【2010・11年冬企画】重大な決断はノリで決めずに良く考えてから決断を下せ。-2



~☆~



「…し、死ぬかと思った。」

大月はシャワールームで冷水を浴びながらそう呟いた。
現在彼は、ホンジャマカで浴びせられた餡を落とすことと火傷した身体を冷やすために
宿泊施設に備え付けられているシャワールームで冷水を浴びているのだ。

「…まさか『ゆっくりと人間の絆を深める』と言うのがあんな方法とはな…。
 正直、あれは一般受けしない気がするな…。」

大月はシャワーを止めながらそんな事を考えた。
ゆっくりに餡を掛けてナメナメしたいと考える人間自体も、特殊な連中だし、
餡を掛けられるゆっくりだって熱いのが平気な奴と駄目な奴がいる。(むらさは後者)
万人受けしないのは確かだった。

「まぁ、あの店のことを記事としてまとめるのは明日にしておくか、
 今日は何かもう疲れた…。」

そう言いながら身体を拭いてシャワールームを出る大月。
「あ、先生、火傷は大丈夫ですか?」
部屋の中ではタオルを頭に巻いたむらさがフルーツ牛乳を飲んでいた。

「おわ!ムラサ!何時銭湯から戻ってきたんだ!?」

大月はむらさが居たことに驚いて慌ててシャワールームに引き返す。
部屋には誰も居ないと思っていたので全裸だったのだ。

「ついさっきですよ。先生何ですか、そのリアクションは。」

むらさは口の周りに牛乳ひげをつけながらそう言った。
彼女は大月がシャワーを浴びている間、ホテル名物の大浴場で風呂に入っていたのだ。
何故大月はいかなかったのか?
餡まみれの身体を洗い流したら、風呂場に居るゆっくりや人間に迷惑が掛かるからです。

「アホか!誰も居ないと思って全裸で出たって言うのに、むらさが居たから焦ったんだろうが!」

「いまさら何恥ずかしがってんですか?私だって裸のようなもんですし、気にする事はないと思いますけど。」

「年頃の娘として少しは恥じらいを持て!」

そう叫びながら大月は慌ててタオルを腰に巻く、
そうして改めて部屋の中に入っていく。

「…ムラサ、お前はこれからどうするんだ?」

「今日のところはもう疲れましたし、このままおねむにさせてもらいますよ…。」

そう言いながらむらさは大きなあくびをする。
本当に眠いようだ。

「そうか…じゃあ俺も着替えて寝るとするか、記事は明日にするつもりだしな。」

大月も大きなあくびをしながらそう言った。
そして着替えを取り出すためにクローゼットに向かおうとしたその時だった。


コンコン


「大月さ~ん、居ますか~もう寝てますか~?」

部屋と通路を隔てるドアの方から聞き覚えのあるゆっくりの声が聞こえてきた。
「うお!こんな時に来客だと!?」
着替える時間のなくなった大月はタオル一枚のまま出入り口に向かおうとする。

「…あ、そういえば受付のゆっくりがいってたな。」

と、ドアに手を掛けようとして大月はあることを思い出した。


         __,,.. -─- 、.,_
      ,::'´       `ヽ
    ,::'´           `ヽ
    ,'               ヽ
   /      /、  ィハ   、_; ! i ゝ
   i  /  ハ `;、,レ レ 、_;、人丿
  丿   レヘ i'::( ο)ilililili( ο)ハ  ヽ
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  i      ハ ヽ、:::::::::::::::::::::::ノ i ノ
  ヽ     `V>=-rパルスィノ
   `ヽ人人,.ヘ:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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「いい?これから貴方の泊まる部屋はVIP用の特別なお部屋、
 本来なら国の重役が止まる部屋なんだけど、それゆえにセキュリティが複雑で厳重なの、
 以下のことはちゃんと覚えていてね。

 ①扉は五秒以上あけると勝手に閉まっちゃう。だから開けっ放しにしておくことは出来ない。
 ②一度閉められた扉は外側からじゃあ絶対に開けられない。
 ③外から開けるなら専用のカードキーが必要、
 ④万が一カードキーを中に入れたまま部屋の外に出ちゃって扉が閉まったなどのトラブルががあったら
  部屋を借りた本人が受付に行くこと、本人であることを確認した上で部屋の番号を言ってくれれば
  その部屋の鍵を解除してあげるわ。

 ・・・こんな風に、これ異常ないってくらい位メンドクサイシステムなんだから、トラブルはあまり起こさないでね妬ましい…。」

このまま外に出れば大月は部屋を閉め出されてしまう。
「おい、ムラサ、カードキーをこっちに投げてくれ!」
大月はむらさに向かってそう叫ぶ。
むらさは寝ぼけなまこで大月の方を見た。

「…カードキー?外に出るんですか?えーと、枕元に…。」

半ば寝ぼけた状態でむらさは枕元においてあるカードを探し出す。
そいつを口に咥えると体全体を使って大月に向かってカードを投げつけた。
大月は見事、その投げられたカードを受け取った。
「これでよし!」そう言うと大月はすぐに扉を開けて通路に出た。

「…お気をつけて~…むにゃむにゃ…。」

大月が外に出たのを見送ると、むらさは本格的な眠りについた。


           _,,,..,_      _,,.._
            , '´   ヾ>´~ ´    `ヌ゙i
         i     !}         ` 、
        ,r'ゝ、_,,..=-ク          ,.イ{、
        / `く .,」  ,'    /' ,  ,.イ´  i \
       ,'   |.i  i   , 'ゝ、 !/  / .レイ ',
      / !  ムイ  ヤ / (ヒ_]    ヒ_ン i   /
      ,' |      ヘ、i '"////,___,////i く
       { ハ.、      ' ,     ヽ _ン   /´  \  片腕有角の仙人
      \  \_     \       ∠  . /  茨華仙(茨木華扇)
       >ー=ス_  <`ネ--一<_,イ_,/


「…仮にもレディの前なんだから、その格好で出るのはどうかと思うわよ。」

部屋の前に立っていたのは頭の上に何か載せているゆっくりかせんだった。
さっきのホンジャマカでウェイトレスとして働いていたあのかせんだ。
彼女はタオル一枚の大月を見て顔を真っ赤にしている。

「…いや、待たせるのもどうかと思ってつい…そうだよな、ゆっくりにだって恥じらいはあるんだよな、
 むらさはドライすぎるだけ何だよな…。」

そんな彼女の反応を見て色々ブツブツ呟きだす大月。

「何ブツブツ呟いてるのよあんた?それより私、店長の言い付けでこれを届けに来たんだけど。」

そう言ってむらさは頭の上のものを大月に差し出した。
それは年季が入った皮製の財布だった。
「…これは…!」大月は財布を見てハッとなる。
これが、自分の愛用している財布であることに。

「どうやら餡を掛けられて転がってるときに落としたみたいね。
 掃除の後、餡まみれになって落っこちてるのを見つけたのよ。」

「…そうか、部屋に入った後、スグ服を抜いてシャワールームに向かったから気づかなかったのか…。」

大月はそう言ってかせんの頭の上から財布を受け取った。
すぐポケットにしまおうとしたが、自分がタオル一枚なのを思い出してそのまま手に持ち直す。

「さ、やる事は終わったし私は店に戻るわ。」

かせんはそう言っていそいそと大月から離れていく。

「じゃあ私もとっとと部屋に戻るとするか。」

そう言って大月は財布を持っている手とは反対側の手に持っているはずのカードを
扉の横についているリーダーに通した。


…し~ん…。


…扉は何の反応も示さない。

「…?」

大月はカードを何回もカードリーダーに通した。
…それでも扉は開く気配がない。

「…なんだ?ちゃんとカードキーを通したはずだぞ。」

大月はそう言ってカードを見る。

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「…え?」

そこで初めてむらさが渡したカードは別のカードであることに気づいた大月であった。



冬企画2011年に続く

  • おもしろかった
    最初のホテルに着くまでの設定もミステリーで面白いし、世界観広がるね
    餡かけは本当に予測できなかったw
    いろいろ怖いよw -- 名無しさん (2010-12-31 21:34:28)
  • 続くんかいwレンタカーは会社のほうで保険に入ってるから問題ないと思う。 -- 名無しさん (2011-01-05 14:22:03)
  • 酷い店だw ていうかそのサービスで喜ぶのは変態だけだw
    かなこ犬カワイソス -- 名無しさん (2011-01-23 23:47:13)
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最終更新:2011年01月23日 23:47