※東方原作キャラが登場することを不快に感じる方
※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方
※捕食種設定を不快に感じる方
※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方
※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方
※素晴らしい小説を求めている方
は、この小説に合いません。
申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。
それでも良ければどうぞ
ミリィのゆっくり冒険記 第一話
ここは霧の湖のほとりにある真っ赤な洋館、紅魔館。
人間達の間では吸血鬼が住む館と恐れられている。
今の時間は昼の3時。
現代の人間の子供たちにとってはおやつの時間と認識されている時刻である。
しかし、それは人間以外にも例外ではなかったようだ。
「ぷっでぃんぷっでぃん♪さくやのぷっでぃ~ん♪」
恐ろしい紅魔館の廊下を間が抜けた声を出して踊りながら歩く、背中に悪魔の翼を持ちピンク色の服と帽子を被ったふとましい幼体の胴付きゆっくり。
「ミリィのおなかはぺこぺこで~♪さくやのぷっでぃんほしいの~♪」
このゆっくりは、紅魔館でペットとして飼われているれみりゃ種だ。
紅魔館にいる妖精メイドからは『ミリィ様』と呼ばれている。
「さくやのぷっでぃんあまあまで~♪あまあまあまあまおいしいの~♪」
自身の作ったぷっでぃんの歌を口ずさみながら大好きなさくやのあまあまなぷっでぃんを食べるためにダイニングルームに行くために廊下を歩いていくミリィ。
しかし、ミリィも胴付きであるとはいえゆっくりなので歩みは遅い。
その上、紅魔館は非常に広いのでダイニングルームに向かうだけでもかなりの時間がかかってしまう。
「うー?」
ミリィが視線の先に何かを見つけたようだ。と思った矢先
「さくやー!!」
と大声をあげながら廊下を走りだす。
ミリィの視線の先にいたのは紅魔館のメイド長であり、ミリィの飼い主でもある十六夜咲夜だ。
ティーセットを乗せたワゴンを押しているところを見る限り、紅茶好きのこの館の主人の元へ向かうつもりなのだろう。
しかし、今のミリィには大好きな咲夜の姿しか目に入っていない。
構わずにミリィは咲夜に向かって駆け出した。
咲夜はミリィの姿を認めると、走ってくるミリィを柔らかい笑顔で抱きとめる。
「ミリィ様、廊下を走ってはいけませんよ?」
「うっう~♪ごめんなさい~さくや~♪」
本当に反省しているのかしていないのか、ミリィは咲夜の腕の中で甘えたような声を出す。
咲夜の腕の中でミリィは思う存分甘える。
ミリィは本当に咲夜のことが大好きだった。
ミリィの母親が突然いなくなってから、咲夜が親代わりにもなっていたのだから。
「さくやはあったかいぞぉ…」
「ふふ、そうですか?ありがとうございます」
嬉しそうに笑う咲夜。
ミリィにとって、咲夜と一緒にいる時間は本当にゆっくりできる。
出来る事ならずっと一緒にいたいと思っているくらいだ。
少しの間、1人と1匹の穏やかな時間が過ぎていく。
しかし、咲夜は先ほどまで自分が押していたティーセットの乗ったワゴンを見て
「ごめんなさい、ミリィ様」
と申し訳なさそうにミリィに謝りだした。
「…う~?」
ミリィが咲夜の腕の中で不安そうに咲夜の顔を見上げる。
「これからお嬢様のお茶の時間なのです。ミリィ様のおやつはダイニングルームに用意させておりますので…」
「う~…おねーさんのとこ…?」
ミリィには咲夜がこれからこの紅魔館の主の元に向かうことが分かった。
紅魔館の主…レミリア・スカーレットはミリィにとっては恐くもあるが優しいお姉さんのような人物だ。
母親がいなくなった後のミリィを主に教育してきたのがそのレミリアだ。
「自分に似た姿をした奴がおかしな振る舞いをするのは紅魔館の沽券に関わる」というのがレミリアの弁。
ミリィも教育開始当初はレミリアに反発することが多かったが、今ではレミリアに反発することは少ない。
反発してもお仕置きされるだけだし、きちんと言う事を守れば大好きなぷっでぃんもくれるし、なでなでをしてくれるということがわかったからだ。
ミリィにも咲夜がレミリアのお世話をしなければいけないということはわかっていた。
しかし…
「やだやだぁ~!さくやはミリィといっしょにぷっでぃんたべるの~!」
と、感情の面で納得できず、咲夜の服を引っ張ることでなんとか引き留めようとする。
ミリィにとって、おやつを食べるのもゆっくりして幸せなことではあるが、隣に咲夜がいるとこれ以上ないほどゆっくり出来てしまうのだ。
咲夜と一緒におやつを食べたい。咲夜ともっとお話がしたい。咲夜ともっと一緒にいたい。
「うぅ~…」
ミリィは哀願の眼を咲夜に送る。
しかし、現実はミリィにとってゆっくり出来る事ではなかったようだ。
「ごめんなさい、また今度…お願いします」
咲夜は申し訳ない顔をしながら、それでも躊躇うことなくワゴンを押しレミリアの元へ向かって行った。
「うぅ~…さくや~…」
大好きな咲夜に自身の申し出を断られ、ミリィがその場に一人寂しそうに咲夜の後ろ姿を見つめていた。
「ちゅんり~~~~!!!!」
「むきゅ!?ミリィ、おやつのじかんじゃなかったの!?」
ミリィが向かったのはおやつがあるダイニングルームでなく紅魔館の地下にある図書館だった。
そこにはミリィを除いて紅魔館で飼われている唯一のゆっくりである、紫色の髪に白いナイトキャップを被った胴なしのぱちゅりー種であり、ミリィの友達でもあるチュンリーがいた。
チュンリーは図書館の司書である小悪魔が飼っているゆっくりだ。
この図書館の主に似ていて知能も高く、飼い主の小悪魔の教育によって平仮名を読むことが出来るようになった稀有なゆっくりだ。
「チュンリー、さくやがぁ、さくやがぁ…!」
「はぁ…またなの…」
ミリィが喚いている一方で、チュンリーは諦めたように溜息をついていた。
ミリィが咲夜のことでチュンリーに泣きつくのはすでに何度もあることだった。
その度にチュンリーはミリィを落ち着かせることに苦労をしている。
「むきゅ…さくやにとって、レミリアおねーさんがいちばんだいじだいじなのはミリィもわかっているでしょう?」
チュンリーが窘めても、ミリィはいやいやと首を振りながら
「ミリィはさくやといっしょにゆっくりしたいの~!さくやがいいの~!」
と、相変わらずの調子。
ミリィは一度こうなったら落ち着かせるのに苦労するのだ。
「はぁ…」
どうやら今回もミリィの機嫌を取るのに時間がかかりそうだ。
思わず溜息が出てしまう。
これはチュンリーにとってゆっくりできる状況ではなかった。
チュンリーはどうしようか悩みながら周りを見渡してみると一つの紅い本に目がとまる。
その本の名は『ゆっくりだいずかん』。
幻想郷の人里にいる自称ゆっくり研究家達が作った本だ。
彼らが今までゆっくりについて研究した成果がこの本に記されている。
あくまで少人数で作られている為、図鑑と言う割には知識に少々偏りがあるようにも見られる。
しかし、文中の漢字には振り仮名も振ってあり、人間の子供にもチュンリーにも読みやすい図鑑だった。
「ミリィ、そのあかいごほんさんをとってくれないかしら」
「…う~?」
ミリィはきょとんとした表情を見せながら、チュンリーの視線の先の紅い本を見つける。
「これぇ…?」
ミリィは本棚の『ゆっくりだいずかん』を両手で取り出し、チュンリーの前に本を置く。
「むきゅ、ありがとう、ミリィ」
チュンリーはその本に唾液がつかないように注意をしながら、器用に口でページをめくっていく。
唾液が付いたら、この図書館の主であるパチュリー・ノーレッジに怒られてしまうからだ。
また、チュンリーは本棚から本を出すことは自力ではできない。
チュンリーの顎の力に比べて、図書館の本は非常に重かった。
だからチュンリーが本棚にある本を読む時は司書であり飼い主の小悪魔や、胴付きのミリィに頼ることになってしまう。
自分も胴付きであるならもっと自由に本を読めるのに。
チュンリーは胴付きであるミリィを羨ましく思っていた。
静かな図書館にチュンリーが『ゆっくりだいずかん』のページをめくる音だけが響く。
しばらくそのような時間が続いたが、チュンリーは目的のページを見つけたのか、図鑑から目を離しミリィの方に顔を向ける。
「むきゅ、ミリィ…ミリィはミリィだけのさくやがほしい?」
「う…?」
ミリィはチュンリーの言った言葉の意味がよくわからなかった。
怪訝な表情でチュンリーを見返してしまう。
ミリィだけのさくや?
さくやがミリィだけの物になることなどありえるのだろうか?
「ミリィ…これをみてほしいの」
チュンリーに促され、ミリィはチュンリーが開いたページを見る。
そして、そこに書いてある内容に驚いて目を見開いた。
「う~!?どうしてさくやがこのごほんにのってるの~!?」
この『ゆっくりだいずかん』には十六夜咲夜のゆっくりである『ゆっくりさくや』も載っているのであった。
そこには『ほとんど目撃例のない幻のゆっくり』や『プリン饅頭』といった断片的な情報が載せられていた。
「むきゅ、このごほんさんによるとゆっくりさくやはまぼろしのゆっくりといわれてるくらいもくげきじょーほーがないみたいね、でもこのごほんさんにのってるってことは…」
「ゆっくりのさくやがいるってことなのぉ!!」
ミリィはさっきまで泣いていたことも忘れたように大声を出す。
ミリィにとって、十六夜昨夜はとても大切な人物だ。
咲夜と一緒にゆっくりするのは大好きだし、咲夜をゆっくりさせてあげたい。
そして、何より自分を一番に考えてほしかった。
しかし咲夜にはレミリア・スカーレットという絶対的な主がいる。
咲夜が自分のことを一番に考えてくれるなんてことは無理なのだろうと以前からミリィは考えていた。
それでも咲夜に自分を一番に考えてほしかった。
どうにもならない状況にミリィは苦しんでいた。
しかし、目の前の本に書いてある内容はどうだ。
十六夜咲夜以外にも『さくや』は存在するのではないか。
そして、自分と同じゆっくりならば、今度こそ『さくや』をゆっくりさせてあげられるのではないか。
勿論、その『さくや』が十六夜咲夜と同一の存在ではないと言う事はわかっていた。
それでもミリィは自分を一番に考えてくれる『さくや』が欲しかった。
そう考えたミリィが出した結論は一つだった。
「チュンリー!ミリィはさくやをさがしにいってくるぞぉ~!さくやといっしょにゆっくりするのぉ~♪」
ミリィの言葉に今度はチュンリーが驚く。
単にミリィを慰めるつもりだっただけに、いきなりそう言い出すとは予想外だったからだ。
「むきゅ!?それならミリィがいくよりもさくやにたのんだほうがはやいんじゃ…」
「チュンリーありがとう!ミリィはさくやをさがしにいってくるぞぉ!すぐかえってくるぞぉ!」
チュンリーの話もほとんど聞かずにミリィは騒がしく図書館から走って出ていく。
この単純さもミリィの魅力かもしれない。
「だいじょうぶかしら…」
心配そうなチュンリーを一人残して。
次の日の朝…
「さくや~、いまからいくんだぞぉ~♪」
咲夜が作ってくれたおやつのクッキーを非常食として大事な大事な帽子の中に入れたミリィは、庭から翼を羽ばたかせ空を飛ぶ。
空を飛ぶのはいつ以来だったのか、ミリィはよく覚えていない。
若干ふらつきながらも、何とか紅魔館の塀を乗り越えて行く。
紅魔館の外に出る頃には、ミリィの頭の中からはゆっくりさくやが幻のゆっくりと呼ばれているということをきれいさっぱり消えていた。
ほとんど外に出たことがないミリィは、外に出たらさくやがすぐに見つかるという楽観的な考えをしていた。
だからチュンリー以外には外出することを伝えないという迂闊な行動に出たのだ。
「うっう~♪うぁうぁ♪」
ミリィはさくやを見つけた後のことを考えながら、御機嫌に紅魔館を後にしたのだった。
数時間後…………
「う~!?ここはどこ~!?さくや~!さくや~!」
森の中で迷子になっているミリィの姿があった。
後書き
ゆっくりに癒しを求めている方には、2話以降は読まない方が良いかもしれません。
あと、誤解のないように先に言っておきますが、私はゆっくりは大好きです。
- 棒か何かでページをめくればよだれはつかないよ -- 名無しさん (2011-02-08 16:39:15)
最終更新:2011年02月08日 16:39