バカなゆっくり

「ほんとうにパチュリーはバカだね!」
柔らかい日差しが木々の隙間から差し込むうららかな春の日
木々のざわめきだけが聞こえる静かな魔法の森にゆっくり魔理沙の怒鳴り声が鳴り響く
父魔理沙1体、子魔理沙6体、子パチュリー1体のゆっくり家族
小さな木の洞の巣の中で、父親魔理沙が子パチュリーを執拗に罵り続けていた
子供達を生んだ母パチュリーは出産時に死んで既に亡く、残った父魔理沙が一匹で家族を支えていた
種特性の貧弱さと喘息で動きが鈍いぱちゅりー
餌取りにも役に立たず、何をさせても鈍重であった
一人で多くの子供達を育てなければならない父魔理沙にとっては厄介なお荷物であった
ぱちゅりーを嫌う父魔理沙は、子魔理沙へは普通に餌を、
パチュリーには堅い実、筋張った草のようなゴミを与え、何かと言うとぱちゅりーを口汚く罵っていた
「そうだね!役立たずの大飯喰らいのパチェはいらないね!」
子供達もそんな親の態度を見て常にぱちゅりーをからかい苛めていた
そして家族達には、ぱちゅりーの体が弱い事以外にもう一つ気に入らないことがあった
それはぱちゅりーの奇行癖である
ある時は毒キノコを食ってゲラゲラと笑い続け
ある時はひたすら穴を掘り続け
ある時は川沿いで何時間もボケーっと立ち続けていた
父魔理沙達は、これらの奇行を繰り返すぱちゅりーを知恵足らずだとバカにし『バカぱちゅりー』と呼んで蔑んだ

そしてある日、父魔理沙はぱちゅりーを家族から追放した
餌取りをサボって穴を掘り続けていたぱちゅりーに遂に堪忍袋の緒が切れたのである
ぱちゅりーの追放については、他の家族達もあっさりと同意した
ぱちゅりーが居なくなれば自分達の食い分が増えると思ったからである
「ゆっゆっ!これで何もかもが上手く行くよ!」
家族のお荷物であったパチュリーを追い出した事で魔理沙一家はご機嫌だった
事実、狩りの名人である父魔理沙を中心とした家族は、以前よりも多くの餌を手に入れゆっくり過ごす事ができた
これから末永くゆっくりと暮らしていけるだろう、魔理沙一家はそう思っていた
だが、その魔理沙一家にも大きな誤算があった
長い間の餌の無計画な乱獲によって、近辺の森からゆっくりの食べられる物が無くなってしまったのであった
餌など自分が出て行けばすぐに手に入る
そう思っていた父魔理沙は、食べ物が見当たらなくなった森に途方にくれるばかりであった
「ゆ、ゆぅ…お腹減ったよう…」
食料の無くなったゆっくり家族達は、ただ巣で寄り沿って泣き言を言うだけであった
こんなはずでは無かった
薄れ行く意識の中で父魔理沙は自らの境遇を呪っていた

「むきゅ!そこまでよ!」
いよいよ全滅が目前となってきた魔理沙一家の巣に一匹のゆっくりが飛び込んできた
それはなんとあの追放されたバカぱちゅりーであった
どこぞで野垂れ死んでいるとばかり思っていたぱちゅりーは、丸々と太った立派なゆっくりに成長していた
そしてぱちゅりーは、どうやって手に入れたのか大量の食料を持ち出して家族に分け与えた
それは今まで見た事も無い美味しい木の実や、やわらかい草花であった
魔理沙一家は全滅の危機をぱちゅりーの食料によって救われたのであった
魔理沙達はぱちゅりーを追い出した事を激しく後悔した
ぱちゅりーの事を思いやってではない
バカなぱちゅりーにこんな素晴らしい餌のある土地を独り占めさせた事を、である
翌日、魔理沙一家はぱちゅりーの住む土地を奪おうとぱちゅりーの巣に乗り込んでいった
「バカぱちゅりーにこんな餌のたっぷりある土地は贅沢だよ!」
「独り占めする欲張りは、ゆっくり出て行ってね!」
突然あらわれて問答無用でぱちゅりーを追い出しにかかる魔理沙一家
「むきゅきゅ!?餌が沢山?ちがうよ!みんな話を聞いて!」
ぱちゅりーは必死で何か言おうとしたが、
見苦しい言い逃れをしてると判断した一家は一切聞く耳を持たずに巣から放り出した
「ゆゆゆ!バカぱちゅりーは二度とここに来ないでね!」
魔理沙一家はぱちゅりーを執拗に突き飛ばし、二度とこの土地に戻って来られないよう遠くに追いやった
「ゆっ!凄く沢山の食べ物があるよ!」
ぱちゅりーの巣には見た事も無いような珍しい美味しい食べ物が大量に貯蔵してあった
脆弱で餌取りの下手なぱちゅりーが、これだけの餌を溜め込めた事がこの土地が豊かである事の証拠であった
魔理沙一家は素晴らしい土地を手に入れたと大喜びであった

それから一ヶ月、魔理沙一家はぱちゅりーの蓄えを喰い散らかして楽しく暮らした
冬はそこまで迫っていたが、ぱちゅりーですらここまで出来たのだから自分達なら楽勝である
そう考えて何もしなかった
そして蓄えも尽き、いよいよ餌を集めに出かけるとその土地の有様に愕然とした
筋だらけの草、堅すぎて食べられない木の実、腐臭を放つ毒キノコ
そこにはゆっくりの餌になるようなものなど何もなかった
「どぼじでえぇえええええ!!!!?」
冬を目の前にしてこの不毛の土地にあって魔理沙一家はただ叫ぶしかなかった

「ゆっくりリーダー!この木の実は食べられる木の実?」
「リーダー!この草はどう?」
ここは魔理沙一家の土地から遠く離れた場所にあるゆっくり達の集落
群れのゆっくり達が、一匹の『リーダー』と呼ばれるゆっくり達に盛んに指示を求めて集まっていた
「むきゅ!この木の実は土に埋めて置くと皮が割れて美味しい実が出てくるよ
草は水につけると筋の部分と柔らかい所が離れて食べられるようになるんだよ」
次々と質問を投げかけてくる仲間達にリーダーと呼ばれるゆっくりパチュリーがテキパキと答える
そう、このリーダーとは、あの『バカぱちゅりー』であった
家族に再度追い出されたぱちゅりーは、その多くの食料を始めとした様々なサバイバル知識によって、
いまや多くのゆっくり達を率いる群れのリーダーとなっていた
「ぱちゅりーは本当に物知りだね!ぱちゅりーのおかげでみんな本当に助かってるよ!」
「ぱちゅりーは何でこんなに色んな事を知ってるの?」
ぱちゅりーの知識は普通のゆっくりでは知らないような事ばかりであった
群れのゆっくり達は、無尽蔵に知識を有しているかのようなぱちゅりーに畏敬の念を持っていた

『むきゅ…なんで?か…強いて言うなら家族が教えてくれた…のかしらね』
ぱちゅりーは心の中でそう思うと自嘲気味に笑った
体が弱く、家族に冷たく当たられていたぱちゅりーは、子供の頃から強い危機感を感じて暮らしていた
脆弱な自分は普通にしていたのでは野生を生き残ることなど出来ない
しかし、頑健な他のゆっくりと同じ事をしても決して敵わない
そんな境遇ゆえに頭をひねり、他のゆっくりが見向きもしないゴミでも食べられるように工夫した結果が今の知識なのである
ぱちゅりーの奇行は、生きようとする試行錯誤の表れであった
逆説的に家族の教えと言えなくも無い

『パチュリー種は生まれつき知能が高い』と誤解されているがそうではない
『生きよう』と思うパチュリー種の気持ちが、他のゆっくりにはない知識をつけさせ、多種を優越するようになったのである
ゆっくり種の先天性の優位など大した意味は無いのである
「こんなに頭の良いぱちゅりーを追い出すなんてバカなゆっくりもいるんだね」
知性とは見えない物を見えるようにする明かり
その知性があるからこそ、ただのゴミだったものが、美味しい食べ物としての姿を見せるのである
ぱちゅりーと言う宝石に気が付かずに追放するなどなんて頭が悪いんだろう
群れの一匹の霊夢が、ぱちゅりーを追い出したゆっくり達に最大限の哀れみを込めて言った



  • 魔理沙\(^o^)/オワタ -- 名無しさん (2008-09-10 02:22:58)
  • うわあん、愛でスレ的には悪いまりさたちも助けてほしかったよ。 -- 名無しさん (2008-09-11 23:18:11)
  • ゆっくりれいむ・・・鋭い。 -- 通りすがりのゆっくり好き (2008-09-14 00:16:47)
  • この後魔理沙一家は死んだのだろうか -- 名無しさん (2009-02-16 04:59:38)
  • その後の一家の話も見てみたい -- 名無しさん (2009-02-16 08:20:01)
  • 物を自分の目だけで判断するのは愚か者がする事である -- 名無しさん (2010-01-15 12:37:39)
  • イイハナシダナー -- 名無しさん (2010-04-09 14:39:26)
  • 人もゆっくりも氏より育ちである -- 名無しさん (2010-04-09 14:40:03)
  • この魔理沙達は愚かにも自分達の足元に火がついている事に気づけなかったんだな -- 名無しさん (2010-04-09 14:42:13)
  • 己を変えようとする者としない者ではその結果の差は雲泥の差だな -- 名無しさん (2010-04-09 14:45:37)
  • 自分達を助けてくれたぱちゅりーに恩を仇で返した魔理沙一家には当然の結果だな -- 名無しさん (2010-04-09 14:57:43)
  • ぱちぇさんかっこいい -- 名無しさん (2010-11-28 13:37:21)
  • キャーパッチェサーン! -- 名無しさん (2011-03-22 19:42:47)
  • パチェはえらいんだよお~~^^苦はのちに楽の種! -- ぷーさん (2012-02-19 19:32:00)
  • キャーパチェサーン -- ちぇん飼いたい (2012-03-21 15:22:11)
  • まりさ!おうえんしてるよ! ぜんぜん『ざまぁ』とか おもってないよ -- 名無しさん (2012-08-13 20:31:45)
  • 最初の部分で、差別するのは良くないと思う。 -- 少し真剣な愛で好きの人 (2012-12-06 17:05:48)
  • ざまあwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww -- soramame (2013-01-31 03:13:09)
  • 教訓 いじめられてても知恵をしぼればなんとかなる -- 名無しさん (2014-04-05 12:40:37)
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最終更新:2014年04月05日 12:40