への道がひらかれましょう
レリイ"  ̄ / | " .| .|、i .||
!Y! 'ー=‐' 「 !ノ i |
L.', 'ー=三=-' L」 ノ| .|l 仏も神も凌駕した存在…それこそがゆっくり
| ||ヽ、 ,イ| ||イ| /!
レ ル` ー--─ ´ルレ レ´
,.┴─、\ \/ヽ
/ \ ヽ / )/-/ヽ
/ | ノ┐/ ,.-/ ヽ
./ l ./ / l "|"/'ヽ |
| ヽ .| ( / l .|
'|, ノ ,,-,,.、-'" ̄`>ィ.| ).l´ /| |
/ / / | /| | ,l、_ ___....,、┐,,,、
/ / ノ |.,-─''"ノ | /,. ,.┴、.、'" _,-‐ニ/ι、
/ | // / ‐'" ノ | | ' -─ 、,-つつ-''"
| | _,................/ =-'" //'''''''"/''>......-‐-'"''''ヽ
ヽ '" `ヽ、 、 ノ / / |
ヽ=─'''" \ ''‐- // /
ヽ、 /"´ _ _ ,,-、 _.、-=`ヽ/,.-= ヽ
\ | `ヽ 、 | ` ヽ 、 /`ヽ 、 / |// ||//´ |/
ヽ \|| `ヽ\| | `ヽ 、ヽ| `ヽ、\//
………………………………………
何かすっごいの出てきたんですけどー全長4メートルくらいあるんですけれどー
これが本気ですかー下手なこと言わなきゃよかったー
「最初から全力で行くぞ!!さとれいむ!サイコキネシス!!!」
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_,vー゚` 'l, .'l,,,゙N| i イ irr=-, r=;ァルヽイ | 》,,r・".,√ .,ll 「あまり私を怒らせない方がいい」
. lu--コ ゙k 'l,"゚゙l| レリイi"  ̄ /::|  ̄ " iリルノハ √ : ″ ..,ll
.,,r'',,r| .,, ゙゚ti,゙゙|,人 | !Y!"" 'ー=‐' ""'!Y! | | .,√
.'ur“: .lyl廴 `. ( /| L.」 . 'ー=三=-' L」 | '、 ,,,l
: ._ .'!l,,l,,,,,_ Y | | ||.ヽ、 ノ|||. | ヽ/i*jlilllタw,,、 .,r-=-r
'゙~``:''ヽ,,,,√ .~゚', ノ ルレ ル`ー----‐イルリノ、. ヽ ,レ'″ .li
、 .'《゙N,,,、 .゚'ll゙゙mr----  ̄ ̄ =`゙ニ-r/" ,r'° 'l
゙l,、 l `'私 ゙゙゚''l*゙^ ,rl゙゙゙゙≒,,,,,,,,,,,wll'
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√゙,ll,、 ,,il!广,l゙'N,,_ .ll,トi,゙゙|__、 ._l,l,,__,,,l,,,,r ┃ ,r'° .゚|, : .,l゙.,,l、゙l
゙',l“.,,ll・,,i、,,n″ .| ゙゙℡, ll ,,,゚ト ̄ ̄] ` ゙̄]゙` l',,it,、 l :!!゚,i'l゛..》
.゙'''l,,,,とill″ ,,i´ ゚!illl| `゚゙l l゙ j|" .l゙゜ .゚゙l,, .2 ,}゙|rll
”|゙‐'ll'ニrr″ _,,,,,lll廴.i,],,,,,,,,,,,,,il_,,,,,rll、 : |ト ゙゙l,,《゙レ.,li,,,
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!」
「ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっ!!!!」
こうして僕達のモチベーション&ウォーミングアップのための戦いは、かつてない大敗北という結果に終わったのであった。
「なんだ君まだ駆け出しだったのか……大人気ないことしちゃったかな」
「いや、下手に挑発した僕が悪いんどすえ……」
あの後衝撃的な事態で目の前が真っ白になった僕達はそのまま卒倒してしまったようで、ケシキさんはそんな僕を城門の休憩所まで運んでくれたのだ。
あのよく分からない攻撃で僕の心は完璧に折れました、蹴散らすとかそういうレベルじゃありません。今でも視界が白くぼやけています。
「ホントお世話になりました。ごめんなさい生まれてきて」
「なぜそこまで謙遜を……」
「………ふぅ」
このままではいけないと思い大きく深呼吸して僕は一度気を持ち直す。
これが完全敗北か。それ自体はそれほど心に傷を負ってはいない、けれどこのありさまでジムリーダーと戦うと思うと少し心が重くなった。
「それにしても強いですね……どうすればそんなに強くなれるんですか」
「なぁに、何年も前からこいつ達と付き合ってるからね。いろんな奴と戦ったしジムリーダー達とも渡りあったもんさ」
そう言うとケシキさんは服をめくってその裏側についているリーグバッチを見せてくれた。
色んなデザインのバッチがなんと7個も付いている。あと1個手に入れればリーグへ行くことが出来るじゃないか。
「あとはコウマのバッチだけ、でもあのジムリーダーに負けちまってな。それで修行のために森にこもってたんだ」
「へぇ……」
あれだけの実力なのにコウマのジムリーダーに勝てなかったという事実に僕は驚きを隠しえない。
流石全国最強というキャッチフレーズを堂々と使うだけのことはあるものだ。
「で、君……シュン君って言ったっけ」
「あ、はい。相次 瞬です」
「トキハやカザハナの出身ってのは大変だなぁ、一番最初のジムがコウマだなんて。やっぱコウマを飛ばしてハルマチに行くのか?」
ケシキさんのその質問に僕は少し戸惑う。
確かにそうしたって別にズルしているわけじゃないし、誰も僕を咎めることは絶対にしないことだろう。
でも僕は出したのだ。背中を押されながら色々考え抜いた答えを。
「いや、一度このコウマジムに挑戦してみたいと思います」
「………」
この僕の答えが意外だったかのようにケシキさんはかなり面食らったような表情になった。
「いいのか?あいつはこの俺よりも強いんだぞ」
「そんなことは百の承知です。でもジムの雰囲気というのを一度この身で感じ取りたいんです」
「……そうか」
こんなことを言った僕を愚かだと思っているのか潔いと思ってるのか分からないが、ケシキさんは口をつぐんだまま神妙に頷いた。
「シュン君がいいならそれでいいが……」
と、口を開いてケシキさんは丁度僕の真横を指さす。
その指先には体中に絆創膏を貼りつけて先ほどから僕を睨みつけているとってもかわゆいゆっくりが二人いた。
「クソックソッ!まだれいむ達を痛めつけようというのかッ!」
「もっと力があれば……チカラチカラチカラチカラ……」
「まぁ言いだしっぺはこいつらですから」
「そうか、それなら問題無い」
いいのかよ!!と二人はケシキさんに突っ込みを入れるが、ケシキさんに見られただけで二人はフルフルと怯えていた。
先ほどの攻撃が相当トラウマになったのだろう。僕も少しトラウマ気味だ。
「さて、そろそろ俺もジムに行くか」
「あ、ちょっと待ってください。あのジム今入っちゃいけないらしいです。あと二十分くらい待たないと入れないと思いますよ」
「え?入れないだなんて珍しいな……」
一体何が起こったんだと呟きながらケシキさんは頭を捻らせる。
それほど珍しいことだったのだろうか、駆け出しの僕には分からない。
「……な、シュン君」
「な、なんですか?」
唐突に呼ばれたので僕は慌ててケシキさんの方を向いて畏まる。
何かいいこと思いついたかのような表情でケシキさんは僕にこんな提案をしてくれた。
「どうせどっちもジムに行くんだから一緒に行かないか?」
「へ?あ、そ、そうですね……いいんじゃないでしょうか」
決して悪い提案ではない。出会ってから一時間も立ってない仲だけれど、どうせとかついでとかのレベルにすぎないから特に問題でもないだろう。
それに上級者同士のゆっくりバトルというのをこの目で見てみたいのだ。
強くなりたい、これはそのための一歩だと思え。
「よし、それじゃ行くか」
これから大事な挑戦を受けるというのにケシキさんは気楽な様子でコウマへと向かっていく。
僕はというと緊張で体が固まっていたが勇気で無理やり一歩踏み出し、傷だらけの二人を掴んでケシキさんを追っていった。
最終更新:2010年10月20日 20:20