ミリィのゆっくり冒険記 第二話

※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方
※捕食種設定を不快に感じる方
※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方
※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方
※素晴らしい小説を求めている方

は、この小説に合いません。
申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。


















それでも良ければどうぞ









時刻は午後5時を回ったところ。
ここは幻想郷の『魔』が集まった森と言われる魔法の森。
人間どころか妖怪もなかなか寄り付かない場所だ。
そのような物騒な場所でピンク色のふとましい物体がうごめいていた。


「うぅ~…ミリィ、おなかへった~…」


…失礼、胴付きれみりゃ種のミリィであった。





ミリィのゆっくり冒険記 第二話





ミリィは何故こうなったのかその肉まんの頭で考えてみる。

紅魔館から出た時は早朝だった。
「うっう~♪さくやぁ~♪どこぉ~!?」
ミリィは霧の湖の上空をふらふらしながら飛んでいた。
傍から見たら危なっかしかったが、本人はとてもゆっくりしながら飛んでいた。

今日の天気は快晴で、暑すぎず寒すぎずのミリィにとって丁度良い気候だった。
久しぶりの外出の気持ちよさに思わず「うぁうぁ♪」と口ずさんでしまう。

「…う~?」
湖をふらふら飛んでいたミリィは前方に森があるのが見えた。

「うっう~♪さくや~♪ここかなぁ~♪」
森の中にさくやはいるんじゃないか。
根拠もなくそう決めつけたミリィは、地面に降り、魔法の森の中に躊躇することなく入っていった。

しかし、ここでミリィは異常を感じた。
どこからか唸り声が聞こえるのである。




ぐるるるるるぅぅぅぅ~




発信源はミリィのお腹だった。






「う~…そういえば、あさごはんたべてなかったぞぉ…」
お腹が減ったことで、今更朝ごはんを食べていなかった事を思い出す。
どうやら、ゆっくりさくやを探すということで頭がいっぱいだったようだ。

「う~…うぁ♪」
どうしたものかとお腹を抑えていると、紅魔館を出る前に、大事な大事な帽子の中に入れた存在を思い出す。

「こんなこともあるうかとぉ♪じゃっじゃじゃ~ん♪さくやのくっきぃ~♪」
ミリィは頭上の帽子を取り、そこから保存食として持っておいた咲夜のクッキーを取りだす。

「うぁうぁ♪ミリィあたまいいぞぉ♪いっただっきま~すだっぞぉ♪」
そして咲夜のクッキーを次々と平らげていく。
クッキーは作ってから日が経っているにも関わらず、とても美味しかった。

「うっう~♪あまあま~♪」
ミリィは咲夜のクッキーに貪りつく。
そうこうしているうちに咲夜のクッキーはなくなってしまった。

「う~♪う~♪さくやのくっきぃーおいしいぞぉ♪しあわせぇ~♪」
ミリィはすっかりご満悦だった。
思わずしあわせ発言が出るほどに。

「う~…ねむく…なって…きた…ぞぉ…」
ミリィはたった今食べ終わったばかりだというのに、地面に横たわって寝てしまう。
食べた直後に寝るのは、太る原因になるので良い子は真似しないようにしよう!






さらに数時間後…………






「うぁっ!!?ここどこぉ~~!?」

起きたらお日様が沈みかけていた。


ぐるるるるるるるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ


ついでにお腹も減った。
このような経緯があり、魔法の森に彷徨うピンク色の物体が完成したのであった。







「うぅ~…こーまかん…さくや…おなかへったぞぉ…」

ミリィの当初の予定では、おひさまが沈む前にゆっくりさくやを見つけ、紅魔館で一緒にゆっくりする予定だった。
しかし、今はゆっくりさくやを見つけるどころか紅魔館がどこにあるのか分からない。
ミリィは恨めしそうに眼前にある大木を見上げる。

外に慣れている野生のれみりゃ種なら森の中でも空を飛ぶことが出来るので、空から紅魔館を探すことが出来る。
しかし、ミリィは紅魔館の中で育ったれみりゃ種だ。
紅魔館の中には当然木などなかったし、そもそも飛べなくても何も困らなかった。
つまり、ミリィは飛行することがド下手だったのである。
先程も飛ぼうとした結果、木の幹に頭から直撃したり、枝に大事な帽子が引っかかってしまったりと散々な目に合ってしまった。

「ぷっでぃんがいっぱーいでぇ…さくやがとなりにいてぇ…ぷっでぃんをたべさせてくれてぇ…そのあとはさくやといっしょにおどるのぉ…かりすま☆だーんすぅ…」

だんだん目が虚ろになってきたミリィ。
ちょっとヤバい状態かもしれない。
そこに…


「うっうー♪ おっきなれみりゃがいるぞぉー♪」

空からどこかで聞いたような声が聞こえてきた。






ミリィが驚いて空を見上げると、大きな下ぶくれ顔に後頭部から生えている翼、そしていつも絶やさない笑顔にピンク色の帽子…ミリィの同族の胴なしれみりゃ種だった。


胴なしれみりゃは幻想郷の人里の間でも、その可愛さで人気のあるゆっくりだ。
しかし、希少種程ではないものの、そうそうお目に掛れるゆっくりではない。
何故かというと、れみりゃの中身が肉な為、天敵が多いからだ。
天敵の代表的な例は猛禽類である。
れみりゃ種の飛行速度はゆっくりにしては速い方なのだが、猛禽類と比較したら天と地ほどの差がある。
結果、れみりゃ種の個体数も以前と比較して随分減ってしまった。


ミリィは胴なしれみりゃの姿を認めると、ぱぁっとした笑顔を浮かべる。
紅魔館を出てからはずっと一人ぼっちだったのだ。
しかも同族に出会えたということでミリィの機嫌は加速度的に良くなっていった。

「うっう~♪ちっちゃなれみりゃ~♪かわいいかわいい~♪」

胴なしれみりゃがミリィのいる場所に降下してくる。


「うっう~♪」
「うぁうぁ♪」
「「にっぱぁ~♪」」


れみりゃ種特有のコミュニケーションが行われる。
挨拶の後は、それぞれの『かりすま☆だんす』を踊る時間だ。
大きなお尻と頭と両手を楽しそうに振るミリィと、その動きに合わせて体を動かす胴なしれみりゃ。
久しぶりに楽しい時間を過ごせたミリィ。

しかし…そこにぐぅ~~~と大きな音が鳴った。
ミリィの腹の音だ。

「うぅ…おなかへってたのをおもいだしちゃったぞぉ…」

ミリィは少々恥ずかしいのか、若干顔を赤くしながらお腹をそのふくよかな手で抑えてその場に座り込んでしまう。


胴なしれみりゃはその様子を見て
「おっきなれみりゃはおなかすいてるのぉ?だったらいっしょにあまあまとりにいくんだぞぉ」
相変わらずの満面の笑みを顔に浮かべながら胴なしれみりゃはミリィに提案を持ちかける。

野生のれみりゃ種なら『あまあまをとりにいく』というものがどういう意味なのかすぐにわかっただろう。
しかし、紅魔館で生まれ育ったミリィにはその意味がわからなかった。
大好きな甘い食べ物は一定の時間になれば、咲夜や妖精メイドが出してくれたからだ。
だから何も分からずに

「うっう~♪あまあまたべたいぞぉ♪」

と返事をしてしまったのである。





「あっるっこ~♪あっるっこ~♪ミリィは~♪げんき~♪」
「うぁうぁ♪おっきなれみりゃ~♪かりっすまだっぞぉ~♪」
楽しそうに森の中を歩く(飛ぶ)2匹。

しかし、突然
「…う!?」
胴なしれみりゃが空中で急停止した。

「…う~?ちっちゃなれみりゃどうしたのぉ~?」
ミリィには何が起きたのかさっぱりわからない。

一方、胴なしれみりゃは
「うっう~!」
と嬉しそうな声を出した。

そして、その満面の笑みをミリィに向けて
「おっきなれみりゃ~♪あっちからあまあまのにおいがするぞぉ♪」
「うぁ♪ちっちゃなれみりゃすっごいぞぉ~♪」
すごいすごい、とふくよかな手で胴なしれみりゃに拍手をするミリィ。
ミリィには胴なしれみりゃが言うあまあまな匂いなんてものはわからなかった。
それも当然だろう。
紅魔館の中では嗅覚が必要とされる時などなかったのだから。

「うっう~♪あまあまあっちだぞぉ~♪」
「うっう~♪あまあま♪あまあま♪たべたいぞぉ~」
さっきよりさらにご機嫌な2匹。

「うっう~♪あまあままっているんだぞぉ♪」
「うぁ!?おいていかないでほしいのぉ!?」
胴なしれみりゃもお腹が空いているようで、あまあまがあると思われる方向に一直線で飛んでいってしまった。
ミリィはそれを必死で追う形となる。
移動速度がまるで違うので、当然のように置いていかれてしまったが。







「う~…ちっちゃなれみりゃどこぉ~?」

ミリィは途方に暮れていた。
同族に出会えた上に空腹を満たせると思い、テンションが上がってきていた状態でまた一人ぼっちになってしまったのだ。
期待からの反動か思いっきり落ち込んでしまう。
そこに…


「うっう~♪あまあま~♪うまうま~♪」


先程の胴なしれみりゃの声と思われる声が近くの茂みから聞こえてくる。
ミリィはその声が聞こえると安心したような笑顔でその声が聞こえた方向に歩いていく。

「う~♪ちっちゃなれみりゃ~♪あまあまみつかっ…た…の……ぉ………?」

ミリィは目の前の光景が信じられなくて最後まで言葉を紡げなかった。
ミリィが見た光景…それは…









胴なしまりさの頭に噛みついている胴なしれみりゃの姿だった。








「あまあま~♪うまうま~♪」
「ゆっ…ゆっ……」

瀕死の状態の帽子を被っていない胴なしまりさ。
もはやほとんど声が出せないほどに餡子が吸われてしまったのか、ほとんど言葉が聞こえない。
そして、捕食種である胴なしれみりゃは満足そうにまりさの餡子を吸っている。

「おちび…ちゃ…にげ…ゆっ…………」

子を思う気持ちが勝ったのか最後に言葉を発することに成功する。
しかし、その言葉を最後に噛みつかれていたまりさは絶命した。

「おかーしゃーーーーーーーーん!!!」

黒い三角帽子を被り長い金色の髪をした幼体の胴なしまりさが涙を流しながら叫ぶ。
襲われたまりさ種は親子であった。

この胴なしまりさ種の親子はまだ生まれたばかりの子供に狩りを教えるために、家族3匹で外出したところを胴なしれみりゃに襲われた。
たった今絶命した親まりさの近くにもぺらぺらした皮が見える。
それは先ほど絶命した親まりさのつがいのなれの果てだった。
この子まりさは自分が狩りを教わるはずだったのだが、逆に自分達が狩りの対象になってしまったのだった。


ミリィには目の前の光景が信じられなかった。
ミリィが記憶している身近なゆっくりはぱちゅりー種のチュンリーくらいだが、チュンリーを食べようと思ったことも、逆に食べられたこともない。
ミリィの脳裏に何かの光景が浮かぶ。





「……んま……だちが……の~……」



「……う~……ちびちゃ……ぞぉ~……」



「……りしね!……っくりし……」



これはいつ、どこで見たのだろう。
その光景の中には、傷だらけの胴なしゆっくりの姿が見える。
そのゆっくりは動かない。もう動けない。
なんだか非常に気持ち悪い。ゆっくり出来ない。
その光景を見ていたくなくて、ミリィは目を閉じた。




「おっきなれみりゃ~♪あそこにあまあまがあるぞぉ~♪れみぃはもうぽんぽんがいっぱいだぞぉ~♪だからおっきなれみりゃがたべるといいぞぉ~♪」

胴なしれみりゃに声を掛けられてミリィは我に返った。
…目を開けると胴なしれみりゃと、怯えきって涙を流している胴なしの子まりさの姿が見える。

「あまあまおいしいぞぉ~♪」

ミリィには胴なしれみりゃの言ってる意味がよくわからなかった。
自分が?目の前のゆっくりを?食べる?
食べると言うことは永遠にゆっくりさせなくなるということで…
子まりさをそっと両手で持ち上げてみる。
震えている。
温かさも伝わる。
目の前の子まりさが生きているということがよくわかる。
食べると言うことはこの子まりさが動けなくなる。
先ほどの光景が蘇る。





「うああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」





ミリィには咆哮をあげ、子まりさを腕の中に抱きしめながらどこかへ飛んでいった。
どこかはわからない。
ただ、この場から逃げ出したかった。
ゆっくり出来ない光景を思い出させるこの場所から。






後書き
オリジナルの人間は恐らく出ないと思います。
必死に生きるゆっくり達の物語をお楽しみいただけたらと思います。


  • はじめて外の現実を目の当たりにしたと言うわけか・・・ -- 名無しさん (2011-02-08 16:43:41)
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最終更新:2011年02月08日 16:43